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80 不死の軍団

 私は今、闘技場で部隊訓練をしている。

 私が言うのもアレだが、異様な光景だ。私の部隊に人間はネクロデスしかいないからだ。というか生き物の数が異様に少ない。ゴブリンのリーダーであるゴブキチに訓練指導をしてもらっているが、かなり引いている。


 こうなったのにも訳がある。

 私は散々募集をした。自費でギルドに広告も出した。しかし、この異様な光景を見て、入団希望者はゼロだった。私が冒険者でもそうするだろう。なので、アンデットに怯えないワイルドベアのクマキチ、クマコ、元ワイルドコングのホネリンを隊長に部隊を運用することになった。3匹の隊長は優秀で、ゴブキチの指示も理解しているので、部隊としての体裁は保てているのだが、評判はすこぶる悪い。


 何たって匂いと見た目がね・・・


 ネクロデスには、グールではなく、スケルトンをメインで作るように言ってはいるが、あまり成功率が高くないのが現状だ。ネクロデスの見解では、強い恨みを持っている者がスケルトンになりやすいようだが・・・


「あくまでも仮説ですが、スケルトンはグールと違い、身体の維持に多量の魔力を使います。怨念が強くないとスケルトンにはならないように思います。そこで提案なのですが、私の故郷に行って、墓を掘り返すのはどうでしょうか?」


 もちろん却下した。


「ネクロデスの故郷はイシス帝国内だし、リスクリワードが合わないわ」

「そ、そうですか・・・」


 墓を掘り返すこと自体が駄目なんだけど、それを言っても納得しないからね。


 そんな中、オグレンが闘技場にやって来た。


「できたッスよ!!これは近年稀にみる自信作ッス!!」


 オグレンが持ってきたのは、禍々しい戦車だった。

 大きな4つの車輪あり、それぞれに特大の刃がセットされている。そして装飾も異様だ。髑髏の装飾や首無し死体のマークが取り付けられていた。


「耐久性もばっちりッス。因みに装飾関係はネクロデス副隊長のオーダー通りッス」


 ネクロデスは歓喜の声を上げる。


「本当に素晴らしい!!オグレンさん!!貴方は天才です!!」

「それほどでもないッスよ。引っ張るのは元ワイルドウルフのスケルトンと聞いたので、犬橇いぬぞりの要素も取り入れているんスよ」

「これで、帝国の奴らを恐怖のどん底に突き落としてやれますよ」


 これも悲しいことに、私の部隊で運用できる騎獣がいなかったのだ。どの騎獣も怯えていたからね。なので、元ワイルドウルフのスケルトン8体で引っ張らせることになった。戦車自体も大きく、私とライライ、フランメ、ネクロデスも乗れる仕様になっている。


 私の部隊は悪い事ばかりではない。

 まず、食費が掛からない。クマキチとクマコは勝手に狩りをして餌を取って来るからね。私とライライとネクロデス分だけ用意すればいいのだ。それと文句を言わない。文句があるかもしれないが、喋れないからね。

 そして装備だが、こちらも安上がりだ。使い古された槍にオグレン特製のシャープオイルを塗っただけだ。シャープオイルはコーガル領から支給されるし、槍もギルドや領兵からのおさがりだから、実質経費がゼロだ。クマキチやクマコ、ホネリンは専用の装備を持っているが、元々自前だからね。


 肝心の部隊員だが、そんなに戦闘力は高くない。冒険者ランクでいうとC~Dランクだ。それでも集団行動ができれば何とかなる。どうしても倒せない敵が現れたら、クマキチたちが出るか、最悪私が出ればいいからね。


 問題は戦争までの保管方法だった。魔王が魔王城で保管してくれるのだが、闘技場から魔王城までは町中を通らないといけない。当初は驚愕していた住民たちだが、最近ではいつものことだと思って、見て見ぬふりをしてくれている。陰では「死者の大行進」と揶揄されているようだが・・・



 ★★★


 ある程度、部隊として練度が高まったところで、国王陛下が極秘に視察に来た。

 視察というテイにして、本当は多額の支援金を持ってきてくれたそうだ。ルミナの話では、国軍の増援部隊は正式に派遣できないと言われたそうだ。せめてもの罪滅ぼしに国王陛下直々に支援金を持ってきてくれることになったらしい。

 極秘とはいえ、こちらも何かしないわけにはいかないので、闘技場で部隊の訓練を見せることになった。


 久しぶりに他の部隊を見たけど、みんなやる気に満ち溢れていた。ドノバンの部隊は相変わらず練度が高かったし、ゴブリンライダーたちは、その辺を飛んだり跳ねたり、空中で一回転もしていた。若干ショー的な部分に注力しているようで、少し心配はしたけどね。

 ルミナの魔法部隊やポコの弓兵隊はいつも通りだったけど、驚いたのは祖父の部隊だ。私が拷問した者が多く編成されている。特に部隊活動はしていなかったが、それぞれで模擬戦をしていた。かなりの手練れ揃いだった。


 そして私の部隊の番が来た。

 大声で号令を掛ける。


「前へ!!進め!!」


 私は愛車「地獄のチャリオッツ」に乗り込み、行進を始める。厨二病チックな名前の愛車だが、ネクロデスが勝手に名付けたものだ。決して私が命名したわけではない。


 私の部隊の登場で、盛り上がっていた観客たちは静まり返った。これくらいは想定内だ。しかし、部隊の訓練を開始しても、拍手の一つも起きなかった。ゴブリン隊やドノバン隊のように機敏な動きはできないけど、それでも結構揃っているし、拍手くらいしてくれてもいいと思うんだけどね。

 最後まで、訓練をやり遂げて待機場所に戻ったが、誰も何も言わない。


 訓練の後にルミナがやって来て言った。


「国王陛下は何も言わずに帰られました。表情が優れないようでした・・・」


 後日談だが、国王陛下は体調不良でもなんでもなく、ただ、私の部隊を見て言葉を失い、驚愕したからのようだった。


 私は一生懸命にやっているのに・・・

 やるせない・・・

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