12.母と僕(2)
姉上が提案したという改正案の説明を受けたあと、
二週間ぶりに会ったのだからつもる話もあるだろうと姉上が言って、
今は応接室には母さんと僕しかない。
話したいことはたったの二週間王宮で過ごしていただけなのにたくさんある。
何から話そうかと悩んでいると母さんから話しかけられた。
「ノルベルト。本当にとても素敵なお方を姉に持ったね」
「うん」
本当に……本当に素敵な僕の姉上だ。
感謝してもしきれない。
大好きな母さんとまたこうして会って話ができるなんて夢のようだ。
「百五十年も前から代々薬師を生業としている家系だから、
薬師以外の興味を持った職に就くことを親や祖母に禁じられて窮屈なものだと感じていたけど……。
今ほどこの仕事に感謝したいときはないわ」
「母さん……」
二度と会えなくなると聞かされて、
お別れの日が来るまで母さんが夜中にひっそりと声を殺して泣いていたことを知っている。
度々様子を見に来てくれていた叔父さんもそんな母さんを見て悲しそうにしていた。
僕も夜が来るたび悲しさに押しつぶされて泣く日々を送った。
半年前に父さんを亡くしたばかりなのに母さんを独りぼっちにしてしまうのかって。
それも……姉上が救ってくれた。
言葉にできないほどに感謝の気持ちでいっぱいだ。
■
それから一時間ほど母さんと話し合って、
母さんの仕事の都合で帰らなかければならない時間が来てしまった。
「アスターシア様、本当にありがとうございました。
またノルベルトの顔が見れて……話ができてとても元気をもらいました」
「いいえ、有意義な時間を過ごせたようで何よりです」
「ノルベルトも……一年後に会いましょうね。
母さんすごくその時を楽しみ仕事を頑張るから」
「うん。母さんこそ体調に気を付けて」
王宮の玄関広間までやってきた僕たちは、
母さんを家まで送るための馬車のすぐ近くで、
馬車に乗り込んだ母さんを見送った。
一年後……母さんに会う時までには今よりも立派な皇子になっていないと。
「楽しい時間を過ごせたようでよかった」
「姉上……本当にありがとうございました。
まさかこんなことまで知らない間にやっていたなんて……。
今日の授業をお休みにするように取り計らって、
僕についてきてほしいと誘ったのもこのためだったんですね」
「まさかアルベール宰相が全部バラすとは思ってなかったけどね……」
満足げな笑みで僕に視線を向けていた姉上に感謝の気持ちを伝える。
ちょっと遠い目をして僕にアルベール宰相への愚痴を言っている姉上に苦笑してしまったけれど。




