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76 新たな任務

 獣人たちの追撃戦は苛烈を極めた。

 領土奪還に燃えた彼らを止めることはバンドラ王国軍にはできなかった。瞬く間に領土を奪還した。2週間後、領土奪還が完了したので、再び軍議が行われた。どうやら逆侵攻をするようだ。

 魔王が言う。


「今度は、わらわたちが、サポートに回るとしよう。ライオネルよ、存分にやるがよい。但し、やり過ぎんようにな」

「ありがとうございます。体制が整い次第、すぐに進軍致します」


 そして、私にも新たな命令が下った。


 私は今、国境の付近の町に来ている、それも大量のアンデットを連れて。

 共に行動するのはポン、ポコ、リンとゴーレム研究者のカイラ研究員、アンデットの研究をしているネクロデス研究員だ。ポコはエルフ隊の隊長をしていたが、エルフ部隊が解散になったので、こちらに編成された。エルフに多くの領土を切り取ってやろうという野心はなく、危機が去ったので帰還してしまったからだ。コーガル在住のリナラデスやアーブルなどは残ったが、別動隊に組み込まれている。エルフらしいと言えば、エルフらしい。


 私たちの任務を一言で言うと、嫌がらせだ。

 バンドラ王国の国境沿いの主要な町にグールやスケルトンを送り込む嫌がらせをしている。というのも、獣人部隊が王都に向けて進軍するので、バンドラ王国軍の戦力を分散させるためだ。なぜ私がこの任務に就いたかというと、それは、私しかグールたちに言うことを聞かせられないからだ。私のライライ剣をちらつかせたら、大体のアンデットは言うことを聞くからね。


 大量の死体からアンデットやスケルトンを作り出したネクロデス研究員が言う。


「本当は帝都でやってやりたかったが、これも実験だ」


 ネクロデス研究員が言うには、スケルトンよりもグールの方が作りやすいそうだ。今の所、死体10体に1体の割合で作れるという。コーガルでグールを作らないのは、匂いの問題だそうだ。本当に臭い。

 また、重装歩兵隊から鹵獲した鎧の中に小型のゴーレムを仕込んで、更に数を増やす。カイラ研究員が言う。


「出来損ないのゴーレムをいっぱい作るのは、研究者として思うところはありますが、これも仕方がないと割り切っています」


 一般市民には被害を出したくないので、ゴーレムやアンデットは戦闘力は、ほぼ無くしている。一般人でも棒切れで殴れば、戦闘不能にできるしね。ただ、兵士がやって来たら、こちらも本気で戦う。今も部隊の指揮官を一騎打ちで血祭りに上げている。

 血塗れの指揮官に言う。


「私は血塗れ仮面!!アンデットにしてやろうか!?」

「そ、それだけは・・・お助けを!!」

「では立ち去るがいい!!次に会ったら容赦はせんぞ!!」


 魔王が言うには、恐怖を与えることが大事だそうだ。なので、兵士に対しても、皆殺しにするのではなく、生きて帰らせた方が、効果が高いとのことだった。そんなことを繰り返している内に作戦終了の指示を受けた。配置したアンデットを回収していく。アンデットを撒くよりも、回収するほうが労力を要した。回収していたところに一般市民の避難者たちが通り掛かる。

 私は笑顔で市民に説明する。


「血塗れ傭兵団の者です。お騒がせしています。もうすぐしたら、回収作業が終わりますから、ご安心を」

「ひっ!!た、助けて!!」


 ポコがツッコミを入れて来る。


「エミリア!!戦争は終わったんだから、一般人を脅す必要ないじゃないの!!」

「そ、そんな・・・私は、彼らを安心させようと・・・」

「自分の恰好を見てから言ったら?」


 血塗れで奇抜な衣装に怪しい仮面・・・逃げられて当然だった。



 ★★★


 かなり遅れて、バンドラ王国の王都に到着した。

 既に講和会議が始まっているようで、私たちはすぐに帰還するように要請された。ライオネス王女が言う。


「エミリア殿には、本当に世話になった。ただ、これを言うのは憚られるが・・・すぐにコーガルに帰ってくれないか?市民が怯えきっているからな・・・」


 そうだね・・・私の後ろには大量のアンデットがいるからね・・・


 魔王と合流し、コーガル組は帰還することになった。大量のアンデットだが、魔王が引き取ってくれることになった。魔王城でアンデットの階層を作るそうだ。みんなが帰還している中、私は最後まで残った。理由はアンデットが他所に行かないようにするためだ。最後まで現場に残り、残ったアンデットと共に帰還する。数が多いので、一旦闘技場に集め、そこから魔王城に連れて行く。既に凱旋パレードは終了していたのだが、残っていた市民に白い目で見られた。


「なんだあれは?」

「また、エミリア先生がヤバいことをしてるんじゃないの?」

「見なかったことにしよう・・・」


 この行進は、「死者の大行進」として、後世に語り継がれることになってしまった。


 魔王城に到着すると後の処理をスタッフに任せ、私は先に帰還していたセバスに入浴を勧められた。私が礼を言うとセバスがこう言った。


「マオ様からの命令です。その・・・匂いますので・・・」


 セバスの言ったことは、聞かなかったことにして、入浴を済ませ、魔王に帰還の報告をする。


「ご苦労じゃった。特別報酬も弾もう。ライライにもやるぞ。アースドラゴンの燻製肉じゃ」

「ライライライ!!」


 ライライが燻製肉を貪り食っている横で、私は魔王と雑談をしていた。


「それにしても見事な采配でしたね。あそこまで完璧に指揮ができるなんて、凄いと思いましたよ」


 これは正直な感想だ。魔王が本気になれば世界征服ができるだろう。


「これでもわらわは、いくつものダンジョンを持って・・・いや、そういった経験が豊富だと言っておこう」


 今、ダンジョンをいくつも持っていると言わなかったか?

 魔王の謎は深まるばかりだった。


 魔王から特別手当を受け取った後は、魔王城で一泊することになった。四天王を集めて労いの食事会を開いてくれることになり、酔いつぶれてしまったからだ。思ったよりも楽しかった。任務での苦労話に花が咲く。私も酔っていたのでいつもより、お喋りになっていた。


「オルグさんもカッコ良かったですよ!!バンバン薙ぎ倒してましたしね」

「エミリア殿に褒められると変な感じになるな・・・だが、まだまだゴーケン殿やオデット殿には及ばん、精進あるのみだ」


 そう言うが、大活躍だった。私が見た時は重装歩兵を軽く粉砕していた。


「重装歩兵など、集団で陣形が整っていなければ、どうということはない。動きが遅いだけの相手だからな」


 奇襲攻撃で、本来の戦い方ができなかったことが勝因の一つだろう。


 ミミとメメも会話に加わる。


「それにしてもシャドウさんはヤバかったですよ」

「アッという間に軍事施設に爆弾をセットして・・・」


 追撃戦では、魔石爆弾で軍事施設をどんどんと爆破していったらしい。イシス帝国は魔導士部隊を500名程派遣していたが、戦場に出る前に壊滅したそうだ。

 そんな時、魔王が言う。


「だが、一番有名になったのはエミリアじゃのう?お主がバンドラ王国で何と呼ばれているか知っておるか?」

「えっ!!なんかまた変な二つ名が・・・」

「奴らはこう呼んでいた。「冥府の女王」とな」


「冥府の女王」だって!?

 アンデットを大量に引き連れて行軍していたからね・・・


「我もエミリア殿のように実力をつけなくてはいかん。明日からも修行の日々だ」


「味方でよかったです」

「本当にね・・・」


 フランメも言う。


「もうしばらくは、グールを運びたくないわ・・・だって、めちゃくちゃ臭いからね」


 仕方なく私は自棄酒をかっ喰らう。それで帰れなくなって、魔王城で一泊したのだった。


 翌日、二日酔いでフラフラの中、私は帰宅する。帰宅途中に衝撃の光景を目にする。見慣れない立派な建物が建てられていた。場所は教会と拷問所の丁度中間地点だった。私は何の建物かと思って、中を覗いていると、神父のフランシスが慌てた様子で出て来た。


「エミリア様!!本当にありがとうございます!!これで、多くの命が救われます。明後日が開所式ですから、エミリア様が間に合って本当によかった!!」


 この展開・・・まさか・・・


 また祖父がやらかしたのだと悟った。

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