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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.継続皇女とシナリオ②
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44.継続皇女と到達

アフェクにアルベール宰相を、

ノルベルトにカノナス師団長をこの部屋に連れてきてもらい現状を確認する。


「そちらの状況は?」

「エルヴィーノ公爵の雇っている暗殺部隊『シラー』に関しましてはほぼ大半のメンバーの捕縛に成功しています。

残り僅かな残党勢力を捕縛できれば壊滅させられるかと」

「公爵邸付近に既に魔法師団四番隊を配置済みです。

加えてエルヴィーノ公爵に協力していた貴族たちもアルベール宰相のお力を借りて捕縛に成功しています」

「ありがとう、お二人とも」


私とノルベルトがいない間に二人にはエルヴィーノ公爵に協力していた貴族と暗殺部隊『シラー』の他勢力の捕縛を頼んでいた。

元々五年前から少しずつエルヴィーノ公爵にバレないように捕縛してきていて、

今日の時点では既に残り僅かになっていた。

ここまでバレていなかったのは良かったけれど、

まさかフィーリアを攫っていくだなんて……。


「アスターシア様、既にユージス達六番隊と九番隊が王宮に到着しているようです」

「そうね……二人にも協力してもらいましょう」

「了解致しました。こちらへお呼びいたします」


アフェクの専属侍女の一人アリスがどうやら能力で王宮にたどり着いたユージス達を視認したようだ。

ノルベルトの専属侍女の一人エルサが私に声をかけたあと次の瞬間には室内に姿はなくなっていて、

『いない』と気付いた次の瞬間にはユージスとルーカスの二人が既に室内にいた。


アリス・シャルロットの能力は光系統で、

エリサ・ジェラルディーナは時間操作の能力者。

気が付いた瞬間にユージスとルーカスの二人がいたのはエリサの能力によるもの。


「二人とも帰ってきたところを悪いのだけれど、

エルヴィーノ公爵にフィーリアが攫われてしまったの……。

これから公爵邸に乗り込むつもりだから力を貸してくれないかしら」

「もちろんです、アスターシア様」


ついさっきあの場所から帰ってきたばかりで疲れているのに……と申し訳なく思いながらも、

エルヴィーノ公爵だって私が単独で来るとは思っていないはずだ。

加えて公爵家が独自に持つ衛兵隊が守っているだろう。

貴族が独自に有する衛兵隊は騎士団よりも位は下ではあるが、

それでもこういった急ぎたいときには大きな障害になる。


「アルベール宰相は母上に事態の報告をしてもらえますか?」

「了解致しました」

「カノナス師団長は公爵邸付近に配置させている魔法師団の方を任せます」

「承知しました」


母上達を避難させている異空間への道を開け、

アルベール宰相には母上たちへ今起きている緊急事態の報告へ行ってもらった。

その間にカノナス師団長は既にこの部屋にはおらず、

魔法で部下達の元へワープしたようだ。

──流石は我が国最強の魔法師。


「アフェクは……「一緒に行きます」」

「でも危ないわよ?エルヴィーノ公爵が何をしてくるか……」

「それでも姉上達のお役に立ってみせます。

フィーリアを守るべきだったのに守れなかった僕が言えることでないことは承知していますが……」

「……分かった。

私がエルヴィーノ公爵の目を引くまでなるべく私たちから離れないこと。

これを守ってくれるのなら一緒に行きましょう」

「はい!」


負い目を感じさせてしまったみたいね……。

元々私がアフェクとフィーリアを安全な場所に移さなかったことが原因なのに……。

──でも今更悔いていても仕方がない。

ここで呑気にしている間にエルヴィーノ公爵が何をしているか分からない。


「行きましょう」

「はっ」



「こんばんは、エルヴィーノ公爵。

突然で悪いのだけれどお邪魔させていただくわ」

「これはこれはアスターシア第一皇女殿下。

ようこそお越しくださいました」


王宮から公爵邸へ出発した時点で既に真昼間。

公爵邸にたどり着くと妨害しようと剣を振るう衛兵隊と魔法師団が既に衝突しているところだった。

衛兵隊が魔法師団と援軍として私が引き連れてきた六番隊と九番隊に手こずっている間に、

私はアフェク達とユージス、ルーカスの近衛騎士の二人を引き連れて公爵邸内部へと真正面から侵入した。


「単刀直入に言うわ。フィーリアはどこ?」

「流石は心優しい皇女殿下。

真っ先に妹君の身の心配をなされるとは……。

深い姉妹愛に私は感動いたします……」

「意外だわ。あなたは無駄口を叩くのがお好きだなんて」

「心外です。心の底から思ったことを述べたまでですよ?

……しかしそうも油断していてよろしいので?」


公爵邸の玄関ホールにある階段の上に立つエルヴィーノ公爵を見上げながら会話を進める。

相手は私に注目しているようで一緒に来ていたアフェクのことなど気にも止めていないようだ。

……それでいい。

あの子にはフィーリアを見つけ次第安全な場所へ移動するよう伝えてある。

あくまでも私はエルヴィーノ公爵を引き留めておく囮の役だ。


「あら、ご自分のお仲間を気絶させてしまって良かったの?」

「何ッ!?」


エルヴィーノ公爵が持つ精神系統の能力で私の後ろに控えるノルベルトとユージス達を無力化したかったようだけれど、残念。

そうしてくるだろうと見込んでいたからあらかじめ三人には『守護』で結界を張っておいてある。


「あなたはもう私の能力を知っているはずだけれど……?」

「私と同じく精神系統の能力……。

しかし能力には位がある!あなたの能力は私よりも下位であるならば私の能力の効力は効くはず……!」

「まさかこの期に及んで自分の方が格上だと言いたい訳?」

「……何を仰りたい?」


私が『精神系統の能力者である』ことだけ報告されたみたいね。

実際はどういった影響力と効力のある能力なのかまでは知らなかったみたいだ。


「残念ながら私はあなたの能力よりも格上なのよ」


──止まれ。

言葉には発することなく私は心の中でそう念じる。

私のこの『絶対遵守』は声に出す必要はない。

私との会話に注視し警戒しているエルヴィーノ公爵にとって想定外でしょうけれど。


「ッ……?」

「動けなくなったでしょう?」

「まさか……ッ」

「あなたの能力はフィーリアと同じ『心理干渉』。

けれど相手にどのような効力を及ぼしたいのか、

気絶させたいのか眠らせたいのか動けなくさせたいのか……そういった種類までは自分で選べない。

──フィーリアの下位版ってところかしらね」


フィーリアの場合は自分の意思で相手の動きを止めたりすることができるけれど、

エルヴィーノ公爵は違う。

自分の意思で相手に何らかの影響を与えることができない。

アフェクが昏睡状態に陥ったのも彼にとっては想定外だっただろうが、それは”良い意味”での想定外だったはず。

加えてフィーリアのように相手の心も読むことはできない。

できていればフィーリアの下位互換といったところだったでしょうけれど。


「だからあなたはフィーリアを自分の能力ではなく物理で気絶させたのでしょう?

……分かっているわよね?

皇族に対して攫っただけでなく暴力も振るった。

あなたに重罰が下るのはもちろんだけれど、

──このエルヴィーノ公爵家はどうなるのかしら」

「……ッ」

「まぁ爵位は剥奪されるでしょうね。

最悪、一族諸共重労働かしら?」


地面に縫い止められたかのように全く動けないエルヴィーノ公爵を見上げながら私は妖しく笑ってみせる。

アフェクの時から今日まで本当に彼にはお世話になったわ。

……ええ、本当に。


「ではエルヴィーノ公爵。

あなたを殺人未遂罪、暴行罪、誘拐罪、不敬罪で連行します」


動けなくなったエルヴィーノ公爵をユージスが連行しようと階段を登っていこうとする。


「ユージス、問題ないわ。

《着いてきなさい、エルヴィーノ公爵》」

「なっ……」


私が『絶対遵守』でそう命じるとエルヴィーノ公爵の意に反して身体が勝手に動き始めた。

それにはユージスたちも驚いていたけれどこの方が確実で何より彼を牢へ入れるには手っ取り早い。

──そもそも逃げられないのだから。


「帰りましょうか」


私のその言葉によってこの事件の終わりを同時に告げられる。

もしかしたらエルヴィーノ公爵は手で触れた人物には自分の意思で能力の影響を与えられるかもしれないという危険性を持っている。

そのため私は『絶対遵守』で自分の足で着いてきてもらう選択を取った。


「エルヴィーノ公爵。罪は罪。

受けていただくし、あなたの目的も吐いてもらうわ」

「てっきりあなたは私を殺すのかと思いましたが……違ったのですか」


私の後ろを歩くエルヴィーノ公爵の言葉に私は一瞬立ち止まったあと彼の方を向いた。

突然足を止めて自分の方へ向いたのだから驚いたのだろう。

──でもそんなことは気にしてやらない。


「──初めてよ、こんなにも誰かに殺意を抱くのは。

でもあなたを死なせたりなんてしない。

罪を背負わず”死”への抜け道を歩もうだなんて許さない。

だから私はあなたを生かすの」

「なるほど……。私は殿下の強烈な怒りを引き出せたということですか」

「ええ、残念ながら」


今まで誰に対しても怒りは湧いてこなかったけれど、

今回ばかりは本当に……腸が煮えくり返る気分だ。

でも私個人の怒りのままエルヴィーノ公爵を殺すことはしない。

彼には償ってもらう。

多くの罪を背負って生き続けてもらう。

今までのような贅沢な暮らしも誇り高き名誉も立場も剥奪されようとも、

生きて生きて生き続けてもらわなければ。

──これから死ぬまで永遠とも思える生き地獄を味わってもらう。

これが優しいと言えるのかはサッパリだけれど。


──こうしてエルヴィーノ公爵との因縁は終わりを迎えた。

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