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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.奔走皇女と兄妹
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38.奔走皇女と慈愛女皇

──その日の夜。

母上に呼び出された私は第二宮殿から第一宮殿にある母上の部屋へやってきていた。


「母上、アスターシアです。」

「どうぞ」


母上付きの近衛騎士に扉を開いてもらい、

豪華な部屋の中へと足を踏み入れた。

バタンっと音を立てて閉じられた扉を傍目に、

目の前の小さな丸いテーブルに乗せられた紅茶や茶菓子の前にある一人用のソファにゆったりと座る母上の姿があった。

どうやら専属侍女たちにも外に出てもらっているようで、

この部屋の中には私と母上の二人しかいない。


「今日はどうかしたのですか?」

「一つ……相談があってね」

「相談、ですか?」


──まず初めに感じたのは『珍しい』だった。

確かに以前アフェクの毒殺未遂の一件の際には相談されたこともあったけれど、

それ以降はあまり相談されるようなことはなかった。


「また予知を見たわ。

今度は私とバルムヘルツが暗殺される夢を。

──私達の命のことは別に良いのよ。

でもあなた達を残して逝くなんて……っ」

「母上……」


机に顔を突っ伏してしまった母上の声は震えていた。

私は何と返せば良いのか分からずにいた。

『私達の命のことは別にいい』……か。

そう言ってほしくはなかった。

例え自分や父上が死ぬ未来を見てしまったとしても、

──諦めないでほしかったな。


母上たちは何も悪くない。

──だけれど”私”だけは許されるなんて甘いことは思っていない。


「……母上、大丈夫です。

”彼ら”についてはアルベール宰相に調べてもらっています」

「もしかして……っ」


私の言葉にバッと勢いよく顔を上げた母上は心当たりがあるのだろう。

驚いたように目を見開いて真っ直ぐに私を見つめている。


「アルベール宰相が宰相としての仕事以外に何かやっていることは知っていたけれど……。

それがあなたに頼まれたことだったのね……。

どうして彼らが怪しいと?

あなたには私のような予知能力は持っていないはずじゃ……」

「えぇ、予知能力は持ってませんよ。

彼らの雇用主が以前話題に出たエルヴィーノ公爵だと言う情報をデリア辺境伯からいただいたので、

これは調べてもらう必要があると判断しました」

「……なるほど、そうだったの」


私の言葉に母上は考えるように顎に手を添え目を伏せる。

母上たちに報告できていない隠し事もたくさんある。

けれどこれだけは知っておいてもらう必要がある。


「大丈夫です、母上。

彼らへの対処はアルベール宰相だけでなくカノナス師団長たちにも動いていただいていますから」

「あなたって子は……いつの間に」


感心したような困ったような笑みを浮かべる母上の表情は、

先程予知の内容を告げた時とは柔らかな表情だった。

少しでも安堵してもらえたのならよかった。


今頃エルヴィーノ公爵にバレないように秘密裡に動いてくれているだろう。

エルヴィーノ公爵は私の能力の一端を報告で知ったはず。

そして今謹慎中で私が動けないことも内務卿である彼ならば分かっている。

暗躍して罠を張るには今がちょうどいい。

私が動けないと知って気が緩んでいる今なら。


「必ず炙り出します。

母上たちを暗殺しようとしていたことが証拠として出れば、

例えエルヴィーノ公爵であっても罪に問われないなんてことはないでしょう」

「アスタ。あなたはここまで考えていたの?

私から謹慎処分を下される前に」

「……一応は」


具体的に何が起きるのかは分からなくても、

私は母上が見れる予知よりも先の未来を知っている。

その流れも起きることも。

ならば惜しみなくこの知識を使うしかない。

だからこそ母上が知る前に確実に対処できるように準備をしている。


「ほんと……私には勿体ない、優秀な娘だわ」

「そんなことはありません。

私はこれでも結構な面倒くさがり屋ですよ」

「ふふ、そこは私に似ちゃったのね」


感嘆の息を吐いた母上に私は少し苦笑して言葉を返す。

母上もアルベール宰相もカノナス師団長も、

私のことを『優秀』だと言うけれどそんなことはない。

優秀だと言うのならそれはノルベルトやアフェク、

フィーリアの三人だろうと思う。

もっともっと成長して知恵を身に付けば、

アフェクやノルベルトは私以上の知識人になる。

フィーリアだってゲームではアスターシアに精神を作り替えられていたとしても、

女皇としての品位や立ち居振る舞いは別格だ。

私にはそんなものはないのだから。

どうして皆は私をそう褒めるのだろうかと思ってしまう。


「彼らの捜索と対策はアルベール宰相達に任せておいて問題ないでしょう」

「えぇ、ありがとう。

以前も今回もまたあなたに助けられてしまったわね」

「いいえ、大事なことですもの」


ほっとした顔をした母上を見て私も内心ホッとする。

謹慎処分を利用してエルヴィーノ公爵を騙すことを決めたのは、

母上にそう言われた後だったけれど、

それが良い感じに公爵を振り回せている。


母上と父上のことは必ず守る。

”彼ら”への応戦は私が引き受けよう。

フィーリアやアフェク達にはまだ早すぎる。

……今回はノルベルトの力を大きく借りることになるかしら。


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