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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.矜恃皇女と邁進
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49.矜恃皇女と邂逅

エスポワール帝国とクリムゾン王国の国境付近。

ここに魔法師団副団長オリヴィア率いる第二部隊の魔法によって、

簡易的な戦略会議本部が建てられていた。


私とノルベルトは彼の『空間移動』の能力によって近衛騎士の皆と一緒に一瞬にしてここまで飛んできた。


「流石ですね……こんな短期間でここまで本格的な本部を建ててしまうなんて……」

「お褒めに預かり光栄です、殿下。

お二方にはここにいて頂きます」

「えぇ」


魔法により短時間で創り出したとは思えない戦略会議本部。

そこには長机や椅子、各地の監視塔につけられた透視魔法──をかけた水晶。

いわゆる監視カメラからの映像が空中に浮かぶいくつものビジョンから映し出されていた。

加えてこの通信機。

──ハイテク過ぎやしないかしら……?

まぁ、監視カメラについては私がカノナス師団長に話してみたことがきっかけだけれど。


「ん……?プルメリア神聖王国がある方から何か来ていますね」

「本当ですね。……あの旗は騎士団!?」


映し出されているビジョンの一つにプルメリア神聖王国のある方角から大勢の人がこちらに向かってきていることを知り、

オリヴィア副師団長に聞いてみると、

どうやらプルメリア神聖王国の騎士団が援軍としてこちらへやってきたみたいだ。


「援軍、ですか?」

「えぇ、そうみたいよ」


既に先行隊とクリムゾン王国の先行隊が衝突を始めている。

彼らには誰一人として欠くことなく生き残れと言っているけれど、

指揮官である者がしっかりしていなくては望まない結末を招いてしまう。


こちらへ近付いてきている騎士団達を出迎えるため、

私はノルベルトとユージスたちと一緒に本部から出てみることにした。


「あなたは……クリムゾン王国の?」

「もしや、第一皇女殿下……っ!?」


到着したプルメリア神聖王国の中にはクリムゾン王国の王族が着用する刺繍の入った軍服を身に纏う少年が二人いた。

つい声をかけてみると相手も私達に気が付いたようだ。


「私はエスポワール帝国第一皇女アスターシア。

隣にいるのは第一皇子ノルベルト。

あなた達は……私の間違いでなければクリムゾン王国の王族――でしょう?」

「あぁ、如何にも。

事前のご挨拶もなく申し訳ない。

俺は第一王子エルヴィン、そして隣にいるのは第二王子フィリップ。

俺たちは父上を止めるためにこちら側へやってきた」

「ピエール王を止めるために?」

「あぁ、父上は間違っている。

事の重大性を理解されておられない。

これでは自滅しにいくのと同じだ。

俺たちは王族として何よりも民を守らねばならない。

だからこそ王国が滅びる末路を何としても阻止する必要がある。

だからここへやってきた」

「なるほどね」


──どうやら国王陛下とは違うみたいね。

確かプルメリア神聖王国にある学院に留学していたと聞くし……。

それに彼らの瞳には深い決意に満ちている。

母上がどう決断されるかは分からないけれど、

自分の息子が――次代の王が敵対国に協力していると分かったら……国王は止まるかしら。


「帝国内へ入れたということは、

母上には既に通達しているという認識でよろしいかしら」

「ああ。有難いことにプルメリア神聖王国の先行隊が俺達の伝言を女皇陛下に届けてくれた」

「そう、なら良かったわ。

ここからもっと奥へ進めば王都よ。

母上にあなた達の意思を伝えに行きなさい」

「受け入れてくれたこと、感謝する。

──アスターシア皇女殿下とノルベルト皇子殿下はもしや……」

「ええ、ここで彼らを迎え撃つわ」


皇位継承者である私が戦線に立っていることに驚いたのだろう。

私のその返答に驚いたように目を見開いた後、

何か納得したような表情をして彼らは一部の騎士団と共に王宮へと向かった。



「まさか第一王子と第二王子自らこちらへ来るだなんて……」

「驚きましたね」


本部のモニター室に戻ってきた私たちは、

刻々と移り変わる戦場をビジョン越しに見つめながら、

先程会ったクリムゾン王国の王子二人のことを振り返る。


『こちら六番隊、クリムゾン王国の第三部隊の鎮圧完了しました』

「怪我人の数は?」

『軽傷者が五人ほど。重傷者はおりません』

「そうですか……怪我を負った騎士の方々には至急手当てを」

『はっ』


国境付近の防衛に向かっていた六番隊より連絡が入り、

今のところ重傷者はいないようでホッと安堵する。

一番最前線には騎士団長がいるはずだが、

オズワルド団長は無事だろうか……。


「母上、今しがたクリムゾン王国の第一王子並び第二王子が国境を越えました。

すぐにそちらに着くはずです」

『分かりました』


私は耳につけていた連絡機から母上に繋げて、

先程会ったエルヴィン王子達のことを報告する。

まだ王都手前ほどだろうけれど、

早めに報告しておいて損はない。


『そちらの近況はどうですか?』

「既に本隊と衝突しているようです。

……今入った知らせによると指揮官はカスペル第三王子とリューク第四王子のようです」

『分かりました。このことはお二人が王宮に着いた際に私から報告しておきましょう』

「えぇ、お願いします」


自分の弟たちと戦う羽目になるかもしれないが、

クリムゾン王国の国王を止めるために敵国へ直接乗り込んで来たのなら、

彼らはその覚悟も既にできているだろう。


「オズワルド騎士団長、

指揮官の第三王子、第四王子を無力化できれば私に報告を」

『承知致しました』


ビジョンに映る大平原で繰り広げられる戦。

前世ではこうして実際に見て経験したことはない。

だからこそこの恐ろしさは計り知れない。

聞こえてくる悲痛な叫びも怒号も全て受け止めねばならない。


「あの魔法は……」

「きっとジスタ隊長ですね」


突如空を駆け抜けるレーザーのような光が辺りを覆う。

とんでもない威力を発揮してクリムゾン王国側の戦略兵器を粉砕した。


確かクリムゾン王国には魔法師団というものがなかったはず。

有能な魔法師には平民生まれなら爵位を与え、

貴族ならば昇格させる。

そういった体制がとられていたはずだ。

この戦場にもクリムゾン王国の魔法師も来ているようだが、

日頃から合同練習もしなければ連帯して演習に取り組むこともしてこなかったのだろう。

時々相手の魔法ではなく仲間の魔法を打ち消し合ったりしている。


それに対してエスポワール帝国側は、

隊列を乱すことなく魔法を打ち消し合い仲間内で揉めているクリムゾン王国の魔法師たちも、

騎士団たちもとてつもない勢いで押し返し制圧している。

──明らかに差がありすぎたのだ。

ピエール王はこのことを理解しているのかしら。



第一王子エルヴィンと第二王子フィリップは気付いている。

けれどピエール王もそして第一王女と第二王女も元より無謀であることを知っているのかしら。

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