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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.矜恃皇女と邁進
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48.留学王子は知る。

──エスポワール帝国とクリムゾン王国の開戦が勃発しようしていた数時間前。

隣国プルメリア神聖王国のプルメリア学院に留学していたクリムゾン王国の第一王子エルヴィンと第二王子フィリップはプルメリア神聖王国を治めていた先代女王ローラ・ブバルディアよりその旨が報告された。


「な、なんてことだ……。

父上がエスポワール帝国に宣戦布告するなんて……」

「……誠に残念です。

これより私たちは本家であるロベリア・ガーディナリス家──エスポワール帝国の皇族に助太刀するために兵を向かわせます。

あなた達はどうしますか?」

「俺達もその兵と共に連れて行かせてはいただけませんか!

父上達を止めなければ……っ、

これではお爺様が苦労して女皇アステリアに平和条約を締結させた意味がなくなる……っ」


プルメリア神聖王国の王宮のとある一室で、

先代女王ローラと対面しているエルヴィンは顔を真っ青にさせてその報告を受けた。

ローラの言葉に驚愕で立ち尽くしていたフィリップが勢いよくそう進言した。


「ふむ……では第一王子殿下、

あなたはどうしますか?

弟君と共に父王を止めに参られますか」

「えぇ、当然です。

父上の過ちをここで完全に食い止めなければ……。

我が国がどうなるかなど……」

「分かりました。すぐにお支度なさい。

第四部隊にはあなた達が共について行くという旨を知らせておきます」

「ありがとうございます……っ」


顔を真っ青にして呆然としていたエルヴィンも弟フィリップの言葉に奮起してローラにそう言葉を返す。

その決意に満ちた表情を見て、ローラは一つこくりと頷きを返す。


「それでは、御前を失礼致します」

「えぇ、お二人にご武運を。

きっとヴァレンティーナ様が見守ってくださいます」


王宮の一室をエルヴィンは弟フィリップと共に後にする。

一人部屋に残されたローラはぽつりと言葉を零す。


──ヴァレンティーナ。

エスポワール帝国を建国した初代女皇セラフィーナと共に並ぶ程に有名な三英傑の一人。

大陸中央にあるオルテンシア神聖王国を建国した初代女王。

彼女を崇拝する人物達の支持により彼女が作ったヴァレンティーナ聖教会は、

始まりと同時に世界各地に広まったとされており、世界最大の宗教と言われている。


「エスポワール帝国の──それもセラフィーナ様の分家血筋である私が、

ヴァレンティーナ様を信仰するなんて……きっと異端なのでしょうね」


皮肉な笑みを浮かべながら誰もいない部屋で小さく呟く。

それでもローラはセラフィーナもヴァレンティーナも敬愛し崇拝している。

異端であることの自覚はあれど、

それでもローラはセラフィーナの血を引く者。

本家が危うい状況となった今、

分家筋の者たちはエスポワール帝国へ助太刀するべく兵を収集し向かわせるだろう。


元よりクリムゾン王国はエスポワール帝国の従属国に囲まれる形で存在していることを、

今代の王は知らないというのか。

本国たる帝国を狙うということは、

相手にしなければならない国は帝国だけではなくなるというのに。

何と無謀なことを始めたのか。

先代国王がどれほど時間を費やして平和条約締結へと漕ぎ着けたと思っているのか。

その時の状況を実際に見てきたものとしては何とも言えない気持ちになる。



「申し訳ないが、父を止めるため協力してほしい」

「もちろんでございます、エルヴィン第一王子殿下。

事の次第とお二方の意思はローラ様よりお聞きしておりますゆえ、

どうぞご安心くださいませ」

「ありがとう、感謝する。

まずは……エスポワール帝国の女皇陛下に俺達の意思をお伝えしたい」

「かしこまりました。

先行隊にその旨を伝えるよう命じておきましょう」


プルメリア神聖王国の王宮前まで急いでやってきたエルヴィン達は、

そこで待っていた第四部隊の隊長と話をする。

既に第四部隊だけでなくその他の部隊にもエルヴィンとフィリップの二人は止めるために向かうということは伝わっているようで、

彼らの目線は労りと優しさに満ちている。

本来なら宣戦布告した王国の王子……それも王位継承者だ。

敵意を向けられたとしてもおかしくなかったのに、

彼らは一切そういった目を向けない。

何と優しい人達なのだろうかと涙が滲む。


先にエスポワール帝国の女皇シシアーティアへ援軍としてプルメリア神聖王国の三番隊、四番隊、五番隊が向かうという旨を伝えるために、

先に向かう手筈になっていた先行隊に四番隊の騎士の一人が報告へ向かった。

そしてしばらくするとこちらへ戻ってきて、

エルヴィン達の伝言を受け取って先立ったということを教えてもらった。


「では、我らも向かいましょう。

お二方、ご準備の方はよろしいでしょうか」

「ああ、問題ない」


四番隊の騎士から馬を二頭借りたエルヴィン達は、

馬に飛び乗り、四番隊隊長の後に続いてエスポワール帝国を目指した。



「女皇陛下!プルメリア神聖王国の騎士が謁見を求めております」

「プルメリア神聖王国……!

分かりました、通しなさい」


大広間で戦場へ向かった娘と息子の無事を祈りつつ、

シシアーティアは次々に舞い込む報告に耳を傾けていた。


「拝謁致します。

ローラ様より、我が国の三番隊、四番隊、五番隊を援軍としてエスポワール帝国へ進軍しておりますことをお伝え致します。

加えてクリムゾン王国の第一王子殿下、第二王子殿下が女皇陛下への謁見を申し立てております」

「クリムゾン王国の第一王子と第二王子が……?」

「はい。お二方は父王ピエール様をお止めしたいご様子」

「なるほど……」


プルメリア神聖王国の騎士から告げられた報告に疑問を投げかけ、

答えを得たシシアーティアは考え込むように目を伏せる。

今や敵対国となった王位継承権を持つ二人の王子……。

彼らは現国王とは違うというのだろうか。

しかしそれも本人に直接聞いてみなければ分からない。


嫌悪感はあるけれど、

あのローラが引き入れて自身の国の学院に通わせ、

時に会食をしていたくらいだ。

きっと報告に来た騎士からの伝言は彼らの本意、望みなのだろう。


「クリムゾン王国の第一王子、第二王子が帝国内に到着次第、

この王宮へ迎え入れるように!」

「はっ」


──あなたの人を見る目を信じますよ、ローラ。

そして彼らの誠意を私は信じましょう。

シシアーティアはそう心で呟いた。


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