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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
70/123

秘密のお出掛け

最初と最後の一部が響彼目線になっています。

―響彼目線―


 卒業式が終わって、皆を家に送り届けた。


「美乃梨、着替えたら来てくれ。京翠もボディーガードをしたいならその礼服は着替えて来てくれ。」


「私がついて行っても良いのですか?」


「構わない。」


「有難うございます。」


卒業式で何があったか貴翠から報告は来ている。美乃梨に大丈夫かと確認してみると大丈夫だと言っていたので、信用する事にした。


「響彼くん、お待たせ。」


「響彼様、美乃梨様、お待たせ致しました。」


2人が揃ったので、車に乗って貰い、出発した。


「響彼くん、どこに行くの?」


「着いてからのお楽しみだ。」


そう言って1時間程、車を走らせた。



 響彼くんが車を運転し続け約1時間。着いたのは、綺麗な色合いの広いお花畑だった。車から降りると、響彼くんは行くぞ、と言いながら歩いて行った。私は響彼くんの後ろを京翠と一緒について行った。


「……美乃梨、学校はどうだ?楽しいか?」


「え、ええ。すっごく楽しいわ。」


突然そんな事を聞いて来た響彼くんに戸惑いを覚えつつも答えた。


「……そうか。」


「どうしたの?突然そんな事を聞いて……」


「留学、しないか?」


「どうして急に……?」


響彼くんは申し訳なさそうに眉を下げた。


「美乃梨と煌には、しばらくの間安全な海外に居て貰おうと思っている。煌は美乃梨の判断に任せると言っていた。」


「だからどうして、」


「危険だからだ!美乃梨と煌は2人が思っている以上に危険な立ち位置なんだ!……七倉蓮介の目的が1つ分かった。美乃梨と煌の魔力を使った死者の蘇生を企てている。」


「死者の蘇生?それって禁忌なんじゃ……」


「ああ。だからこそ七倉蓮介は日本のどこかに封印されているご先祖様の封印を解こうとしている。」


響彼くんの話す話に私は疑問を覚えた。


「待って、ご先祖様が日本に居る?封印されている?え、どういう事?」


「それは……あまり気にするな。」


響彼くんは後ろの京翠に目を向けた後、スーッと目を逸らした。


「もしかして、貴翠と京翠が私に関わらないで欲しいと言っていた事?」


京翠にそう問うと苦笑しながら頷いた。


「ええ。結局、バレてしまいましたけどね。」


「……話を戻すぞ。七倉蓮介はご先祖様達の封印を解く事で禁忌を変えようとしている。禁忌を決めたのはご先祖様だからな。」


「ご先祖様が禁忌を変えてくれるとは限らないじゃない?」


「そこで操縦魔法だ。禁忌を変えてもらうのではなく無理矢理変えさせるんだ。」


「私、操縦魔法なんて使った事無いわよ?」


「ああ。操縦魔法は義姉上の得意魔法だ。だが、美乃梨と煌は魔力に魔法を刻み込んでいる。親の得意魔法を受け継いでいる可能性が高い。」


お母様の得意魔法である操縦魔法は魔力の消費が激しい上に、強い精神力が必要な為、お母様もお父様も使わせて下さらなかった。


「お父様もお母様もまだ駄目だと使わせて下さらなかったから、全くの初心者よ?」


「ああ。美乃梨はな。」


「っまさか、煌は使えるの!?」


「ああ。煌自身も無意識のうちに使えていたらしい。魔力量で言うと美乃梨の方が多いが、魔法の質で言うと煌の方が優れているようだ。だが、美乃梨も煌も操縦魔法との相性が良い。」


「……私にも使えるって事?」


もし、私にも使えるなら煌に危険な役をさせるわけにいかないから、いざという時は私が代わろうと思いつつ、響彼くんに聞いた。響彼くんは私の意思を受け取ってか、溜め息をつきつつ教えてくれた。


「ああ、練習すれば美乃梨も使えるようになる。練習次第では義姉上をも超えるだろうな。だが、偶には煌に頼ってやったらどうだ?」


―『姉さんは貴翠や京翠ばかりを頼ります。姉さんにとって俺達は2つ歳下の弟です。でも俺達は姉さんに頼ってばかりで頼られた事が無いんです。』


響彼くんの言葉で煌に言われた事を思い出した。


「迷惑じゃ、無いかな?」


「初めて美乃梨に頼られたと喜ぶ顔は想像できる。」


「でも、ある程度は使えるようにしたいわ。」


「煌に教えて貰えばどうだ?義姉上は使わせる事自体に拒否しそうだしな。ああ見えて裏では過保護だからな。とにかく、留学の話は考えておいてくれ。」


「……分かったわ。」


私が日本に居る事で周りにそんなに心配をかけてしまうなら留学して海外に行く事で皆んなの負担が楽になるかもしれない。でも、折角出来た友達と離れ離れになってしまう。


「他に聞きたい事でもあれば出来る限りは答えるつもりだが?」


「じゃあ……響彼くんが海外に行っていた理由、教えて。仕事の為に行っていたのに禁忌の魔法を見つけて帰って来たって言っていたわよね?でも、私の勘だけど何か隠してるわよね?」


「……普段は驚く程鈍感なのにどうしてこういう時は鋭いんだ。出来る限りと言ったが、いきなりグレーゾーンだな。」


響彼くんは京翠を連れて少し離れた所に行き、何かを話した後、戻って来た。


「美乃梨、煌を連れて来てくれ。」


「え、急にどうして?」


「煌にも話さないといけないからな。」


言われた通り煌を呼びに時空魔法で家に行った。


「姉さん!どうしたんですか?響彼兄さんとどこかへ行っていたんじゃ?」


「架、煌がどこに居るか知ってる?」


「はい。本家書斎に行きました。」


「ありがとう。」


そして私は書斎に向かった。

書斎には珍しく律ちゃんと聡兄様、花央さんが居た。


「美乃梨!どうしたの?響彼兄様は?」


「律ちゃん、煌、見なかった?」


「煌なら上だよ。」


律ちゃんに言われた通り階段を登ると煌がソファに座って本を読んでいた。


「煌。読書の邪魔してごめんね。少し着いて来て欲しいところがあるの。」


声を掛けると煌はゆっくりと本から顔を上げた。


「響彼兄さんの所ですか?」


「ええ。」


そしてまた、時空魔法を使って響彼くん達の居る所へと戻った。


「響彼くん、京翠、お待たせ。」


「いや、それ程待っていない。煌も来たので約束通り話そう。私がヨーロッパに行っていた理由を。」


私も煌も頷いた。


「2人とも、自身が魔力に魔法を刻み込む稀なケースだという事はもう知っているな?」


「ええ。」

「はい。」


「普通は数十年に一度生まれるか生まれないかの割合だ。だが、同じ時代に2人も生まれた。それも、同じ親から生まれた姉弟だ。少し出来過ぎていると思わないか?」


「確かにそうね。」


「それは、美乃梨と煌が、前世1人の世界的魔法使いだったからなんだ。」


響彼くんの言葉を理解するのには大分時間を要した。もちろんそのまま理解する事は出来たが、それを直ぐに受け止める事は出来なかった。


「1人の魔法使い……?」


「ああ。2人の前世は魔法使いの中でも有名な占い師でもあった。」


「……響彼兄さんはどこでそれを知ったんですか?」


「夢の中だ。知っているだろう?魔法使いが夢を見る時、魔力が使われる事がある。その夢で見た事は全て事実となる。未来ならばこれから、過去ならばもう起こった事へと。」


「響彼兄さんはどちらを見たんですか?」


「両方だ。過去では1人の魔法使いが自身の魔力を2人分に分けている所を、未来では……美乃梨と煌の、早過ぎる、死を。」


響彼くんは悔しそうな、悲しそうな、寂しそうな顔をしながら教えてくれた。京翠もいつもの余裕ある表情ではなく、焦ったような表情で私達の事を見ている。


「私は、その未来を変える為、ヨーロッパで魔法使いの寿命を伸ばす方法を探した。2人は魔力を2等分し、1人ずつ魔力を与えた。前世での享年36。今世では寿命が2分の1になり、18だ。」


「……あと5年。もう良いよ。響彼くん。響彼くんに無理させるくらいなら私は残りの5年を今まで以上に楽しんで生きるから、だから、そんな顔しないで。」


「俺も、寿命を分けられるなら姉さんに分けたいくらいだ。響彼兄さんが気にする必要はありません。」


「あ、でも私跡取りだから代わって貰わないと。」


私と煌の発言に響彼くんは驚いたように固まった。

すると、京翠が懇願するように言って来た。


「美乃梨様、そんな事仰らないで下さい。美乃梨様がこの世から居なくなられるその時は、私もお供致します。ですが、早過ぎます。あと5年と仰いましたが、高々5年です。私が12歳だった頃から約5年。とても短い時間でした。それに、薫様達も必死に抗うでしょう。美乃梨様は周りから愛されているのです。お願いですから、そんな諦めるような事を言わないで下さい。」


そして京翠は隣で知らん顔しながら聞いていた煌に向かっても言った。


「煌様も例外ではありませんからね?ご自分は関係ないというような顔をされていますがそんな事ありませんから。お2人が諦めてしまうと、響彼様の必死の努力が水の泡になってしまいます。」


京翠にそう言われ、響彼くんの方を向くと悲しそうな顔をしながら震えた声で言った。


「美乃梨も煌も自分の死が怖くないのか?」


「怖いか怖くないかで言えば怖いわ。でも、響彼くんが私達の為に無理して、その所為で倒れたりする方がもっと怖い。」


「俺も、自分の死より、家族や大切な人が無理する方が嫌だ。」


「2人の考えは嬉しい。が、その考えのままなら日本に居させるわけにはいかない。私達への迷惑なんて気にするな。2人ともまだ子供だろう。2人して昔から大人すぎるんだ。まあ、美乃梨と煌が似ている理由は前世同一人物だったからという事もあるだろうがな。」


響彼くんは真剣な顔をしながらそう言った。


「煌は大人かもしれないけど、私はまだまだ子供よ。確かに稔と架に比べたら甘え下手だし素直じゃないけど、でも、本当は……まだ皆んなと学校に通いたい。心配させたくないって思いながらも本音は皆んなに心配させる方を選んでしまうの。」


子供でしょ?と言いながら私は微笑んだ。

響彼くんは物凄く微妙な顔で首を傾げた。


「割り切れる大人も少ないと思うが。……美乃梨、近くにいる子供を真似してみたらどうだ?」


「近くにいる子供?」


「ああ。律だ。あいつは未だに甘え上手で中身が子供だからな。」


すると急に京翠がふっと笑った。


「響彼様。律様は年相応な方ですよ。18歳ならあれくらいが普通でしょう。」


「そうなのか?まあ、13も18も変わらんだろう。」


「そうですかね。そう言えばこの間、律様がお見合いを断っていたのですけれど、響彼様はお見合いをなさらないのですか?」


京翠の質問に対して、響彼くんは


「私には律くらいの頃、恋人が居たからな。」


と言った。


「「「え」」」


「そうだったんですか。全く知りませんでした。」


「まあ、当時は隠していたからな。それに、相手が一般人だったのもあり、結局すれ違いが重なり別れる事になった。京翠もお見合いはそろそろいくつかあるんじゃないのか?」


「ええ。それはもう沢山。美乃梨様とお近付きになりたいと希望する方が。」


「まあ、京翠だとそうだろうな。貴翠の方はどうなんだ?」


「貴翠には現在、利害の一致でお付き合いをしている方が居ります。」


貴翠の相手に響彼くんは興味を持ったようで次々と質問を投げかけていく。


「こちら側の人間か?」


「いえ。ですが、名家の血筋を継いでいる方でして、その方の御母様の旧姓は二条だそうです。」


「え、そうなの!?」


「ええ。二条家現当主二条飛鷹さんの実妹だそうですよ。自分は嫁入りしても娘は血筋は二条家だから実質二条の人間だと仰っていました。」


京翠の言葉に響彼くんは少し目を見張った後、


「そんな好条件の相手が見つかるとは、貴翠は運が良いんだな。」


と言った。

そして私の方をチラリと見てからかうように言った。


「美乃梨も良い相手が見つかったようだしな?美乃梨の結婚式では泣いてしまいそうだ。」


「結婚はまだ早いわよ!」


「そうか?5年はあっという間だぞ?」


「……5年。」


響彼くんの言葉に私はどう反応すれば良いのか分からなくなった。さっきまでの明るいいい流れが一気に重い雰囲気に押し潰された。


「美乃梨、寿命が後5年という事は千秋くんとの婚約も出来なくなる。嫌じゃないのか?」


「……嫌。だけど、もう少し生きたいって言っても響彼くんは無理して倒れたりしない?」


「私がそんなに柔に見えるか?それに、その寿命を伸ばす方法は見つけたんだ。」


「……え?」


予想外の言葉に私は顔を上げた。


「ご先祖様が封印されていると言っただろ?巫女に協力を仰ぐ事でご先祖様の封印が解ける。何故ならご先祖様は巫女と魔法使い双方の力で封印されたからだ。ご先祖様達は、全ての魔法使いの魔力を操る事が出来る。そこで、美乃梨と煌の魔力を一時的に預かって貰う。そうする事で2人の魔力にご先祖様の魔力が混ざり前世の契約は打ち消しになる。」


「前世の契約?」


「ああ。2人は前世、意図的に意識を2つに分けた。寿命を2分の1にするという契約の下。」


すると煌が「待って下さい。」と言った。


「どうした?煌。」


「ご先祖様が封印されているってどういう事ですか?教えて下さい。」


「そう言えば、煌にはあまり詳しく話していなかったな。」


そして響彼くんは、七倉先生の目的と日本のどこかに封印されているご先祖様について話した。


「そうだったんですか。そう言えば、七倉蓮介という者の得意魔法は何なんですか?」


「隠蔽魔法だ。学校では自身の隠蔽魔法を使って巫女の力を隠していたらしい……巫女の力を隠していた?何故だ?」


「ご先祖様の封印を先に解かれないようにする為、じゃないですか?」


「そうか。どれだけ策を練っていようと先にご先祖様の封印を解かれては何もしようがない。帰るぞ。兄上に五家会議の準備を頼まなければ。」


そう言って響彼くんは慌ただしく帰る準備をした。



―響彼目線―

煌の言葉を受け、急いで本家に戻った。

そして、兄上の執務室へと足早に向かった。


「兄上!失礼します。早急に、巫女への協力の取り付けが必要になるかもしれません!」


「響彼、急にどうした?今日は美乃梨と出掛けていたのではないのか?」


「出掛けていたというか、少し話を。それより兄上!五家会議は最短でいつ開けますか?」


私が焦ってそう聞くと、兄上は真剣な顔付きへと変わった。


「2時間後には開けるだろう。私は連絡を取らに行くので響彼は紫乃凛に事情を話しておいてくれ。」


兄上はアーチーを連れて執務室を出て行った。


「響彼、何があったのか話して頂戴。」


「義姉上達には話していなかった事があります。怒られる事は承知の上で話しますが、私への怒りは後にすると約束して下さい。」


「ええ。」


「このままでは、美乃梨と煌は18で死を迎えてしまいます。義姉上は美乃梨と煌、2人が同世代に稀なケースで生まれて来た事を、疑問に思った事はありませんか?」


「勿論あるわ。あの2人は他の2人よりも凄く似ているもの。顔だけではなく性格も。大きく育ってくれたらそれだけで良かったわ。でも、そうも行かなそうなのね?」


「解決するには、魔力の性質を少し変える必要があります。細かい話は省きますが、その性質を変える為にご先祖様のお力添えが必要なんです。」


「そのご先祖様は封印されているから、封印を解くために、巫女との協力が必要。そうよね?」


「はい。七倉蓮介がしようとしている事にもご先祖様の力が必要なんです。なので、先に封印を解かれてしまうと、美乃梨と煌が18で死を迎えるという事実が変えられなくなるかもしれません。」


「そう。」


義姉上は少し目を伏せて悲しそうに言った。


「そう言えば貴翠から、卒業式で覡との接触があったと聞きました。その者は隠語を使っていたと。」


「隠語?」


「月、半月、星です。」


「初めて聞いたわ。響彼は前から知っていたの?」


「いえ。今日初めて知りました。……ですが、美乃梨は知っていたそうです。」


その時丁度、兄上が戻って来た。


「 15時から会議だ。響彼、京翠と貴翠、それと三日月渡を呼んでくれ。」


「はい。」

次は会議です。

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