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23 続々と集結するイカれた奴ら

 私は今、冒険者ギルドに来ている。

 ギルマスのスタントンさんに大会の結果報告と、併せて初心者冒険者対象の研修制度の進捗状況をチェックするためだ。


「久しぶりだな。大活躍だったそうだな。お貴族様になったようだし、それになんて言ったか、「残虐嬲り姫」とかいう大層な二つ名まで、いただいたそうじゃねえか?」

「違いますよ!!「血塗れの嬲り姫」です」

「そうか・・・本当はもっと酷いんだな・・・」


 どっちも酷いことには変わりない。


「挨拶はこれくらいにして、初心者冒険者の研修だが、上手くいっているぞ。ポンとポコ、それに最近ではマインやレオも指導してくれてる。デモンズラインに不用意に入る奴も激減しているしな」

「それはよかったです。少し、研修を見せてもらってもいいですか?」

「いいぞ、俺が案内してやろう。お貴族様を一人で回らすわけにもいかんしな」


 まずは訓練所に向かった。基礎的な体力づくりのメニューをこなしているようだった。


「駆出しの冒険者に一番必要なのは、体力と逃げ足の速さだ。ヤバいと思ったらすぐに死ぬ気で逃げる。それだけでも生存率は上がる。思ったよりも一生懸命にみんなやっているよ。ドノバンが隊長をしている部隊の猛者どもも必死になって、基礎訓練をしてるだろ?

「一流の奴らがあんなに頑張っているのに、駆出しの俺たちがやらなくてどうする」みたいな感じだろうな。そういう俺もホクシン流剣術道場に通う頻度を増やしたんだぜ。ゴーケンの旦那には全く歯が立たないけどな・・・」


 ドノバンの部隊が冒険者ギルドにもいい影響をもたらしているようだった。それはそうと、ゴーケンと模擬戦をしようと思う時点でイカれている。ギルマスの戦闘を何度か見たが、「返し突き」を使わなかったら瞬殺されるレベルだ。


 次に案内されたのは、ギルドの北にある広場だった。ここではポンとマインちゃんが罠の設置方法やポコが弓の指導をしていた。私に気付いた三人が声を掛けてくる。


「エミリア!!お前はやる奴だと思ってたけど、本当にやりやがったな!!」

「本当に友達として凄いと感心するわ。「殲滅の嬲り姫」。いい二つ名じゃないの!!」


「いえ・・・「血塗れの嬲り姫」だよ・・・」


「そ、そうか・・・いつも血塗れになるもんな・・・」

「うん・・・似合ってると思うよ」


 ドン引きしてるだろうが!!


 マインちゃんにも声を掛ける。


「エミリア先生、おめでとうございます。あの二人は先生の活躍もそうだけど、リンちゃんに触発されたみたいで、凄く訓練頑張ってるんだよ。今日もこの後で、熟練の方に斥候の何たるかを習うんだよね」


「それは興味があるわね。パーティーに斥候がいるといないじゃ大違いだし、斥候の実力次第で生存率も上がるわね」


 しばらくて、初心者向けの訓練が終わると物陰から、全身黒ずくめで、覆面をした怪しい男が現れた。ポンとポコが挨拶に向かう。


「「師匠、お疲れ様です!!」」

「お前ら!!俺は1時間前からここにいたんだぞ。俺が暗殺者なら、お前らは死んでいたぞ」

「「すいません」」

「まあいい、まずは投擲訓練からだ。練習の成果を見せてみろ」


 ポンとポコがナイフを的に向かって投げ始めた。


「いい感じだ。それが完璧にできるようになったら、今度は動く的で行うぞ」


 指導はちゃんとしているし、怪しい格好をしているだけで、実力は確かそうだ。私も全く気配に気付かなかったけどね。

 私はマインちゃんに紹介され、怪しい男に挨拶をする。


「エミリア・ホクシンです。ホクシン流剣術道場の道場主をしております。門下生が大変、お世話になっております」


「俺はシャドウ、訳あって極秘任務を遂行している。詳しくは言えんがな。ポンもポコもマインも筋がいい。イシス帝国の特殊部隊くらいにはなれるだろう。おっと、いかんいかん、危うく素性を晒すところだった・・・」


 コイツは・・・間違いなくゲームに出て来た異様に強いモブキャラの一人だ。

 シャドウは神出鬼没で、ダンジョンの奥底や魔王城にまで出没する。ただ、普通のモブキャラと違うのは、偶に「宝箱の裏にボタンがある」とか「タンスの裏側に隠し扉」があるとか有用な情報をくれることがある。いたら有難い存在ではあるのだが、やはり多くのプレイヤーからツッコミが入る。


 遭遇するといつも、シャドウはこう言う。


「俺はシャドウ、極秘任務を遂行している。だが、ここに俺が求める物はなかった」


 何を探しているのかは、作中では明かされない。以下がツッコミの数々だ。


 自分で極秘任務って言ってたら世話ないよ!!

 相手も馬鹿じゃないだろうから、そんな怪しい格好で来たら誰でも警戒するだろうが!!

 そもそもコイツだけじゃなく、なんで一人でダンジョンなんかの最深部にいるの?

 魔王城に潜入して、「ここに俺の求める物はなかった」って、ついでに魔王も暗殺してきなよ!!


 それがまた、どうしてここへ?

 聞いても教えてくれないだろうけど・・・


 そんなことを思っていると、シャドウが私に模擬戦を申し込んで来た。


「模擬戦をお願いしたい。弟子たちに見せたいからな」

「分かりました・・・お手柔らかに」


 断っても面倒くさそうだから、仕方なく受けることにした。訓練を一旦中止して、ポン、ポコ、マインちゃんが見学に来る。


「ポン、ポコ、マイン、斥候といえども戦闘はある。しかも、格上の相手ともな。これからエミリア殿と模擬戦をするが、俺がどのように立ち回るか、よく見ておくように」


「「「はい!!」」」


 シャドウと対峙する。相手が何を使って来るか分からないが、投擲攻撃であれば「受け流し」、手に持っている短刀で攻撃してきたら「返し突き」でカウンターを狙う。まあ、いつもどおりということだ。


 じりじりと間合いを詰めたシャドウが短刀で突いて来る。いつもどおりに「返し突き」を発動する。私のレイピアがシャドウに突き刺さったと思ったが、そうならなかった。シャドウではなく、丸太を突いていたのだった。


 変わり身の術?


 呆気に取られている私に背後からシャドウが忍び寄る。素早い短刀の一撃が飛んでくる。


 ヤバい!!


 そう思ったが、何とか「返し突き」が発動する。見えてなくても発動することに驚いたが、私の突きはシャドウの手甲に受け止められた。

 シャドウが構えを解く。


「ありがとう、礼を言う。模擬戦は終了だ。皆の者、これが格上に対する斥候の戦い方だ。模擬戦だから俺はエミリア殿に攻撃したが、実戦であれば俺は、間違いなく逃げていただろう。斥候であれば、何とか生き残り、情報を何が何でも味方に持ち帰る。武人のように華々しく勝てなくてもいい。自分たちは陰でパーティーを支えると心得よ」


「「「はい!!」」」


 ポコが私に聞いて来る。


「どう、エミリア?師匠は凄いでしょう?」


「本当に尊敬すべき方ですね。私では指導できないことを指導していただいて、有難く思います。門下生を今後ともお願いします」


 まあ私は、礼儀と挨拶くらいしか指導してないんだけど・・・後、精神論も・・・


「うむ、ここには俺が探し求めていたものがあるような気がする。しばらくは滞在するから、また、声を掛けてくれ」


 そんなに気軽に声を掛けていいの?と思いつつも私はギルドを後にした。

 実際に接してみて、シャドウは意外に面倒見もいいし、教えることもキチンとしている。若干、斥候というか特殊部隊に近いけど、あの三人には、非常に役立つスキルを教えてくれると思う。



 私が道場に帰ると事務スタッフが声を掛けて来た。


「ドワーフの親方が来られてます。何でも紹介したい方がいらっしゃるとかで」


 また、変な奴じゃないだろうな・・・


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