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10 第二回コーガル少年ソフト模擬戦大会

 早いもので、第二回コーガル少年ソフト模擬戦大会が、今年も開催されることになった。子供たちからお願いされて、3ヶ月前から特別訓練をするようになった。それに今回は雪辱を晴らすと言って、盛り上がっているから、仕方なくそうしている。祖父にも指導を頼んだ。


「子供のチャンバラごっこを指導するようになるとは、儂ももう終わりだな・・・この思いを癒してくれるのは、金しかないか・・・」


 結局金か?クソジジイ!!


 まあ、最近儲かっているので、特別指導手当を支給することにした。


 昨年、悔しい思いをしたレオ君が言う。


「今年は絶対優勝したい。だから、1チームだけ最強メンバーを揃えさせてくれ」


 気持ちは分からなくもない。昨年はホクシン流剣術道場から3チームが出場した。どのチームも実力が均等になるようにメンバーを決めた。だからこそ優勝できなかったというのもあるが、これは難しい問題だ。


「レオ君の気持ちも分かるけど、他の門下生のことも考えてね。みんなで少し話し合ってみたら?」


 結果は全会一致で特別チームを作ることになった。みんなホクシン流剣術道場に優勝してほしいと思っているようだった。


「分かったわ。でも訓練はみんな一緒のメニューを行います。メンバーに選ばれた人も選ばれなかった人も一生懸命頑張りましょうね」


 ここで問題になってくるのはメンバーだ。試合は5人の団体戦なので、メンバーを5人ずつ3チーム選ばなくてはならない。私は剣士としても指導者としてもセンスはないと自覚している。なので、出費を覚悟して祖父にメンバー決めを依頼した。


「仕方ない。金貨5枚で手を打とう」


 おいおい!!メンバーを決めるだけで日本円で約5万も取るのか?

 とんだ強欲ジジイだ。


「分かりました。お願いします」


「言っておくが、1チーム金貨5枚じゃ」


 おい!!メンバーを決めるだけで、15万はやり過ぎだろ!!無理して4チームにしなくて本当によかった。


 今回の大会には無理をすれば5チームくらいは出せる。しかし、今回の大会から参加費を1チーム金貨5枚取られることになったのだ。これには規模が大きくなったので、町の闘技場を借り切って開催するからというのがその理由だが、どうもきな臭い感じがする。上前をはねるとかね。まあ、私もやっているからそう思うんだけど。


 ということで、私はライライとともにデモンズラインまでやって来た。私は子供たちに精神論と礼儀作法以外指導できないし、今後余計な出費に対応できるように参加費くらいは稼ごうと思ったからだ。それにポン、ポコ、リンも指導者として忙しいし、ルミナは選手として出場予定だからね。


 討伐した魔物を搬送してくれる者がいないので、素材採取に専念した。魔物が出たら、撃退するにとどめた。私の予想では今後ソフト剣が多く売れると考えて、ゼリースライムと海綿草を中心に採取していく。この予想は当たり、ドワーフの親方だけでなく、ギルドにも採取依頼が出ていた。ギルドのほうが高く買ってくれるが、半分はドワーフの親方に卸した。まあ、今後ともお世話になるからね。


 ★★★


 そんなこんなで、大会当日を迎えた。

 肝心の特別チームのメンバーだが、こんな感じだった。


 先鋒 ルミナ

 次鋒 マイン

 中堅 レオ

 副将 リン

 大将 ドノバン


 大会当日までメンバーを知らなかったのは、道場主として問題かもしれないが、私は私のやることはやっていたと心の中で言い訳をした。一応選手の特徴くらいは言えるしね。


 先鋒のルミナだが、あまり剣術のセンスはない。しかし、型通りに基本に忠実に戦うし、身体強化の魔法が使えるので安定感がある。普通の剣士には、まず負けない。因みに身体強化の魔法以外は使用禁止なんだよね。


 次鋒のマインちゃんは、とにかく素早い。不利なソフト短刀での出場だが、それが逆に目先が変わって相手は戸惑うと思う。ちょっと初見殺し感は強いけどね。


 中堅のレオ君はパワー型だ。ソフト短刀を両手に持ち、短刀使いとしてではなく、拳闘士のような戦いをする。レミールさんの指導でそうなったようだ。蹴りも投げも禁止のルールでやりにくいだろうが、それを補って余りある身体能力を買われての抜擢だろう。


 副将のリンは、ルールぎりぎりを使っての出場だ。15歳未満が出場資格なので、後1ヶ月大会が遅れていれば、出場できなかった。実力は歴が長いのでこちらも安定感がある。先生もしてくれているから、大崩れはしない。安心して見ていられる。


 そして大将のドノバンだが、実力的にはリンの方が上なのだが、持ち前の負けん気とリーダーシップを買われての抜擢のようだ。まだまだ発展途上だけど、センスはピカイチだ。「最後は俺に任せろ」って感じかな。


 オーダー票を見ながら祖父にお礼を言う。


「ありがとうございました。良いメンバーを選んでいただいたと思います」

「礼には及ばんぞ。指導者として当然のことをしたまでだ。それより、今日の助言料は別に貰おうと思うのだが・・・」

「それは結構です。門下生の自主性に任せます」


 危ない・・・また不当に巻き上げられるところだった。


 それに元々、当日はアドバイスしないでおこうと思っていた。変に素人の私が口出ししてもアレだし、逆にアドバイスがないと戦えない子にはなってほしくないからね。

 ということで、私は試合が始まるまではのんびりと過ごす。ライライと屋台を回って食料を買い込む。試合中にライライが騒がないように多めに食料を買っておかないとね。


 ライライも分かっているようで、今回だけはすぐに食べなかった。何だかんだ言ってもライライは非常に賢い魔物なのだ。タヌキっぽい黄色い奴だが、みんなに愛されている。


 そしてとうとう試合が始まった。

 この大会にはコーガルの町やその周辺の村から32チームが出場している。最初に4チーム総当たりのリーグ戦を行い、各グループ1位のみが決勝トーナメントに進める。予選リーグで負けたチームにも2位なら2位、3位なら3位のチーム同士でトーナメントを行う。これは私が提案したことで、なるべく多く試合をさせてあげたいとの思いからだ。これには多くの道場主が賛成してくれたけど、前年の優勝チームを輩出したブラブカ道場は「時間の無駄だ」と言って反対していた。そんな感じだから、あんな指導法になるんだと会議の席でそう思ったものだ。


 予選リーグの結果だが、なんと我がホクシン流剣術道場は3チームともすべて、1位で予選リーグを突破した。これにはライライも大喜びだ。


「ライライライライ!!」


 本当に賢い奴だ!!


 こうなったのは、私が勝つたびに食料を与えていたからかもしれないけどね。

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