《番外編03》丹念皇女と能力
アスターシアの能力について判明した際のお話になります。
※時間軸としてはアスターシアが二歳の頃です。
→サブタイトル「最強皇女と帝国」(1話~3話)の間。
叔母上がエスポワール帝国に滞在し始めて三日が経ち、
今日は大陸の中央にある国、『オルテンシア神聖国』から大司教ミアが訪問することになっており、
昼前に私は叔父上に呼び出されて第二宮殿から第一宮殿の客間にやってきていた。
客間には腰元で綺麗に切り揃えられた黒髪のロングヘアに黄金色の瞳。
金色の着物に薄く紫がかった色の帯、着物の上には紺色の羽織を着ており、
頭には白色の被衣をかぶった美しい女性が客間に設置されたソファに座っていた。
「こんにちは。お初にお目にかかります、第一皇女殿下。
わたくしはオルテンシア大教会にて大司教として日々ヴァレンティーナ聖教会の教えを伝えているもの──ミアと申します」
「お初にお目にかかります、大司教猊下。
本日は遠路はるばるようこそお越しくださいました。
エスポワール帝国第一皇女アスターシアと申します。
本日は能力鑑定の結果をお教えいただけるとのことですが……」
「ええ、それでは早速結果をお伝えしましょう。
能力鑑定の評価はS+。
S+の判定を得た能力者のことを我々は『覚醒者』と呼んでおります」
「覚醒者……」
聞き覚えのある言葉に私は無意識に背筋が伸びる。
──『覚醒者』とは、世界中に存在する能力者の中でもたった一人で国を潰せるだけの力を持つ者の通称。
「あなたは現時点で覚醒者と判定された者の中でも抜きん出て強く希少な能力を持っています。
何しろその身に六つもの能力を有しておいでですから」
「六つ……ですか?」
「ええ、あなたはその歳で自身の能力がどのようなものなのか……確実に一つは確信を持っていたようでしたが、
そのほか五つもの能力を秘めておられました。
これにはわたくしたちもとても驚いたものです。
こちらがあなたの能力の一覧と概要になります。
女皇陛下にご自身の持つ能力をお教えされるかどうかは皇女殿下がお決めください」
「分かりました」
大司教ミアから手渡された紙には私が既に知っていた『絶対遵守』とは別の全く知らなかった能力についての詳しい内容が事細かに書かれていた。
『絶対遵守』『解析鑑定』『収束』『守護』『透視』『異空間創造』──この六つの能力について私はこの後何時間にも渡って私が理解するまで教えてもらった。
■
「まさか絶対遵守だけじゃなかったなんて……」
第二宮殿にある自室へ戻ってきた私はソファに深く座り込んだ。
誰にも聞こえないようにボソッと呟いた私の言葉は声を発した私自身でさえ分かるほど疲れた声色だった。
確かにアスターシアという存在はゲームではあまりにも完璧すぎた最強のキャラだ。
ゲームの限定版に付属されていた設定資料集に明記されていた『絶対遵守』の能力については分かっていた。
それだけでも恐ろしいほど強すぎるというのにまだ複数の能力があるということについては予想外でしかなかった。
今後のことを考えれば……この六つの能力を利用することは確定として、
それと同時に能力を制限する必要もあるわね……。
けれど、『自主的に能力を制限する』なんて考え自体この世界ではあまりないことだ。
加えてこれを実現することだってかなり難しいこと。
……困ったことが増えちゃったわね。
また新しい問題に頭を抱える必要ができてしまったことに無性に全て投げ出してしまいたい気持ちになるが、
まだゲーム開始時点ではない。
これから少しずつでもこの能力についてどうにかしていくしかないわね。
加えてまさか『覚醒者』と呼ばれるようになってしまうなんて……。
世界では魔法師よりもより強力な能力を持つ能力者を優先的に贔屓する傾向にある。
何しろ『覚醒者』は国家権力よりも強い世界的な権力を有していることの方が多い。
──つまりは国王よりも権力を有しているということ。
ただしそれが通じない国だってある。
それが『オルテンシア神聖国』『エスポワール帝国』『サントリナ連邦王国』の三か国。
何故この三か国なのかといえば、
『オルテンシア神聖国』はヴァレンティーナが、
『エスポワール帝国』はセラフィーナが、
『サントリナ連邦王国』はヴィルヘルムが建国した。
つまりは三英傑が建国した三か国だけは国の最高権力者を三英傑の血を継ぐ王族と定めているからだ。
能力が強ければ良いというわけではなくその血統を重んじている。
……まぁ、私はあんまり関係ないのかもしれないけれど。
この世界における能力者はその能力の強さによって五段階に分けられている。
一番下のD級は『共通能力』、
C級は『特殊能力』、
B級は『特異能力』、
A級は『特有能力』、
S級は『固有能力』という段階に分けられて呼ばれている。
それらのトップが『覚醒者』と呼ばれる存在。
今のところ知られているのは私を含めて五名。
その中には母上と叔母上もいる。
──そういえば叔母上は私と同じ精神系統の能力者だったはず……。
暴走とかして取り返しがつかなくなる前に何かアドバイスのようなものを滞在期間中に教えてもらおうかしら……?
あとは──母上に頼んで魔法師団長に会わせてもらえるように場を設けてもらう必要があるかな。
聞き及んでいる彼ほどの実力者なら能力を制限する方法だってゼロからでも作りだせるはずだ。




