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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.矜恃皇女と邁進
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46.矜恃皇女と驚愕

エルヴィーノ公爵が捕らえられたその数日後の早朝。

彼が捕らえられている牢獄に一人の女性が近付いてきた。

その女性の容姿は見えず、黒いローブを羽織っていた。


「おお、アンネリーゼ……!

私の元へやって来てくださるとは……」

「おはようございます、エルヴィーノ公爵。

わたくしはあなたを解放しに参りました。

──わたくしと共に来てくださいますわよね?」

「ああ……我が女神よ、もちろんだとも……!

あなたのために私は何だってやってみせよう」


鉄格子にそっと顔を近づけ、

妖艶な笑みを浮かべる女性──アンネリーゼは、

エルヴィーノ公爵の言葉に満足そうに笑みを浮かべた。



「……それは本当ですか、アルベール宰相」

「はい。今朝、牢番をしていた騎士の方から緊急で連絡が入りました」


その日のお昼頃。

急遽母上に呼ばれた私とノルベルト達は大広間へ集まっていた。

アルベール宰相に報告された内容は、

『エルヴィーノ公爵が脱獄したこと』。

まさか過ぎる時点に私もノルベルトたちも驚きを隠せなかった。


私の『絶対遵守』の能力は彼が牢に入れられた時点で解除していた。

──それが仇になってしまったなんて。


「陛下、ご安心を。

罪人につけている刻印──あれにはある魔法を仕掛けてあります」

「罪人の刻印──確か色によって犯した罪の重さが変わるのでしたよね」


『罪の刻印』──これはカノナス師団長が作った罪人の証となる魔法。

罪人として連行された人物の肌に刻印を刻むことで、

一生その罪を背負っていくことを定められているもの。

色によってはその人が犯した罪の重さが変わると言う。


「ある魔法とは?」

「追跡魔法です。

エルヴィーノ公爵の脱獄を手引きした人物に魔法無力化(マジックキャンセル)の能力者がいなければ可能かと」

「それはすぐに使えるものですか」

「はい、可能です」


驚いた。まさかあの刻印には追跡魔法もかけられていたなんて。

けれどこれでエルヴィーノ公爵が逃げた先が分かる。

本当に有能な方だな、カノナス師団長は。


「──クリムゾン王国、のようですね」

「!」


──クリムゾン王国。

先のアフェクの事件の犯人、エリノア嬢の祖国。

まさかここでまたその名を聞くとは。


「では、手引きした者もクリムゾン王国出身である可能性が高いですね」

「そうだと思われます」

「緊急、緊急です!」


母上とカノナス師団長が話し合っている最中、

突然魔法師団の一人がこの大広間に急いだ様子で入ってきた。


「一体何があった?」

「──クリムゾン王国から宣戦布告!」

「……何ですって」


その報告内容に驚くほかない。

まさか隣国がそんなことをしてくるなんて……。

そもそもクリムゾン王国はエスポワール帝国の領土を狙っていた。

それは領土拡大のため。

しかし先代国王により平和条約が結ばれたことで、

ここ数十年はクリムゾン王国との諍いもなく平和だったのに──。

それを、今代の国王が破ったということだ。


「直ぐに民への避難警告を!

騎士団、魔法師団は直ちに応戦準備に取り掛かりなさい!」

「はっ」


大広間にいたオズワルド騎士団長とカノナス師団長に母上は命じると、

報告に来ていた騎士に各隊への通達をお願いして、

バタバタと大広間から近衛としていた騎士たちも走り去っていった。


「母上、私も戦線に出ます」

「お姉様!?」


大広間は私たちと母上たち、

アルベール宰相とオズワルド騎士団長、

そしてカノナス師団長だけになった。

そこで私は玉座に座る母上に戦線に出ることを進言した。


「………分かりました」

「お母様っ」


ほんのしばらくの間、考え込んでいた母上から渋々了承を得られた。

ありがとうございますと頭を下げると、

フィーリアの悲痛な声が聞こえてきて胸が痛む。


「姉上が参られるのであれば僕も戦線に立ちます」

「兄上……」

「……そうですね。

アスターシア、ノルベルト。

あなた達を戦線に出ることを許す代わりに、

絶対にお互いから離れないこと。

これを守りなさい。

ノルベルト、あなたの判断で危ういと感じたら、

アスターシアをその能力で王宮へ連れて帰ってくるように」

「はい」


母上の命令に私とノルベルトはこくりと頷きを返した。

フィーリアやアフェクは納得いっていないようだけれど、

国の一大事に動かない訳にはいかない。

第一皇女として騎士団も魔法師団も誰も欠けることなく導かねば私の気が済まない。


「アスターシアには私の代理権を渡します」

「はい」

「それとこれを」


玉座から立ち上がった母上が私とノルベルトに近付きあるものを手渡す。

それはインカムのようなものだった。


「通信機です。

戦場に変化があれば何だって構いません。

私たちへそれを使って連絡するように」

「分かりました」


エスポワール帝国内ならどこにいても使える便利な代物らしい。

カノナス師団長が作り出したようで、

本当にこの人は何でも作れるなと感心する。


「姉上」

「私達も急ぎ準備に向かいます」

「気を付けて、必ず怪我なく帰ってきなさい」

「「はい」」


私とノルベルトは近衛騎士の皆を連れて急いで自室へと戻り準備に向かった。

既に国境ギリギリまでには軍を向けているという情報をユージスから聞いて急がねばならなくなった。


──こうしてクリムゾン王国との歴史上二度目の戦争が始まった。

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