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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.奔走皇女と兄妹
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31.奔走皇女と最高裁判

翌朝になって気味の悪い夢を見た私は汗をかいていた。

相変わらず良い気分にはならない最悪な夢だ。


「アスターシア様、湯浴みの準備が整いました」

「ありがとう、レイナ。ごめんなさいね朝から」

「いいえ、お気になさらず」


とりあえずこの汗の不快感と共に嫌悪感も洗い流して気持ちを入れ替えないと。

そう思って私は腰掛けていたベッドから立ち上がり、

レイナが用意してくれた浴室へと入っていく。


──今日はアフェクの一件を手引きした貴族、

デリア・アグネス辺境伯へ沙汰を下す。

彼女は内務卿エルヴィーノ公爵の分家アグネス家の長女。

前辺境伯がつい最近亡くなられその跡を継いだ。


アグネス家の領土は比較的クリムゾン王国に近い。

……クリムゾン王国から侵攻があった際に最前線となる土地。

本来ならばクリムゾン王国と手を結ぶようなことは決して認められないことだ。

彼女が一体何を考えて、

もしくは向こうから何を要求されたのかは分からないけれど、

それも裁判で問いただすしかない。

実際に話を聞くのはアルベール宰相とベルンハルト叔父上だけれど。

私は母上と共にその様子を見させてもらうことになっている。

彼女の白状した内容次第で最終的な沙汰の内容は決まる。

それを決めるのは母上だけれど。


「……裏がいると考えた方が良いわね」


辺境伯だけでは王宮内にエリノア嬢を引き入れるなど無理な話。

だったら彼女を利用して──或いは隠れ蓑にして本当に引き入れた人物がいるはず。

そもそも彼女自身王宮から正式に招待を受けない限り王都まで来ることはない。

帝国内でも王都からは離れた土地に住んでいるからだ。

昨夜の最終確認の際にもこれはアルベール宰相が懸念していたところでもある。


「さて……」


浴槽から上がりレイナが用意してくれていたタオルで全身を拭く。

アフェクの件はこれで解決できると良いけど……。

無事に解決出来れば”次”に向けて動ける。

今は謹慎中だけれどカノナス師団長にも今回は協力してもらっている。

下準備をしっかりしてても予想外の事態は起きるものだけれど。


レイナとシーナにドレスを着せてもらい、

髪もセットしてもらってから私は部屋の外に待つユージスとルーカスの二人と共に食堂へ向かった。



「おはよう、アフェク」

「おはようございます、姉上」


食堂に着くと既にアフェクは席に座っており、

母上や父上や叔父上、

ノルベルトやフィーリアはまだ食堂には着いていないようだった。


「今日は剣術の稽古だったっけ?」

「はい、まだまだ不慣れですけど……」


それは当然だと思うと私は苦笑する。

アフェクはまだ八歳だ。

いや八歳の時点で剣術や護身術を習ってた私が言うことではないのはとっっても理解しているけれど。

そもそも次期女皇である私が習う必要はないと父上に言われたし。

 

「無理はしないようにね」

「はい!」


アフェクもノルベルトもフィーリアも何においても覚えるのが早いと思う。

特にフィーリアは約二ヶ月程である程度能力を自分の意思で制御できるようになったのだから。

流石はラスボス。強い。


「おはようございます、姉上」

「おはようございます!お姉様」

「おはよう、二人とも」


ギィっと食堂の扉が開いたかと思えば、

その向こうからノルベルトとフィーリアの二人が入ってきた。

そう言えばとアフェクとノルベルトを見比べて見ると、

アフェクもノルベルトも後ろ髪を一つに纏めているし、

片側の横髪は首元まである髪型になっている。

違うところは二人の髪色と瞳の色だけだろうか。

すっかり同じ見た目になっていて仲が良いんだなぁとほっこりする。


アフェクの髪色は母上やフィーリアと同じ銀色で、

ノルベルトは私や父上と同じ黒色だ。

二人とも揃ってお揃いの服を着ていたりして本当に見る度に頬が緩みそうになる。

兄弟が仲良くて何より。


「おはよう、四人とも」

「おはようございます。母上、父上、叔父上」


その後に入ってきた母上たちが食堂の席につくと、

使用人たちが次々に朝食をテーブルの上に並べていく。

今日はフィーリアはお勉強、

アフェクとノルベルトの二人は揃って剣術と護身術の稽古らしい。

普段なら別々でそれぞれの担当の先生に勉強を教えてもらうか、

私が見るかのどちらかなのだけれど、

私は母上たちと共に大事な公務があるため、

今日はノルベルトが二人の勉強を見る予定だと聞いた。

──いやぁ、兄妹だなぁ。

そんなことを思いながら私は母上達と共に毎日の習慣である家族揃っての朝食をとった。



──ついに最高裁判の開かれる時刻となり、

私は母上の隣に用意された席に座りその様子を見物していた。


「デリア・アグネス辺境伯。

あなたにはクリムゾン王国侯爵令嬢エリノア・カロル・ブランディーヌ嬢を我が国内へ極秘に引き入れ、

あなたの邸宅で約三ヶ月間匿っていたことが明らかになっています。

他国のそれも侯爵令嬢を極秘に国内へ侵入させ、

アフェク皇子殿下の毒殺未遂に関与したした罪で国家反逆罪、殺人罪で逮捕致します」

「……っ」

「この件について私からあなたに聞きたいことがあります、答えていただけますね?」

「何でしょうか……」

「あなたは何故、辺境伯としての役目に従事せず、

クリムゾン王国の協力をしたのですか」

「それは……っ」


目の前に立つ女性に対し、

ベルンハルト叔父上とアルベール宰相の冷ややかな声が静かな部屋中を響き渡っている。

緊張した面持ちで見守っている中、

アルベール宰相の質問にデリア辺境伯の肩がビクッと大きく揺れたのが見えた。


「……エルヴィーノ公爵からそう命じられたからです。

我が子を殺されたくなければ私の言うことを聞けと」

「何ですって……」


──まさかの新事実に驚きを隠せない。

まさか内務卿がそのようなことを企てていたなんて……。

アルベール宰相がデリア辺境伯の言葉に眉を寄せる。

驚いたが何となく察していた自分もいた。

今朝考えていたことは当たっていたのね……。

それにしてはデリア辺境伯の子を殺すと言ったということは、

デリア辺境伯の息子バルト・アグネスはエルヴィーノ公爵に人質として捕らえられているということなのかしら……?

困ったな……と私は小さくため息をつく。

何せ公爵家を罰するのは結構難しい。

”決定的な証拠”がない限りほぼ公爵家が罰せられることはない。

それは過去にあったことだからこそ私はこう断言できる。

そもそも貴族としては最高位の家格である公爵家は、

大体隠そうと思えば王宮側にも察知されないようこっそりと証拠隠滅をしてしまえる。

加えてエルヴィーノ公爵は現在の内務卿も務めており、

簡単に外せない人物でもある。

『公爵家』という家格と『内務卿』という役職に守られているような状態だ。


「その子はどうしているのです?」

「エルヴィーノ公爵の別邸に閉じ込められていると聞かされています……」

「なるほど……」


随分と好き勝手にやっているようだ。

そもそもアグネス家は彼にとって血縁関係にあるのに……。

いや、”血縁関係”だからこそそういった画策はやりやすいのかもしれない。

何かしら不自然な動きをしていても『家内で起きた問題』ですり抜けられる。

まぁ今回は起こした行動が大き過ぎたのとアルベール宰相を舐めすぎた。

だからこそ今彼女はここにいる。


もしくはエルヴィーノ公爵がデリア辺境伯に対して、

自分がそのような画策をしていることをバレないように身代わりになれと言ってこうしてわざと捕縛させたのかもしれない。

結局のところエルヴィーノ公爵がどこまで考えているのかさっぱりだし、

デリア辺境伯は怯えたように顔を蒼白にしている。

──もしかすれば”嘘”は無意味だと理解していて素直に話してくれたのかもしれない。


アフェクの毒殺未遂が起きた後、

王宮内の使用人達の入れ替えが行われた。

中にはエリノア嬢のような他国からの諜報員も混じっている可能性があったからだ。

そのおかげでアグネス家によって採用された使用人が複数人判明した。

彼らはアグネス辺境伯へ進捗を報告していた。

だから知っているのだろう。

私の持つ能力が一体どんなものなのか。

あの場に人の気配はエリノア嬢しかいないと確認をとってはいたけれど、

どうやら使用人の中に気配を消す能力を持った人間がいたようで、

その者によって知らぬ間にアグネス辺境伯へ報告されていたらしい。

この情報は尋問を行った叔父上から聞いた話だ。


例え嘘をつこうとも私が違和感を感じて『絶対遵守』を使い問いただしてしまえば、

その嘘は無意味なものになる。

彼女は報告でそれを知っている。

だからこそ素直に隠すこともなく自白したのだと察した。

それはどうやら母上も同じようだ。


「辺境伯にはしばらくの間事態が収束するまで出禁を命じます」

「はい……っ」

「アフェク暗殺未遂の一件に関わったことを無いものにすることはできません。

事態収束後に沙汰を出します。よろしいですね?」

「承知致しました……っ」


母上の静かな凛とした声が広間に響く。

今はまだ一件の根本的な犯人であるエルヴィーノ公爵を捕らえられていない以上、

彼女へはどれほどの罪状を課すのが最もなのか分からない。

今はエルヴィーノ公爵ともまた他の外部の人間とも関わらないようにと命じられたデリア辺境伯は一つ大きく頷いた。

これにて閉廷となった最高裁判は新たな犯人の情報を得ただけで終わった。


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