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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.別格皇女と騒動
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28.別格皇女と制圧

ついに夕暮れ時になり、

私とノルベルトはアルベール宰相と近衛騎士の四人と共に『カルミア』の本拠地へ向かった。


「ここからは我々の傍を離れないようにお願いします」

「えぇ」


既に侵入している騎士たちもいるそうで、

少々この辺りの空気はザワついていた。

──これから始まることを予感するようなソワソワする雰囲気だった。


ドッカーンッッ!!。

彼らの本拠地のアパートから戦闘が始まった大きな音がした。

アパートの出入り口には組織の一員だろうか。

メンバーと思わしき人物たちが銃や剣を持って外に待機している騎士たちに襲いかかり、

大勢に囲まれて守られている男性の姿がアパートの奥から見えた。


「アルベール宰相、あの男……」

「えぇ、皇子殿下の考えておられる通り、

『カルミア』のボスでしょう」


厳重に警護されている男の視線がこちらを見た。

目を見開いて彼が呟いた言葉は、

遠くて聞き取りずらかったけれど、

「おいおい、あっちに良い獲物がいるじゃねえか」という言葉だった。


「もしや姉上のことですか?」


それが聞こえたのであろう。

隣に並び立つノルベルトの表情が険しいものになり、

聞いたこともない底から震え上がらせる程の低い声で呟いた。

──あの強面の男よりもこっちの方が怖いわ。

そんなことを思いながら私は特段と気にせずにいた。

能力者と無能力者とでは圧倒的に戦力差がある。

その証拠に男を守ろうと必死に剣を振るい、

銃を撃ち続けるメンバーの者たちは次々と倒れ捕縛されている。


「おいっ、あっちのやつも商品として連れてくぞ!」

「はっ」


──こんな状況下でもお金なのね。

そう思うと少々うんざりしてきた。

こちらに向かってくる数人に対して私は《私の役に立て》と命じ、

逆に彼らの仲間の方へと攻撃させた。


「お、おいっなんでこっちに攻撃してきて……ッ!」

「違うんだッ、身体が勝手に……ッ」


混乱している彼らを傍目に私はアルベール宰相と共に、

ユージスらを連れて中へ入ることにした。

あれだけ入るなとは言われたけれど、

シルヴィア夫人たちやここに連れられた民達の様子が気になる。

外に出てきた彼らには急に私たちが消えたように見えただろう。

実際にはその見識で合っている。

何せノルベルトの『空間移動』で本拠地内へ入ったのだから。



「薄気味悪いところですね」

「えぇ、とりあえずシルヴィア夫人を探し……」

「おおっ、”新人かっ!”

こっちを手伝ってくれ、人手が足りなくてコイツらを運べねえんだ!」

「……そうですか、分かりました」


薄暗いアパートの中の長い廊下を歩いていると、

真正面からメンバーの一人がやってきて、

私たちを”新人”だと誤認し手伝ってくれと声をかけてきた。

どうやら『絶対遵守』の効果は抜群のようだ。


このアパート全体が彼らの本拠地である以上、

()()()()()()()()()()()()()()()()()ところだった。

私はにっこりとほくそ笑んで彼について行くことにした。

──私のその様子を見ていたノルベルトとアルベール宰相が苦笑していたけれど。



連れてこられた先は”上”の商品があるところだと言う。

つまりは売れば高価な値で買い取られる人たちがいるということだ。

そこにはシルヴィア夫人の姿もあり、

何の怪我もしていない様子でほっと一安心した。


「ではここは僕たちに任せてください」

「ああ、頼んだぞ」

「ひっ……!」


ここまで連れてきた人物の気配が完全に遠くなった後、

私は『守護』でカルミアのメンバーが来れないよう結界を張り、

『絶対遵守』で誤認させていた容姿を解いた。


「アル!それにアスターシア皇女殿下に、ノルベルト皇子殿下まで……」

「ああ、シルヴィア!無事でよかった……」


ユージスがその『剛腕』の能力でシルヴィア夫人や他の人たちが閉じ込められていた牢の扉をこじ開け、

無事に皆、牢から出ることができた。


「あなたが第一皇女殿下……?」

「ええ、救出に遅れてしまってごめんなさいね」

「いいえ!このようなところにまで来ていただいて……」


次々に捕らわれていた人達が私やノルベルトに声をかけ、

安堵したようにその目尻には涙が浮かんでいた。


「ノル、彼らを外へ。

救護隊がいたところまで飛ばしてあげて」

「はい」


ノルベルトが目を閉じると、

瞬時に私たちに話しかけてきていた人達や、

未だ助かったことに実感が湧かず呆然としている人達まで、

この部屋にいた人たちを外へ飛ばしてくれた。


「さて……あとは残りの残党を捕らえるだけね」

「はい」

「アスターシア様、その辺は他の騎士団にお任せしましょう。

あなた様がそこまでされるのは……」

「そうね……中に入るなという騎士団長の言葉に反しちゃったわけだし……。

後は彼らに任せましょうか。

ノル、私達も外へ出ましょう」

「分かりました」


私がノルベルトに声をかけると、

その場に残っていた私とノルベルト、

アルベール宰相や近衛騎士の四人と共に一瞬にして外へと飛ばしてもらった。


そうして無事に事態が収まったその次の日。

 

「アスターシア様……本当にありがとうございます」

「いいえ、アルベール宰相がここまで情報を収集してくれたからよ」

「それではございません。

私は宰相としてしてはならないことをしでかしました……。

どのような罰でもお受けする心構えでいたのです。

例え宰相という役を辞されようとも」

「……闇商人たちのことは王宮ではあなたしか情報を知りません。

彼らの暗躍により民の安寧が脅かされているのも事実。

彼らを一人残らず捕えられるのはアルベール宰相しかいないでしょう?

加えて今までの功績を鑑みて母上が下した結果です。

今度こそ国のためにその身を尽くしてください」

「……ありがとうございます」


確かに昨夜私が母上たちに口添えをしたことが罰せられなかった要因かもしれないが、

結局はアルベール宰相が今までに国のために尽くしてきた数々の功績が幸をなしただけ。

私が感謝されるようなことは何一つしていない。


──まぁ昨夜は母上達に下級層の街へ降りるなんて!とものすごく怒られはしたけれど。

お陰で今は謹慎中だ。


「そういえばシルヴィア夫人が攫われてしまったのは何故です?」

「元々奴らが目をつけていた子供がシルヴィアに仕える侍女の子でして。

侍女が仕事中の際にはシルヴィアがその子とよく遊んでいたのです。

ちょうどその子と一緒に買い出しに出かけている時に……」

「一緒に攫われてしまった、と」

「えぇ」

「あなたの家の方にも護衛の騎士をもう少し回す必要がありますね」


その侍女の家はアルベール宰相のお屋敷から程近い城下にあるそうで。

いつもそこから子供を連れてお屋敷へ出勤していたそうだ。

子供とその侍女の二人暮しの母子家庭であり、

親戚の家はその近くにはないらしく頼れないのだそうだ。

カルミアに狙われていたということはその子供は能力者であるということになる。

母親である侍女がそのことを知っているのかは謎だけれど……。


「普段は十番隊隊長のダミアン殿が妻の傍についてくれているのですが……

ちょうど今は不作の続いている地方へ遠征に行っておりまして」

「なるほど……。

オズワルド騎士団長にも相談して、

十番隊だけでなく他の隊もアルベール宰相周りの方へついてもらいましょう。

騎士団が難しければ魔法師団の方たちに」

「ではカノナス師団長に僕から話を通しておきます」

「ありがとう、ノル」

「ありがとうございます」


十番隊隊長ダミアン・エドゥアルト。

彼も物理系統の強い能力を持っていると聞く。

十番隊は以前の大雨の影響で土砂崩れが起き、

建物が巻き込まれた地域の救援に向かっている。

そうなればアルベール宰相やシルヴィア夫人を守る者が極端に減ってしまうのか……。

護衛の人員増強が整うまでシルヴィア夫人には、

王宮での仕事以外は極力外に出ないようにとアルベール宰相に伝言してもらおう。

フィーリアもとても心配していたし、

外出するのが好きな方なのは知っているけれど、

今は少しだけ我慢してもらうしかない。


──さて、解決したわけだし、

謹慎中だし、まったりのんびりしようっと。



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