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12 第二回コーガル少年ソフト模擬戦大会 3

 準決勝第二試合は、オーソド剣術道場とブラブカ道場との試合だが、開始前に会場が騒然となる。何とここに来てブラブカ道場チームはメンバー全員を入れ替えてきたのだ。そして、明かに魔導士っぽい人が選手に身体強化魔法を重ね掛けしている。

 プラクさんが叫ぶ。


「あれはいくら何でもやり過ぎだろうが!!それにガキにあんなに身体強化の魔法を掛けて・・・子供への身体強化魔法の掛け過ぎはよくないって常識だろうが!!」


 プラクさんが怒るのも無理はない。というのも身体強化魔法は体への負担が大きい。筋肉を活性化させ、普段以上の力を引き出すのだが、たとえるなら火事場の馬鹿力を常に発揮させているようなものだ。想像してみたら分かるが、次の日は筋肉痛で歩けないこともよくある。


 それもそうだが、そもそも魔導士を雇ってまで身体強化の魔法を掛けるのOKなのか?自分で自分に掛けるのが普通だと思うのだが・・・


「エミリア、儂が抗議に行ってやろうか?もちろん無料タダだ。成功報酬は貰うがな」


「お願いします・・・」


 私も思うところがあり、多少の出費は覚悟して、祖父に頼むことにした。しかし、結果は・・・


「ルール上は問題ないらしい。まずメンバーの総入れ替えだが、エミリアが提案したことらしいな?」


「は、はい・・・」


 これはなるべく多くの子供たちを試合に出させてあげようと思って、提案したことだった。補欠メンバーを5名まで登録し、自由に変更できるようにしていた。それを逆手に取られたということか・・・


「身体強化の魔法以外は禁止とあるが、「別に用意した魔導士が掛けてはいけない」というルールはないので、これもルール違反にはならないそうだ。儂からすれば子供のチャンバラごっこにそこまでするかというのが本音だがな」


 オーソドさんも抗議していたが、認められず試合は開始されることになった。先鋒戦だが、また会場からどよめきが起きる。ブラブカ道場の選手は大きな楯を構え、どう見ても槍にしか見えない物を装備している。


「あれは?」


「ソフト剣の長さや形状に規定がないそうだ。ブラブカ道場は、あれは長めのソフト剣だと言い張っている」


 プラクさんも言う。


「無茶苦茶だな・・・そこまでして勝ちたいのか!!それにあれは西部の伝統的な重装歩兵スタイルだ。技なんて関係ない。力で押し切るやつだ。それで身体強化の魔法を重ね掛けしたんだな」


 観客もドン引きしている。

 祖父が言う。


「あの選手たちだが、どこかで見たことがあるな・・・多分、ゴドリック伯爵家の領兵だったと思うのだが・・・成人していたと思っていたがな」


 こちらの世界の成人は15歳で、この大会は14歳以下しか出場できないのだ。そうなるとそもそも不正だ。


「一応、ギルマスには捜査を依頼している。報酬だが・・・」


「払いますよ・・・後でね」


 だが、今の段階で不正を指摘することはできない。

 試合が始まる。圧倒的というか、そもそも試合と呼べるものではなかった。遠距離から槍を振り回し、近付けさせない。何とかオーソド剣術道場チームが一矢報いたものの1対3で負けてしまった。オーソドさんは悔しそうだし、プラクさんも怒っている。


「プラクさん、三位決定戦がありますから・・・」


「そ、そうだな・・・オーソドのチームには負けられないからな」


 決勝に先立ち、三位決定戦が行われた。こちらは白熱した試合になった。代表決定戦までもつれ、最後はオーソド剣術道場チームが勝利した。オーソドさんとプラクさんが握手して、健闘を称え合っている。


「来年は負けないからな」

「それはウチも同じだ。次は決勝でな」


 こういったのがスポーツや武道の精神なんだろうけどね。

 それにしてもブラブカ道場には腹が立つな。そこまでして勝って意味があるのか?

 仕方ない。ここは指導方針を曲げてでも私は勝ちに行くことを決断した。


「お祖父様、決勝は監督として助言いただけると助かります。報酬は・・・」


「儂も腹が立っておる。報酬は・・・金貨1枚でいい」


 そこは「いらない」だろうが!!


 まあいい。祖父の戦術眼は確かだからね。人格はどうかと思うけど。


 ★★★


 リーグ戦敗退チームによるトーナメント戦の後に1時間の休憩を挟み決勝戦が始まった。当然、私は声援を送るだけだ。


「みんな!!ガンバレー!!」

「ライライライライ!!」


 ライライも分かってきたようで、私と一緒に声を出す。その後、お菓子をねだってくるのだけどね。


 先鋒戦は開始前からどよめきが起こっている。

 それはそうだ。私もびっくりしているからね。驚いたのはルミナの装備だ。相手と同じ楯と槍のスタイルで、しかも槍は相手の3倍の長さだ。これに相手はびっくりしている。

 これに文句は付けられないだろうな。だって「ソフト剣の形状と長さに規定はない」と言い張ったのは自分たちなんだからね。


「ムサール先生の許可が出ましたので、身体強化魔法を最大で掛けてますからね!!」


 ルミナが自信満々で言う。ルミナは一流の魔導士だから身体強化魔法なんてお手の物だ。多分、ブラブカ道場が連れてきている魔導士よりも上だろう。

 試合はというと同じようなスタイルで、リーチもパワーも上なので当然ルミナが勝った。ブラブカ道場の代表者は悔しがって、負けた選手を殴り付けている。


 それは酷いんじゃないの!?


 私が抗議しようとしたところ、ドワーフの親方に声を掛けれらた。


「エミリアの嬢ちゃん、ムサール先生から請求書はこっちに回してくれって言われてな。急遽ソフト剣を作らされたから、ちょっと高くなっているぜ」


「き、き・・・金貨30枚・・・銀貨の間違いでは?」


「金貨だぞ。ルミナだけじゃなく、マインやレオの分まで作ったからな。材料費もそうだが、工賃が高いんだ。間に合わないから隣の店の奴にも頼んだからな」


 祖父はソフト剣を売りに来ていたドワーフの親方に新作武器の製作を頼んだらしい。しかし・・・この金額は・・・最初に金額交渉をしなかった私の落ち度だと自分で自分を納得させた。


 次鋒戦が始まる前にルミナがマインちゃんに身体強化魔法を掛けてあげている。これも相手は文句は言えない。

 そして試合が始まるとマインちゃんは、距離を取り、逃げ続けた。相手は重装備なので、捉えきれない。これも祖父の作戦なのだろうか?

 プラクさんが言う。


「流石はムサール先生だ。あれなら負けることはない。ただ、ムサール先生のことだ。まだ何か隠しているかもな」


 そしてプラクさんの予想は当たる。試合終了間際に背後を取ったマインちゃんの短刀が急激に伸びた。それが相手の背中にヒットして、マインちゃんが一本勝ちで勝利した。

 ドワーフの親方がドヤ顔で言う。


「どうだ?子供のおもちゃを改良したんだぞ。バネでビヨーンとなるやつだ。まあ、実戦ではほぼ使えないが、この大会なら使えると思ってな。それも初見殺しなら、なおさらだ」


 そうですね・・・おもちゃをちょっと改良しただけで、金貨15枚って・・・いい商売ですね。購入した装備の中でマインちゃんの短刀が一番高かったからね。


 そして、次は中堅戦。ここで勝てば私たちの勝ちだ。

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