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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編2年生
97/123

お久しぶりです

「アリナちゃん、おはよう。昨日はゆっくり眠れた?」


「おはようございます、おねえちゃん。私がおねえちゃんのベッドを使っちゃってごめんなさい。」


アリナちゃんを起こしに行ったのに、アリナちゃんは既に起きていてベッドの上にちょこんと座っていた。


「大丈夫よ。私は昨日客間で寝たから。実は明日、私の従兄弟の結婚式なの。だから良ければアリナちゃんにも準備を手伝って欲しくて。朝食を食べ終わったら手伝ってくれる?」


「はい!」


私はアリナちゃんに小さい頃私が着ていた服を用意した。


「ピッタリね!じゃあ一緒に朝食を食べに行きましょう。」


食堂に入るとお父様とお母様と聡兄様と花央さんが揃っていた。


「美乃梨、おはよう。煌達はまだ寝ている。律と響彼は今日は父上達と朝食を食べるそうだ。」


「そうなんですね。起こして来ましょうか?」


「まあ、今日は休日だからゆっくりさせてやろう。」


「分かりました。」


そして私とアリナちゃんが席に座ると料理が運ばれて来た。アリナちゃんは少し緊張したようにカトラリーを持った。


「い、いただきます。」


今日の朝食はガレットだった。アリナちゃんはひと口パクッと頬張ると目をキラキラさせてパクパクと食べ始めた。


「アリナちゃん、味はどう?」


「とってもおいしいです!」


「そうよね。私も料理長が作るガレットは大好きなの!」


私がアリナちゃんに同調しながらそう言うと聡兄様が私に向かって言った。


「美乃梨、僕が作ったガレットは?」


「勿論大好きよ。でも、あまり食べる機会が無いから」


「じゃあ今度作るよ。花央も食べてね?勿論養父上と養母上と、アリナちゃんも。」


「……わたし、もですか?」


「そうだよ。是非食べてね。」


「はい!」


良い雰囲気で朝食を終え、私はアリナちゃんとある所へ向かった。


「京駕さん、お願いします。」


私は貴翠と京翠とアリナちゃんと共に京駕さんの車に乗り込んだ。


「はい。お任せ下さい。」


そして少しして、目的地に着いた。


「美乃梨、おはよう。」


「おはよう、紅音くん。」


私達が来たのは倉津木家の紅音くんの家だ。


「君がアリナちゃんだな。二千花(にちか)も中で待っている。」


そう言って案内されたのは紅音くんが今月住み始めたばかりの家だ。


「二千花さん、お久しぶりです。」


二千花さんは紅音くんの奥さんで、雛菊さんの従兄弟だそう。


「美乃梨ちゃん久しぶり!相変わらず可愛いね!」


二千花さんは性格というか、雰囲気が律ちゃんにそっくり。何故かと言うと律ちゃんとは昔から仲が良かったそうで二千花さんが律ちゃんと似ているというよりは、律ちゃんが二千花さんに似ているらしい。


「ありがとうございます。この子はアリナちゃんと言って、」


「アリナちゃん!可愛いね〜!うちの子になる?」


「え、えんりょします。」


「6歳で遠慮なんて言葉知ってるの!?凄いね、アリナちゃん。賢い子だね!」


「二千花、ストップ。」


紅音くんが二千花さんの肩の上に手を置いた。


「今日は碧依達の結婚式の飾りを作るんだろ?」


「そうだった!ありがとう、紅音!美乃梨ちゃん、アリナちゃん、ちなっちゃん(千夏)と碧依の為にとびっきり可愛い飾りを作ろうね!」


そう、明日は千夏さんと碧依くんの結婚式だ。

私や煌の事で色々あった所為で千夏さん達の結婚式は延期になってしまっていた。だから私は少しでも役に立てるなら、と二千花さんのお誘いを受けた。


私達は飾りとして使うペーパーフラワーをひたすら作り続けた。その間、二千花さんはリボンで器用にhappy weddingの文字を作っていた。


「美乃梨ちゃんとアリナちゃんが協力してくれたおかげで意外に早く終わったわ!本当にありがとう!」


「美乃梨、アリナちゃん少しお茶でもしないか?」


紅音くんはそう言ってお菓子と紅茶を持って来た。


「まあ、このお茶は京駕さんが入れてくれたんだけど。」


「そうなの?京駕さん、ありがとうございます。」


そして皆んなでゆっくりお茶をしているととても懐かしい気配を感じた。私と紅音くんは顔を見合わせてすぐに気配のする玄関の方へと向かった。


インターホンがなり、紅音くんがゆっくりと扉を開いた。扉の前に立っていたのは……


「ただいま、紅音。美乃梨も久しぶりだな。」


「父上!?」

琥珀(こはく)伯父様!」


紅音くんと碧依くんのお父さんで、茉乃凛伯母様の夫である倉津木琥珀だった。そして琥珀伯父様は聡兄様の伯父でもある。


「父上、突然帰って来られて驚きましたよ。」


「そうか、悪いな。」


琥珀伯父様はハハハッと笑った。


「美乃梨も随分と大きくなったな。前に会ったのは美乃梨が昇級試験に受かった頃だから……5年前か?それは大きくなるな。」


「琥珀伯父様、話したい事が択山ありますから、また急に海外に行くとか言い出さないで下さいね?」


「安心しろ。もう海外での仕事は終わったからな。そう言えば紅音、結婚したんだったな。奥さんを紹介してくれ。」


琥珀伯父様がそう言うと、紅音くんは二千花さん達の居るリビングへと案内した。


「父上、こちらが私の妻です。」


「初めまして。倉津木二千花です。お義父様の事は紅音や碧依やお義母様から伺っております。」


「そうか。こちらこそ初めまして。倉津木琥珀だ。これからよろしくな。」


2人が挨拶を交わすと、京駕さんが伯父様の分のお茶を淹れた。


「そう言えばそちらに居るお嬢さんは?紅音と二千花さんの子供か?」


「父上!違いますよ!」


「お義父様、私達が結婚したのはつい先月の事ですから。この子は今日知り合ったばかりです。」


「アリナ・ペルソンです。6歳です。」


「初めまして、アリナさん。私は倉津木琥珀です。どうぞよろしく。」


伯父様はアリナちゃんに手を差し出して握手をした。


「父上、碧依と千夏には会って来たのですか?」


「いや、まだだ。明日が結婚式だと聞いたからサプライズにしようと思ってな。そうだ、美乃梨。紅音の家に居ては気配でバレかねないので恋咲家に泊まらせてくれないか?」


「はい。わかりました。京駕さん、お父様に伝えて貰えますか?」


「はい、勿論です。」


「ちょっと待ってくれ。薫達にもサプライズにしておきたい。響彼と律も今は日本に居るんだろう?折角なら全員揃って驚かしたいな。」


伯父様の意見に私は同調した。


「良いですね!京駕さん、お父様達に食堂に集まるようにと伝えて下さい。」


「承知致しました。」


そして少しお昼になった為、アリナちゃんと貴翠と京翠と京駕さん、そして伯父様と共に家に帰った。


「では伯父様、出来るだけ気配を隠して着いて来て下さい。」


「分かった。」


私とアリナちゃん、貴翠と京翠が先に食堂に入り、後から伯父様と京駕さんに入って来て貰う。


「美乃梨が集まれなんて言うのは珍しいが、何かあったのか?」


響彼くんにそう聞かれて私は京駕さんを呼んだ。

京駕さんと一緒に入って来た伯父様を見て、その場の事情を知らない全員が驚きで固まった。


「は?えっ、琥珀兄さん、?」


「久しぶりだな、響彼。元気そうで何よりだ。」


響彼くんと琥珀伯父様は従兄弟であり、兄弟のような関係だ。


「伯父上、父さんとは会いましたか?父さん、伯父上の事をいつも気にかけてますよ。それに『誕生日以外まともに連絡を寄越さない』とも言っています。」


「そうだな。明日は実家に帰るつもりだ。それより聡、奥さんを紹介してくれないか?」


「はい、伯父上。こちらは私の妻の花央です。」


「初めまして。恋咲花央です。よろしくお願いします。」


「初めまして。倉津木琥珀です。これからも、聡の事をよろしくお願いします。」


「はい!お任せ下さい。」


それからお父様とお母様とも挨拶を交わしていた。そして盛り上がった会話は終わる事を知らず、今日はうちに泊まる事になった。


私は話し足りなくて琥珀伯父様の泊まっている客室に向かった。ノックをして扉を開けるとお父様と響彼くんと聡兄様が揃っていた。


「どうした?美乃梨。」


「久しぶりに会えたのでもう少しお話ししたいなと思いまして。お邪魔でしたか?」


「別に邪魔では無いが、美乃梨はこれを飲むなよ?」


伯父様が手にしていたのはワインだった。


「分かってますよ!それより伯父様、もう茉乃凛伯母様にはお会いしたんですか?」


「帰国前に連絡はしたんだが、茉乃凛は冷たい態度を取るんだよ。美乃梨、どうすれば良いと思う?」


琥珀伯父様は少し寂しそうな顔をして言った。


「冷たい態度ってどんな態度だったんですか?」


「私が日本に帰る、と連絡をした時、『そう。分かったわ』としか言ってくれなかったんだ。」


伯父様のその発言にお父様が言った。


「そのくらい、いつもの事だろう?別に冷たく無い。紫乃凛も同じような事を言うと思うぞ?」


すると響彼くんと聡兄様が反論した。


「私はその態度は冷たいと思います。和歌なんて三日間の出張でさえ寂しそうにしてくれて、帰ってくると連絡した時は嬉しそうにはしゃいでくれますから。」


最近、昔の恋人だった和歌さんと再会した響彼くんは和歌さんと結婚を前提としたお付き合いを始めたらしい。そのおかげか最近はいつにも増して機嫌が良さそうだ。


「それは響彼と和歌がまだ復縁したてだからだろう?」


「いえ、養父上。僕も花央にそんな態度を取られることはありませんよ?」


聡兄様の意見にお父様は響彼くんへの言葉と同じような事を言った。


「それは聡が新婚だからだ。2人とも結婚生活を10年以上続ければ分かるはずだ。」


「そうだ。私に至っては茉乃凛とはもう結婚20年目を当に過ぎているからな。」


お父様と伯父様の言葉に2人はアドバイスを求めた。


「電話での態度が冷たいとしても2人とも仲が良いですよね?秘訣ってあります?」


「私も気になります。兄上と義姉上は頻繁に揉める事があってもいつまでも仲が良いので。」


2人の言葉にお父様と琥珀伯父様は口を揃えて言った。


「本音で話し合う事だ。」

「本音でぶつかり合う事だな。」


「本音……確かに大切ですね。」


聡兄様はふむふむと頷いていた。


「それは私は身を持って経験しました。確かに一番大切かもしれません。」


私も響彼くんの横で頷いているとお父様が私に言って来た。


「美乃梨はあまりまだ結婚の事など考えなくても良いのだぞ?もう少しゆっくり、」


「薫、美乃梨ももう今年で14になるのだろう?少しくらい子離れしたらどうだ?」


「私も少しは過保護すぎると思う。だが……こんなに可愛い娘から離れる事が出来ると思うか?」


「そうだな、薫には無理そうだ。美乃梨1人でその様子じゃ煌達の時はどうなるのだ?同時期に3人とも結婚する可能性があるからな。」


「琥珀、そう意地の悪い事を言わないでくれ。考えないようにしていると言うのに。」


お父様は頭を抱えながらそう言った。


「お前は変わらず子煩悩だな。まあ美乃梨達が可愛いのは分かるが。それに、薫はまだしも響彼の方はどうしてそんなに美乃梨達を可愛がっているのだ?」


伯父様の質問に響彼くんは答えた。


「美乃梨達が小さい頃、主に面倒を見ていたのが京駕さん達と私でしたから。昔から兄上より私の方が懐かれていたので。」


響彼くんは少し誇らしげにそう言った。


「響彼、何を言っているんだ?私は父親でお前は叔父だ。私の方が美乃梨達に好かれているに決まっているではないか。」


お父様は私の方を見ながらそう言った。


「なあ、美乃梨?」


「ええっと、お父様も響彼くんも同じくらい好きですわ。」


「同じくらい、か。」


お父様がそう呟いた。私がどう答えようかと戸惑っていると伯父様が言ってくれた。


「薫、あまり美乃梨を困らせるな。嫌われるぞ?まあ、美乃梨達は昔から私に良く懐いてくれていたがな。今日とて私と話し足りないからと来てくれたしな。」


「結局琥珀も困らせているでは無いか。」


「まあ、久しぶりに会ったんだ。少しくらい許してくれ。そう言えば美乃梨、婚約者候補はもう居るのだったな。明日、紹介してくれないか?」


「はい!勿論ですよ、伯父様!」


私が明るくそう返すと、琥珀伯父様は少しからかうように言って来た。


「候補のうちの誰かと恋仲になったりしたのか?」


「どうだと思います?」


私は敢えて聞き返した。

ポーカーフェイスとしては完璧な筈だ。


「居るのか。」


「ど、どうして分かったんですか!?」


「薫と響彼の表情を見ていればすぐに分かる。そうか、美乃梨ももうそんな年頃か。少し寂しいな。」


「今はまだ、婚約者候補でしかありませんし、それに、結婚するのは18歳ですからまだ後4年ほどありますよ?」


「4年しか無いんだな。美乃梨、本当に大きくなったな。流石に一度くらいは1人で外を歩いたりしているよな?」


琥珀伯父様はにこにことしながらそう聞いて来た。


「そんなの私が許すわけないだろ。」

「そんなの私が許すわけありませんよ。」


「はあ?2人揃って本当に……何の為に美乃梨に護身術を習わせたのだ?」


伯父様の意見に私と聡兄様は同意した。


「美乃梨はあんなに頑張って護身術を習得したのに使う場が無いと嘆いていたからね。」


「そうですよ!態々隆篤さんや京駕さんに教えて頂いたのにまともに使った事が無いんです!今は貴翠と京翠がいつも側に居てくれてるから絶対に使う事は無いと思うし……」


「そんなにあの2人の事を信頼しているのか。あの2人が聞いたら喜ぶだろうな。」


「そうですね。」


そして夜が更けて伯父様が言った。


「美乃梨、そろそろ寝なさい。明日は早いのだから。これからは日本にいるからどれだけでも話せるんだ。」


「そうですね。お休みなさい琥珀伯父様、お父様、聡兄様、響彼くん。」


「お休み、美乃梨。」

倉津木二千花

旧姓:有栖川


倉津木琥珀

婿養子[旧姓:恋咲]であり、茉乃凛よりも一つ年下の42歳(12月誕生日を迎えたら43歳)。聡の実父、匠とは双子の兄弟。


次回もお楽しみに!

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