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43 風雲!!魔王城

 闘技場は凍り付いていた。

 客観的に見れば分かる。どう見ても私が老婦人と幼女を虐待しているようにしか見えない。


「ヒギャー!!」

「ギャー!!」


 老婦人と幼女の悲鳴が響き渡る。もちろん、老婦人も幼女も血塗れだ。


「おいおい!!エミリア先生はやり過ぎだよ・・・」

「さっき、「敬意が」とか「切磋琢磨」とか言ってなかったか?」

「殺さなかったら、何をしてもいいわけじゃないわよ・・・」


 心無い観客の声も聞こえてきた。


「とりあえず落ち着いてください!!模擬戦は中止です!!」


 魔王とレミールさんは顔を見合わせた。


「強者には従うことにする。わらわも大人げなかった・・・」

「私も指導者失格だね。ついつい楽しくて調子に乗ってしまったよ」


 何とか、冷静になってくれたようだ。


「じゃあこれで終わりですね。いい試合でした!!握手してください」


 レミールさんと魔王は握手し、健闘を称え合った。

 後から冷静になって考えてみれば、血塗れの老婦人と幼女に握手をさせ、それを笑顔で見つめる道場主、本当にシュールな光景だったと思う。


 次の日、あんなことになった経緯を二人から聞いてみた。ミミとメメの保護者である魔王が更生した二人のお礼をレミールさんに言いに行ったところ、二人とも強者のオーラを感じ、模擬戦をすることになったみたいだ。なので、因縁とかいったものはなく、単純な力比べだったそうだ。それが、大勢の観客に煽られて、興奮してあんな事態になってしまったようだった。


 今二人は仲良くなっているし、まあ、これで一件落着だね。



 ★★★


 それからしばらくして、私は魔王城に招かれた。オープンに際して、説明会を開くという。その案内が私にも届いたのだ。招待状を持って、魔王城に向かう。門番の魔族に招待状を渡すと裏口に通され、中に案内された。そこにはダンジョンにある転移スポットがあり、説明によると最上階まで行けるそうだ。

 転移スポットから転移したら、そこは最上階だった。見た感じ、日本のビルだと30階位の高さだろうか。


 転移した先にもスタッフが居て、会議室に案内される。そうそうたるメンバーが集結していた。魔王を筆頭に四天王のオルグ、執事のセバス、可愛らしいメイド服を着たミミとメメの他にも、シャドウ、ギルマスのスタントンさん、エルフのリナラデス、チートモブキャラ商人のレドンタさん、領主のルミナ、ドノバン夫妻、それにキュラリーさんまでいる。


 席に着くとミミとメメがお茶を持ってきてくれた。緊張しきっていて、震えている。案の定、お茶をこぼしてしまった。


「こ、殺さないでください!!」

「拷問は嫌です・・・」


 後で聞いた話だが、この二人はレミールさんと魔王の模擬戦をこっそり見ていて、私をヤバい人だと勘違いしているようだった。本当に心外だ。


 それからしばらくして、会議が始まった。執事のセバスが説明を始める。セバスは白髪頭の老紳士で、ゲームにも登場するキャラだ。物理攻撃も魔法攻撃も得意な器用なキャラとして描かれている。ゲームでは触れられていなかったが、どうやら魔族たちの内政面を担当しているようで、魔王も全幅の信頼を置いているようだった。


「お忙しいところ、お集まりいただき本当にありがとうございます。これより魔王城オープンに際して、説明会を始めさせていただきます。まず、コンセプトですが・・・」


 セバスの説明によると看板に「挑戦者を求む」と書いてある通り、多くの挑戦者に来てほしいとのことだった。そこで、罠やトラップ、謎解きの要素を加えるため、シャドウに監修を依頼したそうだ。そして、ダンジョン内で道具屋を営んでいるレドンタさんは、高階層で限定のレアアイテムを販売をすることを条件に営業許可をもらったそうだ。


「現在、25階層までは完成しています。1~5階層は初心者を対象にした構造で、そこから10階層までは中級者、それ以後は上級者向けに設定をしております。また、5階層ごとにエリアボスを配置する予定です。レドンタ様には11階層での営業を検討してもらっています。これまでの説明で、何か質問等はありますでしょうか?」


 ここで、スタントンさんが手を挙げる。


「冒険者ギルドとしては、安全面を確認したい。注意してはいるが、実力もなく、大した準備もせずに挑戦する馬鹿は一定数いる。立場上、「勝手に死ね」とは言えないからな」


 冒険者思いのスタントンさんらしい意見だ。


「それについては大丈夫です。各階層に緊急脱出用の転移スポットを設置していますし、難易度も徐々に高くなる仕様ですので、心配は少ないかと」


「それなら、大丈夫だろう。それでも死ぬなら、自己責任だな。それともう一つ、商売についてだ。階層ごとのマップを作製して、販売しようと考えているが、そっちの取り分はどうする?」


「こちらは必要ありませんよ。それと1年に1回は、模様替えをしますからね」


 スタントンさんはニヤついて、シャドウに言う。


「だってよ、シャドウさん。こりゃあ一儲けできるな」

「ああ、マッピングは斥候の基本でもあるから、我が影の軍団で請け負おう。低レベルの者の仕事が増えて有難い」

「こっちも斥候の紹介料が貰えるから助かるぜ」


 セバスが言う。


「それでは、キュラリー様より、集客プランのご説明がございます」

「ご紹介にあずかりましたキュラリーです。集客プランについてですが・・・」


 キュラリーさんは優秀だった。

 まず訓練に訪れた騎士団や領兵にPRし、魔王城攻略を勧める。そして、5階層ごとに攻略した証明書を発行する。騎士団員には貴族やその子弟も多く在籍しており、貴族は称号や名誉に目がないから、それを利用するという。こちらとしても滞在日数が延びるので、有難い話ではある。


「領主としましても、収益が増えるのは望ましいと思います。そのプランで承認いたします」


「ありがとうございます。領主であるルミナ様に承認をいただきましたので、これで進めせていただきます。それとこのプロジェクトの担当はパーミラにさせます。細かいことはパーミラにお尋ねください」


 勇者が魔王のお手伝いをするなんて・・・


 概ね会議が終了したところで、魔王が言った。


「それでは皆の者、よろしく頼むぞ。それと猛者たちに少し頼みたいことがあるのじゃ。高額のアルバイトと思ってもらったらいい。任務は個別に説明するがな・・・」


 誰がそんなヤバそうなアルバイトをするんだ?


 私は絶対にしないけどね・・・

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