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45 魔王城のアルバイト 2

「ニシレッド王国公認、バンデット伯爵領承認、冒険者ギルド推薦、商業ギルド推奨、風雲!!魔王城」


 これが魔王城の正式名称だ。

 何が言いたいかというと、ちゃんとした職場だということだ。決して闇バイトをしているわけではないと言っておこう。国もギルドも認めているからね。やっていることは、闇バイトもびっくりな内容なんだけど・・・


 アルバイトをしているのは、私、ゴーケン、オデット、ティーグ、シャドウ、レミールさん、ボランティアで商人のレドンタさんの7人だ。この7人は、それぞれ特徴がある。まず、ゴーケンとティーグだが、意外なことにトラブルが少なく、戦闘になることもあまりない。ゴーケンは元近衛騎士団長だし、ティーグも元魔法剣士団長なので、経験も豊富で現場対応やゴロツキのあしらい方も上手い。

 ゴーケンは言う。


「近衛騎士の使命は国王陛下や他の王族方をお守りすることだ。そのためにはトラブルを未然に防ぐことが第一だ。何でもかんでも、ぶった斬ればよいというものでもない」


 まあ、偶には問答無用でぶった斬っているけどね。

 なので、この二人の評価は高く、魔王や魔王城のスタッフからも信頼されている。執事のセバスは、二人のことを褒めていた。


「現在、魔王軍四天王はオルグとミミとメメ、それと所在不明になっている大馬鹿者の4人で、ミミとメメは二人で一人扱いですから、もう1席は空席となっています。ミミとメメからは『四天王としてやっていく自信がなくなり、辞めさせてほしい』という相談を受けていて、このままでは四天王自体が成り立たなくなります。ミミとメメは何とか引き留めていますが、決意が変わらなければ、実質オルグだけになってしまいます。私としては良識派のゴーケン殿かティーグ殿を推薦したいのですが・・・この際、エミリア殿でも構いませんよ」


 なるほど・・・四天王の1席は空席だったのか・・・

 ゲームでも登場しなかったから、プレイヤーから「四天王は全員出て来ないじゃん!!」という盛大なツッコミを入れらていたのだが、いないのなら仕方がない。それにミミとメメが辞めたいというのは、初耳だ。まあ、こんな猛者たちに日々囲まれていたら、辞めたくもなるだろう。実際、勇者のパーミラなんか、既に勇者を諦めているからね。


 それからシャドウとレドンタさんはいい味を出している。一般業務とは別に特殊業務もやっている。まずシャドウだが、4階層と7階層がかなり手の込んだトラップやトリックがあり、多くの挑戦者が途方に暮れているのだが、そこへ定期的にこっそりとヒントを出しに行くことになった。


「これは極秘情報で、詳しくは言えないが、三つ目の壁に・・・」


 この辺りは少し、ゲームと似ている。

 そのお陰で、10階層にたどり着く挑戦者も出て来たが、10階層のボスであるキラーゴーレム君2号に返り討ちにされていたけどね。


 一方、レドンタさんはというと11階層まで挑戦者がやって来ないので、お弟子さんを使って、移動販売を始めていた。


「商会にとっては、後継者の育成も大事ですからね。戦闘力も高く、商品の知識も豊富で、ダンジョンに何日も潜れる商人を育てるのは、本当に大変なんですよ。魔王城はそれで言うと、いい修行の場になります」


 そんな奴らを大量に育てたら、ヤバい集団ができあがるだろうが!!


 ここまでは、魔王としても重宝している人材だ。問題なのはレミールさんとオデットだ。レミールさんは、現代日本でも社会問題になっている、所謂キレる老人だ。少しでも文句を言われると、問答無用で殴り倒す。

 また、オデットは私に対抗して、「鮮血の串刺し仮面」と名乗り、スキル「百裂突き」を改良した「鮮血突き」を編み出した。これは「百裂突き」を改良し、手数を3倍、威力を100分の1に落としたスキルで、激しく血を噴き出させることを目的にしたスキルだ。


「エミリア殿には負けんぞ!!我の方が一度の出血量は多いからな」


 無駄に対抗心を燃やされている。それも間違った方向に・・・


 結局、この二人が出動するときは、ミミかメメ、セバスが同行することになる。彼女たちに戦闘をさせないように必死で説得し、戦闘が起こることは激減していた。

 セバスは言う。


「ミミとメメに常識と良識が身に付いたのは、僥倖です。これならメイドとして、どんな会議の場に連れて行っても問題ないでしょう。それにしても不思議ですね。どちらかというと、誰彼構わず喧嘩を吹っかけるタイプだったのに・・・」


 まあ、オデットやレミールさんの側にいれば、相対的にそう見えるだろう。曲がりなりにも戦闘メイド養成コースを卒業しているしね。



 ★★★


 そんなアルバイトだが、少し問題が起こった。

 魔王城に行ってみると、同じシフトだったシャドウがやって来ない。代わりにやって来たのは、ギルマスのスタントンさんだった。

 スタントンさんは魔王に何か相談をしている。


「前にも話したが、ダンジョン強盗団の尻尾をやっと掴んだんだ。急遽シャドウさんとマインに潜入してもらっている。事後報告になって悪いが、協力してくれると助かる」

「うむ、わらわの神聖な魔王城で、不埒な行いをするとは許せん。協力しよう。それにアルバイトはエミリアが居れば問題はない」

「そう言ってもらえると助かる。ついでだが、捕り物になった時はエミリア嬢にも協力を頼みたい」

「いいぞ、業務の一環じゃなからな」


 話の見えない私は、スタントンさんに尋ねた。


「あのう・・・話が見えないのですが?」


 スタントンさんによると、最近この付近のダンジョンに出没する質の悪い犯罪集団らしく、駆出し冒険者に声を掛け、「一緒にダンジョン探索をしないか?」と持ち掛ける。ほいほいついて行った駆出し冒険者は無残な最期を迎える。ダンジョン内で身ぐるみを剥がされ、惨殺される。


「冒険者ギルドとしても、正確な被害件数は把握してない。ダンジョン内では、時間が経つと死体は消滅するからな。ある意味完全犯罪だ。他国でも被害があり、そこで偶々生き残った奴がいて、それで犯罪が発覚したんだ。ダンジョンに入って行方不明になっている駆出し冒険者の半分以上は、奴らの餌食になったと思っている。本当に許せねえ」


 スタントンさんは怒り狂っている。


「ところで、どうやって分かったんですか?」

「ああ、影の軍団にずっと依頼をしていたんだよ。そうしたら、任務中のマインに声を掛けて来たというわけだ。この町では名が知られているが、他から来た奴から見たら、初心者の弱そうな少女にしか見えないからな。それでマインは、そのまま声を掛けて来たパーティーに臨時加入した。そうしたら、ギルドの初心者冒険者支援制度を利用して、満額借りさせやがった」


 初心者冒険者支援制度とは、ギルドが冒険者を志す若手に無利子無担保で貸し付ける制度のことだ。ある意味、未来への投資だ。満額ともなると金貨10枚以上はある。これで、一通りの装備を揃えろということなのだ。この町では、冒険者思いのスタントンさんの方針で、金貨15枚と高く、それを逆に利用されたのだろう。スタントンさんの気持ちはよく分かる。


「状況証拠的にはクロだ。ただ、このまま拘束しても口は割らないだろうし、流石に疑いだけで拷問には掛けられない。現行犯で捕まえたいんだ」

「お気持ちは十分分かりましたが、危険はないんですか?いくらマインちゃんでも心配で・・・」

「大丈夫だ。シャドウさんが尾行してくれている。シャドウさんの尾行を巻ける奴なんか、そうそういないからな」


 ここで魔王が言う。


「そういった事情なら、わらわも最大限協力しよう。セバス!!あれを持って参れ!!」


 セバスが持ってきたのは、大きな水晶玉の魔道具だった。


「これで、魔王城内を見渡せる。不埒な奴らもこの魔王城を選んだのが、運の尽きじゃな」


 怪しく笑う魔王・・・本当に魔王っぽい。

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