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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編2年生
72/123

春休み開始

今日から春休み。

春休みが始まるまでの1週間はお父様もお母様も響彼くんも忙しそうだったが、春休みが始まると少し落ち着いたみたいで安心した。


因みに、あの会議の後から三日月先生は毎日のように家に来ていた。煌と友達になったそう。煌に心置きなく本の事を話せる友達が出来て、私も嬉しくなった。


そして今日は、神崎家本家にお呼ばれしている。

貴翠と京翠がボディーガードとして、京駕さんがドライバーとして送ってくれる。


「美乃梨様、着きましたよ。」


インターホンを押そうとすると、中から誰かが出て来た。


「美乃梨さん、いらっしゃい。」


「冬真さん!お久しぶりです。」


「皆さん、どうぞ上がって下さい。」


そして案内された部屋から声が聞こえて来た。


「麗華、入るよ。」


冬真さんが扉を開けると、そこに居たのは真央くんと那央さんと麗華さん。そして2人の赤ちゃんだった。


「美乃梨ちゃん!いらっしゃい。」


「麗華さん、その子達は?」


桜樹(おうき)桃弥(とうや)よ。2月の終わりに生まれたばかりの私の子供。」


「え!?麗華さん妊娠してたんですか!?」


「ええ。手紙で言おうかと思ったけれど、やっぱり美乃梨ちゃんには生まれてから直接会わせたくてね。」


手紙は何通もやり取りしていたが、妊娠していたというのは初耳だった。


「初めまして、桜樹くん、桃弥くん。恋咲美乃梨と言います。よろしくお願いします。」


「美乃梨ちゃん、抱っこしてみる?」


「良いんですか?」


「もちろんよ。」


そう微笑む麗華さんはお母さんの顔をしていた。

小さくてふわふわしていてとても可愛い。


「大人しいですね。」


「いつもはもっと騒いでるんだけどね。美乃梨ちゃんの雰囲気が落ち着くのね。私や冬真や真央が抱っこすると凄く泣くのよ。」


「そうなんですか?」


「ええ。まあ、何故か那央が抱っこした時は泣かないのだけどね。可愛い可愛いって騒ぎ過ぎるのがいけないのかしら。」


麗華さんはついつい騒いでしまう所為で嫌がられるのね、と言いながら眉を下げて笑った。


「麗華、休憩の時間だよ。」


「まだ大丈夫よ。冬真は休憩してても良いわよ。」


「休憩の時間だよ?」


冬真さんの笑顔に負け、麗華さんは自室へ向かった。


「美乃梨さん、桜樹を抱っこするの変わりますよ。」


「はい。」


桜樹くんの抱っこを冬真さんに変わると桜樹くんは少し泣き出してしまった。


「大丈夫。お父さんだよ。」


中々泣き止まない桜樹くん。

すると、那央さんが抱っこを変わった。

那央さんが変わるとすぐに泣き止んだ。


「那央、凄いね。僕は父親なのに……」


「冬真がもっとちゃんと抱いてやらないからだ。」


「え?」


「多分、身体から離しすぎなんだろ。」


「でも、あんまり近付けると力が入りすぎて怪我させそうだから。」


「身体が離れてると怖いだろ。」


那央さんの話を冬真さんは成程、と頷きながら聞いていた。


「那央さん、良いお父さんになりそう。」


「僕もそう思うよ。」


「真央くん!?」


「兄さんは結婚もしてないのにもうお父さんみたいだよね。」


「そうね。」


そして桜樹くんと桃弥くんが寝始めたので、私達は別のお部屋に移動した。そのお部屋にはお茶や豪華なお菓子が用意されていた。


「凄いですね。」


「美乃梨さん、少しここで待っていて貰えますか?」


「?はい。」


そして冬真さんは一時部屋を退室した。

すると那央さんが嫌そうな顔をしながら言った。


「私もそろそろお見合いの時間だから退室しよう。」


「お疲れ様ですね、那央。今日のお相手は誰なんですか?」


「律だ。まあ親が勝手にしてるだけだから昼食を一緒に食べるくらいしかしないけどな。」


「律様は想いを寄せている相手が居るそうですよ。」


「知っている。よく愚痴を聞かされるているからな。律が今日のお見合いに参加するのは豪華な昼食に釣られただけだからな。そんなお見合いに私は行く必要性を感じない。」


律ちゃんと那央さんは所謂幼馴染。

那央さんは律ちゃんの好きな人が誰かも知っているらしい。


「では頑張って来て下さいね。終わったらどうだったか聞きますので。」


「律に振り回されて終わるだけだと思うがな。」


そう言いながら那央さんは部屋を出て行った。

しばらくすると冬真さんが麗華さんを連れて戻って来た。そして2人して急に頭を下げた。


「美乃梨ちゃん。この度は兄がご迷惑を掛けて本当にごめんなさい。」

「主人として止められなくて、本当にすみませんでした。」


「いえ、気にしてませんから。それに、矢城さんが何をしたのか詳しく知りませんし。」


「基本的には魔力を貸していたそうよ。その他には情報を入手して伝えていたとか……その所為で、美乃梨ちゃんの事も煌くんの事も危険に晒してっ、本当にごめんなさい。」


「矢城の処分に関しては美乃梨さんと煌さんにお任せします。ですが、美乃梨さんに無理そうなら貴翠くん達に頼ませて頂きます。」


「今は自室で監視を付けた軟禁しかしていないから、詳しい処分については話し合いたいのだけど……」


正直、軟禁は十分過ぎる処分だと私は思った。


「貴翠、京翠。煌は処分を求めたりすると思う?」


「そうですね。自分が危険に晒された事ではなく美乃梨様が危険に晒された事に対しての処分は求められると思います。」


私は麗華さんと冬真さんに断りを入れて煌に電話を掛けた。


『……はい』


「煌、今大丈夫?」


『はい。何かありましたか?』


「今、神崎家本家に来ているの。今からここに来れるかしら?」


『大丈夫です。聡兄さんも連れて5分後には向かいます。』


煌が今から来る事を麗華さんと冬真さんに伝えると、お2人はすぐに門に迎えに行って下さった。隣に座っている真央くんは気まずそうな顔をしていた。


「真央くん、気にしなくて良いからね。真央くんの所為じゃないから。」


「違うんだよ、美乃梨。美乃梨の情報が漏れたのは僕の所為なんだよ。麗華や冬真さんの前で美乃梨に関しての話をしてたのは僕だから。冬真さんの付き人だった矢城に聞こえない筈が無いんだよ。」


「やっぱり真央くんの所為じゃ無いじゃない。私だって貴翠と京翠と京駕さんの前で真央くんや景くんや千秋の話をするわよ。ね、貴翠、京翠?」


私が後ろに立っている2人に顔を向けながら聞くと、2人は頷きながら言った。


「はい。正直薫様や紫乃凛様よりも美乃梨様について詳しい自信がございます。」


「私は人生の中で美乃梨様と過ごして来た時間が一番長いですから、それはもう沢山のお話を聞いております。」


人生などと大袈裟な事を言い出した京翠に思わず頬が緩んでしまう。


「京翠はまだ17歳でしょう?人生を語るには早過ぎると思うわ。」


「いえ。短かろうが長かろうが人生に変わりはないと思います。私はこの先も一生、美乃梨様のお側に居る事を約束しておりますから。」


「ありがとう。私も2人に似合う主人になれるように努力するわ。……ねえ、真央くんにとって矢城さんはどんな存在だったの?」


真央くんは驚いたように目を見張った後、少し気まずそうに目線を逸らして言った。


「美乃梨にとっての貴翠さんや京翠さんみたいな頼れる幼馴染だよ。」


「そう。そんな存在の人を疑える筈無いわ。私も真央くんと同じ立場だとしても、絶対に2人の事を疑ったり出来ないもの。」


私がそう言うと、真央くんは真っ直ぐ私の方を見て言った。


「美乃梨、ありがとう。」


私は言葉は返さず微笑んだ。

少しして、煌が聡兄様と麗華さんと冬真さんと一緒にやって来た。


麗華さんと冬真さんは改めて、私と煌に向かって頭を下げた。


「正直俺は、自分だけが危険に晒されるなら何とも思いませんでした。ですが、姉さんに危険が近づいた事に対しては許し難いことです。」


「そうよね。処分は煌くんと美乃梨ちゃんで決めてくれて構わないわ。」


「なら……一つだけ良いですか?」


「ええ。なんでも良いわよ。」


「矢城さんに会わせて下さい。」


煌がそうお願いした事で麗華さんと冬真さんは予想外というように固まった。


「姉さんの情報が漏らされたんです。矢城さんには七倉蓮介の知る限りの情報全てを吐いて貰わないとですから。」


「分かりました。」


そして冬真さんは矢城さんを連れて来て下さった。

矢城さんの雰囲気はどことなく麗華さんと似ていた。


「美乃梨さん、煌さん。この度は、私の私的感情による行動の所為でお2人を危険に晒してしまい、誠に申し訳ございません。」


「いえ。結果的に無事でしたし、私は大丈夫です。」


「俺も、実害はありません。それより、矢城さんがした事と七倉蓮介について知っている事を全て教えて下さい。」


矢城さんは少し口を結ぶと深呼吸をして話し始めた。


「私は人から必要とされたかったんです。七倉は私の事が必要だと言ってくれた。その言葉に簡単に揺さぶられた私は、七倉から頼まれた魔力の提供と美乃梨さんと煌さんの知っている情報を話しました。」


矢城さんは本当にすみませんでした、と頭を下げた後また話し始めた。


「知っていると思いますが、七倉は九条千之助の子孫です。七倉には父と母と妹と弟が"居た"そうです。とても仲の良い家族だったそうで、家族の誰かの誕生日の時には毎回盛大なパーティーを開いていたそう。」


矢城さんの話し方に違和感を覚えたのは私だけではなかった。


「矢城、どうして過去形なの?」


そう言ったのは冬真さんだった。


「七倉の家族は、七倉以外全員、殺されたそうです。それも、"魔法使い"によって。」


矢城さんがそう言った途端、空気が重くなった。

重い沈黙が続き、言葉を発する事は出来なかった。

ただ1人を除いては。


「……やはりそうでしたか。七倉蓮介の家族についての情報は、どれだけ探しても出て来なかったんです。まるで、存在しないかのように。」


「はい。七倉は家族が亡くなった後、家族の戸籍を得意の隠蔽魔法で世間から隠しました。」


「一つ聞いても良いですか?」


「何でしょう。」


「七倉蓮介は何故魔法が使えるのですか?」


貴翠の質問は、その場の全員が驚き固まるには充分だった。どうして私達は気付かなかったのか、と。


「いくら先祖に魔法使いが居たとしても、魔力があるだけでは魔法は使えません。特に隠蔽魔法の様に複雑なものならば現役の魔法使いに聞かない限り中々使いこなせないと思うのですが。」


「七倉の父親は魔法使いの裏方をしていたそうです。隠蔽魔法は九条千之助の得意魔法でしたし、魔力的な相性も良かったのでしょう。七倉は隠蔽魔法の使い手としては五家純血の魔法使いと並びます。」


矢城さんは言い切った。

でも、誰も疑うことはなかった。

何故なら魔力が少ないながらに巫女の力を殆ど隠すことが出来ていたからだ。魔力の量によって変わるはずの効果を少ない魔力で発揮出来るという事は、そこ知れぬ技術力があるのだろう。


「それから、どうかこれだけは信じて下さい。七倉は強引な人ですけれど、美乃梨さんや煌さんの魔力を本人の了承もなく使ったりしていません。と言うか出来なかったそうです。ただでさえ血の繋がらない相性の悪い魔力を本人の了承もなく1人で動かすのは不可能に等しいそうですから。」


「……七倉蓮介じゃない?もしそうなら、誰が美乃梨様を一週間も眠らせたんですか!?」


貴翠が声を荒げながらそう言った。

いつも冷静で落ち着いている貴翠にしては珍しい光景だった。


「それは、私にも分かりません。ですが、貴翠さんが考えているように私と七倉が美乃梨さんに魔力の枷を嵌めようとしていたのは本当です。その件に関しては本当に、申し訳ありません。」


「……私の方こそ、取り乱してしまいすみません。私は、全てを七倉蓮介の罪として考える事でこの件を早く終わらせようとしていたんです。」


「貴翠さんの考えが全く違うと言うわけでもありません。七倉の目的は美乃梨さんの魔力の一時的な封印でしたから。七倉の作戦自体は失敗しましたが、結果的に1週間の時間を稼ぐ事が出来ましたし。」


矢城さんがそう言うと、麗華さんは私に向かって再び頭を下げた。


「美乃梨ちゃん、本当にごめんなさい。当主だったのに気付けなくて。」


「いえ。私はもう大丈夫ですし、寝ていただけですから気にしないで下さい。それに……七倉先生の事情も聞いて、私に誰かを責める資格なんてありません。」


「そうね。七倉蓮介とも話し合いが必要かもね。」


そして矢城さんはまた話し始めた。


「美乃梨さんが眠っていた間の1週間、七倉は早瀬神宮に通っていました。早瀬若奈という人物と接触する為に。七倉は亡くなった家族を蘇らせる為、ご先祖様の封印を解こうとしていたのです。」


「早瀬若奈って覡の?」


「はい。ご先祖様の封印を解くのには覡や巫女の協力が必要ですから。」


「美乃梨様の魔力を封印しようとした目的は何ですか?」


貴翠の質問に矢城さんは答えた。


「それは……貴翠さん、貴方の目を気にせず行動する事が出来るからです。」


「私、ですか?」


「貴翠さんはこの界隈では有名ですから。大人顔負けに頭がきれること。そして、主人を何よりも大切にしているということで。」


矢城さんの言葉に貴翠は当たり前というように頷いた。私は恥ずかしながらもとても嬉しく思った。

そして矢城さんは最後に言った。


「美乃梨さん。例の丘の木から魔力が抜けていたんですけれど、何か知りませんか?」


「えっ!?そうなんですか?」


「その様子なら"美乃梨さんは"何も知らないようですね。」


「?」


矢城さんの目線の先を見ると貴翠は穏やかな笑顔を浮かべ、煌は少し気まずそうに目を逸らしていた。


『京翠、2人が何を隠しているか分かる?』


『いえ。私にも何か分かりません。』


京翠と2人で首を傾げていると、矢城さんが2人に聞いた。


「煌さん、貴翠さん。お2人は原因に心当たりがあるそうですね。」


「はい。」


「私が言える立場ではないと分かっていますが、教えて頂けませんか?」


貴翠は考えるような仕草をした後、暫く無言で返事をしなかった。


「貴翠、教えて。」


「私よりも、煌様の方がお詳しいと思いますよ?」


「そうなの?煌、教えてくれる?」


「はい。分かりました。」


そして煌が教えてくれたのは、私が1週間眠った後、木の中に溜まっていた魔力が私の体内に戻ったという事だった。


「何故戻ったのか、又、どのようにして戻ったのかは分かりませんが美乃梨様が目を覚された翌日には木から魔力は消え去っていました。」


と貴翠は補足で説明をしてくれた。

そして全ての話が終わり、沈黙が訪れた。


「……美乃梨さん、煌さん。本当に申し訳ございませんでした。」


「私は大丈夫です。」


「俺もです。ですが、これからは俺達に協力してくれますか?」


「!はい。」


矢城さんがそう言った直後、部屋にノックの音が響いた。


「何?」


麗華さんは扉を開くと、少し目を見開いていた。

扉の奥から来たのは……


「響彼くん!?どうしてここに……?」


「煌が花野矢城に会いに行っていると聞いてな。」


矢城さんと響彼くんは向き合った。


「響彼、」


パンッ!


矢城さんが話そうとした途端、響彼くんは矢城さんの頬を叩いた。矢城さんは頬を抑えながら少し顔を下げた。


「矢城、久しぶりだな。美乃梨と煌を危険に晒した件に関しては許し難いがこれで許してやる。本人達も処分を求めてはいないそうだしな。」


響彼くんは私と煌の方を一瞥して言った。


「麗華、矢城のこれからの処遇はどうなる?」


「一応規則に則ると1ヶ月間魔力制限をかける事になっています。その後は今まで通り冬真に仕えてもらうつもりですけれど。」


「その魔力制限がかかっている間の1ヶ月間だけで良い。矢城を貸してくれないか?その1ヶ月は強制休暇を取らせるのだろう?」


「はい、良いですよ。何をさせるのですか?」


「少し頼みたい事があってな。矢城、明日恋咲家本家に来てくれ。」


矢城さんは戸惑いながらも頷いた。


「美乃梨、煌。そろそろ帰るぞ。」


「ええ。」



 家に着くと、響彼くんは少し嬉しそうに口角を上げていた。きっと、矢城さんと会えた事で何か心のモヤモヤが晴れたのだろう。


「美乃梨、煌。矢城が来る明日までに兄上と義姉上を説得しなければならない。手伝ってくれないか?」


「ええ。」

「はい。」


そしてお父様達の部屋に向かった。

響彼くんがノックをすると扉が開いた。


「響彼に美乃梨に煌。揃ってどうした?」


「兄上、義姉上、少しお話があります。」


「ああ、上がってくれ。」


お父様に案内されたソファに座ると、アーチーが紅茶を淹れてくれた。


「で、話とは何だ?」


「……今日、矢城、花野矢城に会いに行きました。」


響彼くんの言葉に、お母様もお父様も驚きの表情をしていた。お父様の手にあるティーカップは少し揺れている。


「響彼。矢城さんに会ってどうしたの?」


お母様は響彼くんに続きを話すよう促した。


「一発殴った後、明日、恋咲家本家に来て欲しいと伝えました。」


「そう。矢城さんの様子は?」


「反省しているようでした。それに、後悔も。」


「なら私は矢城さんが本家に来る事には何も口を挟まないわ。」


「何故だ!紫乃凛。」


お父様は声を上げて言った。


「何故って、美乃梨も煌も矢城さんに対して処罰を望んでいないからですよ。」


「それはっ!……そうかもしれないが。私には美乃梨と煌を危険に晒した奴の事をそう簡単には許せない。それに、美乃梨から1週間という大切な時間を奪ったのだ。あの1週間、どれだけ生きた心地がしなかった事か。貴翠と京翠は分かるだろう?1週間毎日美乃梨の側に居たではないか。」


「はい。薫様のお気持ちは痛い程よく分かります。ですが、美乃梨様が1週間もお眠りになった原因は、七倉蓮介ではありませんでした。」


「どういう事だ?」


お父様は目を見開きながらそう言った。

貴翠は軽く頷いて話し始めた。


「私も初めは、七倉蓮介の仕業だと思い込んでいました。ですが、矢城さんに言われた言葉で気付いた事があったんです。私は全ての事を七倉蓮介に結び付けていた為に見落としていた点が多数ありました。」


「何だ?」


「美乃梨様の魔力が増えた事です。魔力を減らすなら未だしも増やしても得にはなりません。魔力差が更に開いてしまいますから。」


「確かにそうだな。」


「今回、矢城さんの話を聞いて私が立てた仮説は、美乃梨様が1週間も眠り続けられた原因は膨大な魔力の吸収で、その状況を作った方は私達、いえ、美乃梨様の味方だという事です。」


「貴翠。その可能性はどのくらい何ですか?」


「少なくとも90パーセント以上ですね。」


「その者を探し出す事は?」


貴翠は少し考える素振りをした後、言った。


「五分五分ですね。その方が自ら会いに来ない限りは不可能に等しいです。ですが、来たるべき時が来ると自ずと出会えると思います。」


「そうか。……響彼。その、矢城の事は一発殴ったんだな?」


「はい。」


「ならもう良い。美乃梨と煌もそんな顔をするな。」


お父様にそう言われ、煌と顔を見合わせた。

煌は少し悲しそうに目を伏せていた。

私はと言うと……


「姉さん、大丈夫ですか?」


何故か目に涙が溜まっていた。

軽く拭うと微笑みながら煌に言った。


「大丈夫よ。心配しないで。」


そして部屋に帰ろうとソファを立ち上がると、お父様に止められた。


「……こんな状況下だが、聡と花央さんの結婚式は予定通り行う事になった。」


「そうなんですか?凄く楽しみです。」


「そこで何だが、2人の結婚祝いの用意を式当日までに間に合わせて欲しいのだが……」


「はい。分かりました。」


「式には二条家も誘っている。結婚祝いを贈りたいがどのような人か分からないから美乃梨も一緒に選んで欲しいと言っていてな。」


「分かりました。連絡を取ってみます。」


そしてお父様達の部屋を後にした。

久しぶりの更新です。

次回もお楽しみに!

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