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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.別格皇女と騒動
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25.別格皇女と苦悩宰相

──それからしばらく経ってある程度フィーリアの能力も制御できるようになった千五七一年五月六日。

約二ヶ月あまりでここまで制御できるようになったフィーリアに感心しつつ、

今日は猫の庭でゴロゴロとしていた。

……別に四六時中ゴロゴロしているわけじゃないんだけどね。

きちんと皇女としてやるべきことはやっているけれど、

中身はただの女子高生だから気疲れしちゃうのよ。


「あ、いた!お姉様ー!」

「もう……またここでゴロゴロしてましたね姉上」

「あら二人とも」


花のアーチを潜ってやってきたのはフィーリアとアフェク。

ノルベルトは確かベルンハルト叔父上の仕事を手伝っているところのはず。

しかしまぁ……何故かここにいることが話したこともない二人にもバレているのよねぇ。


「こんにちは猫さんたち!お邪魔しますね!」


──しっかり挨拶してて偉い。

ぼんやりとそんなことを思いながら私は起き上がって、

ここへやってきた理由を聞こうと口を開く。


「二人はどうしてここに?」

「ああ、そうでした!お姉様、実は先程アルベール宰相に会ったのですが……

いつもより何だか慌てているような疲れているような憔悴した表情をしていて……

一体何があったんだろうと思ってお姉様に聞きに来たのです」

「ええっと……アルベール宰相の様子がおかしいのは気になるけど何で私に?」

「特にお姉様が単独行動をする際頼っていることが多いからですけど……?」

「ああ……そう」


確かにまぁそれはそうなんだけどさ。

以前あったエリノア嬢の一件。

帝国は広大だし貴族の情報を集めるのも一苦労かかるのだけれど、

未だに手引きした人物の情報を掴めずにいる。

フィーリアの言う『単独行動』はその人物を特定するために母上たちに内緒でこっそり動いてることを指している。

そもそもあれも事後報告だったしなぁ……。

本来なら事前に報告すべきところなんだけれど、

帝国の南の地域で不作が続いていて母上たちはその対応や対策にと大忙しの最中だ。

王都周辺のことまでには手が回らないため、

私とアルベール宰相とでその辺の対応をしているついでにその人物探しをしている。

──また事後報告になって叔父上に怒られないかしら……。

実はあの一件の後、翌日に知った叔父上にしこたま説教された。


「姉上もアルベール宰相のこと何も知らないのですね」

「全くもって」


それにしてはあのアルベール宰相が憔悴しているなんてねぇ……。

あの人三日間ぶっ通しで働き詰めでも倒れなさそうな人なのに。


「二人がそこまで言うほどなんて……気になるわね」

「突撃しますか?」

「とっ、突撃!?」


立ち上がった私にフィーリアが自然と物騒なことを言ったような気が……いや言った。

まさか妹がそんな言葉を使うとは思っていなかったのだろう、

アフェクがものすごく驚いている。

私も驚いたけれど……まぁ一番手っ取り早いし。


「じゃあ、突撃しに行きましょうか」

「姉上まで……」


ニコニコしている姉妹に押されつつ、

アフェクもどうやら気になっているようで私たちと一緒にアルベール宰相の執務室へ突撃しに行くことにした。



「あっ、父上!」

「アスターシア達か。アルベールを見なかったか?」

「いいえ、会っていませんけど……」

「そうか……」


私たちの居住している第二宮殿ではなく、

母上たちやアルベール宰相の執務室がある第一宮殿の方にやってきていた。


廊下でばったり会った父上の表情は険しい。

アルベール宰相を探しているということは、

まだ何かの仕事の途中だったりするのだろうか?


「アルベール宰相に会ったら、

父上が呼んでいると伝えておきます」

「ああ、すまない。……頼んだ」


執務室へと戻っていく父上を見送った後、

少なくとも第一宮殿の執務室内にはいないということが分かり、

何かアルベール宰相の情報がないか使用人達に聞き込んでみると、

『王宮外の街中へ行った』との情報を得た。


アフェクに行かせるのもアレだし……と思って、

二人には”次に手伝ってもらう”と伝えて、

叔父上の仕事の手伝いもちょうど終わった頃だということもあり、

私は『絶対遵守』でノルベルトの脳内に声をかけた。

”絶対の命令を下す”という能力ではあるけれど、

これには結構な量の応用が利く。

今回の場合は”ノルベルトの脳内へ声を届けろ”という命令にした。

そうすればテレパシーのようなこともできてしまうのだ。

何せ”私が思いついた限りの応用が利く”のだから便利にも程がある。


「お呼びですか、姉上」

「ごめんね、やっと仕事のお手伝いも終わって疲れているだろうところに」

「いいえ、構いませんが……あのような使い方もできるのですね」


突然脳内に私の声が聞こえてきたのは恐怖だったと思うけれど……。

ノルベルトは驚きこそしたが感心した面持ちでいる。

確かに私自身がテレパシーのようなことができないかと思い付きさえしなければこんなことはできなかったに違いない。

今回の場合、ノルベルトの脳に対して命令を下したという形ではあったけれど、

後遺症とか無害のはずだから大丈夫……のはず。


「王宮外にアルベール宰相が?」

「ええ、どうやら人気のない道へ曲がっていったとのことよ」

「……なるほど、怪しいですね。

僕が様子を見てきます。少々お待ちを」

「ありがとう」


私の意図を汲んでくれただけでもありがたい気持ちでいっぱいだが、

そう言って瞬時にノルベルトの姿は私の目の前からは消えていた。

ノルベルトの『空間移動』。

アフェクが持つ『瞬間移動』と似たようなところがあるけれど少し違う。

それは”飛ばせる範囲”と”渡れる範囲”。

アフェクの場合は最大で棚や机なんかの家具だけれど、

ノルベルトの場合は宮殿ごと・部屋ごと飛ばしてしまえる。

そして渡れる範囲というのは、

瞬間移動では別空間・異空間といった場所へ渡ることはできないけれど、

空間移動ならば文字通り空間を渡ることができる。

例えば私の持つ『異空間創造』で作った世界に人を飛ばしたりとか。

移動手段にはもってこいの便利な能力だなぁと思いながら、

ノルベルトが帰ってくるのをアフェク達と第二宮殿に戻って待つことにした。

 

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