21.別格皇女と説明
アフェクの毒殺未遂をアルベール宰相と未然に防いだ日から数日たった千五六八年五月二六日──。
納得できるまで能力の制御特訓を行っていた私は今日初めて母上やノルベルト達に、
私が持つ六つの能力について説明することにした。
「教えてくれるのね?アスタ」
「ええ。……今まで隠していてごめんなさい」
「良いのよ、あなたなりの考えがあったのでしょう?」
母上、父上、叔父上、ノルベルト、アフェクの家族と、
アルベール宰相とカノナス師団長にも部屋に集まってもらった。
フィーリアのことは隣の部屋でアルベール宰相の妻シルヴィアさんに預けてもらっている。
約八年近くもの間隠し通していた後ろめたさに今更ながら謝罪するも母上は許してくれた。
父上や叔父上も柔らかな笑みを浮かべていて、
アフェクやノルベルトは少し緊張した表情をしていた。
「まず私には合計六つの能力があるということだけは聞いていると思います」
「ええ、聞いているわ」
「『絶対遵守』『解析鑑定』『収束』『守護』『透視』『異空間創造』……以上が私の持つ能力名です」
先に六つの能力名をあげてから私は順々に説明していった。
『絶対遵守』──この能力は視界に入れた相手に対して”絶対に逆らえない命令を下す”能力。
これに制限はないがカノナス師団長に作ってもらった耳飾りで人為的に制限を設けていること。
『解析鑑定』──視界に入れた相手のありとあらゆる情報を視る能力。
これにも制限は一切なく保持者である私が望む限りの情報を視ることができること。
『収束』──相手から放たれた異能攻撃などを一点に収束させ消滅させることができる能力。
要するに吸収して無効化するということ。
『守護』──私自身が設定した領域に強力な結界を張ることが出来る。
加えて攻撃を反射することもできる能力。
『透視』──肉眼では視認できない遠い場所まで見通すことができる能力。
いわば千里眼だ。
私が持つ能力の大半は”視界に入れること”が大前提であるため、
この能力は結構重宝しそうでもある。チート過ぎるけど。
『異空間創造』──最大六つまで”異空間”を創り出すことができる能力。
例えば永遠に出られない空間を創り出したりすることもできる。
最大の六つまで創ってしまった場合、
その空間の内の一つを消去すれば残り一つまではもう一度別の空間を創り出すことができる。
「……以上が能力の概要です」
「凄いわね……言葉が出ないわ」
「はい……」
膨大な情報量に母上たちは呆然としている。
まぁ無理もないと思う。一気にこれだけのことを話したのだから。
だが万が一の時のために知っておいてほしいとも思う。
「最も効力の高い『絶対遵守』と『異空間創造』に関しては、
カノナス師団長に作っていただいた耳飾りで制限を設けています。
『絶対遵守』の場合は命に関わる命令は下せないように、
『異空間創造』は普段は使えないようにしています」
「なるほど……。その他は何も?」
「ええ。特に制限は設けていません」
つまり実際に使える能力は四つのみということ。
前の一件で使用した『絶対遵守』と『解析鑑定』、
まだ訓練以外は使ったことはない『収束』と『透視』。
この四つはいつでも自分の意思で使えるようにしている。
『異空間創造』に関してはその規模があまりにも大きすぎるため、
普段から扱えるようにするのは危ないだろうということで、
私がつけている耳飾りで能力を封じている。
「複数あるため自分の力で制御することには時間を要しましたが……ある程度はもう問題ないはずです。
これらの能力の使用も基本的には母上や父上の許可を得てから使うつもりではあります。
緊急時や私個人が必要不可欠と判断した場合は事前申告なく使う可能性もありますが……」
「分かりました。
そういった事態でない限りは必ず私に事前申告するように」
「はい」
「アフェクとノルベルトもよろしいですね?」
「はい」
「承知しました、母上」
今後何かで能力を使うとなった際には、
母上へ申告することが決まった。
ただし何が起きるか分からない以上、
自分の身と周りを守るためにも個人的判断で使うこともあると念を押しておいた。
私は精神系統・物理系統・記録系統、
アフェクとノルベルトは空間系統の能力者だ。
分類としても珍しい系統にあたる能力を有している以上、
故意に他者へ知られた場合大変なことになる。
元より能力を持って生まれることの方が珍しいことなのだから、
使い時には気をつけていないと……。
こうして母上達に隠していた能力の説明を終え、
私は自室へと戻ってきていた。
目の前のソファにはアフェクとノルベルトの二人が座っている。
「姉上が複数の能力を持っていたなんて……」
「ごめんね、驚かせちゃったでしょう?」
「驚きもしましたが、今まで頑なに語ってこなかったのも納得です。
あれだけ多いと自分で理解していない場合能力について説明するのは難しいですもんね……」
ずっと隠していたことに申し訳なさもあったが、
すんなりと二人が納得してくれて良かったと思う。
そもそもが二人とも揃って珍しい空間系統の能力者だ。
周りにそういった能力を持つ人間がいない分、
彼らの特訓はもっと難しいかもしれない。
もちろん私の持つ精神系統も珍しいものではあるけれど。
多いのはやはり自然系統。
火や水といった自然を操る能力と物理系統だろうか?
物理系統だと自分の力を底上げするなんて能力もあるらしいし、
跳躍力を尋常じゃない強さにすることができる能力もあるのだとか。
精神系統は今のところ心を読むといった能力者が多いとカノナス師団長が以前仰っていた。
……確かに今思い返せば初めて能力の特訓をした日に『絶対遵守』のことを話したらすっごく驚かれてたもんなぁ。
「僕達も上手く制御できるよう、
特訓しないといけませんね!兄上!」
「ああ」
年齢的にノルベルトは現在副師団長から特訓を受けているところで、
アフェクはまだもうちょっと大きくなってからということになっている。
我が国には二人以外に空間系統の能力者はいないことから、
探り探り行っているのだとか。
私が持つ『異空間創造』も空間系統ではあるけれど、
二人とは少々別物だしね。
フィーリアも能力が開花次第、
ある程度の年齢になってから特訓を行うつもりだと母上は言っていた。
未だフィーリアだけは能力が不明だけれど、
ゲーム通りなら私と同じ精神系統だと思っている。
そうだった場合は私が教えることになりそうだ。
少しぶりに三人で過ごすお昼を満喫しようと、
目の前でシーナが用意した茶菓子を頬張る二人を見て意識を現実へ戻す。
二人は二年でとても仲良くなっていて微笑ましい。
成長した兄弟を見ながらお昼の自由時間を過ごした──。




