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89 勇者の育成 4

 リリアン皇女パーティーとともに私はポン、ポコ、リンを引き連れて、デモンズ山にやって来た。


「まずはこの拠点を中心にデモンズ山に慣れてもらいます。今日は最初ですから、余裕がある内に拠点に帰還してください。薬草やキノコを採取したり、魔物から素材を採取したりしてみてください。素材をギルド支部に売ったりして、ここでの生活費を稼ぐことも研修です。資金管理は大事ですからね。因みにアースドラゴンの肉は美味しいですよ」


 ポコが言う。


「エミリアも先生っぽくなってきたわね」


 私も少しは成長しているようだ。


 活動に際して、私とポン、ポコ、リンは陰ながら勇者パーティーを見守っていた。戦闘を見る限り、問題はなさそうだった。

 当初は、魔物の強さに面食らっていたけど、連携も上手くいっているようで、アースドラゴンを討伐するまでになっていた。パーミラやアベルとの連携も問題はない。ここで、成長著しいのはパーミラだった。特に攻撃魔法に特性があった。ゲームの勇者は、プレイヤーの好みによって、色々なタイプに育成できる。物理攻撃特化型や魔法特化型、その両方を併せ持つハイブリットタイプなどが挙げられる。仲間の能力を加味しながら勇者を育成していくのもゲームの醍醐味だった。

 そう考えるとパーミラは魔法特化型の勇者なのかもしれない。


 1週間経過した。

 リリアン皇女が質問をしてくる。


「かなり実力がついたと思います。私たちに足りない点があれば、ご指導願います」

「ライライライライ!!」


 ライライが大声で鳴く。

 また、コイツは・・・


 私はライライの意向をリリアン皇女に伝える。


「私からは何もありませんが、ライライがアースドラゴンの肉が欲しいと言ってますね。よろしければ・・・」

「分かりました。ライライちゃん、美味しいお肉を獲って来るからね」


 リリアン皇女もライライには好意的だ。予定通り、アースドラゴンを討伐してきて、ライライと共にBBQをする。ライライは上機嫌だ。


「そろそろ、山頂に挑戦してもいいかもしれませんね。挑戦する時は、上に報告するように言われてますので、よろしくお願いします」

「分かりました。パーティーメンバーと話合って決めますね」


 話合いの結果、山頂踏破は1週間後に行われることになった。それまでは、訓練をしたり、物資を揃えたり、武器のメンテナンスをすることになった。私はルミナと魔王に報告した。


 2日前に魔王とルミナはやって来た。それも他の勇者候補生や町の有力者を引き連れてだ。ルミナが言う。


「マオ様ともお話したのですが、大々的にPRしようということになりました。勇者養成コースやコーガルの宣伝にもなりますし、巣立って行く、勇者たちの功績にもなりますからね」

わらわも全面的に協力することにしたぞ。それでエミリア、頼みたいことがあるのじゃが・・・」


 魔王に頼まれたのは、山頂でボス設定のフランメが踏破した勇者パーティーに素材を渡すイベントを入れ込めということだった。何でも、フランメの両親がまた見にくるからだという。


「フランメには威厳を持たせ、世界観を壊さんように注意するのじゃ」


 検討の結果、山頂に出現するワイバーンとアースドラゴンを2体ずつ倒したら、フランメが登場して、火竜の鱗と牙を渡すことになった。フランメは成長期だから、牙も鱗もよく生え変わるしね。ということで、フランメの演技指導をしている。これが道場主の仕事かどうかは分からないけどね・・・


「わ、我は・・・偉大なる火竜フランメ!!山頂までやって来た勇敢な者たちに・・・」

「フランメ!!もっと自信を持って、大きな声で!!」



 ★★★


 多くの観衆が見守る中、リリアン皇女パーティーの挑戦は始まった。魔王の計らいで、観客には魔道具でリアルタイムの映像を見せている。山頂までは順調のようだ。いつもと違う点は、ドネツクがほとんど攻撃に参加していない点だ。ドネツクは重装歩兵スタイルなのだが、山頂まで温存するようだ。アースドラゴンとワイバーンを2体ずつ相手にしなければならないので、普段よりも重い鎧と楯を装備している。身体強化魔法の達人でも、温存しないと厳しいからね。

 ドネツクの穴を埋めているのは、アベルだった。アベルは戦士タイプで、ドネツクの下位互換だが、ドネツク自体が相当な実力者なので、比べたら可哀そうだ。だって、普段は普通の事務職員だからね。


 そしてリリアン皇女パーティーは、山頂目前まで来た。

 ドネツクが言う。


「アベル殿、感謝する。ここまで体力を温存できたのは貴殿のお陰だ」

「何を言っているんですか。それも含めてパーティーじゃないですか」

「そうだな。ここから先は俺が皆の楯になる。危なくなったら俺の背に隠れろ」

「そうしますね。山頂では、サポートに徹しますよ」


 最後のブリーフィングを終えたパーティーは、山頂に足を踏み入れた。

 事前にリリアン皇女たちには、山頂のワイバーンやアースドラゴンを何体か討伐すれば、山の主が出て来ることを伝えていた。


 マインちゃんが叫ぶ。


「ワイバーン2体!!アースドラゴン2体!!それ以外は確認できず!!」


 リリアン皇女が指示をする。


「パーミラとアベルはドネツクの後ろをキープ!!それ以外は、的を絞らせないように足を止めるな!!」


 リリアン皇女は普段の言葉遣いから、軍人モードになっている。リリアン皇女は指揮官としても優秀だからね。


 戦いは一進一退の攻防を繰り広げていた。若干、不利な展開だ。というのもワイバーンに対する攻撃はパーミラの魔法しかないし、ドネツクは守備に専念している。リリアン皇女、マインちゃん、ゴーブルは素早いが、アースドラゴンに対しては、火力が足りない。

 そんな中、パーティーは賭けに出た。アベルが叫ぶ。


「ドネツクさん!!前衛の支援に回ってください。パーミラは私が守りますから」

「分かった。くれぐれも無理はするなよ」


 ドネツクが攻撃に参加したことで、地上のアースドラゴンとの戦いは優勢になった。一方のワイバーンだが、パーミラにブレス攻撃を浴びせかけている。何とかアベルが持ち堪えているが、そう長くは持たなそうだ。

 パーミラが言う。


「そろそろアレを使うわ!!シェリルさんに習ったあの魔法をね。

 喰らえ!!エクスプロージョン!!」


 巨大な火の玉がワイバーン2体を襲い、ワイバーンの近くで大爆発を起こした。ワイバーンは衝撃で地面に落下する。


「パーミラ!!よくやった!!マイン、ゴーブル!!ワイバーンに総攻撃だ!!ドネツクはアースドラゴンを抑えろ!!」


 リリアン皇女、マインちゃん、ゴーブルが何とかワイバーンを仕留めた。これでもう安心だ。ドネツクを中心にアースドラゴンを確実に仕留めていく。残りがアースドラゴン1体となったところで、マインちゃんが言う。


「最後はリーダーにとどめを刺してもらおうか?今後のことを考えると、それがいいよね?」

「悪いな・・・恩に着る」

「水臭いなあ・・・それも含めてパーティーじゃないの」


 リリアン皇女が必殺技を繰り出す。


「サイドワインダー!!」


 レイピアが鞭のようにしなり、剣先がアースドラゴンの心臓を貫いた。


 映像を見ていた観客から歓声が上がる。


 その後、予定通りにフランメが登場し、火竜の鱗と牙をリリアン皇女に手渡す。そして、フランメの背に乗って、拠点まで帰還したパーティーを観客と勇者候補生たちが盛大に出迎えた。


「お前たちは同期の誇りだ!!」

「本当に誇らしい!!」

「私たちも魔王城の攻略を頑張らないとね」


 国同士がいがみ合っていても、勇者候補生たちは本当に打ち解けている。これが世界平和への第一歩となればいいのにね・・・

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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