61 デモンズ山開発計画
ある日、魔王から指令があった。
「デモンズ山を開発する。驚くかもしれんが、あそこの山は、妾が所有しておるのだ」
もう驚かないよ・・・
「開発って?ところで、私は何をすればいいのでしょうか?」
「うむ、調査から始まり、企画、運営、その他もろもろ全部じゃ」
「魔王城並みに集客しろとは言わん。それなりに冒険者が集まるようにしてほしいのじゃ。もちろん、経費と特別手当は支給する。細かいことはセバスと相談せよ」
これってかなりの無茶ブリじゃないか!?
OL時代にも経験があるけど、これって、プロジェクトリーダーみたいな感じになるのだろうか?
「期限は?」
「とりあえず半年を目途にしてくれ。1ヶ月ごとに報告はしてもらうがな」
断ろうと思ったが、報酬の高さに私は受けてしまうのだった。
★★★
とりあえず、私はポン、ポコ、リンと一緒にフランメに乗って、デモンズ山にやって来た。
ポン、ポコ、リンは、いずれもAランク冒険者で、報酬も高いのだが、経費で落ちるので雇える。久しぶりの本格的な冒険者活動にポン、ポコ、リンも興奮している。
ポコが言う。
「マオさんも太っ腹よね。久しぶりに私たちが冒険者活動ができるのも有難いわ」
これには同意する。しかし、ここはそんなに甘くないんだよね・・・
最初に訪れたのはホルツさんの家だ。ゲームでも無料で泊まらせてくれる。今回の調査は概ね3日を予定しているので、その間は泊まらせてくれる。野宿をしなくてもいいのは本当に有難い。唯一、ゲームと違うのは、ホルツさんに宿泊費とお土産を用意したことだ。流石に悪いからね。
ホルツさんが言う。
「気を遣ってもらって、こちらが恐縮しますよ。いつもお世話になっているのだから、無料でもいいのに・・・」
「そういうわけにはいきませんよ。経費で落ちますしね」
フランメをホルツさんに預け、私たちは冒険に出発した。フランメを預けたのは、単純に強すぎるからだ。フランメに勝てる奴なんて、猛者中の猛者しかいないからね。フランメを基準にしたら、冒険者自体が来られなくなる。
山に入ってすぐに魔物の群れと遭遇した。ワイルドコングの群れだった。
ポンが言う。
「ワイルドコングだったら大丈夫だな?デモンズライン付近で、何度も狩っているからな」
ポン!!その考えは甘いよ。
普通のワイルドコングの群れに見えて、その群れを率いているのは、変異種と呼ばれる強化型の魔物だ。ゲームの知識もあったが、セバスもデモンズ山に生息する魔物の一覧表を持っていたので、それで確認もしていた。
「みんな!!油断しないで!!あの一際大きな個体は変異種で、かなり知能が高いわ。油断してると、あっという間にあの世行きよ!!」
「お、おう!!みんな油断するなよ!!」
戦闘が始まる。
作戦は、私が変異種と1対1で戦い、群れの指揮をさせない。その間に他の3人が普通のワイルドコングを倒すというものだ。ワイルドコングの変異種の最大の特徴は、戦闘力ではなく、指揮能力だからね。ゲームでも、勇者パーティーが一番してほしくないことをやって来る。魔術師だけを狙い撃ちにしたり、逆に近接攻撃特化型のパーティーには、遠距離から投石攻撃を繰り返したりしてくるからね。
作戦は功を奏して、ポンたち三人は、ワイルドコングを順調に討伐していく。一方、私はいつもどおり、ちまちまと「返し突き」を繰り返す。ワイルドコングの変異種は、普通の個体に比べ、力もあり、体力もある。なので、いつも以上に時間が掛かった。
しばらくして、普通のワイルドコングたちを倒し終えたリンが、背後から忍びより、変異種にとどめの一撃を喰らわせた。
「十字切り!!」
これはリンの得意技の一つで、「二段斬り」の応用技だ。「二段斬り」よりも、多くのダメージが入る。不意の強力な一撃で、変異種も対応しきれなかったようで、あっという間に絶命した。魔物を解体し、素材を採取していると、ポンが叫ぶ。
「変異種だけあって、魔石のデカさは尋常じゃないぞ!!これを月に1回でも狩れば、大金持ちだ」
ポコが冷静にツッコミを入れる。
「倒せたらね・・・エミリアが事前に調査して、対策を練ってくれていたから、上手くいったけど、そうじゃなかったら、みんなやられていたわよ」
「そうね。1対1なら何とかなるかもしれないけど、群れじゃねえ・・・」
その後もワイルドボア、ワイルドブルの群れも討伐していく。ポン、ポコ、リンは、順応も早く、同じ要領で討伐することができた。流石はAランク冒険者だ。
しかし、私たちの前に強敵が出現する。
「あ、あ、アースドラゴン!?」
「嘘!!そんな・・・」
地竜と呼ばれるドラゴン、アースドラゴンだった。フランメが言うには、フランメのような知能の高いドラゴンを古竜種、アースドラゴンやワイバーンのような知能が低いドラゴンを下等竜種というらしいのだが、腐っても竜種だからね。
もちろんこの対策もして来た。
「私が囮になるから、隙ができたら安全を確保しながら、ポンとリンは攻撃をして!!ポコは援護射撃をお願い!!」
戦闘が始まる。救いは、アースドラゴンは群れではなく、単独で活動をしているところだ。こんなのが、群れで出て来られたら、流石に対応できない。
私はいつもどおり、「返し突き」を繰り返す。ポン、ポコ、リンも連携が取れ、ポンとリンの攻撃前には、目先を変えるためにリンが弓で攻撃をする。かなり、時間は掛かったが、何とか討伐できた。
「やった、やったぞ!!Sランクのアースドラゴンを倒したぞ!!」
「これで、私たちもドラゴンスレイヤーね」
「フランメちゃん程じゃないけどね・・・」
昔もこうだったな。今では普通に倒せるけど、ワイルドベアを倒した時も、みんなで大喜びしたのを思い出し、懐かしくなる。
★★★
それから3日、調査は続いた。貴重な薬草やキノコ類も豊富に採れ、魔物を討伐しなくても十分に採算が取れることが分かった。最後の夜にみんなで会議をする。それぞれが意見を言う。
「アースドラゴンの肉があんなに旨いとは思わなかったよ。偶には食べたいな」
「ポン!!それはいいけど、問題は冒険者をここで、安全に活動させるにはどうするかを考えてよ」
「そうだな・・・薬草やキノコの採取だけなら、影の軍団員でそれなりの実力があればなんとかなるだろう。マインとかルトとかなら、戦闘せずに採取するもことも可能だけど・・・魔物の討伐となると、アイツらでも厳しいな・・・」
命懸けの薬草採取依頼なんて、誰も受けないだろう。
ポコが言う。
「冒険者でもBランクどころか、Aランクはないとちゃんと活動はできないわ。活動させるにしても、救援体制をしっかりと作っておかないと、命がいくつあっても足りないわね」
「そうね・・・スタントンさんにも相談してみようかしら?」
リンも言う。
「だったら、ルミナにもね。そもそもの話、毎回フランメちゃんに乗せてもらうわけにもいかないから、街道の整備も必要だろうし、そうなると領主のルミナにも協力をお願いすることになるわね・・・」
私は決断した。
「じゃあ次は、ルミナやスタントンさんたちにも視察をしてもらおうよ!!」
今回の視察結果を報告書にまとめる。
素材はかなり美味しい。問題は移動手段と魔物が強すぎることだ。それを解決すれば、この企画は何とかなるだろう。
気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!




