《BD記念》美麗兄弟は歓迎される。
第一皇子ノルベルト・コンヴィクションと第二皇子アフェク・コンヴィクションのお誕生日祝いのお話。
※時間軸としてはアスターシアが17歳の頃です。
→サブタイトル「矜恃皇女と授与式」(60話後)
──エルヴィーノ公爵を捕らえることができてから、
一年程の月日が流れたエスポワール帝国では、
新たな内務卿を選んだり、エルヴィーノ公爵家への対応だったりと普段からある仕事と同時に忙しなくしていたため、
一月にあったノルベルトの誕生日を祝う時間は取れたもののプレゼントを用意する時間がなく、
遅れてしまったけれどアフェクと共に贈らせてもらうと約束してからついにその日がやってきた。
「さて、第五宮殿の方の準備は整っているかしら」
「えぇ、アスターシア様のご命令通り、
お祝いの用意は順調に整っているとの連絡を受けました」
馬車に乗って一足先に第五宮殿へ向かった私の傍には、
いつも通りシーナ達が控えている。
今朝は母上主催の誕生祭があったため、
私もフィーリアもノルもアフェクも今日のために仕立ててもらったドレスや礼服に身を包んでいる。
私は白に金の刺繍の入ったアフタヌーンドレスを仕立ててもらった。
その後時間があったからカクテルドレスに着替えているけれど。
フィーリアも少し形の違うお揃いのカクテルドレスに着替えると言っていたし、
また姉妹揃ってお揃いのドレスが着られて嬉しいなぁと思考に浸った後、
この第五宮殿を以前使ったのは確かハロウィンの時だったかしら……と私はふと思い出した。
あの頃より皆成長しているし、
アフェクもノルベルトも既に皇子としての品格もその覚悟も当時と比べれば一段と磨きがかかっている。
それは今日の誕生祭での二人の姿を見れば分かることだった。
二人とも漆黒の礼服に身を包んでいて本当にカッコよかった。
あんな男女問わず惚れさせる容姿を持つ者が弟だなんて……とたまに夢かと思ってしまう。
「母上達は時間が取れなかったのは残念だけれど……きちんとプレゼントは預かったし、
はしゃぎ過ぎて渡すのを忘れないようにしないとね」
何かと姉弟妹揃って一緒にいると楽しくてついつい本来の目的を忘れてしまうことが時折ある。
まぁその度にシーナやレイナから耳打ちされるのだけれど。
「あとは……」
最終確認を終えた後は、
フィーリアが二人をここに連れてくるのを待つだけだ。
この世界にはないスイーツを大量に作ったから、
喜んでもらえると良いのだけれど……。
正直そろそろ私の頭の中にあるレシピのストックが足りなくなってきつつある。
■
「姉上、お呼びでしょうか」
しばらく待ったあと、
フィーリアの数歩後ろを歩いて第五宮殿の玄関ホールへ足を踏み入れたのはアフェクとノルベルトの主役二人だ。
にこにこととっても楽しそうに微笑んでいるフィーリアの様子を見て、
私が何か企んでいることは既に察しているらしい。
その顔がちょっと訝しんでいる。
……私、そんなに変なことをしてきたかしら?
そんなことを思いつつ、私は三人を奥の広間へと案内した。
「これは……」
「今日はアフェクの誕生日だけれど、
個人的にノルの誕生日もきちんと祝いたかったのよ。
だから無理を言ってここを借りたわ」
「何か忙しくされていると思っていましたが……そういうことだったのですね」
母上主催の誕生日パーティーとなると貴族たちも集まって厳かなものになってしまうけれど、
私個人で開催するパーティーはこじんまりと身近な人たちだけで行うことにしているから、
アフェクたちも今朝見せていた少し緊張した表情はすっかり綻んでいる。
今朝は母上主催の誕生祭があって、今は夕暮れ時。
「さて、ここに並べられているスイーツはこの日のために私とシーナたちで作ってみたから、
色々と楽しんで食べてほしいわ」
「わぁ……!色んなスイーツがありますね!
見たことのないものもあります!」
目をキラキラと輝かせて弾んだ声色で言うフィーリアの様子を見て私は笑みを浮かべる。
フィーリアもアフェクも甘いものは好きだし、
ノルも疲れた時には無性に食べたくなるとも言っていたから、
精神的に疲れてしまった今ならばちょうどいいのかもしれない。
「ノル、アフェク。二人へ誕生日プレゼントよ」
レイナから丁寧に包装された小さな箱をそれぞれ二人に直接手渡す。
不思議そうにしながらもありがとうございます、と感謝の言葉を述べて受け取った二人は、
そっとリボンを解いて箱の蓋をゆっくりと開ける。
「懐中時計……?」
「えぇ、二人の名前入りの。
特注品で、防水加工もされているし、
出回っているものよりも強固な作りになっているから、
落としても壊れたりしないわ」
「ありがとうございます。大切にします」
「それではお次は母上と父上からのプレゼントを!」
二人の驚いた表情とその後の喜びに頬が緩んだ姿を見て満足した。
こうして喜んでもらえるというのはやっぱり嬉しいわね。
そして次はフィーリアから預かっていた母上と父上からの二人への誕生日プレゼントが手渡される。
──私がついつい渡すのを忘れてしまうということをフィーリアは気付いているのね……ちょっと恥ずかしい。
「ノル兄様には名入のボールペン、
アフェク兄様にはアクアマリンのネックレスです!」
「本当だ……大切に使おう」
「そうだね。後日母上達にお礼に行こうか」
「はい……!」
とっても眩しい笑みを浮かべている兄弟を見て、
私とフィーリアもついつい釣られてしまう。
ああ、やっぱり楽しい。
こうやって生まれた日を祝えるのはとても嬉しい。
いつかは何を贈れば良いのか分からなくなる日もきっと近いだろうけれど。
「さぁ、二人とも!
スイーツ、好きなだけたくさん食べてね」
「はい、いただきます」
「お姉様、これはどういうスイーツなんでしょうか?」
「ああ、これはね───」
こうして姉弟妹仲良く最近の忙しさも忘れて談笑しながら使用人たちに微笑ましく見守られながらその日を過ごしていった────。




