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63 デモンズ山開発計画 3

 緊急会議が招集された。

 領主のルミナ夫妻、道場関係者、各種ギルドの関係者が集う中、魔王もやって来た。魔王はデモンズ山の所有者という位置づけだ。


 最初にルミナがこの会議の趣旨を説明する。


「この度はお忙しいところ、集まっていただきまして、ありがとうございます。早速、デモンズ山の開発の件で、会議を始めたいと思います。まず、コーガル領としても、ニシレッド王国としても開発は賛成です。国に関しては、補助金を出してくれることが決定しています。その補助金については、街道整備に当てようと思います。デモンズ山自体の開発については、マオ様のご意向を確認しながら、進めていこうと思っております」


 魔王が言う。


「デモンズ山の2合目に少し平地となっている箇所があろう?そこは無料で貸し出してやる。好きに使えばよい。喧嘩をせぬように仲良く使うがよい」


 魔王は何も考えていないようだが、実は考えている。「初級ダンジョン学入門」によると、ダンジョンに滞在するだけでも、ダンジョンポイントが入るからね。因みにホルツさん一家が住んでいるのは5合目だ。


「ありがとうございます。マオ様のご厚意で、2合目を開発し、拠点にすることにします。冒険者ギルド、商業ギルドの各支部を設置しようと考えていますが、ギルドの関係で要望等はありますか?」


 ギルマスのスタントンさんが言う。


「とにかく、俺が求めるのは冒険者の安全対策だ。色々と案はあるが、まず、山頂への立ち入りは原則禁止にしてもらいたい。あんなの、命がいくつあっても足りない。Sランクのパーティーでも生きて帰るのがやっとだからな。山頂への立入りを許可できる基準を設けてもいいかもしれん」


「それは私もそう思いますね。何かしらの基準は必要でしょうね」


「それと、これは冒険者ギルドだけでは対応できないんだが、救助班を置きたい。特に最初は自分の実力を分かっていない馬鹿が来るからな。俺かオルグがずっと張り付くわけにはいかんし、こっちも精鋭は限られているからな。是非、協力してもらいたい」


 これにポンが反応する。


「団長に代わり、副団長として言います。影の軍団は数名ずつローテーションで、常駐を考えています。戦闘には向きませんが、魔物に気付かれず、拠点まで状況報告に帰還したり、要救護者を戦線から離脱させるたりできる団員は多くいますからね」


 ルミナが言う。


「領兵も常駐させます。ただ、救助班として運用するのは実力的に難しいですね・・・」


 ドノバンが案を言う。


「国に掛け合ってみて、騎士団を常駐させてもらおう。訓練にもなるしな」


「それはいいかもしれませんね。後は報酬の問題ですが・・・」


 スタントンさんが言う。


「こっちも出すぜ。素材がいっぱい集まれば、すぐに回収できるからな。マオさんには悪いが、ゴーケンや他のアルバイトも少し回してくれたら助かる」


「よいぞ。魔王城も落ち着いておるし、シフトを見ながら派遣してやろう。細かいことはエミリアに任せるぞ」

「は、はい・・・」


 えっと・・・私がシフトを作るの?

 まあ、バイトリーダーだから仕方ないのか・・・


「ところで、エミリアよ。お前も何か意見を言え」


 なにその無茶ぶりは?

 でも逆らえないので、取って付けたような意見を言う。


「まず、山頂への立入許可については、魔王城を利用してはどうでしょうか?10階層を攻略したパーティーのみ認めることにしてはどうでしょうか?」


 これは意外にいい意見だったようで、すぐに承認された。魔王も魔王城の入場者が増えるので喜んでいる。


「それと、デモンズ山の開発の話ばかりしていますが、街道の整備はかなり大変ですよ。デモンズラインを越えて進むわけですから・・・」


 それは本当だ。猛者ばかりいるので、デモンズラインの危険性をこの人たちは忘れている。Bランクでやっとまともに活動できるレベルだからね。それでも、遭難する場合もある。かといって、毎回フランメに送り迎えをしてもらうのは現実的ではないしね。


 ルミナが言う。


「それは大丈夫です。訓練を兼ねて領兵と騎士団を大量動員するので、何とかなります。ですので、臨時で、エミリア殿や冒険者の方にも領兵としての雇用を考えています。また、魔法研究所が魔物除けの魔道具も開発しているので、それを街道に設置しますから、街道から離れなければ、安全は確保されます」


 なるほど、人海戦術なら何とかなるし、訓練にもなるし、一石二鳥だ。


 そんな感じで無事会議は終わった。でも、私には多くの仕事が降りかかることになる。



 ★★★


 まず私がしたことは、魔物の捕獲だ。デモンズラインに多く出没する魔物を揃えて、街道警備に就く騎士団や領兵の指導をする。クマキチたちもいるのだが、それだけでは足りない。それに合わせて戦闘マニュアルも作らなければならなかった。

 それが終わると、アルバイトのシフトを作り、フランメを使って拠点予定地の視察を何度も繰り返す。魔王の計らいで、拠点となる平地には魔物が出ないようにしてくれているようだけどね。


 そして、プロジェクトは動き出した。

 国から騎士団が派遣され、領兵とともに街道整備に従事している作業員たちの警備に当たる。重装歩兵から魔法剣士、弓兵も大量に動員しているので、コストは掛かるけど、安全に建設を進められている。偶に手に負えない魔物が出てきたら、私たち魔王城のアルバイト組が出動するんだけどね。


 というわけで、私はまた魔王城に入り浸っている。何があってもいいように待機しているわけだ。道場への説明もルミナが臨時の領兵隊長と臨時文官の辞令を用意してくれていたので、問題はなかった。そもそも道場主の仕事がほとんどないので、問題がなかったのだが・・・

 これでは、職業が魔王城職員で、趣味で道場を運営していると思われても仕方がないレベルだった。


 そんな時、魔王からまた指令を受けた。


「エミリアよ。なかなかの働きじゃ。お前のアイデアで、魔王城の入場者も増えておるし、特別手当を支給しよう。それでじゃが、新たな仕事をしてもらう。それは山開きのイベントを取り仕切ってもらう。デモンズ山の責任者はフランメじゃから、フランメが目立つように考えてくれ。フランメの偉大さと崇高さを知らしめてほしい」


 おい!!今言うなよ!!


 というのも、フランメは普段は子犬サイズだし、一生懸命に資材の運搬や人員の運搬を頑張っているので、ライライ以上に可愛がられている。今更、威厳を示せと言われてもね。今も作業員から食べ物を貰っているし・・・


「成功したら新たに特別手当を支給しよう」


「はい!!喜んで!!」


 結局、私は魔王の金に屈してしまった。

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