《閑話》予見皇女と魔法師団長(2)
第一会議室を去っていくアスターシアの背中を見送ったカノナスはどかっと音を立ててソファに腰を下ろす。
初めてお会いした第一皇女殿下にあのようなことを言われるとは……。
ただ単に幼いながらの好奇心で魔法について知りたいのだろうかと思っていた。
それにしてもアスターシア皇女殿下が持つ能力は異常なまでに強い。
あのような強い能力を開花させているのならば、
急いで頼まれた制御装置の役割をする飾りを作らなければと思い、
カノナスは瞳を閉じて意識を集中させる。
彼が持つ能力は『魔法開発』というもので、
どこにも存在しない前例のない魔法を一から作り出すことができるというもの。
この能力の制限はカノナス自身がその物の扱い方を理解していること。
ほんのちょっとだけ知っている程度の知識ではなく、
使い慣れたものでなければならない。
「ふむ……耳飾りなら良いかもしれない」
ゆっくりと瞳を開いたカノナスの膝の上に置いた手を天井へ向けた両手の手のひらには、
青く輝く耳飾りがあった。
こういう時、創造系の能力は便利だと思いながら、
これらに色々な機能をつけていくことにした。
アスターシアが最も欲しがっていた制御装置はもちろんのこと、
その他にもこの耳飾りを落としても叩いても斬られても壊れない頑丈な結界で覆ったり、
どこかで落として見当たらなくなってしまっても問題ないように魔力を込めておき、
その魔力を回収するように引き寄せれば、
魔力と同時に耳飾りも回収した者の手に引き寄せられるようにしたり。
もちろんこの耳飾りに込められた魔力を回収できるのはカノナスだけだけれど。
一応あらゆる効果はつけておいた。
「……ふぅ」
色んなものを無から作り出すのは時間がかかる。
手のひらに置いていた耳飾りに関しては、
元々はアイテムとして持っていたものの一つだから、
土台であり媒介となる物が必要であるため、
物に関しては準備しておく必要がある。
そこに教科書などに沿って魔法を付与していくのが魔法師のやり方。
しかしカノナスの場合は教科書に全く載っていない、
一般的に浸透していない、もしくは存在しない魔法を思い付いたら生み出すことができる。
『能力を制限する』などという魔法は存在しなかった。
だがアスターシアからそのような方法や考えがあることを知ったカノナスは想像をそのまま『魔法』として反映させた。
「ご期待に応えられるかどうかは分からないが……」
作り上げた耳飾りを見てカノナスは小さく呟く。
この広大な帝国の第一皇女であるとしても、
今の彼女はまだ三歳だ。
三歳の女の子が何かに対してあれだけ怯えている。
──殿下は一体何を知ったのだろう?
歳の割にあまりにも大人びているアスターシアにカノナスは少し不安と心配の念が湧き上がってくる。
まだあんなにも幼い少女が次期女皇であり、
そして自分を殺さねばならないほどの恐怖に怯えている。
──守って差し上げねば。
三歳の幼い子が考えるような思考をしていなかった。
自分を殺すことを頼むなんておかしなことだ。
だからそうはさせない。
必ずその恐怖を取り除いてみせよう。
カノナスは窓辺から見える太陽を眩しげに見つめながらそう決心した。




