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35 出張指導 4

 とりあえず、ルミナたちと合流し、拘束したリッポフ盗賊団のメンバーをクレアに引き渡す。こちらの情報を伝え、ルミナから事情を聞く。


「カモネル男爵は、呪いと毒を併用されていましたわ。最近の流行だとマホット所長が言っていました。今回は照明の魔道具と薬が合わさって初めて発動するように仕込んでいました。薬をいくら鑑定しても毒は検出されませんからね。以前の私なら見落としていたでしょう。クレアさんや他の医者たちが見落としても仕方がないと思います」


 クレアに抱えられながら、カモネル男爵がやって来た。ふらふらしているが、それでも意識はしっかりしているようだ。


「ルミナ様、エミリア殿、本当にありがとうございます。何とか死の淵から舞い戻りました。それにしてもローダックの奴め・・・許せん」


 クレアが言う。


「本当にありがとうございました。ローダックですが、逃げてしまったとのことですが・・・」

「それは大丈夫です。そうよね?ポン?」


 ポンが自信満々に答える。


「ちゃんとローダックに細工はしておいたぜ。今はルトが匂いで追跡しているし、マインも連絡係として同行している。もうすぐ連絡が入る頃だ」


 ローダックが逃げることを想定して、ポンはコボルトくらいにしか分からない匂いを衣服に付けていたようだ。それを元にルト君が追跡している。ドノバンが言う。


「ウチの部隊の応援を呼んでおいた。もうすぐ合流予定だ。戦力が揃ったら突入しよう」


 私はふと疑問に思った。


「あれ?手際が良すぎない?」


 これにはルミナが申しわけなさそうに答えた。


「実は・・・出張指導は、最初から・・・」


 ルミナの説明によると、バンデッド伯爵はこうなることを想定していたそうだ。この出張指導の目的の一つが、ゴドリック伯爵が利用していた犯罪組織の残党狩りなのだという。なので、すぐに対応できるようにドノバンの部隊を待機させていたようだ。


「エミリアお姉様・・・申しわけありません。上手くいきましたら、成功報酬も出ますので、どうかよろしくお願いします」

「まあ、成功報酬が出るならいいけど・・・」


 1時間もしない内にドノバンの部隊がやって来た。初期のメンバーであるオデット、ティーグ、シェリルに加えて、ゴーケンとシャドウもいる。そして、魔法研究所兼拷問所所長のマホットも・・・


 おいおい!!過剰戦力すぎるだろうが!!

 前近衛騎士団長に前宮廷魔導士団長、前魔法剣士団長がいるんだぞ!!それにオデットもシェリルもヤバいし、シャドウなんて、反則に近いだろうが!!


 ドノバンが言う。


「エミリア先生、これで俺が隊長って・・・俺も苦労しているんだよ・・・」


 ドノバンも神童と呼ばれるくらいに才能がある若手魔法剣士だが、コイツらに比べたら見劣りするよね。



 ★★★


 ローダックが逃げ込んだのは、領都から馬車で半日ほど西に行った採掘所だった。採掘所の手前に3階建ての建築物があり、どうやらここがアジトのようだ。

 クレアが言う。


「この採掘所はミスリルが採取できるのですが、最近は枯渇したと報告がありました。多分、枯渇したという嘘の報告を上げて、ミスリルを横流ししていたのでしょうね。父上が倒れたのも、この採掘所の監査を計画していた矢先でしたからね」


 しばらくして、マインちゃんの案内で、監視をしてくれていたルト君と合流した。なぜか、ルト君にシャドウが質問する。


「ルト隊員、報告せよ」

「はい、敵は約50人、ほとんどが実力のない戦士タイプです。この戦力なら問題ないでしょう。ただ、人質がいます。会話を少し聞く限りでは、領兵や文官の子弟だと思われます。人質の位置は・・・」

「よし!!報告ご苦労。まずは人質の奪還だ。俺とルト、ポンで行く。マインは連絡要員として、ドノバン隊長についていてくれ。それでいいか?ドノバン隊長?」

「は、はい・・・それでお願いします」


 しばらくして、人質8人を救出して来た。

 ドノバンが言う。


「人質もいないので、正面から突入しようと思いますが・・・異論は?」

「私とポコ、ルミナは後方警戒に当たるわね。ポコは弓使いだし、ルミナも魔導士だから」

「エミリア先生たちはそれで大丈夫だよ」


 一応、私たちも敵が逃げてきたら対処する予定だったけど、戦闘が始まると、全く何もしなかった。

 だって、凄すぎるんだもの・・・


 まず、正面からゴーケンがバリケードを「覇者の一撃」で切り裂く。そして、一気に猛者たちがなだれ込む。堪り兼ねたローダックが3階の窓から「人質がどうなっても、いいのか!?」と叫ぶが、問答無用でシェリルに魔法を撃ち込まれ、あえなく拘束されてしまった。

 ここでやる気を出したのがマホット所長だ。


「よし!!ここからは儂の出番じゃ!!楽しい拷問の時間の始まりだ!!」


 もう好きにしてくれ・・・


 結果的にカラブリアという犯罪組織が裏で糸を引いていたことが判明する。よくよく聞いてみるとゴドリック伯爵はニシレッド王国の窓口をしていたにすぎないそうだ。

 オデットが言う。


「我がレコキスト王国の王女殿下が誘拐されたのも、カラブリアが関与していたのだろう。奴らにしてみればゴドリック伯爵もトカゲの尻尾切りに等しいのだろうな。いつかは落とし前をつけ、カラブリアを壊滅させてやる」


 ティーグも答える。


「それは我も同意する。ということで、ドノバン隊長、カラブリアの関与が疑われる現場には、率先して出動することを進言する」


「は、はい・・・もちろんです」


 ドノバンが苦労しているのが、よく分かった。



 ★★★


 その後の話をする。

 まず、カモネル男爵家については、お取り潰しどころか処分もなかった。というのも国王陛下が「悪辣な犯罪組織カラブリア絡みの事案であれば、多少不始末があっても目を瞑る。国や寄り親に報告すれば、罪は減免する」とのお触れを出したからだ。クレアも喜んでくれてよかったと思う。

 そして、復興についてだが、隣領のコドマス男爵が支援してくれることになった。カモネル男爵はこれを機にバンデッド伯爵の派閥入りをしたからだ。同じ派閥なら文句を言われる筋合いはないからね。


 そして、この件でかなり得をしたのは、バンデッド伯爵だ。カモネル男爵を派閥に加え、ミスリル鉱山の開発にも出資する。これで、旧ゴドリック伯爵派閥は完全消滅したしね。まあ、私も追加報酬として現物でミスリルのインゴットをもらったから、文句はないのだけどね。


 この出張指導は上手くいったのだけど、それに味を占めたバンデッド伯爵や国王陛下は、怪しい動きをしている領を中心に私たちを出張指導に行かせるようになってしまった。なので、3回に1回は戦闘になる。


 だったら、最初からゴーケンやオデットを派遣すればいいのに!!


 と文句を言ってみたが、私のような一見するとあまり強くなく、子供や女性をメインに剣術を教えている感じが相手の油断を誘うのだと言われた。まあ、いきなりゴーケンがやって来たら、相手は一目散に逃げだすからね。


 報酬もいいし、言うことはないけど、一つ不安要素を挙げると一緒に行動する特殊部隊がヤバすぎるということだ。この前なんか、カイラ研究員がキラーゴーレム君1号を連れて来て、実戦投入していた。もう何がしたいのか分からない。早くカラブリアの本拠地を見付けて、みんなで攻め入ってくれたらいいのにと思うのであった。


 道場は大きくなり、戦力も揃ったのだが、まだ勇者は来ない・・・

 もう、猛者たちに魔王討伐に行ってもらおうかとも思う今日この頃だ。

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