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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.矜恃皇女と邁進
59/81

《BD記念》鷹揚皇女は誘われる。

三英傑の一人ヴァレンティーナのお誕生日祝いのお話。

※時間軸としてはアスターシアが15歳の頃です。

→サブタイトル「継続皇女とシナリオ②」(41話~48話以前)

年末の夜になり、眠りについた──と思ったら真っ白な空間にいつの間にかポツンと突っ立っていた。

普段の夢で見るゲームの内容とは違う。

いつもとは違う異様な空間に一人立っていた私はこの状態に困惑を浮かべるばかりだった。


『ようやっと会えたわ』

「!?」


突然姿を現したのは白を基調とした着物に金の豪華な装飾が施されたいかにも高貴な印象を受ける女性。

ようやく会えたと言われても私はこの人を知らない。

驚いてまじまじと見つめているとあぁ、と何か察したようにその女性は頷いた。


『すまぬ。ついつい懐かしかったのでな。

──ここはわらわがそなたを誘った空間。

厳密には夢に現れているのではなく、

そなたの魂を異空間に誘い出しこうして話をしているわけだが』

「夢ではないと?」

『厳密に言えばややこしいな。

しかしこの空間にいる間のそなたの身体は眠りについたまま。

──まぁ夢の世界にわらわがお邪魔しているという方が理解しやすいか』


厳密には夢に目の前の女性が現れているわけではなく、

彼女の持つ能力の応用で魂に干渉し作り出した異空間に私を呼んだ──ということらしいが、

言葉で説明するにはここへ来たことを教えるのは難しいみたいね。

私の魂が肉体と切り離されている……というのは間違いないようだけれど。

──普通に考えれば魂を失った肉体は死に至るものだけれど、

どうやらその辺は上手く調整しているらしい。

魂に干渉できるなんて……一体どんな神様なのよ。


『自己紹介がまだであったな。

わらわはヴァレンティーナ。

そなたの生きる世よりもはるか昔の人間よ』

「ヴァレンティーナ……確か、

世界最大宗教であるヴァレンティーナ聖教会の教祖──だったわね」


ヴァレンティーナ聖教会。

大陸中央部にあるオルテンシア神聖国、

その中央に位置するオルテンシア大教会が発祥地であるとされている確認できていて五百年以上前には既に信仰されていた宗教。

この宗教を国教としているエスポワール帝国の従属国の一つ『プルメリア神聖王国』がある。


「その教祖様が一体私にどんなご用件で?」

『何、特に要件などはない。

ただセラフィーナ──わらわの師と似通った部分のあるそなたとは一度話してみたかったのよ』

「師……?」

『そうだ。今では誰からも教わらぬとは思うが──セラフィーナはわらわを育てた師。

元々わらわは捨て子だったのでな』

「あなたが捨て子だったなんて……意外なことを聞いたわ」

『ふふっ、そうであろうな。

わらわのことが書かれた歴史にもそのようなことは一切載ってないであろう』


──太古の昔の人なのに何故か詳しく現代のことを知っているような……?

まるで見てきたかのような発言に違和感を覚える。

既に亡くなって千年以上は経っているだろうに、

何故か現代についてよく知っている。


『わらわは今日が生まれ日でな』

「はぁ……それはおめでとうございます」

『まあ、本当の生まれ日ではないであろうが……』

「本当の生まれ日じゃない?」


ニコニコと楽しそうに話し続けるヴァレンティーナに何とも言えない感情が湧きつつも、

突然語られた内容に理解が及ばず聞き返す。


『わらわの生まれ日はセラフィーナが決めた。

生みの親ではないセラフィーナがわらわと初めて会った日を誕生日にしたのだ』

「あぁ……なるほど」


着物の袖口で口元を隠しながら可笑しそうに笑ってそう告げられた。

セラフィーナに与えられた誕生日。

それが今日──一月一日だったのね。

前世ではお正月。一年の始まりの日というおめでたい日だけれど、

当たり前なことにこの世界にそういった文化はない。


「そういえば私がセラフィーナに似ていると言っていたけれど……それはどういう意味?」

『ふむ……。そなたが纏う雰囲気はセラフィーナと同じよ。

そなたの考え方も行動力の高さも』

「それは……遺伝しているだけではないの?」

『遺伝とも取れるであろうが、

わらわからすればまるで生き写しじゃ。

容姿が変わっただけに過ぎない』


私のことをその黄金の瞳で見つめるヴァレンティーナの言葉に私は不思議な心地になる。

今までにセラフィーナの再来だと言われたことはあっても、

そもそも実際に会ったことのない伝説の人物が私と同じような行動力と思考を持ち、

実際に似通っているところがあるのかどうか分からなかった。

深い意味には捉えてこなかった言葉が、

次々と頭の中で思い浮かんでは消えていく。


「そんなに似ているの?」

『似ておるとも。弟子のわらわがそう言うのじゃぞ?

これほどの証明者はおらぬであろう』

「……そうね」


弟子であるヴァレンティーナが言うのだから本当なのだろう。

──私はセラフィーナのような大層な人間ではないのに。

いずれにせよ全ての元凶たる私に英雄であるセラフィーナと似通う場所などなくなるだろう。

私とは対極的な存在なのだから。


──全てを救った人間と全てを壊した人間。

全くの真逆な存在だ。


『……案ずるな。いざという時はセラフィーナがそなたを救ってくれよう』

「それはどういう意味──『目覚めの時が来たようじゃな』」


考え込んでいた私の様子を静かに見守っていたヴァレンティーナの言葉に思わず聞き返すも、

突然強い風が吹き付けてきたことで遮られてしまう。


『ではな。セラフィーナの子孫よ。

いずれまた相見える時が来よう』


凄まじい暴風に包まれ、この空間から出る時が来たのだと悟る。

最後に言われた言葉はとても優しい声色でまた再会する予感を募らせる。


意識を失う直前に私が聞いた言葉は、

『大丈夫。私はあなたを見守っている』

──ヴァレンティーナとは違う別の女性の言葉だった──……。

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