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97 ダンジョン 2

 ダンジョンの立ち上げ作業は大変だったが、充実していた。

 これぞお仕事!!という感じだった。集客プランを考えたり、罠なやトラップの設置を考えたり、この世界に転生して一番、クリエイティブな仕事をしたかもしれない。


 肝心のダンジョンだが、洞窟型のダンジョンで、B~C級の魔物を集め、駆出しを卒業した中級者をターゲットにした。ホクシン流剣術道場の課題でもある中間層を強化するためのダンジョンだ。そして、1ヶ月後にダンジョンは完成した。次は、如何にしてダンジョンを発見してもらうかだが、ここは私の出番だった。


 ある日、ポンをダンジョンがある森の中に誘った。


「エミリア・・・俺に話があるって・・・それにこんな森の中だし・・・」

「こんなことは、ポンにしか頼めないからね」

「何でも言ってくれ。俺は何があっても受け止めるから!!」


 ポンは無駄に気合いが入っているが、そんなに重要な仕事ではないんだけどな・・・


 しばらくして、ダンジョンの入口に差し掛かった。


「こ、こんな所に洞窟が!!ちょっと入ってみようよ」


 少しワザとらしかったが、ポンは同意してくれた。そして、1階層だけ探索をした後にポンが言う。


「これは間違いなく、新種のダンジョンだ!!すぐにギルドへ報告をしよう。緊急連絡用の信号弾を撃ち上げよう」


 地上に戻り、ポンが緊急連絡用の信号弾を撃ち上げた。1時間もしない内に影の軍団のメンバーと冒険者ギルドの関係者がやって来た。その中には、ギルマスのスタントンさんもいた。


「珍しく緊急連絡用の信号弾が打ち上げられたから、俺も来たんだが、新種のダンジョンとは驚いたぜ。とりあえず、領主様に報告し、調査隊を派遣しないとな。危険なダンジョンじゃなければいいが・・・」


 スタントンさんは、嬉しさ半分、不安が半分といった感じだった。

 ポンが言う。


「調査隊には是非、影の軍団のメンバーも入れてください。罠の解除やマッピングで必要でしょうから」

「それは助かるぜ。3日以内にはある程度の結論を出したいからな」


 そこからは、お祭り騒ぎだった。

 多くの冒険者が、調査隊に加わりたいと言ってダンジョンに集結し、ビジネスチャンスと見た商人たちも大挙して押し寄せ、「ここは誰の土地だ?」とか「ダンジョン前の一等地は、我が商会が押さえる!!」とか言って大騒ぎだった。


 ★★★


 1週間後、私は冒険者ギルドから呼び出しを受け、ギルドに赴く。ギルドには私と一緒にダンジョンを発見したポン、領主のルミナも呼ばれていた。会議室に案内されると、ギルマスのスタントンさんが早速、説明を始めた。


「エミリア嬢とポンが発見した新種のダンジョンだが、ギルドとしては優良ダンジョンと認定しようと思っている。良い素材も採取できるし、魔物も程よい強さだ。駆出しを卒業した奴らに打って付けのダンジョンだ。ギルドとしても積極的に活用しようと考えている。それで、ギルドから発見報酬を出す。相場の3倍だ」


 自作自演感が否めないので、発見報酬を受け取るのは、少し心苦しかったが、私の今の財政状況を考えて、黙って受け取ることにした。


「ライライライ!!」


 ライライが突然、鳴き始めた。多分「金が入ったんだろ?だったら分かっているよな?」と言っているのだ。最近、ライライは本当に厚かましく、ずる賢くなってしまった。


 ダンジョンはというと、当初の目論見通りに中間層の冒険者が多く集まることになる。初心者向けである魔王城の1階層から5階層を攻略すると、10階層やデモンズ山を目指す前にこちらのダンジョンにやって来て、修行を積むのだ。そして、ここで実力をつけて、再び魔王城に挑戦したり、デモンズ山を目指すのが最近のトレンドとなっている。魔王も魔王城の入場者が増えてご満悦だ。その魔王からも私は、特別報酬を貰った。


 ここで私が考えたのは投資だ。魔王から貰った報酬でダンジョン周辺の土地を買い、祖父と同じように賃貸料で儲けることにした。祖父はああ見えて、かなり商才があると思う。本人は私の為と思ってやっていたようだが・・・


 それからしばらくして、ダンジョンで世紀の大発見があった。特に教会関係者が沸き立っている。道場の定例会にわざわざ、フランシス神父がお礼と状況説明にやって来てた。


「ダンジョンで、世紀の大発見がありました。それは未発見の教典が見付かったのです。その経典には・・・」


 実はこの経典は、魔王が仕組んだものだ。魔王曰く「ダンジョンで発見されたとなれば、信憑性も増すじゃろう」と言っていた。そして内容だが、多種族共存が説かれており、今の教会を否定する内容が多く含まれていたという。


「それでこの経典を大々的に発表し、私たちは新教会として、教会の不正を糾弾していきます」


 そうなるだろう。

 私としては、ダンジョンの開発に尽力したし、仕事がひと段落したと思っていたが、そうはならなかった。


「そしてこの経典に書かれていることが真実であるのなら、エミリア様が巫女である可能性が非常に高いのです。それで今後、エミリア様には巫女として活動をしてもらいたいのです」


 私が巫女!?

 言っている意味が分からない。


「私が巫女ですか?巫女とは一体どのようなものなのでしょうか?」

「経典によれば、神獣様や聖獣様を従えし者との記載があります。そうなるとエミリア様しかいないのですが・・・」


 フランシス神父から経典を見せてもらい確認する。

 神獣とは雷獣のことで、どう考えてもライライだ。そして聖獣とは、知能の高い魔物のことで、フランシス神父の見解では、クマキチ、クマコ、ホネリンがそれに当たるという。


 どうやら私は、知らぬ間に魔王に嵌められていたようだ。

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