102 聖女が町にやって来た 4
聖女パーティーだが、かなり実力がある。
冒険者ランクはBらしいが、実際はAランクでも通用する。パーティーの基本戦術は、少し変わっていて、聖女のフリアが支援魔法と身体強化魔法を重ね掛けして、聖女自らメイスを持って最前線で戦う。つまり前衛が3人なのだ。そして、文官で魔導士のドルトが指示を出しながら、魔法でサポートするというスタイルだ。
ドルトが言う。
「驚いた?フリアは、実は脳筋タイプなんだよ。普段は猫を被っているけどね」
「そうなんですね」
「フリアは支援魔法も身体強化魔法も得意だから、これでいいんだよ」
「私はすることがなさそうなので、ドルトさんのサポートをしますよ」
「そうしてくれ。久しぶり過ぎて、あの三人は俺を守ってくれなさそうだから、助かるよ」
聖女パーティーは、だんだんと調子を取り戻してくる。そうなると私はいよいよ、することが無くなってしまった。私が倒した魔物は1体だけだしね。
しばらく、探索を続けていたところ、女性騎士ターニャが宝箱を発見した。
「宝箱だ!!念のためドルト頼む」
「はいはい、俺は便利屋じゃないんだけどな・・・」
ドルトは斥候のスキルを持っているようで、宝箱を確認する。
「罠はない。開けるぞ」
宝箱の中には、経典が入っていた。経典を読むとこう書かれていた。
「聖女よ、信じた道を進め」
聖女はこれを見て、涙ぐんでいた。
「私たちがやって来たことは、間違いじゃなかったのね・・・名残惜しいけど、戻りましょうか?」
「そうだな」
「ああ」
「そうしよう」
何かこのパーティーは、思うところがあるようだ。
私は駄目元で聖女に尋ねた。
「何か事情があるのでしょうか?」
「ここまで一緒に行動してきて、エミリアさんは信用できる人だと思うから言うけど、実は私が聖女になったのも、事情があるのよ。一言で言えば潜入調査ね」
聖女が言うには、パーティーメンバーは全員が同郷で、故郷の村が犯罪組織に襲われて、壊滅したそうだ。
「それで四人で、仇である犯罪組織に復讐するために冒険者になったのよ。色々と調査した結果、その組織はカラブリアという組織だった。そして、その組織を調べて行くうちに教会にたどり着いた。でも教会に調査なんて入れないし、仕方なく聖女として活動することにしたのよ。偶々、聖女の募集があったから応募したいうわけ」
「カラブリア・・・私の母もその組織に殺されています」
しばらくして、聖女が言った。
「貴方も同じ境遇だったのね・・・だったら共闘しましょうよ。それと文官のシビルだけど、拷問所にこだわっていたでしょ?多分、拷問所に何かあるのよ」
「だったら協力しますよ。私は拷問主任官ですし」
それからは探索を中止し、帰還することにした。
帰還する途中に作戦会議も行う。
「拷問所の視察を遅らせて、シビルをイラつかせてはどうでしょうか?そうすればボロが出るかもしれませんし」
「いい案ね。宛てはあるの?」
「フリアさんは、モフモフした魔物は好きですか?」
「逆に聞くけど、嫌いな人なんているの?」
「じゃあ、こういったのはどうでしょうか?」
私は作戦を説明した。
フリアたちは賛成し、地上に戻った。フリアはすぐに聖女に戻っていた。年季が違うようだ。
「皆さん、お待たせしました。こちらも、かなりいいダンジョンでした」
出迎えたルミナが答える。
「ありがとうございます。それでは戻りましょう。でも時間的に拷問所の視察は厳しいようですが・・・」
「そうですね・・・」
シビルが会話に入る。
「拷問所の視察は絶対に必要です。それに併設されている魔法研究所もです。こちらとしては、日程を1日伸ばしても構いません。それで調整してもらえないでしょうか?」
「分かりました。調整はしてみます」
★★★
コーガルに戻った私はすぐに聖女と別れて、拷問所に向かった。マホットに状況を説明する。
「ということは、拷問所と魔法研究所に教会として知られてはならない、何かがあるということじゃな?二つの施設に共通するのは・・・自白剤・・・痺れ薬・・・電気ショック・・・」
おいおい大丈夫か?視察に来られたらアウトだったんじゃないのか?
「魔法陣じゃ!!工作員が体に刻印されている魔法陣じゃ。まだ、すべて解明されていないが、時間を掛ければ解明が可能と研究員が言っておった。もしかすると、それを狙ったのかもしれん」
「多分、それじゃないでしょうか?魔法陣を解明すれば、カラブリアや教会の知られてはならない情報が明らかになる」
「となると、視察にかこつけて襲撃してくるじゃろうな。まあ、あの程度の相手、どうとでもなるが」
一応、拷問所と魔法研究所の警備の強化をして、ポンを中心に諜報活動も強化してもらうことになった。
マホットが言う。
「儂らは研究所の職員を総動員して、魔法陣の解析を行う。しばらくは徹夜じゃな」
そんな時、事件は起きた。
道場に戻ったところで、慌てた様子のスタッフから衝撃の内容を告げられた。
「大変です、エミリア先生!!門下生の喧嘩です」
「いつものことね。それで?」
「喧嘩はいつものことですが、相手が悪いです。神官騎士団です。それに相手もそれなりに強く、大乱闘となっています」
あの馬鹿ども!!こんなことなら、全員半殺しにしておくんだった!!
「ギルドにも応援を!!私はすぐに向かいます。場所を教えてください」
「場所は繁華街です!!」
私はすぐに現場に向かった。恰好は血塗れ仮面だ。
全員血塗れにしてやる!!
あれ?私って闇落ちしてないか?
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