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チート過ぎる裏ボス皇女様のゆったり日和  作者: 紗那
Ⅰ.別格皇女と騒動
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22.危懼女皇と過日

アスターシアから能力についての説明を聞いた日の夜。

いつもより早めに自室に戻ったシシアーティアは物憂げな表情でバルコニーから星空を見上げていた。


アスターシアが生まれてから見た予知はもう何も見えなくなっていた。

アフェク達を殺すことに何の躊躇もなかったあの冷徹な少女は今やとても穏やかな少女にすくすくと育っている。

──恐ろしく感じなかったわけじゃない。

こんな子になるなんてとどれほど暗い気持ちに苛まれただろう。

あの子が起こした行動が……やること全てが理解できなくて、

酷く残虐で恐ろしくて恐ろしくてまともに眠れない日だってあった。

ただただ何も映さない瞳でアフェク達や民を貶め、

最終的には殺していくアスターシアが。

何よりもどんなことに対しても”何も思っていない”あの姿が恐ろしかった。

その姿は今でも脳裏に焼き付いて離れない。

自分の意思でそれより先の未来を見たいと思えば見ることができるとはいえ、

私は恐ろしくてその先へ進めずにいた。

けれどそのアスターシアも数多ある内の一つの世界線のアスターシアに過ぎない。

そう思って大丈夫だと思っていたこともあった。

けれど……何百通りある世界の内の半分以上はそんな冷徹で残虐なアスターシアだった。


今この世界にいるアスターシアという存在は、

何通りも見た世界線の中でも奇跡に近い。

あんなにも優しく温厚な子に育ったことが何よりもどんなことよりも奇跡だと思った。

私たちのことも民のことも大切に思い行動するこの世界のアスターシアはこの世界最大の奇跡だと。


今はとても心が軽い。

あの子はあの子だからと恐怖心を押さえ込んで、

愛情たっぷりに接してきていたとはいえ、

その後はどっと精神的に疲れていることが多かった。

特にアスターシアが生まれて二年間は。

もしかしたら私が見たアスターシアと同じような人格の子かもしれないと恐怖していた。

けれどあの子が三歳になって突然勉学に励むようになってから、

”ああ、この子は違うんだ”とやっと安堵した。

そして同時に優しく思慮深い子になっていくにつれて、

この恐怖心は段々と癒えていった。


ノルベルトやアフェク……そしていずれ私が身篭るであろうフィーリアを意のままに操り、

退屈しのぎに民達を貶め嘲笑うあの姿に──あんな子にはならないでほしいと今はそう思う。

あの子が今何か抱えていることは薄々と勘づいてはいる。

あの子が抱えきれなくなって壊れてしまうような事態に……手遅れになってしまう前に、

私があの子を救いたい。守りたい。

最愛のバルムヘルツとの間に生まれたこの世界で最大の奇跡の子。

優しく穏やかで幸せに満ちた日々をあの子に送りたい。

道を踏み外さないように。

あらゆる危険からあの子を守ればきっと……きっと私が予知で見た何もかも諦めたようなアスターシアにはならないと信じて。

明日もこれから先この命続くまで、

女皇としてあの子の母としてその心を守りたいと決意する。

恐れて何もしないのでは変わらないのだと自分に鼓舞して──。

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