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74 血塗れ傭兵団

 コーガルに戻り、早速傭兵団設立の手続きをする。

 というか、既に手続きをされていた。驚いたことに私が団長、リンが副団長、特別顧問が魔王になっていた。キュラリーさんが言う。


「国家動員法のマニュアル通りに対処しただけです。剣術道場は、非常事態には傭兵団として運用することができるとありますからね。事前に準備だけはしていました」


 用意がよろしいことで・・・


「早速、部隊を編成しないといけませんね。明日、朝一で緊急会議を開催予定です。部隊長候補となる実力者には、すでに声掛けが済んでいます」

「キュラリーさん!!凄く張り切ってますけど、どうしてですか?」

「そんなの決まっていますよ。出動報酬だけでなく、成果報酬として道場の借金をチャラにしてくれるんですから。エミリア先生は知らなかったのですか?」


 知らないよ、そんなもの!!


 事前に聞いておいてよかった。また、祖父に何かされるかもしれないからね。


 そして次の日、早速会議を行った。

 見た限り、これで負ける要素が見当たらない。というか、過剰戦力過ぎる。まず、ゴーケン率いる近接戦闘部隊はオデット、ティーグがいるし、レミールさん率いる獣人部隊も、獅子族のレオ君や虎人族のトラゾウ君を筆頭に実力者の獣人を集めている。それにエルフとダークエルフの合同部隊も編成される。この部隊は、連絡調整の観点からポコが部隊長をすることになっている。また、影の軍団も編成されることになっている。

 シャドウが言う。


「これは極秘情報だが、イシス帝国は重装歩兵隊を5000名程出兵させるようだ。また、極秘情報があれば報告する」


 もうすでに情報を取っていた。こちらも連絡調整の観点からポンが隊長をする。メンバーにはマインちゃんとルト君もいる。

 一方魔王軍はというと、執事のセバス、四天王のオルグ、ミミとメメに加えて、1000名のゴブリン部隊が出動することになる。

 魔王が言う。


「実戦での成果がほしいから、ゴブリンを連れて行くことにしたのじゃ」


 ゴブリン隊1000名、その他500名の約1500名の傭兵団が結成されてしまった。


 私は質問をする。


「ところで、兵站の関係は大丈夫でしょうか?私は軍事については素人ですが、一番重要な項目だと聞いたことがありますので・・・」


 キュラリーさんが言う。


「大丈夫ですよ。商人のレドンタさんが全面協力してくれますし、私もモギールさんも同行しますから、安心してください」


 心強いどころか、これでは負けるほうが難しいだろう。問題は被害をどう抑えるかだ。

 魔王が言う。


「一つ言っておかねばならんことがある。フランメやウインドルは戦闘には使えん。というのも、これは古竜の盟約があるからじゃ。人間同士の争いに首を突っ込んでならんというな・・・」


 その昔、人間同士の戦争で、双方に別の古竜がついて戦ったことがあり、大変な事態になったそうだ。本気で戦ったようで、双方の国が壊滅的被害に遭い、結局、どちらの国も滅亡してしまったという。それを受けて、直接戦闘に加わってはならないという盟約ができたそうだ。


「まあ、直接戦闘をしなければ問題はない。部隊輸送や物資の輸送はどんどん使ってやってくれ」



 ★★★


 1週間後、私たちは獣人国ベスティに出発した。まあ、ドラゴンによる移動なので、すぐだった。これにはフランメの両親や風竜王だけでなく、多くのドラゴンが協力してくれた。受け入れ窓口となっているライオネス王女は腰を抜かすほど、驚いていたけどね。


 すぐに国王と謁見する。


「マオ様!!お久しぶりでございます。すぐに軍議を開きますから、今しばらくお待ちください」

「ライオネルも息災そうでなによりじゃ。お主は王なのじゃから、そんなに畏まらんでもよいぞ」


 魔王と国王は知り合いというか、国王が武者修行時代に魔王に弟子入りしていた時期があったそうだ。


 すぐに軍議が開かれた。

 血塗れ傭兵団からは私、魔王、ポン、ポコ、リン、エルフの姫リナラデス、ダークエルフのアーブルが出席し、エルフの国の代表はルーデウスだった。獣人国ベスティの名立たる武将も出席している。国王は開口一番、こう言った。


「こちらのマオ様を特別参謀に任命した。作戦や部隊運用はマオ様に従ってもらう」


 これには獣人国ベスティの武将たちが猛反対した。特に反対したのは獅子族の部隊長で王女でもあるクガール、虎人族の部隊長であるタイガドルだった。


「父上!!どこの馬の骨とも分からん者に全権を渡すなど、私は許せません」

「クガールと意見が合うのも珍しいが、100パーセント同意する」


 魔王が言う。


「なるほどのう。流石はライオネルの娘じゃ。ライオネルが初めてわらわと相対した時のことを思い出したぞ」

「恐縮です・・・」

「ならば、獣人らしく武力で言うことを聞かせてやろう。エミリア!!少し相手をしてやれ」


 ここで私!?

 まあ、断れないんだけど・・・


 結局、模擬戦が始まってしまった。展開はいつも通りだ。20分程行ったが、クガールとタイガドルは相当の実力者だったが、血塗れになって倒れている。いつも通り、ドン引きされる。


「アレが団長だど?」

「血塗れの嬲り姫って呼ばれているらしいわ」

「しかしエグイな・・・心を折りに来るとはな・・・」

「従う以外にないだろうな。あんな惨たらしい最後を迎えるくらいなら、突撃して討ち死にしたほうがいい」


 魔王が言う。


「これで分かってもらえたと思うが、まだ異論はある者はおるか?」

「「「・・・・・」」」

「では、作戦を発表する・・・」


 魔王が語った作戦は驚きのものだった。

 流石に国王も異議を唱える。


「マオ様・・・しかしこれでは・・・」

「ライオネル、お主が一番守りたいものはなんじゃ?領土か?それとも名誉か?」

「あっ!!そうでした!!我が一番守りたい者は国民です。皆の者!!直ちに作戦行動を取れ!!」


 作戦が始まる。

 作戦の第一段階は、国民の避難だった。バンドラ王国の建前は、「国境沿いの平原地帯を獣人国ベスティが不法に占拠している。すぐに明け渡せ」というものだった。昔から獣人国ベスティが管理し、獣人たちが多く住んでいるので、そんなことを言われる筋合いはないのだが、バンドラ王国は急に領有権を主張し始めたのだった。

 これは何としても、バンドラ王国が戦争を吹っかけたいだけの口実だろうというのが、大方の見方だ。


 魔王の作戦というのは、この平原地帯から国民を撤退させることだった。そして、それでも攻めて来たら、フルカ峠で敵を迎え撃つ。魔王が言うには、フルガ峠には、すでに人員を派遣して、要塞化しているようだった。



 ★★★


 この作戦で、私は心に大きな傷を負った。

 私の任務はというと、避難指示に従わない部族の所に赴いて、その部族の猛者たちと模擬戦をして、強制的に言うことを聞かせることだった。例のごとく、猛者たちを血塗れにしていく。

 今も血塗れのケンタウルス族の族長が跪いて、涙を流しながら言う。


「力及ばずにすまぬ!!だが、この屈辱は忘れん!!絶対にこの地に戻って来る」


 だから、一時避難って言っているじゃないか!!


 これには子供たちも泣きながら言う。


「おい!!悪魔!!僕が強くなったら、絶対にやっつけてやるからな!!」


 こっちは避難指示を伝えに来ただけなのに、悪魔呼ばわりされている。


 やるせない・・・・

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