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87 勇者の育成 2

 勇者たちを引き連れ、道場に向かう。

 ハーゴスはというと、取り巻きの四人と何やら話をしていた。道場に着いて、まずは説明から始めた。


「ここで自由に訓練していただいても構いません。使用する場合には、事務局で手続きをしてください。ここで行うのは訓練ですから、私闘は禁止です。訓練相手には敬意を持ち・・・」


 言い掛けたところで、ハーゴスと取り巻き四人が、いきなり襲い掛かってきた。


「悪魔の声に耳を傾けるな!!最大魔法を撃つぞ!!」


 ハーゴスの取り巻き四人は、魔法の詠唱を始めた。

 どんな魔法が来るかは分からないが、私はいつでも「受け流し」を発動できるように身構えた。


「「「グレートエクソシズム!!」」」


 私は温かな、そして優しい光に包まれた。しかし、「受け流し」は発動しなかった。

 意味が分からない。私のスキル「受け流し」は、ほぼすべての攻撃を無効にする。魔法やブレス攻撃も例外ではない。相手とのレベル差があれば別だが、ハーゴスやその取り巻きたちは、私よりも圧倒的にレベルが高いとは思えない。あってもレベル10前後の差だ。


 これってヤバいやつか?


 しばらくして、光が消えても特に何もなかった。若干、体が軽くなったように思う。「受け流し」は自身の能力を引き上げてくれる支援魔法には反応しない。もしかしたら、私に支援魔法を掛けてくれたのか?

 そんなにいい人たちには見えないんだけどね・・・


「そ、そんな・・・最上級の除霊魔法が効かないなんて・・・」


 除霊魔法だって!?

 多分、ハーゴスたちは私を暗殺しに来たのだろう。そして、私を悪霊やその類だと思って、除霊魔法を掛けたようだ。若干、体が軽くなったように感じたのも、私に憑いている悪霊が除霊されたのかもしれない。アンデットを大量に使役するようになってから、肩こりが酷かったからね。ここは感謝の言葉を述べたほうがいいのだろうか?


 そんなことを思っていたら、今度は五人が剣を抜き、私に斬り掛かってきた。

 すぐに「返し突き」を発動する。五人の攻撃を捌きながら、突きを繰り出していたところ、私に加勢する者が現れた。リリアン皇女とドネツクだ。


「いきなり襲い掛かるなんて、何を考えているんですか!!」

「勇者どうこうの前に人として、最低だ!!エミリア殿に加勢する」


 リリアン皇女とドネツクに続き、マインちゃんとゴブリンのゴーブルも参戦してくれた。これで5対5だ。しばらくして、加勢してくれた四人は、ハーゴスの取り巻き四人を打ち倒していた。私はというと、ハーゴスと対峙しているのだが、いつも通りに時間が掛かっている。そこまでハーゴスは強くはないが、「二段突き」や「二段斬り」であっさりと勝てる相手ではない。なので、「返し突き」を繰り返すしかなかった。当然だが、ハーゴスは血塗れになる。


「エミリア先生って、ヤバいよね・・・」

「噂は本当のようだね・・・」

「まさに鬼畜の所業だ」

「逆らったら、ああなるのか・・・」


 勇者たちにはドン引きされている。

 リリアン皇女が止めに入って来た。


「エミリア先生、もうその辺にしておいたらどうでしょうか?」

「そ、そうですね・・・すぐに拘束して、領兵に引き渡しましょう」


 拘束される中、ハーゴスは言った。


「か、神は我らを見放した・・・世界の終わりだ・・・」



 ★★★


 ハーゴスたちは、すぐに拷問所に送られた。ハーゴスにあっては、拷問するまでもなく、完全自供したそうだが・・・


 結論から言うと、この一件で教会の悪事が露呈した。

 取調べの結果、教会は諸悪の根源は私だと思っていたようだ。教会の見解では、冥府からやって来た悪魔の私が、多くの者を誑かして、悪行に手を染めさせているとのことだった。本当に心外だ。まあ、そう思われても仕方がないことはしているけどね・・・


 この件ですぐに対策会議が開かれた。会議には、現場に居合わせた勇者たちも招聘された。領主のルミナが事案概要と今後について説明する。


「教会の態度は目に余ります。国と協議の結果、ニシレッド王国として正式に抗議し、場合によっては教会の活動を制限するかもしれません。国王陛下もお怒りになっており、教会に行っていた優遇措置はすぐに撤廃します。具体的には税の減免措置を廃止して、会計監査をやる予定です」


 これには参加者、特に勇者たちがざわつく。

 そんな中、リリアン皇女が発言した。


「状況は分かりました。イシス帝国としても、最大限、協力はさせてもらいます。抗議文を送りつけるなら、連名すると国王陛下にお伝えください。それにしても許せませんね。イシス帝国の皇女である私の前で、暗殺を企てるなど・・・イシス帝国を軽んじているとしか思えません」


 これには多くの勇者たちが賛同の声を上げる。勇者候補生の中には他国の王族や高位貴族もいる。


「リリアン皇女の意見と同じだ。我が国も軽く見られたもんだ」

「私も正式に国に報告いたします」

「会計監査か・・・我が国でも取り入れよう」


 この会議だけで、多くの勇者が反教会になった。ふと見ると、ルミナとリリアン皇女が目で合図をしていた。多分、こういう流れに持っていきたかったのだろう。


 会議の後、ルミナに話し掛けられた。


「今後は大きな変化が訪れるでしょうね。エミリアお姉様には言いますが、ニシレッド王国としては、今回の件は、渡りに船だったのです。ニシレッド王国だけが、教会へ厳しい対応をすれば、また戦争になってもいけませんしね。イシス帝国や有力国が協力してくれることになったら、教会もそうはいきませんから」


 この事件を逆手に取って、逆襲する。ルミナも成長したものだ。


 その後の話になるが、監査の結果、ほとんどの教会が不正会計や悪事に手を染めていたことが判明する。全く何もなかったのは、コーガルの教会だけだったそうだ。神父とシスターはド変態だけど、その辺はしっかりしていたようだ。

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