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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編2年生
76/123

日帰り旅行

「……リクさん。」


「美乃梨様、そろそろ起きて下さい。」


ゆっくりと目を開けると、怪訝そうな顔をしたシャルルが立っていた。


「……リクさんとは誰のことですか?」


「リクさん?何のこと?」


「先程寝言で言われておりましたので。」


「えっ、私、寝言なんて言ってるの!?」


「いえ、普段はあまり仰いません。だからこそ不思議に思っただけです。」


「どんな夢を見ていたのかどんな人が出て来たのか、起きたら忘れてしまったわ。でも、いつかまた会える気がするの。」


「そうですか。それは楽しみですね。」


シャルルはそう言いながら、手早く着替えの準備をしてくれた。


丁度着替えが終わった頃にノックの音が響いた。


「美乃梨様、おはようございます。」


「京翠、貴翠。おはよう。」


そして朝食を済ませてリビングに行くと、煌達と篤季が居た。


「姉さん、おはようございます。」


「美乃梨お嬢様、おはようございます。」


「おはよう。千秋達もそろそろ来ると思うわ。」


そして間も無く千秋と真央くんと景くんが来た。皆んなが揃ったので行こうと思った時、響彼くんが来た。


「美乃梨、煌、これを。」


「何これ?」


響彼くんがくれたのは魔力の篭った青い石が付いたネックレスだった。


「お守りだ。特に煌、今日は聡が居ないからな。くれぐれも気を付けるように。京翠と貴翠は美乃梨の事をちゃんと見ていてくれ。」


「ありがとう、響彼くん。」

「響彼兄さん、態々ありがとうございます。」


「承知致しました。響彼様。」

「美乃梨様の事は、私達が責任を持って、お守りします。」


「ああ。皆、引き留めて悪かったな。行ってらっしゃい。」


「行ってきます!」


そして家から1番近いバス停まで歩き、バスで駅まで向かった。駅で切符を買って電車に乗り込んだ。


「俺、初めて電車に乗ります。」


「そうなの?稔と架は?」


「僕は何度か乗っています。」


「僕も、最近乗るようになりました。」


電車は1時間程乗るので、3組に別れて席に座った。

私と煌と稔と架。千秋と真央くんと景くん。貴翠と京翠と篤季に別れた。貴翠と京翠に関しては私達の座る席の隣に立っていると言って居たが、渋々了承してくれた。


「そう言えば、稔と架の俳優活動の方はどう?」


「僕はドラマが決まりました。」


「凄いわね、稔。」


「僕はCMの出演が決まっています。」


「流石ね。今まではあまりTVを見ることは無かったけれど、これからは見るようにするわ。」


そうして話しているうちに時間は過ぎて行った。

電車から降りると、目的地までは徒歩で移動した。

10人という大人数という事もあり、道中は注目されていた。


桜が咲き乱れる道に沿うように流れる川。

辺り一面桜色で、とても綺麗だった。


現地のスタッフさんが川の紹介とカヌーの説明をしてくれた。


「こちらのカヌーは二人乗りですが、どのように分けられますか?」


担当のスタッフさんがそう言うと、貴翠があるものを取り出した。


「皆様、これで決めませんか?」


貴翠が手に持っていたのはくじだった。


「こんな事もあろうかと用意して参りました。」


「貴翠は二人乗りだという事を知っていたの?」


「ええ。どのような場所か、事前に調べる事はボディーガードにとっては必須条件ですから。」


そしてくじで二人組のペアが決まった。

千秋と煌、篤季と架、景くんと真央くん、稔と京翠、そして私と貴翠のペアだ。


一組ずつ順番にカヌーに乗って行く。

私達が待っている間、景くんが言った。


「千秋と煌くんって、2人とも口数が少ないから沈黙が続いてそう。」


「確かにそうね。ずっと無言でカヌーを漕ぎながら桜を見てそうだわ。」


すると真央くんが失笑して言った。


「ちょっと想像したら面白いかも。ずっと無言で無表情でカヌーを漕ぎながら桜を見てるの。」


「何だか、シュールね。千秋は未だしも、煌は表情には出にくいものね。声のトーンとか目線で分かるけれど。読書という共通の趣味もあるし、私は仲良くなれると思うけれど。」


そしてやっと私達の番になった。


「貴翠はカヌーを漕いだことあるの?」


「いえ。私はこういう物は苦手ですから。」


「そうね。貴翠はボートに乗る時もいつも見ているものね。」


「はい。美乃梨様と同じペアになれた事は大変喜ばしい事なのですが、今回ばかりは自分の運の良さを恨みます。」


「どうして?」


「美乃梨様の足を引っ張ることになり兼ねないからです。」


貴翠は申し訳なさそうにそう言った。


「そんな事無いわよ。貴翠、さっき説明された時に渡されたパンフレットの内容、どのくらい覚えてる?」


「?どのくらいも何も、全て覚えていますけど……」


「私は注意事項とカヌーの漕ぎ方の所以外はあまり覚えていないわ。だから漕ぐのは私に任せて。代わりに貴翠はパンフレットに載っていた撮影スポットで写真を撮ってくれない?」


「承知致しました。」


そして私は貴翠と役割分担をする事にした。

最初は不安定だったカヌーも慣れて来ると漕ぎやすくなった。貴翠は相変わらず撮影スポット以外では私の写真を撮って来る。撮った写真は随時、お父様とお祖父様に送っているらしい。


上を見上げれば空を覆い尽くす程の桜が咲いている。

そしてゴール地点に到着すると、皆が待ってくれていた。


「美乃梨様、貴翠、お帰りなさい。美乃梨様、どうでしたか?」


「楽しかったわ。京翠は?」


「楽しませて頂きました。」


カヌーを終えた頃、丁度お昼過ぎという事もあり、昼食を何にするか話し合った。あまりこの辺りを知らない私達にカヌーを教えてくれたスタッフさんがお勧めしてくれた食べ歩きスポットに向かう事にした。


「凄いね。もう14時なのに人が多い。」


「こんなに人が居ると逸れそうだね。」


と真央くんが言った。

逸れても魔力で辿れば大体の位置は分かるが、人混みがあるので辿り着くまでが大変そうだ。


「じゃあ、集合時間と集合場所を決めて、各々自分の食べたい物を探そう。」


「そうだね。それが一番楽だと思う。」


という事で、まずは自分の食べたい物を探す事になった。のだが……


「貴翠、京翠、私の食べたい物ばかりじゃなくて2人の食べたい物は?」


「私は苦手な物は特にございませんので。」


「私は、強いて言えば焼肉串が食べたいです。」


「私も食べたいわ!京翠、一緒に買いに行くわよ!」


そして集合時間までたっぷり余裕があるので色々食べ尽くした。色々回って満足した私は、早めに集合場所へと向かった。


「皆まだだね。……!?」


その時、後ろから口を塞がれた。

すると京翠がすぐに私の口を塞いだ人を投げ倒した。


「美乃梨様!申し訳ございません。」


後ろから来ていたもう1人の男性の事を気絶させた。


「反応が遅れてしまい、本当に申し訳ございません。ただの一般人のようでしたので、美乃梨様に何かする前に手を出す事は出来ませんでした。」


「私は大丈夫よ。ありがとう。それに、あのくらいなら私でも倒せたわ。」


「それはそうですが……」


「それよりも、結構久しぶりね。こんなに堂々とやって来る人なんて。」


「そうですね。今は美乃梨様も大きいですから昔程簡単に近づき辛いのでしょう。」


すると貴翠が言った。


「美乃梨様、兄さん。この者達はどう致しましょう?目的は多分誘拐……でもこのタイミングに偶然被ることはあるでしょうか?とにかく一度起こして吐かせましょう。」


貴翠と京翠が気絶していた2人を起こした時、丁度皆が集合場所に揃った。


「姉さん……その人達は誰ですか?」


「分からないわ。だからこれから貴翠と京翠で誰か聞くらしいの。」


「へえ……そうなんですか。京翠、貴翠。僕も手伝って良いですか?」


「稔様のご協力とは頼もしい限りです。お願い致します。」


そして目を覚ました2人はいきなり大人数に囲まれて焦ったような表情でコソコソ話している。


「少しお話、良いですよね?」


貴翠がそう言うと、2人はビクッと肩を震わせた。


「わ、分かりました。」


「お願いですから命だけはお助け下さい。」


2人がそう言うと貴翠はこちらを振り向いて言った。


「と、言っておりますが、どう致しましょうか?美乃梨様。」


「2人とも、話を聞くだけにしてね?私は無事だし、驚いただけで特に怖い思いはしなかったから。稔もだからね?」


「分かりました。では、皆様、美乃梨様の事をよろしくお願い致します。美乃梨様、何かあればすぐにお知らせ下さい。」


そして貴翠と京翠と稔は目を覚ましたばかりの2人を連れて見えない所まで行った。


「何かあったらすぐに知らせてくれと言っていたが、どうやって知らせるんだ?電話だと時間がかからないか?」


千秋が私に聞いて来た。


「貴翠も京翠も私に臣下の誓いを立てているから、魔力を送ったらすぐに知らせる事が出来るの。」


私がそう言うと、真央くんが、


「確かに貴翠さんと京翠さんなら臣下の誓いを立ててそうだね。」


と言った。

すると景くんが、


「貴翠さんや京翠さんくらい若くても臣下の誓いを立てる人が居るんだね。噂でしか聞いた事なかった。」


と言った。

確かに、大体はお父様くらいの年齢の人から京駕さんくらいの年齢の人が殆どだ。貴翠と京翠は本当に稀な存在なのだ。


「京翠も充分若いけれど、貴翠に関しては私が5歳の頃に立てていたから、例外中の例外なのよ。」


私がそう言うと千秋が言った。


「だから貴翠さんは美乃梨から少しも離れようとしないんだな。」


「ええ。8年前から忠誠を誓ってくれている私も貴翠には家族以上の絆を感じているしね。」


私達が話しているうちに京翠達の方も話が終わったそうで、戻って来た。


「美乃梨様、この者達は金に目が眩み、美乃梨様と煌様の誘拐を実行役として雇われたそうです。」


「雇い主は偽名を使い、美乃梨様と煌様の顔写真以外の情報を何も与えていないそうです。」


「誘拐自体は本当はこちらでする予定ではなく、僕達の家の近くで姉さんと煌を探し出すつもりだったそうですが、偶々姉さんを見つけて1人でいると思い、行動に移したそうです。」


そして誘拐を実行しようとした2人を連れて来た。


「初めまして?恋咲美乃梨と言います。」


私がそう挨拶すると2人は驚いたように目を見張った。


「あの、兄ちゃんよ、このお嬢さん大丈夫か?誘拐犯に対して警戒心が無さすぎないか?」


「それを誘拐犯本人が言うのはおかしいと思いますが否定は致しません。美乃梨様の警戒心が薄かろうが私達が美乃梨様の御身をお護り致しますから。」


そして2人はこほんと咳払いをして挨拶を返してくれた。


「俺らにゃ、名前なんて大層なもんはねぇ。仕事を求めて歩いているうちに周りから勝手にリクなんて呼ばれたりする事はあるがな。」


「俺ぁ、周りの連中からはタカって呼ばれてる。何でかは知らねえけどよ。」


(……リク?確か、私が寝言で言っていたって。)


「美乃梨様、大丈夫ですか?」


「ええ。何でもないわ。それよりリクさんとタカさんの事はどうするの?」


「先ずは薫様と響彼様と茅紘様と茉乃凛様にお知らせ致しましょう。」


貴翠は笑顔でそう言った。


「そんな事してリクさんとタカさんは大丈夫なの?」


「さあ?それは分かりません。」


よくよく話を聞いてみると、リクさんとタカさんは魔力が全くなく、魔法使いについても何も知らない一般人だという事がわかった。私は2人に質問した。


「雇い主さんとはどこで出逢ったんですか?」


「酒場だよ。ただし、俺らみたいに職無しや金の亡者なんかが集まる酒場だがな。」


「それは、いつですか?」


「いつだった?タカ、分かるか?」


「日付は知らん。が、前の満月の夜だったな。嬢ちゃん、俺らから雇い主の情報を得ようにも、雇い主からとったら俺らは所詮使い捨ての駒だ。与えられた情報なんて話した事が殆どだ。」


タカさんはそう言いながら溜息をついた。

すると貴翠が言った。


「殆ど、という事はまだ隠している情報もあるという事ですよね?」


「そんな重要じゃねえと思うんだがな。これは俺がこっそり盗み聞きした情報だ。雇い主は海外の兄ちゃんに追われているらしい。」


「詳しくお願いします。」


「リクス何とかって名前の人らしい。仲間と話しているのを見たんだが、そのリクス?って名前の奴の写真を壁に貼っていてな。むかつく程整った顔立ちで金髪碧眼の若いにいちゃんだった。」


「へえ……良い情報ですね。他には?」


「これ以上は、雇い主は1人じゃないくらいしかねえよ。」


「何人程でしたか?」


「俺が見たのは3人だ。それ以上は居なかった。」


貴翠はそうですか、と言いながら、私に断りを入れてスマホを取り出して誰かに電話をしに行った。


「リクス……?金髪碧眼……?」


妙に身に覚えがあった。


「「お兄様」」


ポロッと口から出た言葉は誰かの言葉と重なった。

顔を上げると少し困惑したような表情の煌が口を抑えていた。


「もしかして、煌?」


「はい。多分、2人の雇い主を追っているのはフェリクス・イニティウムだと思います。」


煌がそう言うとタカさんが声を上げた。


「そう、それだ!リクスじゃなくてフェリクスか。やっとしっくり来た。」


そして貴翠が電話を終えて戻って来た。


「煌様、美乃梨様、折角の旅行だと言うのに本当に申し訳ございません。帰りはお2人に頼んでも良いでしょうか?」


「ええ。構わないわ。」


「貴翠、気にするな。」


そして私は千秋達と貴翠と篤季と一緒に時空魔法を使って家まで帰った。煌は京翠と稔と架とリクさんとタカさんと一緒に帰って来た。


家に帰ると聡兄様と花央さんとシャルルが迎えに来てくれていた。勿論、リクさんとタカさんにはシャルルの姿は見えない。


「皆んな、お帰り。」


「美乃梨さん、誘拐されかけたと聞きましたが、大丈夫ですか?……あら?そちらの御二方は?」


花央さんにそう聞かれて、リクさんとタカさんの2人は気まずそうに応えた。


「えーと、俺らがこの嬢ちゃんを誘拐しようとした誘拐犯です。」


すると花央さんは冷たい顔で暴風を起こした。


「花央、ちょっと落ち着いて。」


そう言う聡兄様も創造魔法で剣を作り剣に手を掛けている。


「分かりました。聡さんも少し落ち着いて下さい。」


するとシャルルが言った。


「皆様、こんな所で立話をせず中に入って下さい。」


「そうね。」


そしてリビングに向かおうとすると、


「貴方達はこちらです。」


と言い、シャルルがリクさんとタカさんを連れて行った。当の2人はシャルルの姿も声も分からないので急に身体を引っ張られ驚いているようだった。


2人をどこかに連れて行った後、シャルルは戻って来た。お客さんを連れて。


「よっ、久しぶりって程でも無いな。」


「三日月先生!」


「恋咲、誘拐されかけたんだってな?大丈夫か?」


「はい。全然平気です。あ、三日月先生。少し聞いて欲しいことがあって。煌もちょっと良いかな?」


「ああ。」

「はい。良いですよ。」


私は煌と三日月先生を連れて自分の部屋に行った。

シャルルがお茶を淹れて持って来てくれた。


「三日月先生、私、多分もう直ぐ前世の記憶が戻ると思います。それと、私が寝言で言っていたとシャルルから聞いたんですけど……夢の中でリクさんという方に会っていたんです。」


「リク?」


「はい。多分、フェリクス・イニティウムと関係がある人だと思うんですが。」


すると三日月先生は少し考えるように思案した後、こちらを見て言った。


「恋咲、4歳の頃に10年前に戻ったんだよな?」


「はい。その時の事は全く覚えていません。」


「今、19年前に戻ろうと思えば戻れるか?」


「多分出来ると思いますよ?」


「俺がそれに付き添うことは?」


「魔力的には全然余裕ですね。」


すると三日月先生は突然立ち上がった。


「春休みもあと1週間で終わるんだ。出来ることは早めに終わらしておかないといけない。俺は薫さんに報告に行ってくる。煌も過去に戻れるよな?」


「はい。」


「誰か付き添いを1人選んで待っていてくれ。」


そして私は煌と一緒に皆んなが集まっている待合室に向かった。


「……という事で私、ちょっと19年前に行く事になったの。」


「誰か俺に付き添ってくれないか?姉さんには渡さんが付き添うそうだ。」


「僕が煌に付き添うよ。」


そう言ったのは真央くんだった。


「僕は治癒魔法が得意だから、もし怪我をしても治してあげられるし。」


「ありがとうございます。真央さん。」


そして三日月先生は無事、お父様から許可を得られたらしく小さい鞄を準備して中に手帳などを入れた。


そして練習場に移動した。

お父様とお母様は忙しいらしく来ていないが、千秋と景くんや稔と架。そして物凄く残念そうな顔をしている貴翠と京翠の後ろに篤季が居る。


「行って来ます!」


そう言って時空魔法を発動させた。

5分後、三日月先生がスマホで19年前だという事を確認し、ここが19年前の中学校だという事が分かった。


「先ずはあの丘に向かう。」


三日月先生はそう言いながら丘へ向かって歩いて行った。


「お、居たぞ。凄え魔力だな。」


三日月先生の声で丘の上を見た。

そこには小さい頃の私が魔力を制御できず、暴走させかけてしまっていた。


一応過去に戻っている時の規則として、自分自身とは会ってはならないので、私はしばらく見ていた。


そこに現れた金髪碧眼の青年に4歳の私は魔力を預けていた。


「魔力を預けたってこういう事だったんだ。」


私達はその後、4歳の私が元の時代に帰るまで時間を移動した。


4歳の私が帰る時、青年は隠蔽魔法を施した。4歳の頃の私が帰ったあと、青年はこちらに近付いて来た。


「先程別れたばかりだというのにな。今の君は何歳なんです?」


「敬語でなくて結構です。今年の誕生日で14になります。」


「どうやら私の隠蔽魔法はもう解けかかっているそうだな。私の事は思い出したのか?」


「何となく、ぼんやりとは。」


私がそう言うと、彼はふっと笑った。そして、私の頭に手を翳して隠蔽魔法を解いた。その瞬間、リクさんと会っていた頃の記憶が全て戻った。


「……リクさん、お久しぶりですね。」


「14歳になる美乃梨と会うのは初めてだがな。後ろの3人は?」


リクさんがそう聞くと3人は自己紹介をした。


「三日月渡です。」


「神崎真央です。」


「恋咲煌です。」


するとリクさんは煌に近付いて、ポンと煌の頭に手を置いた。


「そうか。煌か。」


少し哀しそうな顔で微笑むリクさんに煌は言った。


「フェリクスお兄様。お久しぶりです。」


するとリクさんは驚いたように目を見張った。


「私の事が分かるのか?エミリアの頃の記憶はまだ戻ってない筈じゃ……」


「少しずつ戻って来ています。」


「そうか。美乃梨もなのか?」


「はい。リクスお兄様。」


フェリクスお兄様は嬉しそうに微笑みながら、煌に言った。


「煌、私はずっと弟が欲しいと思っていた。私の事を兄上と呼んでくれないか?」


「はい。兄上。」


すると三日月先生がリクスお兄様に向かって言った。


「フェリクス様。フェリクス様が今追っている者達についてお教え頂けませんか?」


「……それを話すのにはまだ時期が早過ぎるな。それより美乃梨と煌の寿命を優先して欲しい。出来る限り早くにだ。分かったな?」


「承知致しました。」


「では、其方らは早急に自分の居る時代へと戻りなさい。やるべき事は分かっているな?」


そして現代に戻る直前、リクスお兄様は言った。


「父上と母上の封印を解くには五家当主と現役の巫覡が3人は必要だ。くれぐれも少ない人数でやろうとするなよ。」


そして気がついた頃には現代に戻っていた。


「美乃梨様、お帰りなさいませ。」


「ただいま、貴翠。上達したはずなのだけど、誤差はどれくらいだったかしら?」


「1分です。」


「え?」


「美乃梨様が過去に向かわれ、現代に戻って来た間の誤差はたったの1分です。」


思っていたより上達していた魔法に、自分の事ながら感心した。


「それより、これから忙しくなるわ。貴翠、京翠、手伝ってくれる?」


「勿論です。」


「何なりとお申し付け下さい。」

次回は番外編です。

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