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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.丹念皇女と翹望
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《番外編05》果敢騎士と専属侍女

アスターシアの専属侍女シーナと近衛騎士ユージスのお話になります。

※時間軸としてはアスターシアが三歳の頃です。

→サブタイトル「最強皇女と帝国」(3話~4話)の間。

──アスターシア様の傍に控え、付き従うようになって数日。

僕がここ数日で分かったことは、

アスターシア様は何かと勤勉であられることだ。

とてつもない偏見なのは承知の上だが、

僕は上流階級の人間はいつも豪遊して堕落した日々を送っているのだろうと勝手に思っていた。

それも騎士団に入団して数多の貴族出身の騎士と関わるようになってからは誤解だったと認識したけれど、

それでも皇族に対する認識はそのまま変わることはなかった。


噂にはとても優秀で聡明なお方だと聞いていた。

それでもそれは表向きの皇女としての姿に過ぎないのかと思っていた。

それは全て間違いだったけれど。

まだ三歳という幼さであらゆる分野の勉強に勤しみ、

いずれ国を率いる者として既に自覚を持っておられる。

初めてその姿を見た時、僕はどうだっただろうかと考えた。

近所の男友達とワイワイと騒いでは親に迷惑をかけて……今思えば相当なヤンチャだった。

遊びたい年頃だろうにアスターシア様はそうはなされない。

時折庭園に出て散歩をして、

時にどこかへ姿をくらましてしまうくらいで、

幼い頃の僕のように騒がしく遊ぶことはされない。

──皇族とはこんなにも窮屈なのかと不敬にもそう思ったこともある。


「シーナ、少し良いだろうか」

「あらユージス。何か悩み事?」


同じアスターシア様に仕えるシーナは幼い頃からの幼馴染みだ。

フローレンス子爵家の長女である彼女だけれど、

領民と家族同様に親しくする彼女とは時折遊ぶことがあった。

お互いに大きくなってからはめっきり会わなくなってしまったが、

またこうして会えるとは……不思議だなと思う。


「王都の西地区で強盗が起きたようだ。

僕はこれからそちらの応援へ向かうので、

後にルーカスが代わってやってくる」

「了解したわ。

アスターシア様には騎士団の仕事で急遽交代したと伝えておきます」

「ああ、頼む」


アスターシア様の部屋の外へ出て、

六番隊の部下から連絡を受けた僕は再度室内に入り直し、

部屋の隅で勉強中のアスターシア様の邪魔にならないように控えていたシーナに声をかける。


僕の言葉に少し驚いたように目を見開いたものの、

すぐさま真剣な眼差しで頷きを返す幼馴染みの姿に、

相変わらずだなと内心微笑する。

彼女は昔から気が強く、僕よりも先に悪者を懲らしめるような質だった。

いつでもアスターシア様を守れるように日々鍛錬に励んでいる。

それは僕達騎士団だけでなく、

専属侍女であるシーナとレイナの二人もそうだった。


基本僕達騎士団に比べれば危険な目に遭う頻度は少ないけれど、

公務や視察などで多数の人の前に立つことがあった場合には常に危険が付きまとう。

シーナとレイナの二人は主に短刀を扱う近距離戦のプロで、

その実力は騎士団長も認めるほど。

アスターシア様は二人が戦えることを知らないだろうが、

もしものことがない限りは使う必要のない技術でもあるし、

そこまで深く気にかけることはないのかもしれない。

そう思いつつも僕は宮殿の廊下を少し急ぎ足で歩いていく。

──ことは一刻を争う。急いで現場を確認しなければ。



「……あのやんちゃだった頃とは全くの別モノね」


シーナは一人、ユージスが出ていった方向へ目線を向けひっそりと呟く。

生涯を捧げると陛下に誓った唯一の主は今ようやく朝から始めていた勉強を終わらせひと息ついているところだ。

こうしてまだ幼い身でありながら勉学に励む姿を見てきて、

このように熱心な方がいずれはこの国を背負い、

私たちを導くのだと考えるとなんと素晴らしいお方なのかと感嘆する。

けれどそれと同時に……危うささえ覚える。

何となく感じるこの思いはきっと間違いではないのだろう。

けれどそれはただの思い違いだとシーナはひっそり心の奥底に押し込め、

私とレイナが用意した茶菓子を美味しそうに食べている主君の姿を見て考えを振り払う。

──私たち使用人は例え主君が間違った道を進んでいると察していてもそれを忠告することはできない。

主君の思し召しこそ私たちの総意。

それでもこのまま真っ直ぐに清らかに、美しく、

そして何よりも優しいまま育ってほしいと願う。


「アスターシア様、紅茶のおかわりはいかがですか?」

「ありがとう、よろしく頼むわ」

「はい。かしこまりました」


真面目に机の上に広げられた書物に目を通す時とは一変して、

気楽に過ごしている主君の姿に微笑ましく感じつつ、

差し出されたティーカップにティーポットにまだ残っている紅茶を注いだ。

 

 

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