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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.継続皇女とシナリオ②
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41.継続皇女と前進

──それから五年の月日が流れ、

私は十六歳になりノルベルトは十五歳、

アフェクは十三歳、フィーリアは十歳になった。

五年の間で魔法師団の方々が暗殺部隊『シラー』の別組織含め結構な数のエルヴィーノ公爵の息がかかった組織を連行してくれたため、

そろそろ事態のヤバさに気付いて本人かもしくは幹部メンバーの誰かが動き始めるのではないかと思っている。


「今日から母上たちはグラジオラス王国へ第一王子殿下の誕生日の祝宴に呼ばれて行くそうです」

「今日……か」


ノルベルトにも勉強の合間に時間が取れば色々とアルベール宰相から至急もらった情報や、

捕らえた者たちを拷問して得た情報を持ってきてくれたカノナス師団長より確実な情報を共有していたけれど、

思った以上にエルヴィーノ公爵は慎重な人間だったようだ。


「今日か明日くらいに動き出すかしらね」

「姉上の予想だとということですね」

「……そもそも女皇が隣国とはいえ他国へ出向くことは滅多にないもの。

この機会が一番絶好でしょうね」

「確かにそうですね。

厳重な守りのある王宮内なら無理でも、

王宮の外なら彼らのテリトリーと言っても過言ではないでしょうから」

「とりあえず報告を待つしかないわね。

早めに動くのもいいけど私たちが対処に動いていることを知ったらもっと慎重に動かれそうだし。

……母上達を良いようにしているみたいで心苦しいけれど」

「それは母上達も了承してくださいましたから。

それに狙われるのは帰りなのでしょう?

その時には既に母上たちの格好をしたシーナ達にすり替わっていますよ」

「そうね……」


グラジオラス王国へ向かい帰国する時刻辺りになったら、

まず私とノルベルトが母上達に用意された客室へノルベルトの『空間移動』で一瞬にして移動して、

私の『異空間創造』で作っておいた異空間へと避難してもらう。

帰りの母上たちはシーナとユージスの二人が馬車に乗っていることになる。

ユージスはともかくシーナまで肉弾戦が得意だと知ったときはすごく驚いたことを思い出す。

しかもシーナだけでなくレイナまで護身術は身に付けているらしい。

──侍女ってそんな仕事するんだったっけ?と思ったのは秘密。


「そろそろこっちも動き出しましょうか」

「了解しました」


五年間も待ったのだからそろそろ良いでしょう?

これで確実な証拠を得られればエルヴィーノ公爵を罰することができる。

アフェクの一件から結構な時間を費やしてしまったけれど、

これで国内の大きな勢力は削ることができるはず。

……それにしてはエルヴィーノ公爵への貴族たちの信頼度が異常なほどに高すぎる。

何かしていたのかしら。

それもまた本人に問い詰めてみるしかないかと思い、

私はノルベルトに連れて行ってもらい、

母上と父上には『異空間創造』の中へと避難してもらう。


「無茶はしないようにね」

「ええ。母上と父上は無事に収束するまで待っていてください」

「ああ。ノルベルト、アスターシアのことを頼んだ」

「はい」


グラジオラス王国の宮殿に用意された母上達のいる客室へ一瞬にして辿り着いた私は、

すぐさま事前に創り出しておいた空間への裂け目を空中へ作り出す。

母上たちはその空間の裂け目から中へと入っていった。


「シーナとユージスも油断せずに」

「はい」

「もちろんです」


既に母上たちの格好へと変装した二人へ私は声をかける。

一応『絶対遵守』で認識を誤魔化しておくことにするけれど、

ここから危険な事態が起きることは確実なのだから、

たとえ護身術や身体能力に長けているとしても注意深くいてもらわなければ。


「ここからどう動いてくるか分からないから、

二人と六番隊の皆、くれぐれも襲撃には注意して」

「はっ」


今回のことは騎士団長たちにも報告はしてある。

五年前に知っていたのになぜその時に報告してくれなかったのかと言われたけれど、

内務卿であるエルヴィーノ公爵は目敏く私やノルベルト達、

アルベール宰相などの行動を監視していただろうから、

自身の領地に帰っている今しか言える機会がなかった。

……通常なら毎年何回かは領地へ帰るはずなのに、

ここ五年間は全く帰る素振りすらなかった。

領地へ帰ってしまえば進められない何かがあったのかもしれない。


「それじゃあ二人ともよろしく頼んだわ」

「「はい」」


私は再度ノルベルトの能力で客室から一瞬にして出る。

今度は自室ではなくその現場付近。

小さな崖となっているところに二人で降り立ち、

辺りを見回して確認する。


「あそこね……あの道沿いにある木々の中に何名か黒ずくめの者たちが潜んでいるわ」

「確かに……彼が『シラー』でしょうか?」

「おそらく」


現場を見下ろすことができる場所へノルベルトが移動してくれたおかげで、

彼らの姿がよく見える。

こんな真昼間に黒ずくめは流石に目立つわよ……。

苦笑を浮かべつつもシーナ達がここへやってくるのを待つ。


「さて……来たわね」

「はい……」


馬車の車輪の音と馬の駆ける音が遠くに聞こえてきた。

──そろそろだ。

ついに来た本番に心がうるさくドクドクと音を立てる。

いざという時には助太刀するつもりで私もノルベルトも構えてその時を待つ。


「来たな……」


私たちのちょうど真下に待機している黒ずくめの男の声が聞こえ、

遠くに聞こえていた馬車の音が徐々に近付いてくる。

──そうしてこの場所にシーナ達が乗る馬車が辿り着いたと同時に木々の中から男たちが一斉に飛びかかる。


「六番隊、応戦しろ!陛下方を守れーっ!」


ブラム副隊長の声が高らかに空気を震わせ鳴り響く。

それに呼応されるように六番隊の騎士達が『シラー』の部隊と衝突する。

──アスターシアが関与していない限り問題ないはず。


ゲームのアスターシアは母上達を守っていた騎士たちの認識を誤魔化して戦えないようにしていた。

つまり戦うべき敵を視認できないようにしていたため、

母上たちを『シラー』の部隊は何の弊害もなく暗殺することができた。

けれど今は違う。

だからそれほどの苦戦は──……。


「姉上、あの男はっ……」

「やはりいたわね」


今ブラム副隊長と剣を交えている黒ずくめの男。

あれは確実に『レオ・ハルトヴィヒ』だろう。

流石は巷を騒がせている『剣豪』。

剣の振るう速度がとてつもなく早くて素人には全く剣先が見えない。


「ノル」

「はい……すぐに戻りますから、どうか無理はしないでください」

「もちろんよ」


私の言葉に何を頼みたいのか察したノルベルトは、

心配そうに表情を一瞬曇らせたけれどすぐに『空間移動』で”ある人物の元へ”向かった。


「(ノルの能力はアフェクの上位版だからどれほど遠くてもすぐに彼を連れて来れる……)」


目を閉じて一つ深呼吸をした後、

私は立っていた小さな崖から飛び降りてブラム副隊長とレオのすぐ近くに降り立つ。


「っ!?」

「アスターシア様っ!?」


近くにいた『シラー』のメンバーの一人から剣を奪い取り、

その流れでレオに斬りかかる。

私が乱入してくる作戦など聞いていないブラム副隊長が思わずと声を上げる。


「第一皇女……だと?」

「こんにちは。レオ・ハルトヴィヒさん。

あなたに用があってお話に来たのだけれど……良いかしら?」

「話?この状況で俺に話だと?……馬鹿げている」


やはり分かっていたことだけれど、

不意打ちで斬りかかっても彼はビクともしない。

あーあ。油断してくれていたら剣を弾き落とせるかもしれないと思ったけれど、

まぁそう問屋が卸さないわけね。

返される剣撃から上手く躱しながら私は勝手に話を進めることにした。


「そうそう。お話よお話。

こんな物騒なものを振り回すよりよっぽど平和的でしょう?」

「ッ……俺の剣撃を躱せるとは……。

第一皇女というお偉い立場のくせに一筋縄ではいかないなんてな」

「あら『剣豪』さんにお褒めいただき光栄だわ。

──あなた、生き別れたお兄さんがいるでしょう?」

「それがっ……何だっ!」


振るわれる剣撃をいなしながら私はそのまま本題に入る。

……覚えていなかったという訳ではないようね。

エルヴィーノ公爵の身辺調査をしているうちにあることが判明した。

それは暗殺部隊として雇い入れた人間を洗脳しているということ。


「あなたのお兄さんにもう一度会ってみたくはない?」

「兄さんに……会える?……ふざけるなっ!

お前たち皇族がありもしない罪状を突きつけて兄さんを処刑してくせにっ!」

「っ!?」


叫ばれた言葉に驚いて目を見開く。

──ありもしない罪状を突きつけて処刑した?

レオが叫んだ言葉の意味が一瞬分からなかった。


「何を言っている……っ!お前の兄『イグナーツ・ハルトヴィヒ』なら私と同じ騎士団に所属している!」

「はっ……?」


怒りのまま振るわれた剣撃からブラム副隊長が私とレオの間に入り受け止めてくれた。

ブラム副隊長から告げられた言葉に今度はレオが固まって動かなくなってしまった。


……私もまだ混乱している。一旦落ち着かないと。


「レオ、あなたは今私たちが”ありもしない罪状を突きつけて処刑した”と言ったわね」

「ああ……確実にそのはずだ。

何せ内務卿であるエルヴィーノ公爵から教えられたんだからな。

だからお前たちが言っていることがおかしい」

「違うわっ!それはエルヴィーノ公爵のデタラメに過ぎない!」

「……一体何を根拠にそう言えるッッ!?」


呆然とした表情で振り下ろした剣を持つ手をぎゅっと力強く握りしめそう叫ぶ。

そこには悲痛な訴えがあった。


「……そろそろここに来るわ。

あなたがエルヴィーノ公爵から告げられたことが”嘘”であるという証拠が」

「何……?」


静かに告げた私の言葉にレオは困惑の表情を浮かべる。

確信を持っている私がそんなにもおかしいのだろうか。

それでもレオが教えられたことは全くの嘘だ。

”イグナーツ・ハルトヴィヒは生きている”。

それも……第二皇子アフェクの近衛騎士と二番隊隊長という立場を持って。


「お待たせしましたっ、姉上!」

「レオ……っ!」



私がレオにそう告げたすぐ後にノルベルトがイグナーツ隊長を連れてここへ一瞬にして移動してきた。

イグナーツ隊長の姿を見たレオは呆然としたまま、

その手に握っていた剣を落として──……


「兄さん……?」





 

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