108 最終決戦
小国家群にある宗教国、メネシス教国、その聖都バスチンに大聖堂があるのだが、そこに教皇は居るらしい。ディアブル島救出作戦から半年、各国とも協力し、大聖堂への捜索を行うことになった。しかし、問題があった。
ポンがルミナに報告する。
「教皇の所在が掴めないんだ。影の軍団だけでなく、各国の諜報部隊も聖都に集結しているから、聖都から逃げたことは考えにくい。多分、大聖堂にはいると思うんだけど・・・」
ポンによると、各国が令状を持って、大聖堂の捜索をしたそうだ。多くの証拠品を押収したのだが、教皇の発見には至っていないそうだ。
ルミナが言う。
「いつまでも、大聖堂を封鎖し続けることはできないですし、難しいところですね」
「そうなんだ。過激な人たち、オデットさんなんかは、大聖堂ごと燃やせとか言っているしな。この状況を何とかできるのはマオさんくらいかな?エミリア、マオさんに頼んでくれないか?」
ポンに魔王に頼むように言われたが、私には心当たりがあった。ゲーム「雷獣物語」でも大聖堂は登場した。大きいだけで、特に普通の教会と変わらない施設だったが、1箇所だけ、開かずの扉があったのだ。ネットでは、そこに黒幕がいるのでは?と噂されていた。
開かずの扉にたどり着くにも、大聖堂に設置されている女神像を動かして、階段を見付けないと開かずの扉まで行けない。捜索隊が見付けられなくても不思議ではない。となると、私も現地に行かなくてはならないな・・・
そんなことを思いながら、魔王に相談する。
「ならば、妾が直接出向いてやろう。助言ぐらいはできるからのう」
次の日、フランメに乗って、私、ライライ、ポン、魔王で大聖堂に向かった。
★★★
大聖堂は立派な建造物で、ゲームで見た通り、厳かな雰囲気がある。
大聖堂の周囲には、各国の部隊が警戒しており、大聖堂内は今も必死の捜索が続けられている。ニシレッド王国の捜索部隊の隊長として派遣されているドノバンを見付けたので、声を掛けた。
「まだ、教皇は見付かっていないよ。それよりも、オデットたちを押さえるのに必死だったよ。シェリルなんて、『私の火魔法と爆発する魔石があれば、すぐに更地にできる』と言ってきたしね。それにシェリルに賛同する奴らも出てきたから、本当に困っていたんだよ」
ドノバンの苦労が伺える。
そんな時、魔王が言った。中央にある大聖堂の象徴として、名高い女神像を指差して言った。
「あの女神像の辺りから、禍々しいオーラを感じるぞ」
ゲームのとおりだ。
私はすぐに女神像に駆け寄り、ポンと一緒に女神像を動かしてみた。すると、ゲームと同じように階段が出現する。階段を降りると、一本道で通路を進むと鍵の掛かった扉を見付けた。ポンが早速解除しようとするが、できなかった。
「これは普通の鍵じゃない。魔法でもない何か高度な力で扉が封鎖されているようだ。シャドウ師匠でも無理かもしれないくらいの鍵だよ」
この辺もゲームどおりだ。各国の諜報部隊にも声を掛け、鍵開けのスペシャリストを招集したが、開けることはできず、物理的に破壊しようとしても無理だった。
シャドウが言う。
「これは極秘情報だが、この扉は世の理から外れている。言うなれば、神が作ったとしか思えん」
となるとゲームで考えれば、世界を巡って、何かのアイテムを集めて、この扉を開けるのだろう。そんなことを思っていたところ、衝撃の出来事が起きた。
「覇者の一撃!!」
何とゴーケンが扉を切り裂いた。
ゴーケンが言う。
「この扉は、半分違う時空に存在している。だから、時空ごと切り裂いたのだ」
平然と言うが、こんなの製作者も想定外だろう。
魔王が言う。
「この先は絶大なオーラを感じる。まるで神のようじゃ。ここから先に進む者は命の保証はできんぞ。まあ、妾は興味があるから行くがな」
扉の前にいる面々で協議が始まった。もちろん、ゴーケン、ティーグ、オデット、シェリルは志願した。そして、聖女も・・・
「ドルト、ターニャ、バイス。貴方たちは残って。もし失敗したら、貴方たちが引き継いでほしいの」
「分かった」
「絶対戻って来てね」
「聖女なんて、お前以外に誰ができるんだ?」
別の場所でも・・・
「リリアン・・・お前は女王だ。だから勇者代表として俺が行く。もし帰って来たらだが・・・」
「それ以上は、フラグになるから言わないで、貴方が帰って来るって、信じてるから」
それぞれが別れを済ませている。
シャドウこと、私の父コジールも私に声を掛けて来た。
「エミリア、ここに母さんの仇がいるかもしれない。一緒に仇を討とう!!」
おいおい!!私も連れて行くのか?
さっき魔王が、「生きて帰れないかもしれない」と言っていたのを聞いてなかったのか?
そういえば、コイツはこんな奴だ。私が8歳の時に急にいなくなるし、戻って来てもシャドウとかいう、訳の分からないキャラになっていたし・・・
「これはシャドウとしての勘だが、長年探し求めて来たものがここにある気がする。もちろん、母さんの仇だがな」
ここに来て、シャドウが探し求めて来たものが判明した。まあ、そんな気はしてたけどね。
ポンが話し掛けて来る。
「俺も行くよ。そして、もし戻って来たら・・・」
多分アレだ。ドネツクに影響されたんだ。ポンは昔から厨二病チックなところがあるからね。
私も乗ってやることにした。
「ポン、それはフラグになるから止めて」
「だったら、今言うよ。お前が好きだ。師匠に許可は貰っている。後はお前次第だ。結婚してほしい」
おい!!想定外のことを言うなよ!!
前世を含めて、私は恋愛経験ゼロだ。
こんな不意打ちに対処できるはずがない。それにポンは私のどこを気に入ったんだ?
パニックになった私は言った。
「友達からお願いします」
「おい!!ずっと友達だっただろ?」
「そうだけど・・・そういう友達じゃないんだよ・・・」
そんな会話をしていたら、周囲に人だかりができていた。
魔王が言う。
「どっちでもよいから、そろそろ行くぞ。見ているこっちが恥ずかしくなるぞ」
私とポンは赤面しながら、みんなの後を追った。
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新作を発表しましたので、よろしければ、読んでみてください。主人公はエミリアと同じ転生者です。エミリアはスキルが偏っていましたが、今度の主人公は色んな意味で偏っています。小職著「絶対に私は勇者パーティーに入りません!!」、「転生した底辺OLが、雑用スキルで異世界を無双する話」を合わせたような作品となっています。
「転生したポンコツ女社長が、砂漠の国を再建する話」
https://ncode.syosetu.com/n2109ki/
あらすじ
大森智子(37歳)は、国内シェア第4位の老舗家具メーカー、大森家具の女社長だ。父親から無理やり経営権を奪い取り、社長に就任したはいいものの、行った施策がことごとく失敗し、会社は経営破綻寸前まで追い込まれる。プライベートでも裏アカを使ったツイフェミ活動をしていることがバレ、どん底に叩き落される。そんなとき、大人気RPGシリーズ「ファースト・ファンタジー・クエスト3」(通称FFQ3)の世界に転生してしまう。
転生したのは、魔王軍四天王の一角、サキュバスのティサリアだったのだが、ティサリアも勘違いポンコツサキュバスで、サキュバス特有の魅了スキルは習得しておらず、使えるのは幻影魔法とちょっとした生活魔法だけだった。
そして自ら企画、立案した砂漠の国ヴィーステ王国の乗っ取り計画だが、乗っ取った後に重大な事実が判明する。もしヴィーステ王国を滅亡させてしまえば、自分はおろか、大切な仲間、想い人である魔王までも、勇者に討たれてしまうことが発覚する。
これは前世がポンコツ女社長であるサキュバスが、ケットシーやロリババアの大魔導士たちとともに、生き残りを掛けて滅亡寸前の砂漠の国を再建する物語である。
※ 見どころ
主人公が仲間の支えもあって、滅亡寸前の砂漠の国を再建していきます。成長するにつれて、主人公が前世での過ちに気付き、前世の失敗を糧に奮闘する主人公にご期待ください。魔王との恋も少し気になるところではありますが・・・
因みに主人公に特別なスキルはありません。あるのは前世で失敗した経験とゲーム知識だけです。果たして、砂漠の国を再建することができるのでしょうか?




