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名探偵の駒鳥

作者: 一色 良薬

名探偵・名雲南雲の元で探偵の卵として弟子入りしている薙保七瀬。

彼女は探偵業界の中ではかなり有名人である。

探偵としての稀にみる才能がある、訳ではない。美しく誰もが魅了されるカリスマ性がある、訳でもない。

はっきり言って七瀬には探偵としての素質は皆無近い。いや壊滅的と言えよう。

頓珍漢な推理を発揮しては真相を迷宮入りまで案内させてしまう。

もちろん名雲が圧倒的な頭脳で真相解明へ導くのだが──ポンコツ具合で業界から一目置かれている訳でもない。

 天下無敵の名探偵様には愛してやまない駒鳥がいるらしい。駒鳥が他でもない七瀬なのである。

 事件解決達成率99.9%。無駄のない振る舞いと落ち着いた物腰。熱い正義感と力強い誠実さ。推理を披露する雄弁な堂々とした様。そして例え犯人でさえも、最後には情をかける人格者。

 彼に魅了されない理由を探す方が難しい。

 女性からのアプローチは凄まじいものだ。露骨なものからさりげないものまで選り取り見取りである。

 しかし彼は誰一人として誘いを受けることはなかった。

「申し訳ない。目の離せない駒鳥を世話しているものでね。」

 はっきりとした物言いで立ち去る名雲が指した“駒鳥”。世話という言葉からして七瀬のことだと気付いた花々は、悔しさよりも少しの納得を覚えてしまったらしい。

「名雲先生にかかればすぐに“解決”されるに違いない」

 名探偵にかかれば恋だってすぐに解明される。相手はあのポンコツの七瀬だ。

 誰もがそう思い込んでいた。

しかしお忘れだろうか。事件解決率99.9%。残りの0.01%の存在。

名雲が唯一解き明かせない謎、それが七瀬に抱いた恋心だった。

恋は自分だけが好きなのではピースが足りない。相手にも好きになってもらって形となる。しかし一向に七瀬が名雲の気持ちに気付く様子はない。

「いやはやこれほどまでに難解な謎があるとは」

 弟子にして最強の謎だ。名雲は今日も慌ただしい存在を遠目で観察しながら、優雅に紅茶を口にした。

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