《番外編02》丹念皇女と皇妹
アスターシアが叔母であるヒンメル王国王妃と初めて出会った際のお話になります。
※時間軸としてはアスターシアが二歳の頃です。
→サブタイトル「最強皇女と帝国」(1話~3話)の間。
ユージスやジスタとある程度は仲良くなれた日の二日後。
今日はユージスとルーカスの二人が近衛騎士として傍に控えてくれている。
そして今日は初めて母上の妹──私にとっては叔母にあたる隣国、ヒンメル王国の王妃アメーリアが王宮へ訪れる日だ。
どんな方なのか分からないという不安を抱えながら私は二人を引き連れて大広間へ向かう。
■
「初めまして、叔母上。お会いできて嬉しいです」
「初めまして、アスターシア。私もこの日を待ち遠しく思っていたわ」
大広間に入ると既に玉座に座る母上の前に叔母上がいた。
母上と同じ銀色の髪を緩いお団子に結い上げた淡藤色の美しい瞳を持つ美麗な容姿。
母上と同じように結い上げている髪型は遠目から見れば母上と見間違えてしまうだろう。
それくらいに叔母上はとても母上に似ていた。
違うのはその瞳の色と横髪だろうか。
叔母上の下ろしている横髪は首下までの長さだが、
母上の下ろしている横髪は胸元までの長さ。
白のドレスが似合う母上とは正反対な黒のドレスがとてもよく似合っている。
違いは少ないけれどもそれはまだ私が叔母上のことについてまだよく分かっていないからだろうと思い、
思考を母上と叔母上との会話に集中させるため、考えを中断することにした。
「そういえばオルテンシア大教会の大司教ミア様から手紙を預かりましたわ」
「手紙?また珍しいこともあるものね……」
叔母上から手紙を受け取った母上が綺麗に封筒をあけていくと、
送られてきた手紙の内容をほんの少し読んでいた母上が少し遠くからその様子を見つめていた私を手招きして呼ぶ。
「どうかしました?」
「これはあなた宛のようよ。先日の能力鑑定の結果が出たことと後日説明に来るとの知らせのようね」
「なるほど……」
渡された手紙を受け取り中身を確認すると確かに母上が私に説明してくれた内容が書かれていた。
一か月くらい前にやったのにもう結果が出たのか……と予想よりも早い知らせに驚きながらも私は受け取った手紙を封筒の中に丁寧に戻す。
「さて、形式的な挨拶はこのくらいにして、
ここからは皆でまったりお茶会でもしましょうか」
「私としては嬉しい限りですが……お姉様、お仕事の方は大丈夫なのですか?」
「問題ないわ。この日のために急ぎの公務は終わらせたから」
玉座から立ち上がった母上が、
広間の隅に控えていた侍女長に声をかけて庭園にあるガゼボに紅茶や茶菓子の用意をするように命じる。
庭園にあるガゼボには本来ならベンチだけが設置されているだけの休憩所なのが普通だが、
王宮内にあるガゼボには白いガーデンテーブルが置かれているため、
外で庭園に美しき花々が咲き乱れた景色を見ながら優雅にお茶を飲むことができる。
■
第一宮殿内にある庭園の一角にやってきた私と母上たちは、
既に用意されたお茶や茶菓子の数々が並べられたガーデンテーブルの前に私たちはゆったりとガーデンチェアに腰掛ける。
「アスターシアは苦手なものはある?」
「うーん……辛いものは苦手です」
「あら、そうなの?」
「あのひりひりした感じがあまり好きではないですね」
「なるほどね……」
淹れられた紅茶を口元に運びながら、
叔母上から問いかけられた質問に答える。
そもそも叔母上からこうして質問されるまで、
自分の好き嫌いなものを考えたことがなかったなぁと改めて思った。
好きなものも嫌いなものも深く考えるという発想は全く思いつかなかった。
「アスタはあんまり好き嫌いが激しいというわけでもないものね」
「なら、これから贈り物をするときには辛いものは避けるようにしましょう」
「ありがとうございます」
にっこりと楽しそうな笑みを浮かべる叔母上の表情を見て、
少しおちゃめなところは母上と似通っているなぁとぼんやりと思う。
こうして正式な場ではないプライベートな時間に見る叔母上はやはり母上とそっくりだ。
国の王として立つ母上は厳しいところもあるけれど、
公務外ではとてもおっとりしてふわふわした人だ。
私は勝手に叔母上は常に厳しい人だと思っていたけれど、
それは間違いだとこのお茶会の時間でよく分かった。
これから先、たくさん関わることが多いだろうし、
叔母上との親睦もより深められたらいいなぁと私は楽し気に談笑する母上と叔母上の様子を見ながらひっそりと思った。




