52.気品皇女と邂逅
──アスターシア達が本部でクリムゾン王国の第一王子、第二王子と出会った後。
王宮へやってきたエルヴィンとフィリップの頼みを聞くため母シシアーティアと共にフィーリアとアフェクは広間に控えていた。
「お二人は国王の決断に反対されているのですね」
「第二皇女殿下……」
お母様と話し合いを終え、
全面的に彼らに協力することになった旨を聞いた後、
私はエルヴィン王子達に近付き声をかけた。
「──父に反抗するというのは恐ろしいのではありませんか」
「確かにそうですが、間違いは子である自分たちが正さねばならないと考えています」
「そうですか……あなた方はこうして敵国まで来られて父に対抗しようとしている……。強い方ですね」
「そのようなことは──」
お母様やお父様に反抗する──どれだけ考えてみても、
その時の気持ちや心情はどのようなものなのか分からない。
彼らの心を覗いてしまえば私のこの疑問の答えは得られるだろうけれど、
それはしてはいけない。
他者の心を何の許可もなく覗き見るなんて。
お姉様と約束したもの。
私が本当に必要と感じる事態に陥るまでこの能力は使わないと。
父に対抗するということは母国にいる彼らの姉君や妹君とも戦うことになるのかもしれない。
──もしも私が彼らと同じ立場になったとして、
私はお姉様にその刃を向けられるだろうか。
ノル兄様やアフェク兄様にも。
私にはどれほど考えてもできそうにない。
そんな恐ろしいことを今目の前にいる彼らは国のため、民のために成し遂げようとしているのだ。
──何という精神力なのだろう。
「エルヴィン第一王子、フィリップ第二王子。
これから向かう道ではなく迂回し遠回りしてクリムゾン王国へ進みなさい」
「女皇陛下……それは予知でしょうか?」
「そうです。
恥ずかしながら我が国はまだエルヴィーノ公爵に雇われた暗殺組織全てを捕縛できていないのです。
金目のものに目のない彼らはあなた達を襲うでしょう」
「そうですか……承知致しました」
広間から出ていこうとする二人をお母様が玉座から声をかけて呼び止める。
──お姉様やノル兄様が五年をかけて調べ上げ、
カノナス師団長やアルベール宰相が徹底的に捕らえて追い詰めていったのにまだ残党が潜んでいたなんて……。
今頃またお姉様は前線で無茶をされているのだろう。
どうして私に頼ってくださらないのかしら。
私だけじゃなくアフェク兄様にも。
私たちだって五年前よりも成長したのに。
「第二皇女殿下?どこか具合でも……?」
「いいえ、何でもありません。
お二人ともどうかお気を付けて」
「はい、ありがとうございます」
いけない。暗い顔をしてしまっていたみたいだ。
フィリップ第二王子殿下に心配されてしまった。
すぐに思考を切り替えて何でもなかったよう表情を取り繕う。
お姉様たちもきっと頑張っている。
だから私もここでできる限りのことを成し遂げなければ。
彼らがお母様に告げた決意の言葉に何の嘘はなかった。
強く逞しい心持ちで告げられたものだった。
──彼らの思いが国王に届けば良いけれど……。
去っていく二人の王子を見送りながら私はそう思った。




