56 またヤバい人たちが来ました・・・2
私はキュラリーさんにポンたちの依頼を受けたことを伝えた。
この案件は領や国の安全に関わることなので、すぐにスケジュールを調整してくれた。
少し、嘘を言ってしまった・・・調整する必要がないくらい、道場主としての業務はスカスカだった。
とりあえず、普通に夜になるまで待つ。夜になると影の軍団本部に移動する。連絡があるまで待機とのことだった。昼に睡眠を取り、夜に待機する生活が3日続いた。そして、3日目の夜、通信の魔道具から報告が入った。
「対象に動きがありました。対象二名はデモンズライン方面へ移動中。追尾はマインとルトで実施中」
「本部了解。無理はするな。こちらも応援に向かう」
応援部隊はいつものメンバー、私とポン、ポコ、リンだ。久しぶりのパーティー活動だ。マインちゃんたちと連絡を取りながら、現場に向かう。現場付近で、マインちゃんとルト君と合流する。マインちゃんから報告を聞く。
「いつもは安全を優先して、追尾はここまでにしています。いつもなら1時間~2時間したら帰ってくるんですけどね・・・」
ポンは言う。
「今日はエミリアもいるし、機を見て、声掛けをしよう。夜中にこんな所まで来ること自体が怪しいからな」
ポンも影の軍団の副団長になって、しっかりしてきた。昔はもっとチャランポランだったんだけどね・・・
マインちゃんとルト君はその場で待機させ、私たち4人はフランシスとテレサの後を追う。遠巻きに確認すると、二人は服を脱ぎ、全裸になった。小声でポコが言う。
「悪魔召喚でもするのかしら?この距離なら、ギリギリ狙えるからいつでも言ってね」
「ポコ、合図があるまでは撃つなよ」
緊張が走る。
デモンズラインに来て、全裸になるなんて異常すぎる。
すぐに魔物が二人を襲う。しかし、この二人はかなりの戦闘力があり、あっという間に撃退していく。そして二人は抱き合い始めた。ポコが言う。
「これってアレだよね?」
リンが恥ずかしそうに言う。
「それ以外にないでしょ・・・」
どう見ても、アレだ・・・
ポンが言う。
「か、帰ろうか?こんなところを他人に見られたら、俺なら恥ずかしくて自殺するレベルだ。聖職者はストレスが溜まるって言うしな」
これにポコとリンが同意する。
しかし、私は違った。
「声を掛けよう。私に考えがあるの」
私は拷問主任官試験で勉強した内容を思い出した。拷問マニュアルにこうあった。
「相手の弱みを握れ。そうすれば、拷問しなくても言いなりになる」
一応、反撃されても対処できるように体勢を整えて、私が代表で二人に声を掛けた。
二人は驚きの声を上げる。
「ひっ!!」
「嫌あああ!!」
私は笑顔を浮かべながら言う。
「とりあえず、服を着てください。話はそれからです」
★★★
二人にこちらの説明をする。当然、尾行していたとは言わない。不審な男女二人が、デモンズラインに向かって行ったとの通報があって、ここに来たことにした。かなりの実力者でないと、デモンズラインに来ることはできないので、私たちが来た信憑性もある。
フランシスが言う。
「わ、分かりました。ですが、このことは・・・」
「もちろん、誰にも言いませんよ。貴方たちの態度次第ですがね」
フランシスが諦めたように言う。
「正直に申し上げます。まず私とテレサの経歴から話しますね。私とテレサは、教会の現体制に対して、批判を繰り返していました。拝金主義で、一部の貴族や商会を優遇する姿勢は許せませんでした。私たちに協力してくれる教会関係者もそれなりにいたのですが、あるとき、私とテレサに異動命令が下ったのです。最初はダンジョンの最下層でした。そんな場所に信者が来るはずもなく、成績が悪いということで、更に辺境に異動させられました。そして、そんなことが繰り返されました。コーガルに来る前の教会なんて酷いものでした。昼夜を問わず、魔物がやって来る場所で、布教活動どころではありませんでした。それに比べて、このコーガルは天国のような場所だったのですが・・・」
フランシスは言葉に詰まった。
そうしたところ、テレサが後を引き継ぐように言う。バレたら女性の方が思いっきりがいいというのは本当のようだ。
「その・・・私が悪かったのです。そんな過酷な状況で、お互い惹かれ合い、男女の仲になったのですが、過酷な環境でそういった行為を繰り返していたので、通常のシチュエーションでは興奮しなくなってしまって・・・休暇の時にはダンジョンの最下層やこういった場所で、その・・・はい・・・」
ゲームで謎だった、教会関係者があり得ない場所にいた理由が判明した。私が勇者だったら盛大にツッコミを入れるだろう。
お前ら何を白々しく『神のご加護を!!』とか言ってるんだ!!逢引きの合間のくせに勇者に偉そうなことを言うな!!
ポン、ポコ、リンはかなり引いている。
「状況は分かりました。今後とも私たちにご協力ください。フランシスさんやテレサさんと接してみて、悪い人のように思えません。二人が不遇な目に遭っていたのも教会の上層部の腐敗が原因だと思います。私たちも協力しようと思いますので、教会の情報を入手したら、こちらにも教えてください。悪いようにはしませんよ。悪いようにはね・・・」
その後、ポン、ポコ、リンと帰還した。
帰り道にポンが言う。
「エミリア、ありがとう。これで報告ができるよ。それにしてもお前ってヤバいな・・・」
ポコが引き継ぐ。
「本当よ。拷問主任官になって、凄味というか、何というか・・・危険な感じになったわね。親友が遠いところに行ってしまった感じがするわ」
「それって、どういう意味?」
リンが言う。
「エミリア先生は・・・その・・・いい人です」
フォローできんのかい!!
しばらくの間、ポン、ポコ、リンとの関係はぎくしゃくしたが、それでも教会関係者の弱みを握ることに成功したのは、ラッキーだった。
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