《閑話》威風皇子とお披露目
義弟となったアフェクの生誕祭の当日。
広間に入る大扉の前で僕と姉上は待機していた。
隣には美しく着飾った姉アスターシアが堂々とした佇まいでその時を待っていた。
──ここから正式に皇族として迎えられる。
そう考えると緊張でバクバクと心臓がうるさい音を立てているのを感じる。
……落ち着け。そう自分に強く念じる。
ふぅと誰にも気付かれないように大きくため息をつくと、
姉上の次に僕の名前が呼ばれ、
広間の大扉がギィッと大きな音を立てて開かれた。
先を歩く姉上に続いて僕はここに来るまでに姉上に言われた言葉を思い出す。
『今日集まっている貴族の中には平民を皇族入りさせることを不快に感じている者もいるわ。
そうだとしてもノルは今日まで必死に作法のレッスンを頑張ってきたし、
今だって勉学に励んでいる。とても立派なことをしている。
だから前を向いて胸を張りなさい。
自分こそが第一皇子なのだと貴族達に見せ付けてやるの』
──真っ直ぐに前を見据えろ。
ここで僕が妙な態度を取ってしまったら姉上の沽券に関わる。
第一皇女アスターシアの補佐として、
この国の第一皇子として胸を張り堂々とこの道を歩け。
第一皇子という存在をこの場に見せつけろ。
僕こそが次代の女皇の補佐なのだと。
ただ悠々と周りの視線に負けず足を動かせばいい。
ちらりとほんの少しだけ僕の方を見た姉上が、
少し微笑んだのが見えた。
それに気付いて自然と口角が上がる。
──信頼されているのだと。
僕なら大丈夫だと言われたような気がしたから。
目の前には僕の母上となる女皇シシアーティア様、
父上となるバルムヘルツ様、
そしてこれから先とてもお世話になる叔父上ベルンハルト様がいらっしゃる。
その近くには僕が初めて王宮に来た時に色々と教えてくださったアルベール宰相とその夫人が控えていた。
これから先、僕は皇族としての人生を歩む。
こんなにも大きな、重責な生き方をするなんて思ってもみなかったけれど。
もう覚悟は決めた。
決めたのならばただ突き進むだけ。
僕のことを初めからずっと気にかけ、
母さんにこれから先も会えるように取り計らってくれた姉上に報いるために。
例えそれが茨道であったとしても。
姉上の守りたいものを守り抜き、
そして姉上のことを守り抜く。
……姉上はご自身のことを強欲だと言っていたけれど、
僕も大概だなと内心苦笑してしまう。
けれどそれでいい。そうでなければ姉上を守れないのだから。
──こうして僕は正式に皇族入りすることになった。




