成人を迎えるために
「美乃梨、今回は私も着いて行くからな。」
「お祖父様、今回私達はお願いをしに行くのですよ?あまり敵対視して居ては快く協力してもらえません。お父様とお祖父様はお留守番した方が良いのでは?」
私がそう言うと、お父様とお祖父様が言った。
「分かっている。私は父上と違って敵対視なんてして居ない。少し馬が合わないだけだ。」
「私とて敵対視しているわけではない。だからそんな事を言わないでくれ、美乃梨。」
するとすぐ後ろで話を聞いていた響彼くんが言った。
「兄上は当主ですからまだ分かりますが、どうして父上も行こうとしているのですか?」
「祖父たる者孫達の為に頭を下げに行くのは当たり前だろう?椿は手紙だけ送ると言っていたがな。」
「母上の判断は賢明ですね。大人数の魔法使いが自分の敷地に入って来るなど相手側の警戒心を高めるだけですから。」
私達はこれから早瀬神宮に赴き、ご先祖様の封印を解く協力をお願いしに行く。今回向かうのは、本人である私と煌、三日月先生、響彼くん、貴翠、京翠、京駕さん。そしてお父様とお祖父様だ。
巫女の力への対策として、私と煌は治癒魔法を習得した。治癒魔法が最も単純に巫女の力を防ぐ事が出来るからだ。だが、血筋上治癒魔法に向いていない恋咲家の者と三日月先生は、私と煌のように魔力に頼るわけにもいかず、他の案として、自分自身に隠蔽魔法を掛けるという事になった。
自分自身に隠蔽魔法をかける事で、魔力を打ち消されないように出来るそうだ。だが、隠蔽魔法は魔力の節約にはなるが、難易度はぐんと上がる。
「それをたった数日で使い熟せるようになるなんて、お父様もお祖父様も響彼くんも三日月先生も凄いですね。」
「恋咲は相変わらず素直だな。」
「今日は聡様は来られないのですね。」
京翠の呟きに、響彼くんが頷いて答えた。
「聡には義姉上と花央と一緒に留守を任せているからな。」
時間通り、早瀬神宮に到着すると、環奈先輩と早瀬先輩が出迎えてくれた。
「皆様、いらっしゃいませ。」
「父と兄の迎えがないご無礼をお許し下さい。」
そして2人に案内され、神社の中へと入って行った。
真央くんと違い、私と煌は治癒魔法を意識しなければ使えないので、気を抜かないようにしながら。
「こちらです。」
案内されたのは本殿からは少し離れた所に位置する大きな畳の敷かれた場所だった。
「改めまして、この神社の神主をしております、早瀬由記です。こちらは息子の若奈と娘の環奈と瑠奈です。」
「改めまして、恋咲薫です。お久しぶりですね。こちらは私の息子の煌と娘の美乃梨です。そしてこちらは弟の響彼で、その隣に居るのは裏方をしてくれている三日月渡です。」
「お久しぶりですね、由記殿。改めて挨拶を申し上げます、恋咲茅紘です。そしてこちらの3人は本堂家の者達です。」
お父様とお祖父様と由記さんはバチバチと火花を飛ばすように睨み合っている。険悪なムードに周りが戸惑い始めた時、お茶を持った女性が入って来た。
「皆さんお待たせしてすみませんね。私は若奈達の母の早瀬美風と申します。この方達はきっとこのままでしょうから少し追い出して来ますね。」
ふふっと可愛らしく笑う美風さんは、どことなくお母様に似ている。そして笑顔で3人を追い出して美風さんは戻って来た。
「大したおもてなしが出来なくてごめんなさいね。お茶とお菓子です。良ければどうぞ。」
「ありがとうございます。」
そしてお茶を少し頂いた後、美風さんは聞いて来た。
「本日はどのようなご用件でいらしたのですか?」
「実は、巫覡殿のお力を貸して頂きたいと思い参上いたしました。」
響彼くんが代表して答えてくれた。
すると若奈さんが言った。
「何故そのようにお思いになったのです?巫覡である私達と魔法使いである貴方方は敵対する立場である筈です。なのにどうして私達の力を必要とするのですか?」
「一番の理由としては私達のご先祖様の封印を解く為です。とても苦しいお願いをしているのは十も承知です。ですが、そうしないと美乃梨と煌が、!」
「響彼様、落ち着いて下さい。」
「あ、ああ。」
感情的になった響彼くんを宥めたのはやはり、京駕さんだった。
「恋咲さんに何かあるんですか?」
そう聞いて来たのは環奈先輩だった。
響彼くんは少しの沈黙の後、口を開いた。
「美乃梨と煌は、このままでは18の誕生日を迎えると同時に死を迎える事になります。」
「そんな……!恋咲さんには色々お世話になったし可愛い後輩なのに。」
「それを回避する方法として、私共のご先祖様の封印を解かなければならないのです。しかし、封印を解くには、魔法使いと巫覡との協力が必須になります。何せ魔法使いと巫覡が協力して封印したからです。簡単に言えば、魔法使いによる封印と、巫覡による封印の二重になっているのです。」
「私に出来る事なら、協力します。瑠奈も良いわよね?」
「ええ。私も、恋咲さんにはこの先も元気で居て頂かないと困りますから。」
早瀬先輩の言葉に違和感を感じながらも、私はお2人にお礼を言った。すると、若奈さんが言った。
「残念ながら、私にはご協力は出来ません。」
「若奈、それはどうしてかしら?美乃梨さんと煌さんの命が掛かっているのよ?貴方は昔から魔法使いに憧れていたじゃない。」
若奈さんの言葉に、美風さんはそう言った。
私達は驚きで固まった。
「母さん、それとこれは別です。確かに私は兼ねてから魔法使いに憧れていました。いえ、今もですね。……"新月"この意味が分かる人は今この場に何人居ますか?」
「こちら側は情報を内部で共有していますから皆分かります。」
「そうですか。ですがそれは物騒な意味の方では無いのでしょうか?」
「そうですね。魔法使いの死を表していると聞きました。そしてもう一つ、魔法使いの制限という意味もあるとか。若奈さんが使っている意味は後者ですね?」
すると若奈さんはにこりと微笑みお茶をひと口飲んだ後に言った。
「半分正解、半分不正解。と言った所ですね。ですがよくその情報を知っていましたね。流石三日月の知識量、と言った所でしょうか。私の使う新月には二つの意味が存在します。一つは先程響彼さんが仰ったように、魔法使いの制限。そしてもう一つは……美乃梨さん、当ててみて下さい。」
突然名指しされ、驚いたが私は考える事にした。
新月……月が隠れて見えない。月……魔法使いの隠語。
「あ!もしかして隠蔽魔法ですか?」
「ご名答。流石恋咲家の跡取り。ですが、後ろの方は前々から知っていたようですね。」
後ろを振り向くと、にこりと微笑む貴翠が居た。
私の分かる事で貴翠の分からない事などないだろう。
「それでは本題です。私は既に魔法使いの相棒がおりますので、美乃梨さんにが協力するにはそちらの方に許可を取らなければならないのです。なのでこの場で協力すると公言する事は出来ません。」
「ひとつだけ聞きたい事があります。若奈さんの本当の目的は何なんですか?」
「私の目的は、世の中に平等を齎す事です。相棒と組んだのは、それを実現するためです。」
「どうしてそんな事を?」
響彼くんがそう聞くと、若奈さんは少しだけ顔を下に向けて言った。
「……もしかしたら知っていらっしゃるかもしれませんが、私は覡というよりも神に近しい存在です。なので私も一般人の平等を崩しているうちの1人です。」
すると貴翠が手を挙げ、発言した。
「若奈さん。平等とは具体的にはどのようなものですか?生まれも育ちも皆同じで才能も得意不得意も同じなら良いのですか?」
「ええ、まあそうですね。それが最も平等だと思います。」
「そうですか。では、諦めて下さい。」
貴翠は笑顔で言い切った。
10個も上の人に笑顔で話す貴翠はやっぱり強いな、と思った。
「難しい事くらい、分かっています。」
「いえ、分かっていませんね。"難しい"ではなく"不可能"です。そこを履き違えないで下さい。」
「……」
「貴翠!口調を改めなさい。私達はお願いをしている立場です。それを忘れてはいけません。」
京駕さんがすかさず貴翠にそう言った。
「分かっています。若奈さん、出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした。」
「いえ、厳しい現実を教えて頂きありがとうございます。確かに、平等など殆ど不可能でしょうね。平等は同時に自由を奪うことも分かっています。」
「そうですね。必然的にそうなるでしょう。」
「それでも私は神の与えた不平等を少しでも平等に変えたいと思うのです。……私の相棒、七倉蓮介の事は知っていますよね?」
若奈さんの言葉に私達は頷いた。
「七倉蓮介の家族は理不尽にも魔法使いに殺された。七倉の家族を殺した魔法使い達は、まだどこかでのうのうと生きている。神は命さえも平等に与えて下さらなかった……!七倉の話を聞いて、私は、覡として協力する事にしました。」
七倉先生の話は私達も知っている。だからこそ、感情的にそう言った若奈さんに共感した。
「全てを平等にすることは、たとえ神に近いといえど人間である私には実現出来ません。だから私はせめて命だけは平等に与えて下さるよう、神にお頼み致しました。……ですが、世の中そんなに甘くは無いようです。神には一蹴されました。」
まず神様とお喋り出来ている時点で、私からしたら驚きだが、それは表情に出さずに心の中で思っていた。
「人には運命があるそうです。なので私は七倉と共に運命を捻じ曲げる事にしました。期待に添えられず申し訳ないですが、私は貴方達魔法使いも不平等の一因だと考えております。……"太陽"の意味が分かる方はいらっしゃいますか?」
すると貴翠と煌が頷いた。
貴翠は知っていても驚かないけれど……
「煌も知っているの?」
「はい。」
そう言えば煌は最近、貴翠と何かをしているようだった。私には教えてくれないけれど。
「貴翠さんと煌さんですか。お2人に、お話ししたい事があるので着いて来て下さいますか?」
「……ええ。勿論です。」
「俺も大丈夫です。」
そして、若奈さんは煌と貴翠を連れてどこかへ向かった。
「あの、三日月先生も魔法使いの方何ですか?」
沈黙を破ったのは環奈先輩だった。
「ん?ああ。いや、正式には裏方だがな。」
「そうなんですか。全然気付きませんでした。」
すると、美風さんが言った。
「今は由記さんも若奈も居ませんし、普通のお話をして良いのですよ?私も美乃梨さんの学校でのお話が聞きたいですし。」
「私の話、ですか?」
私がそう聞き返すと響彼くんも頷きながら言った。
「私も美乃梨の学校での様子を聞いてみたいな。貴翠と京翠からの報告でしか知らないからな。」
キラキラした目の2人に挟まれてしまった。
「学校での話と言っても、普通に通ってる子達と変わらないと思いますけど。」
と、私が言うと環奈先輩が言った。
「恋咲さんは転校初日でファンクラブが出来るくらいの人気っぷりよね。」
「あらあら、ファンクラブなんて凄いですね、美乃梨さん。」
「そうですね、私には少し勿体無いくらいです。ですが、私を好いてくれているというのはとても嬉しい事ですね。優しい友人達にも恵まれて、本当に楽しい学校生活を送らせてもらっています。」
私がそう言うと、美風さんは優しく微笑みながら言った。
「それはきっと、美乃梨さんが優しいからでしょうね。類は友を呼ぶと言うでしょう?美乃梨さんが優しいから、お友達も優しい方々が集まるのでしょう。」
「……同じような事を京翠にも言われました。」
「そう。美乃梨さん、私が言うのも何ですが、子供のうちはめいいっぱい大人に頼って下さいね。」
「……はい!」
私が答えた後、早瀬先輩が言った。
「お母さん、私少し恋咲さんとお話しがしたい。恋咲さん、良いかしら?」
「はい。大丈夫です。」
「姉さんも着いて来て。」
「分かった。」
私は環奈先輩と一緒に早瀬先輩の後について行った。
早瀬先輩は神社の中にある池で立ち止まった。
「恋咲さん。私が手伝ったら恋咲さんは本当に助かるの?」
「それは……分かりません。響彼くんは確率で言うと50パーセントだと言っていました。何もしなければそのまま18で生を終え、ご先祖様の封印を解いた後、寿命の延長に失敗した場合はそのまま。」
「私、恋咲さんとはあまり関わりが無いけれど、恋咲さんに居なくなられると困るの。」
「先程も仰っていましたが、何故ですか?」
私がそう言うと、早瀬先輩は凛とした顔で言った。
「私の好きな人が悲しんでしまうから。」
「瑠奈って好きな人が居たの!?」
「ええ。私の好きな人は美乃梨さんの事が好きなの。だから美乃梨さんにはずっと笑っていてもらわないと困るの。」
早瀬先輩は真剣な顔で言った。
「あの、早瀬先輩の好きな方って……?」
「神崎くん。彼は全く気付いてはくれないけれど。でも恋咲さん、貴方が居なくなってしまうと彼は笑えなくなってしまう。これは想像では無く巫女の力で確認したから本当よ。」
「……私も、出来ればもう少し長く生きたいです。でも、その所為で他の人が苦労をしてしまうのは嫌なんです。」
すると早瀬先輩は厳しい顔で私に言った。
「恋咲さん、それは違います。神崎くんや、九条くん、有栖川くん。それに、恋咲さんのご家族だって、誰も恋咲さんと弟さんを助ける事を苦労だなんて思っていません。私も恋咲さんに生きていて欲しいと思っているうちの1人だから。」
「早瀬先輩……」
早瀬先輩は少し赤く染まった頰で顔を逸らしながら言った。
「その早瀬先輩っていうのも、ややこしくなるからもう辞めて。瑠奈で良いわ。」
「!……瑠奈先輩、ありがとうございます。私の事も美乃梨と呼んでください。」
「美乃梨さん、お母さん達も待っているでしょうからもう戻りましょう。」
瑠奈先輩はスタスタと歩いて行ってしまった。
「ねえ、恋咲さん。私も美乃梨ちゃんって呼んでいいかしら?」
「はい。」
「美乃梨ちゃん。ありがとう。美乃梨ちゃんのお陰で私、初めて瑠奈の恋話を聞けたわ。瑠奈は自分の事を話さない子だから。」
環奈先輩は優しく微笑んだ。
そして、響彼くん達の居る所に戻ると、お父様達も戻って来ていた。
「お父様、お祖父様、お話は終わったのですか?」
「ああ。」
少しして、若奈さんと一緒に煌と貴翠も戻って来た。
何を話したのかは分からないけれど、2人とも凄く真剣な表情だった。
「この度、私達にご協力頂きありがとうございます。」
「薫殿と茅紘殿の頼みを聞くのは癪だが、子供の話となっては別だからな。フッ、私達の協力がどうしても必要なようだしな?」
「由記さん、もう一度お外に行かれますか?」
「じょ、冗談だ。」
美風さんの迫力に、由記さんは吃りながら言った。
「美乃梨さん、またいつでも遊びに来て下さいね。私は巫女ではありませんので切迫感も無いでしょうから。」
「はい。ありがとうございます。」
早瀬神宮を後にして、私達が向かったのは例の丘だった。
シンと静まり返った丘は煌びやかさと美しさを纏っていた。
「魔力の膜があります。……結界を張れるとは、相当腕の立つ魔法使いが居ますね。」
「美乃梨様と煌様は我々の後ろに居て下さい。」
そして貴翠と京翠と京駕さんの後ろについて丘を登った。
すると、少し先に見に行っていたお父様とお祖父様と三日月先生が驚いたように固まっていた。
「何かあったのかしら?」
「美乃梨様、あの方はもしかして……」
貴翠の反応を見て、私と煌は急いで前に出た。
「フェリクスお兄様!?」
「兄上、どうしてここに?」
丘の上に聳え立つ木の下に居たのは、私と煌の前世の兄であるフェリクスお兄様だった。
「美乃梨と煌の記憶が急に入って来たからな、会いに来たんだ。元気そうだな。」
「ええ、元気ですよ……っではなく、魔力はどうされたんですか?」
「このくらい隠蔽魔法でどうにか出来る。私が魔力に制限をかけてないとこちら側の人間が集まってくるだろうから。」
確かに、ご先祖様の実子であるフェリクスお兄様の魔力はこの国にいる魔法使いは全員認知出来るくらいの強さがある。
「確かにそうですね。それよりどうしてこんな所に?」
「少し前に過去の記憶が蘇ったのでな、会いに来たんだ。」
フェリクスお兄様は微笑みながらそう言った。
そして、煌の方を向いて言った。
「煌、元気か?」
「はい。兄上、会いに来た目的は他にもありますよね?」
「……流石だな。恋咲家の今の当主は其方だな?」
フェリクスお兄様はお父様の方を向いてそう言った。
「はい。恋咲家当主、恋咲薫と申します。美乃梨と煌の父です。」
「私の名はフェリクス・イニティウムだ。其方らの先祖という事になるな。私の妻は父と同じ日本人だった為日本に魔法使いの家系が出来たのだろう。」
そう言えば、フェリクスお兄様には3人の奥さんと10人の子供が居た筈だ。3人のうち2人の方が日本人だった。因みに奥さんが多い理由は人間と魔法使いで寿命が違い過ぎるからだ。
「それより薫、至急当主達を集める事は出来るか?」
「勿論でございます。」
そしてお父様は逸早く家に戻り、五家当主の皆さんに連絡を取った。
「五家の当主以外に、五家を継ぐ事になる者、継ぐ可能性がある者は呼んでくれ。」
「承知致しました。」
そして各々予定もある筈なのに、態々急な集まりに来て下さった。
「美乃梨と煌は勿論参加だぞ。それと、渡も参加するようにな。三日月に協力を要請するかもしれないからな。」
フェリクスお兄様がそう言うと、貴翠と京翠が言った。
「発言をお許しください、フェリクス様。」
「構わない。」
「どうか私達にも参加をさせて下さいませんか?」
「何故だ?其方らは美乃梨のボディーガードと言っていなかったか?」
「ボディーガードでもありますが、それよりも美乃梨様と契約を交わした臣下でございます。」
京翠がそう言うと、フェリクスお兄様は少し考えるように唸った後私の方を向いて言った。
「どちらか1人の参加なら許可しよう。どちらを選ぶかは美乃梨次第だ。」
フェリクスお兄様の言葉の所為で2人の目線が一斉に私に向いた。どちらかを選べばどちらかを無下にする事になる。私が苦笑しながら考えていると……
「美乃梨、冗談だぞ。別に2人とも参加して良い。だが、その前に名を教えてくれ。何と呼べば良いのか分からないからな。」
「本堂貴翠と申します。」
「本堂京翠です。以後お見知り置きを。」
2人は先に準備をすると会議室に向かった。
「ねえ、フェリクスお兄様。何故リクさんとして会った時とそんなに口調が違うのです?」
「これが本来の私の口調だ。あの幼子だった美乃梨にこの話し方は威圧感を与えると思ってな。」
「別に大丈夫でしたけれど、お祖父様の口調と似ていましたし。」
「そうか。あ、そう言えば薫に伝え忘れていたな。私が居る事は秘匿してくれと。」
「フェリクス様、私が伝えに行きます。」
「ああ、頼むぞ、渡。」
「はい。」
そして三日月先生がお父様の元へ向かった後、フェリクスお兄様は得意気に笑った。
「どうして態々秘匿するんですか?」
「その方が面白いからだ。サプライズという奴だな。」
フェリクスお兄様は悪戯っ子のように笑った。
「それより、美乃梨も煌もリクスで良い。フェリクスは長いだろ?まあ、エミリアは死ぬまでずっとフェリクスと呼んでいたがな。」
そして皆さんが集まられたので、会議室へと向かった。
リクスお兄様は会議室の前で待機だ。
会議に参加するのは、恋咲家からはお父様と私と煌。九条家からは千歳さんと千夏さん。神崎家からは麗華さんのみ。倉津木家からは茉乃凛伯母様と紅音くん。有栖川家からは壱さんと志紀都くんと紗奈咲ちゃん。そして本堂家から、貴翠と京翠と京駕さん。三日月家から三日月先生。以上15名の参加となった。
「今回、急な集まりを要したのにはそれなりの理由がある。
……どうぞ、入って来て下さい。」
お父様が敬語を使った事で五家当主の方々の顔が引き締まった。お父様が敬語を使うのは京駕さんの前でだけ。他に使う事があるとするならば、当主よりも地位の高い人相手にだけだからだ。
「では、失礼する。」
リクスお兄様は会議室のドアをゆっくりと開けた。
「フェリクス・イニティウムだ。其方らの言う始まりの先祖の実子であり、デア・エミリアの兄だ。」
「「「…………」」」
この場の事情を知らない人達は唖然と目を見開いている。そして状況を理解すると椅子から降りて床に跪いた。
「九条家当主、九条千歳と申します。フェリクス様にお目にかかれた事を光栄に思います。」
千歳さんに続き、千夏さん、それに他の方々も挨拶を交わした。
「挨拶は程々で良い。其方ら、七倉蓮介を知っているな?」
「はい。勿論でございます。」
「彼奴のしようとしている死者の蘇生だが、あれは禁忌には触れないのだ。本人は知らないようだがな。」
「と言いますと……?」
「この世に生まれた限り、誰であれ始まりと終わりはある。が、その終わり方は生を受けたその時に決まっているのだ。七倉の家族は七倉の家族は、殺される予定では無かった。七倉の家族の運命を捻じ曲げたのは、禁忌の魔法を使った魔法使いだった。」
リクスお兄様の言葉に、皆が驚きリクスお兄様に注目した。何故なら禁忌の魔法を使える者が実際に今、存在しているからだ。
「リクスお兄様、禁忌の魔法を使ったのに生きているのは何故なの?」
「ああ、その事だが……禁忌の魔法を使った者は殆ど死亡する。"殆ど"だ。そうでない者も居無いわけではない。私は禁忌を犯した者達を追っていた。」
「それって、3人組の?」
「ああ。そうだが、どうして美乃梨が知っているんだ?」
「私、この間誘拐されかけた時に、」
「誘拐だと!?誰にだ!?」
リクスお兄様は私の両肩を掴んでグラグラと揺らして来た。
「フェリクス様、そちらに関しては私からご説明致します。美乃梨様を誘拐しようとした者達は今は茅紘様に預かってもらっています。何分、雇われの身だったようで、美乃梨様の誘拐を実行したのは命令されたからだそうです。」
「その雇い主というのが私の追っている者達なのだな?」
「はい。」
「美乃梨を誘拐しようとした奴には後で会わせてもらう。」
リクスお兄様はそう言って五家当主達の方に向いた。
「これから其方らに話す事だが、上層部だけで秘匿しておくか、皆に公開するかは其方らの自由だ。だが、少し危機が迫って来ているのでよく聞いてくれ。」
リクスお兄様のお話は、先程も話題に出たリクスお兄様が追っている人達の事だった。禁忌を犯しても命に害はないらしいが、技量と魔力量の関係で使える魔法がごく少数らしい。
「そこで狙われるのは、魔力量も多く、奴らの欲しがっている魔法が使え、その上まだ子供である美乃梨と煌だ。」
そしてリクスお兄様は私と煌を見て言った。
「美乃梨、煌、其方らにはこれから数度危機が迫る。其方らならきっと乗り越えられる。だが、周りの大人を頼れ。そうしないと乗り越えられるものも乗り越えられん。」
「はい、リクスお兄様。」
「分かりました、兄上。」
そしてまた、リクスお兄様は皆の方を向いて言った。
「禁忌の魔法も使えると言っても、彼奴らは先祖の魔力による縛りがある。故に使える禁忌の魔法は一人につき一つずつだ。これから先、そのような者達と対峙する事が無いとは言い切れない。今回は少なくとも数ヶ月以内には対峙する事になるだろう。私の場合は始祖の実子であるが故、魔法による攻撃を禁じられている。」
「フェリクス様、その者達は禁忌の魔法を使って何をするつもりなのでしょうか?」
麗華さんがそう聞いた。
「ああ、それは……世界征服だ。理由は知らんが精神が子供なのだろう。そしてその世界征服に、美乃梨と煌の力が利用されて仕舞えばこの星は終わりだ。」
「そんな……」
やっと投稿出来ました!
次回は会議の続きです。




