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107 ディアブル島救出作戦 2

 大国が協力すれば、あっという間だった。

 私は巫女の姿で、イシス帝国の最南端サウスエンドに来ている。ステージ上の私の傍らにはリリアン女王を筆頭とした勇者たち、聖女フリアの聖女パーティーがいて、会場には大勢の観衆が詰めかけている。


 今も聖女フリアが観客を前に聖人シビルが、如何に素晴らしい人物であったかを涙ながらに語っている。


「私が教会の不正に気付いたのは、シビル様のお陰でした。私もシビル様に協力したいと言ったのですが、断られたのです。シビル様はこう言いました。


『聖女の君を危険な目に遭わせられない。もし私が死ぬようなことになったら、それは教会と犯罪組織カラブリアが犯人だ』


 今でも後悔しています。あの時、シビル様を止めていれば・・・」


 感動的な話に聞こえるが、全くの大嘘だ。シビルなんて、聖女を亡き者にしようとしていたしね。


 聖女の後にリリアン女王が続く。

 理路整然とこれから向かう施設が、カラブリアの収容施設ということを説明していく。女王なだけあって、皆、話に引き込まれて行く。


「私たち勇者は、新しく発見された経典の教え『勇者よ。聖女と共に立ち上がれ』を信じ、ここに集結したのです!!」


 歓声が上がる。魔王の言葉どおり、経典が「導きの洞窟」で発見されたのも、信憑性が増した要因の一つだ。


 そして、私にも役割があった。

 それも最後の重要な役割だ。聖女、勇者を差し置いて、私がトリを務めるのもどうかと思うが、やり切るしかない。


「皆さん!!私は嘘を付いていました。実は私は悪の化身、血塗れ仮面なのです。しかし、勇者様や聖女様の支援もあり、立ち直ることができました。それでは真の姿をお見せします!!

 闇よ!!我に力を!!変身!!」


 私は巫女から血塗れ仮面に変身した。この辺の住民は、巫女と血塗れ仮面が同一人物と知らないので、驚いてくれている。特に子供たちにはウケがいい。

 魔王が言うには、世界観としては、これが最適だという。多くを語らない私は、観衆に悪の組織から寝返った者だと思うだろう。もちろん私は、悪の組織のメンバーではない。しかし、そう思わせることによって、聖女や勇者の存在が際立つのだ。

 悪の組織のメンバーを改心させる程の人物だという風にだ。


「聖女様、勇者様!!さあ参りましょう!!」


 私が言うと、フランメとフランメの両親、ウインドルとウインドルの母親が舞い降りた。


「異界より、ドラゴンを召喚しました。大いなる悪を討つのです」


 ドラゴンに乗って、私たちは飛び立った。

 魔王を見ると満足そうに頷いていた。どうやら、合格点がもらえたようだ。



 ★★★


 ディアブル島に到着した。

 既にドノバン率いる猛者部隊も到着して待機していた。メンバーはゴーケン、ティーグ、オデット、シェリルだ。ティーグ、オデット、シェリルは、メリダ王女を誘拐した黒幕がいるかもしれないと思い、いきり立っていて、ドノバンは止めるのに必死だったという。


「やっと来てくれた・・・三人が今にも攻め込むと言って聞かなかったからね。これでひと安心だ。因みにシャドウさんとポンさんは別行動だ。すでに人質がいる場所も把握しているよ」


 リリアン皇女が言う。


「では、当初の予定通り、捜査令状を示して、正式な捜索を実施しましょう。そこで変な動きを見せれば、問答無用で実力行使です。いいですね?」


 これには全員が従う。


 施設は、日本で言う大型ショッピングセンターくらいの大きさで、修行施設という建前に似つかわしくないくらいに警備兵がいる。

 門の前で、リリアン女王が勧告を行う。


「こちらには、捜査令状もあります。すぐに門を開けて、捜査に協力しなさい!!」


 担当者が令状を確認する。


「聖人シビルの殺害容疑!?ちょ、ちょっとお待ちを確認を取って参ります」


 しばらくして、門番が戻って来た。


「上に確認しましたところ、教皇様の許可が必要とのことでした。なので、すぐに対応は・・・」


 言い掛けたところで、シャドウとポンが姿を現した。5人の男たちを拘束している。

 シャドウが言う。


「極秘情報だが、この者たちは、この施設から逃走を計ろうとしたので拘束した。聖人シビルの殺害も認めている」


 リリアン女王が引き継ぐ。


「捜査に協力するどころか、犯人を匿い、逃がすとは・・・・ゴーケンさん、お願いします。これより強制執行を開始します!!」


「うむ、覇者の一撃!!」


 ゴーケンは、鉄製の門を切り裂いた。勇者たちが歓声を上げて、施設に雪崩れ込む。勇者たちも、それぞれで、令状を用意しており、一人一人が国の依頼を受けた捜査官なのだ。シビル殺害容疑や誘拐事件を起こしただけでなく、様々な犯罪に手を染めていることは、間違いないだろう。各国で話し合った結果、どんな些細な罪でも、立件できるものはすべて立件する方針なのだ。


 私はというと、聖女パーティー、リリアン女王とドネツクらとともにこの施設の責任者の部屋を強襲する。責任者は、太った40代の男で、聖職者に似つかわしくない派手な装飾品を身に付けていた。


「こんなことは許されませんよ!!すぐに抗議をします!!」


 リリアン皇女が言う。


「やれるもんならやってみろ!!」


 あっと言う間に責任者と責任者の護衛を拘束した。

 しばらくして、ポンからすべての人質を無事に救出したとの報告が入った。

 リリアン女王が言う。


「一体、いくつ罪状があるんでしょうね?素直にすべて、話してもらえませんか?ここには拷問主任官もいますから、これから拷問でもしましょうか?」


 責任者は怯え切っている。

 そして、言った。


「すべては教皇様の命令なのです。カラブリアというのは教皇様直属の暗部のことです。つまり、カラブリアのトップも教皇様なのです。それに私も脅されて・・・」


 本当のところは分からないが、捜査に協力する意思はあるようだ。気が変わらないうちに話を聞いていく。次第に組織の全貌が分かって来た。

 この施設の責任者が言うには、カラブリアのすべては教皇しか分からないようだ。この責任者もカラブリアの存在と大まかな活動内容は把握しているが、詳細は分からないという。


 リリアン女王が言う。


「各国との調整は必要ですが、教皇を拘束するしかありませんね」


 これで、ディアブル島救出作戦は終了した。次は教皇を拘束しないとね。

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