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24 続々と集結するイカれた奴ら 2

 ドワーフの親方が紹介してきたのは、ドワーフの少女だった。


「オグレンというッス。よろしくッス」


 オグレンという名前にドワーフの少女、そして、特徴的な喋り方、間違いなくゲームに登場したモブキャラだ。

 オグレンは神出鬼没で、この少女もダンジョンやデモンズラインを超えた場所にも出現する。その辺は置いておいても、この少女の能力は異常だ。様々な素材から武器や防具を良心的な価格で作ってくれる。素材は持ち込めばいいのだが、いつ会えるかはランダムで運次第なのだ。それがここで会えるなんて・・・


 そして、この少女の凄いところは、素材と現金さえ渡せば、作中最強装備である「勇者の剣」に匹敵する装備をバンバン作ってしまうところだ。ゲームでは彼女の装備で身を固めてしまうと、低レベルでもデモンズラインを超えるまでは無双できてしまう。


 当然、彼女にも多くのツッコミが入る。


 こんな少女がなぜ、危険地帯に?しかも一人で・・・

 武器を作れるのは分かるけど、強すぎないか?

 そんな武器が作れるなら、国が補助金を出して、国軍の標準装備にしろよ!!

 それでもって、最強の軍隊で魔王討伐に行けよ。勇者とかいう少年、少女に頼るな!!


 ところで、コイツは何の用なんだ?


 ドワーフの親方が言う。


「儂の店は本店とギルドの出張所の2店舗だが、新たにホクシン流剣術道場に出張所を出すことになってな。その責任者をオグレンにやってもらうことになった。コイツは儂の姪っ子でな。腕は確かだ。仲良くしてやってくれ。今日はその挨拶で来たんだ」

「そ、その・・・私は一言も・・・」

「ムサール先生が工房も作ってくれたぞ。孤児院を卒業する鍛冶職人志望の子たちを面倒みるという条件でな。やはりムサール先生は出来た人だ。孤児の就職先まで考えるなんてな。儂らも職人が増えて助かるよ。だって最近は武器と防具の注文が半端ないからな」


 色々とツッコムところがある。

 まずは祖父だ。確かに孤児の就職先を考えるなんて、人格者だと思う。しかし、それなら自分の金でやれよ。私の金を勝手に使うな。

 そして、猛者を大量に集め、チート級の職人もスカウトし、この道場は一体どこに向かっているのだろうか?


 他にもあるが、とりあえずこの辺で止めて、話を戻し、オグレンに挨拶をした。


「貴方がエミリア殿ッスね。活躍は聞いているッス。とりあえず武器をメンテナンスしてあげるッス。それで自分の腕が分かってくれると思うッス」

「それじゃあ、お願いしようかな」

「何かこだわりとかあるッスか?」

「突きをメインで技を構成しているから、その仕様でお願いね」

「はいッス」


 それから1時間、新しくできた工房の前で、出来上がりを待っていた。ライライに餌をあげながら、のんびり過ごしているところにオグレンがやって来た。


「できたッス!!かなり特徴的な使い方をしているッスね。剣先に大分負担が掛かっていたッス。なので、アダマンタイトで剣先だけ補強しておいたッス。もちろん初回のお試しメンテナンスなんで無料ッスよ」


 おい!!ちょっと待て!!今、アダマンタイトとか言わなかったか?

 アダマンタイトはこの世界で最も固く、そして高価な特殊鉱石だ。特殊鉱石はアダマンタイトと双璧をなすオリハルコン、少し落ちるがミスリルの三種類だけだ。それをちょっとしたメンテナンスに、それも無料で使うなんて、この少女、狂ってやがる!!


 一度深呼吸して、落ち着いてオグレンに尋ねる。


「アダマンタイトと言わなかった?流石にそんな高価な物を無料というわけには・・・」

「大丈夫ッス、結構、余っているんで!!それよりも実際に使ってみてくださいッス。巻き藁は用意しているッスから」


 アダマンタイトが結構、余っているだと!!

 作中最強の「勇者の剣」と並び称される「覇者の剣」が普通に作れるじゃないか・・・


 現実逃避した私は、巻き藁に向かってレイピアを突き刺した。

 こ、これは・・・まるで豆腐を突き刺しているような感覚だ。ヤバい、この武器はヤバすぎるぞ・・・


「どうッスか?」

「凄い威力ね・・・本当に無料でいいの?」

「いいッスよ」


 私は少し考えてオグレンに言った。


「これからこの道場で営業するにあたって、特殊鉱石は非常事態以外は使わないでほしいの。なぜなら、貴方の武器が優秀すぎるからよ。道場主として言わせてもらうけど、門下生が武器の性能に頼りっきりになるのは看過できないわ。有難いけど・・・」

「流石は叔父さんが見込んだだけの武人ッス。分かったッス。武器職人としても武器に頼りっきりにされるのもどうかと思うッスからね。それでアダマンタイトなんッスけど、親切な商人さんが開店祝いにくれたものッス。なんていう人だったかな・・・」

「もしかして、レドンタさん?」

「そうッス!!」


 なぜ開店祝いにアダマンタイト?もう謎すぎる・・・


「そういえば、木こりのご夫婦の斧と上品なお婆さんのカイザーナックルは、もう補強してしまったッス」

「ホルツさん、フェラーさんご夫妻に、レミールさんね・・・達人クラスだから、武器の性能に溺れることはないと思うけど、相手を見て武器を作ってあげてね」

「分かったッス。とりあえず、オーダーメイドの武器は、自前で素材を集めて来た者にだけ、作ることにするッスね」

「それでお願いね」

「はいッス。エミリア殿もお待ちしてるッスよ。もしかしたらミスリル製で、魔法剣スタイルとか、いいと思うッス。ミスリルの在庫はあるッスから、今からでも注文受けられるッス」

「言った側からそれはできないわ。欲しくなったら、ミスリルをこちらで調達するからね」


 とりあえず、それでオグレンとは別れた。本当に衝撃的な出会いだった。


 ★★★


 私はライライとともにデモンズラインにやって来た。オグレンがメンテナンスしたレイピアが、実戦でどれくらい使えるか試し切りに来たのだ。ワイルドベア、ワイルドコングなどを屠っていく。流石に一撃とは言わないが、それでもいつもの半分の時間で討伐できている。私でもこんな状態なのに、猛者クラスの奴が普通に装備しだしたら、手が付けられないだろうな・・・


 デモンズラインから帰る途中に見てはいけないものを見てしまった。木こりの夫婦のホルツさん、フェラーさんが木を刈っていた。普通の微笑ましい風景だと思ったがそうではなかった。片手で斧を持ち、一撃で木を切り倒していた。


「貴方、よく切れますね」

「そうだな。またお願いしよう」


 私は見て見ぬふりをして、立ち去ろうとしたが、ライライが木こりのご夫婦の元へ走っていく。ライライはこのご夫婦にも餌付けされているのだ。とりあえず、愛想を振りまけば、何か貰えると思っている節がある。


「ライライ!!」

「ああ、エミリア先生!!こんなところで奇遇ですね」

「ライライちゃん、干し肉が余っているからどうぞ」


 私は世間話をしながら、オグレンがメンテナンスした斧の調子を聞く。


「凄い腕の職人さんですね。若いのにねえ」

「貴方、アレを見せてあげたらどう?木こりじゃない人に斧のことは分からないと思うから」

「そうだな、斧の良し悪しなんて普通の人は分からないからな。よし、やってみよう」


 否!!普通の人が見ても分かるくらいヤバいよ!!アンタらもだけど・・・


「せい!!」


 ホルツさんが斧を森に向かって投げた。回転した斧が物凄い速さで飛んでいく。そして、斧は木を10本くらい薙ぎ倒して、手元に帰って来た。


「ねっ!!凄いでしょ?普通の斧ならこうはいかないわ!!」


 ヤバい斧をヤバい奴が使っているから、こうなるんでしょ!!


 とツッコムことは止め、私とライライはお礼を言って、その場を立ち去った。


 道場に帰ったら、レミールさんが石壁をジャブ1発で粉砕していたけど、私はもう何も感じなくなっていた。


 慣れって怖いね・・・

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