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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
68/123

卒業式目前 先輩達とのお別れ会

気付けば3月の初め。私がこの学校に転入してからもう半年以上の月日が流れた。


「もう3月だね〜。」


「早いわね。先輩達、卒業しちゃうんだね。」


「そういえば、今日からだよね。卒業式の練習。1年生は参加出来ないけど。」


「私は貴翠が参加するんだし、見てみたいわ。」


「だよね〜、私も先輩達の晴れ姿見たい!」


ユーリちゃんとレイラちゃんとそんな事を話していると、三日月先生が入って来た。


「あ、三日月先生!」


「先生、私達も卒業式に参加したいです!」


「お、どうした姫野。卒業式に参加したがるなんて珍しいな。卒業式に参加しない生徒達は休みになるからと喜ぶ奴の方が多いんだがな。」


「そうなんですか?」


「ああ。恋咲も参加したいのか?」


「はい!颯先輩にも、仁先輩にもお世話になりましたし、貴翠も参加しますから。」


すると三日月先生は少し顎に手を当てて考える様な仕草を見せた後、


「そうだな。丁度卒業式の手伝いを何人か探していた所だ。2年生に頼もうと思っていたが……」


とウインクをしながら言って来た。


「私達がします!ね、ユリ、みのりん!」


「うん!楽しそう!」


「ええ。私も参加出来るならお手伝いくらいは。」


「あと3人必要なんだが、誰か誘っておいてくれるか?」


「はい!」


「よし。なら放課後に残りの3人も連れて職員室に来てくれ。」


そして授業が終わり、昼休みが始まると私とユーリちゃんとレイラちゃんはお手伝いに参加してくれる人を探した。


「雅美ちゃんは、やっぱり無理かな?」


「うん、撮影で忙しいらしいからね。」


「でも、遅刻しても早退してでも学校に来てるくらい雅美は学校好きだもんね。」


「そうだね。初めての映画撮影も楽しいみたいだし、私達は影で応援しとこ!」


「うん!」


「あ!坂下と有栖川くんだ。」


レイラちゃんがほら、と指を差した方を見ると和真くんと景くんが並んで歩いていた。私達の話し声に気付いたようでこちらに来てくれた。


「美乃梨ちゃん!姫野さんと秋月さんも。もうお昼は食べた?」


「ううん、これから。景くんと和真くんは?」


「まだだよ。折角だから一緒に食べない?」


「うん!レイラちゃんとユーリちゃんも良い?」


「もっちろん!」


私達は中庭のベンチでお昼をする事になった。


「あ、そうだ!有栖川くんと坂下も卒業式の手伝い、一緒にやらない?」


レイラちゃんが思い出したようにそう言った。

すると2人はすぐに答えた。


「うん、良いよ。」


「俺も良いぞ!」


「ありがとう。」


「てか、手伝いって何するんだ?」


「それは知らない。でも放課後職員室に来てって三日月先生から言われてんの。」


「あと1人誘わないとだよね。」


ユーリちゃんの言葉に景くんが、


「なら、篤季は?」


と言った。


「良いね!で、その本堂くんはどこに?」


「いつも昼休みになったら美乃梨を探しに行ってるから美乃梨のクラスじゃねえ?」


「えっ、そうなの?私、教室でお昼を食べる事少ないから知らなかった。」


「……篤季なりに頑張ってんだろうな。」


という和真くんの呟きは私の耳には届かなかった。

でも、レイラちゃんとユーリちゃんには聞こえたようで、何故か2人して私の方を見て来た。


「和真くん、なんて言ったの?」


「え……あー、美乃梨はモテるよなって。」


「へ?そんな事……」


「あるよね?」


否定しかけた私の言葉を景くんが遮ってしまった。


「正直、僕も篤季を見習いたいな。だって、千秋と美乃梨ちゃんは僕達に遠慮しすぎだからね。2人がまだ遠慮するようなら僕は頑張って美乃梨ちゃんを振り向かせてみるよ。」


「景くん……」


「なんてね。」


冗談だよ、と景くんは笑った。そしてすぐにそういえば、と話を逸らした。


「美乃梨ちゃんの側に京翠さんが居ないなんて珍しいね。」


「ああ、今日は何かあるそうなの。お昼休みが始まった途端、急に頭を下げて教室を出て行ったから驚いたわ。でも、確か自分の代わりを呼んだって、」


「美乃梨様、こちらでしたか。」


声の主の方を振り向くといつものように優しく微笑んでいる。京翠が教室を出て行った直後から微かに感じていた気配。


「貴翠!」


「貴翠さん、3年生はもう帰ったんじゃ?」


「私は将来も決まっていて、受験勉強も進級試験もありませんし、特に帰る必要がない為、残らせて頂いています。」


私にウインクをしながら皆んなに向かって貴翠はそう言った。


「そのまま進級すれば良いのに……」


「いえ。態々高校に行かずとも、自分の学びたい事は独学である程度学べますし、将来に向けて経験を積んでおきたいので。」


「高校もある種一つの経験じゃない。」


「では、美乃梨様は行かれるという事でしょうか?」


貴翠はからかうようにそう聞いて来た。

勿論、私が高校に行きたいといえばきっとお父様とお母様は行かせてくれる。けれど、


「私も跡取りとしての社会経験を早いうちから積んでおきたいから高校に通うつもりはないわ。」


高校の勉強は恋咲家で受けられるし、魔法使いだという事を隠して態々3年間も通おうとは思っていない。恋咲家で高等学校、大学の勉強は学べるし。


「みのりん、高校に行かないの!?」


「うん。」


「そっか。あ、でも卒業しても絶対に会おうね!」


「もちろんだよ、ユーリちゃん。」


そして話は卒業式の話へと移って行った。


「そう言えば貴翠さん、卒業生代表の答辞は誰がするんですか?」


「生徒会長をしていた石塚仁という方です。」


「仁ってみのりんが言ってた仁先輩って人?」


「ううん。仁先輩の名字は仲井だよ。石塚先輩って確か私の、」


「ファンクラブ会長を名乗る者です。何度もその座を私に譲って貰えるよう頼みましたが中々頑固な方で首を縦に振らないのです。」


貴翠は淡々とそんな事を言った。私以外は皆んな驚きすぎて目が点になっている。


「貴翠って私のファンなの?」


「そうですね……ファンという言葉で片付けきることは出来ませんが。」


貴翠の発言に、和真くんが口を開いた。


「貴翠さんって凄え頭良いから俺達とはかけ離れた存在だと思ってたんですけど、意外と普通の中学生っぽいところもあるんですね。」


「そうですか?」


「はい。何かそういう所を見てると安心します。あ、そう言えば貴翠さん。篤季、どこかで見掛けませんでした?」


「見ていません。何か伝言があれば伝えておきますよ。」


「卒業式の手伝いに篤季を誘おうと思っていて……」


「ああ、そうでしたか。」


と貴翠は言った。

(本当はずっと話を聞いていたのに)


「残念ながら、篤季は卒業式の日は別の用がありますので……代わりと言っては何ですが、喜んで引き受けてくれそうな方を紹介出来ますよ?」


「そうなんですか?お願いします!」


すると貴翠は木を挟んで裏側にあるベンチの方へと行った。そして貴翠が紹介してくれたのは、


「音さん!?」


「お久しぶりです。偶々、お昼休みにあちらのベンチでお弁当を食べていると後ろから美乃梨さんのお声が聞こえて来た為、少し耳を傾けた所、卒業式のお手伝いを探していらっしゃるようでしたので私を誘って貰えるよう、貴翠さんにお願いしてたんです!」


「お願いってどうやって?」


「普通にベンチを叩いてモールス信号で、です。」


サラッと凄い事を言った音さんに、私も皆んなも驚いて固まった。


「貴翠さん、ありがとうございました。」


「どう致しまして。」


「え、あの、ちょっと待って下さい。聞きたい事は他にもありますが、星川さんと貴翠さんは知り合いなんですか?」


ユーリちゃんの問いに2人は顔を見合わせてから言った。


「「恋人同士です。」」


2人の言葉に和真くんと景くん、レイラちゃんとユーリちゃんは声を上げた。


「「「「ええ!?」」」」


「え、星川と貴翠さんが?」


「星川さん、貴翠さんといつから付き合ってるの?」


「お正月頃からです。」


「そんなに前から……全然知らなかった。」


「それは当たり前ですよ、有栖川くん。貴翠さんは大層おモテになるので、周りの方にバレないようにしていましたから。」


「え、みのりんは知ってたの?」


「ええ。2人が恋人になった理由は私が貴翠に音さんを紹介したからだもの。」


私がそう言うと、4人はもっと驚いた。


「そうなの!?」

「美乃梨ちゃんが!?」

「美乃梨の紹介で!?」

「みのりんがキューピット!?」


「え、ええ。」


皆んなの勢いに押されて少し言葉が詰まってしまった。その時、知った気配を感じた。


「美乃梨様、お傍を離れてしまい申し訳ありませんでした。」


「美乃梨お嬢様!こちらに居らしたんですね。」


「京翠、篤季!篤季、今まで態々私のクラスにお昼を誘いに来てくれていたのよね?全然気付けなくてごめんね。」


「いえ。僕が勝手にしていただけですから。」


「お詫びに何でも1つお願いを叶えるわ。」


私がそう言うと篤季は少し黙った後、再び口を開いた。


「何でも、ですよね?」


「ええ。私に出来る事であれば。」


「なら、この間作って下さったクッキーが食べたいです!」


「……そんなので良いの?」


「そんなのではありません!美乃梨お嬢様の作って下さったクッキーは僕の至宝ですから!」


「至宝って大袈裟よ。」


と私が言うと話を聞いていた音さんが言った。


「篤季さん、美乃梨さんからクッキーを頂いたんですか!?しかも手作りを?羨ましいです!」


「では、音さんも要ります?」


「はい!ですが、美乃梨さんの手作りに私が口を付けるなんて……それに、永く置いておけませんし。貴翠さんならどうします?」


「そうですね。折角の美乃梨様の手作りクッキーを味わわないのは勿体無いと思います。それに、クッキーは消耗品。永く置いていると腐ってしまうでしょう。なので私なら出来る限り綺麗な写真を撮り、香りを覚え、時間を掛けて味わって食べた後は紅茶を飲まず、クッキーの後味を堪能します。」


貴翠の長い説明の後、音さんはパアッと明るい笑顔を見せた。


「流石は貴翠さんです!とても素敵なアドバイスをありがとうございます!私もそうしてみます!」


「どう致しまして。」


「音さん、期待している所申し訳無いのだけれど、普通のクッキーよ?」


「いえ!美乃梨さんが作ったというだけで普通とは格が違いますので!」


「そんな事ないと思うけれど……。あ、少し多めに焼いて京駕さんにも渡そうかしら。クッキーを渡した後すぐにとても美味しかったと感想を頂いたから。」


私がそう言うと貴翠と京翠も少し焦ったような反応をした。


「私もこの世界で1番美味しいと思っていました!」


「私もです!今まで食べたクッキーの中で1番美味しいと思いました。感想を言うのが遅くなってしまい申し訳ありません!」


「え?全く気にしていないから大丈夫よ。あ、京駕さんにはコーヒーに合うクッキーにしようかしら。」


「美乃梨ちゃん、もし良ければ僕にもクッキーくれない?美乃梨ちゃんが焼いたクッキー食べてみたい!」


「良いわよ。折角だからいっぱい焼いちゃおうかな。貴翠と京翠は何味が欲しい?」


私がそう言うと2人は驚いたように目を見張った。


「私達にも下さるんですか?」


「当たり前じゃない。……あれだけ褒められたら誰でもあげたくなっちゃうわよ。」


私がそう言うと何故か大騒ぎに……


「みのりんのデレだ〜!」


「みのりん!可愛い!」


「おい景、篤季、しっかりしろ!」


「あと少し前に戻れたのなら写真と動画に収められたというのに……!」


「いえ、兄さん。レンズ越しの美乃梨様よりも肉眼で目に焼き付けた美乃梨様の方がよろしいかと。」


「…………」


私は反応に困り黙っていると予鈴が鳴った。


「あ、やばい!じゃ、有栖川くんと坂下と星川さん、放課後職員室に来てね!」


「りょーかい!」


そして急いで教室に戻った。



放課後……

終礼が終わると、私とユーリちゃんとレイラちゃんは三日月先生に着いて行き、職員室へ向かった。


「そう言えばもう3人は誰を誘ったんだ?」


「えっと、坂下くんと有栖川くんと星川さんです。」


「そうか。お、来たな。」


「三日月先生、お任せしてすみません。」


3人と一緒に来た加賀谷先生がそう言った。


「いやいや、加賀谷先生は他の役割を当てられていましたし、俺は何もありませんでしたので。」


「6人には保護者の受付を頼もうと思ってな。1人1クラスで割り当てるんだが、無理そうなら誰か誘っても良いからな。じゃあまずはクラスを決めるぞ。」


三日月先生が希望はあるか?と聞いて来た。


「皆んな特に無いようだな。じゃあ有栖川が3−1、坂下が3−2、星川が3−3、姫野が3−4、秋月が3−5、恋咲が3−6で良いか?」


「「「はい!」」」


そしてどのクラスを担当するかが決まったので部活に向かおうとした時、


「恋咲は少し残ってくれ。」


「はい。分かりました。」


皆んなが帰ると三日月先生は何やら凄く真剣な顔つきに変わった。


「……バスケ部で3年へのサプライズを考えている。明日実行する予定だ。」


「サプライズって何するんですか?」


「例年はただのお別れ会だそうだが、今年はひと味変えようと思ってな。3年の女子部員は残念ながら参加出来ないそうだが、男子部員は全員参加出来ると言っていたから2対1をしようと思っている。」


「楽しそうですね!」


「そこで一つ、恋咲に頼みがある。」


「何ですか?」


「本堂先生を誘っておいてくれないか?」


「それは別に構いませんが、三日月先生の方から誘ったら良いじゃないですか?」


私がそう言うと三日月先生は横に首を振った。


「断られたんだ。だから恋咲の方から誘ってくれないか?」


「はい。分かりました。」


そして職員室を出ると、京翠が立っていた。


「京翠、明日の事だけど……2対1に参加してくれないかな?」


「美乃梨様からのお誘いを無碍には出来ませんね。ですが、正直私は手加減が下手でして……」


「手加減なんてしなくて良いじゃない。三日月先生も3年の先輩方も手加減して貰おうとなんて思ってないわよ。」


「そうですかね。」


「ええ。本気の京翠の方がかっこいいわよ!」


そして更衣室で着替え、体育館に向かうと、皆んな揃っており、重い空気が流れていた。


「え、何かあったの?」


私は1番明るい篤季に聞いた。


「美乃梨お嬢様、三日月先生から聞いていないんですか?」


「何のこと?」


するととても暗い顔の爽夜くんが教えてくれた。


「三日月先生がサプライズでコスプレして2対1をしようって……」


「また?」


「違うんだ。今回は……演劇部の昔の衣装が大量に出て来たらしくて、全員統一でメイド服だ。」


「えっ!?」


「しかも、今日の5対5で負けたチームは猫耳付きで、だ。」


爽夜くんは教えてくれた後、また深いため息をついた。透くんも千秋も真央くんも嫌そうに顔を歪めている。私は体育館の端の方でしゃがみ込んでいる光奈先輩達の方へ向かった。


「光奈先輩、天音先輩、早織先輩。大丈夫ですか?」


「美乃梨ちゃ〜ん!メイド服なんて絶対嫌だよね?三日月先生が演劇部の人が一生懸命作ったのに一度しか使っていないなんて勿体無いからってサプライズでメイド服なんて言ったんだよ?」


「メイド服は勿論負けた3年にも着て貰うって言ってたけどそういう問題じゃないよね!?」


「美乃梨ちゃんのメイド服姿を見る為には私達も着ないといけないって!」


「因みに、どんな感じの服何ですか?」


「それは知らない。確かあの箱の中にあるって……」


私は箱を覗いて中の服を出した。


「先輩、これ、普通の黒いワンピースに白いエプロンがあるだけですよ?」


「え?フリフリのじゃないの?」


「はい。まあ、これだけ沢山ありますし、フリルなんて付けられなかったのかもしれませんが。」


確かに結構良く出来ていて普通に売っているような服だった。これをたった一度しか使っていないというのは確かに勿体無いと思った。


「これなら全然恥ずかしくない。透〜、爽夜〜、これなら全然着れるよ?」


「いや、どっちにしろ無理だって。そんなの似合うのは千秋と真央先輩くらいだって。」


「確かに真央くんと千秋くんには凄く似合いそう!」


「天音さん、それって褒めてますか?」


千秋は怪訝そうにそう聞いた。


「褒めてる褒めてる。」


そして三日月先生が入って来て部活が始まった。

今日はいつにも増して気合いが入っている。何故なら皆んな猫耳は避けたいと思うからだ。3チームに分かれて5対5をした。


「「「ありがとうございました!」」」


5対5の結果は透くん、私、爽夜くん、2年生の先輩2人のチームが1点差で負けてしまった。


「マジで最悪。真央先輩と千秋の運動神経もだけど、篤季もやばすぎだろ。」


「猫耳とか絶対嫌だ!」


「私は楽しそうだから別に……」


「美乃梨は似合うから良いだろ!せめてもっとかっけえのが良かった。」


「かっこいい……ライオンの立髪とか?」


「人間の顔に立髪付けてかっけえか?」


爽夜くんの言った事を想像すると少し笑ってしまった。すると三日月先生が


「あるぞ、立髪。」


と言った。


「はあ!?何で、」


「さあ?それは知らん。そういえば演劇部からメイド服以外にも一度しか使ってない服を貰ったぞ。ほら、学ラン。この学校ブレザーだから、学ランは態々作ったらしい。」


「じゃあ俺、それにする!先生、いくつあります?」


「11着。丁度男子全員分あるな。」


「え、私学ランが良い!」


1位のチームの光奈先輩がそう言った。


「残念だな、爽夜。残り10着になっちまった。他、学ランが良い奴ー?」


すると私以外皆んな手を挙げた。


「13人か。勝ったチームから順に選べるから、爽夜のチームからは1人しか着れないな。恋咲は学ランじゃなくて良いのか?」


「はい。体育祭で着ましたし。」


「じゃあ恋咲以外の4人でじゃんけんか、バスケ部らしくフリースローで勝負だ。どっちにする?」


「「「「フリースロー!」」」」


そしてフリースロー対決の結果、透くんが学ランに決まった。


「よっしゃーー!!」


「くっそ。」


「三日月先生。3年生はメイド服でも嫌がら無いんですか?」


「ああ。3年は1、2年と違ってノリ良いからな。」




 そして翌日。今日はバスケ部でのお別れ会。メイド服に着替えると体育館に向かってクラッカーを構えて準備をした。


「そろそろ来るぞ。」


ガララッと体育館の扉が開き、一斉にクラッカーを鳴らした。


「「「颯先輩、仁先輩、受験、お疲れ様でした!」」」


「他の先輩方も進級試験お疲れ様です!」


「それと、颯先輩。15歳のお誕生日、おめでとうございます!」


「うわ、びっくりした。何、サプライズ?」


「はい。颯さんの誕生日のお祝いと3年生のお別れ会を兼ねてます。」


「てか、何で皆んなそんな服着てんだ?」


仁先輩が眉を歪めながら聞いて来た。


「三日月先生が……」


「ああ〜、成程。」


「仁さん、面白がってるみたいですけど、負けたら3年も着る事になるんですよ?」


嫌々メイド服を着ている爽夜くんがそう言った。


「え?俺別に良いぞ?なあ、颯も良いよな?」


「当たり前だ。そんな面白そうなの嫌がる訳ねえじゃねえか。」


「流石3年。相変わらずのノリの良さだな。じゃあ3年も着るか?」


「「うす!」」


そして結局3年生は全員メイド服に袖を通したその服装のまま2対1をする事になった。私は真央くんとペアを組んで相手は颯先輩だ。


「美乃梨、よろしく。」


「うん。絶対勝とうね!」


「美乃梨も真央も俺を止められるか?」


「頑張ります!」


結果は3点差での敗北。

颯先輩は得意なゴール下にはあまり攻めて来ず、スリーポイントからのシュートばかりだった。


「颯先輩ってフックシュートなんてしてました?」


「最近するようになったんだ。俺の受験が終わってからな。2人してゴール下ばかり警戒してるから外からおかげで外から打ちやすかった。相手の得意な事が分かってると油断しやすくなるから注意しろよ。」


「「はい!」」


そして反対側のコートでしていた爽夜くんと透くん対仁先輩の2対1も終わった。結果は仁先輩の圧勝だそうだ。2人もアドバイスを貰っている。


千秋は篤季とペアを組んで3年生の先輩と対戦している。2人が戦っている先輩は中々体格が良いので力の強さで負けてしまっていた。


結局、点差はあれど全ての試合で3年生は勝ちを収めた。そして3年生を代表して、仁先輩がお礼を言って下さった。


「今日は俺達3年の為に態々ありがとう。俺達が卒業しても弱くなるなよ?」


「「「はい!」」」


「じゃあ三日月先生、この格好のまま集合写真撮ってくれませんか?」


「仁さんの鬼!」


「好きなように言っとけ、爽夜。どうせ写真は一生残るからな。」


「安心しろ、爽夜。似合ってるぞ。」


と颯先輩はウインクをしながら爽夜くんに言った。爽夜くんは諦めたような目をして


「ハハ、そうっすか。」


と笑った。

そして皆んなで集合写真を撮った後、三日月先生が言った。


「実は本堂先生が3年の為に1対1をしてくれると言ってくれた。はい、1対1して欲しい人ー?」


案の定、3年生全員が手を挙げた。それに続いて2年生も1年生の爽夜くん達も手を挙げた。


「多過ぎだろ。本堂先生、どうします?」


「では、5対1でしましょう。皆さんもそれで良いですか?」


「はい。流石に京翠さんと1対1で勝てる気はしませんし、5対1くらいが丁度良いと思います。」


そして京翠対3年生の先輩5人で5対1をする事になった。


「美乃梨はどっちを応援するんだ?」


「それはもちろん京翠よ!」


「だよな。俺も。」


「京翠ー!!頑張って!」


「京翠先生、行けーー!!」


オールコートでの5対1。最初は流石の京翠でも、と思ったが、そんな心配は無用だった。あっという間に4人抜き、仁先輩との1対1。最後まで仁先輩は粘っていたが、京翠が躱してダンクシュートを決めた。


「ぅおーーー!!京翠さん凄え!」


「三日月先生と京翠さんの1対1、見てみてえな。」


「確かに、それは俺も見てみたい。」


「千秋!千秋も京翠との5対1に参加するのよね?」


「ああ。爽夜と透と篤季と俺で参加する。」


「頑張ってね。」


「ああ。そろそろ真央達の5対1が始まるぞ。」


3年の帰って来た先輩達は皆んなゼイゼイと荒い息をしていた。


「颯先輩、仁先輩、お疲れ様でした。」


「仁さん、凄かったっすね。最後まで京翠さんに着いていけてて。」


「最終的に抜かれたけどな。爽夜も千秋も最後まで気抜くなよ?気抜いた瞬間もう自分の後ろに居るぞ。」


「「はい。」」


そして始まった真央くん達と京翠の試合を見た。

京翠の方を応援しようか、真央くんの方を応援しようか迷ったので、名指しはせずに頑張れとだけ言った。


結果は3年生の時と同じく敗北。

でも、皆んな生き生きとした顔をしていた。

それに続いて先程とは違うの2年生5人対京翠。

結果は同じく敗北。皆んなゼイゼイと荒い息をしているのに、相変わらず京翠は涼しい顔をしている。


「次、俺らだけど、美乃梨も出ねえか?」


「え?」


「人数が4人だからさ。」


「それに、美乃梨が居たら戦力上がるし。」


「分かった。」


そして私、爽夜くん、千秋、篤季、透くん対京翠での試合が始まった。


「美乃梨様の前ですし、少々格好付けさせて頂きますね。」


そう言いながら、京翠は私と透くんのダブルチームを躱してバックコートまで走り抜けて行った。


スリーポイントラインでは千秋と爽夜くんがダブルチームで待ち構えている。私と透くんも京翠の華麗なプレイに唖然としてしまい立ち止まっていたが、急いで追いかけた。が、千秋と爽夜くんもあっという間に抜かれていて、篤季と京翠の兄弟対決だった。


「篤季とこうして一戦交えるのは初めてですかね。」


「そう言えばそうですね。京翠兄さんと運動で戦うなんて結果が知れてますから。」


何となく邪魔するのは出来ない雰囲気だったので、皆んなで篤季と京翠の1対1を見届けた。


前に進もうとする京翠をこれでもかと引き留めている篤季。一歩下がってシュートを打てば、身長的にも跳躍力的にも篤季には止められない。でも、京翠は敢えてそれをしていない。


(2人とも、頑張れ!)


矛盾しているが、私は心の中でそう応援した。

結果は京翠のジャンプシュートで決まった。


「京翠さん凄えー!!」


「篤季、京翠。お疲れ様。」


「美乃梨お嬢様。すみません。」


「どうして謝るのよ。最後まで諦めないのは篤季らしくてかっこ良かったわよ。」


「!。ありがとうございます!」


私達のそんなやり取りの中、パンパンと手を叩く音が響いた。


「よし、これで全試合終わりだな。」


三日月先生がそう言うと、爽夜くんが、


「え、三日月先生は?」


と言った。


「は?俺はひと言も出るとは言ってな、」


「全員出ましたよ?三日月先生も京翠さんと対戦してみて下さいよ。」


すると爽夜くんの言葉に乗った颯先輩と仁先輩も


「もしかして三日月先生、負けるのが怖いんすか?」

「何気に三日月先生が1on1するの見た事無いので俺達が"卒業"するまでに見てみたいです。」


と言った。

2人の言葉に三日月先生はガシガシと頭を掻いた。


「分かったよ。今日の主役達からお願いされちゃぁ断れねえからな。ただし、一つ!俺を推した奴らはちゃんと俺を応援する事!」


「えー、俺京翠さん応援したいのに……」


「えー、じゃない!山代と仲井もだからな。」


「分かってますよ。」


「頑張って下さーい」


「ちゃんと心を込めろ!」


そして三日月先生と京翠のハーフコートでの1on1が始まった。6点先取の試合。私から見て、正直実力は京翠の方が高いと思っていた。けれど……


「三日月先生凄え……!」


「やばっ!」


オフェンスの三日月先生の方が優勢だった。

京翠は相変わらず涼しい顔をしているので、何を考えているかは分からない。


「美乃梨、どっちが勝つと思う?」


「分からない。でも、今の所は三日月先生が優勢だよね。透くんは?」


「俺は、やっぱ京翠さんだと思う。てか、京翠さんに勝って欲しい。一緒に応援しようぜ。」


「うん。」


「京翠先生ー!行けー!」

「京翠頑張れ!」


そしてそこから京翠が巻き返し、4−0だったのが4−6となり、逆転勝利を収めた。


「流石京翠さん!凄え!!三日月先生も意外と凄かったっす!」


「おい、松岡。意外とはなんだ意外とは。」


「三日月先生、バスケ習ってたんですか?」


「ああ。中高バスケ部だったからな。」


「そうなんですか。」


「かっこ良かっただろ?」


「はい!」


私がそう言うと、三日月先生は目を丸くした。


「素直に返事をしてくれるのは恋咲ぐらいだ。恋咲はずっとそのままで居てくれ。」


「?はい。」


「じゃ、そろそろ色紙配るぞ。番号順に並べ〜」


そして3年生5人はユニフォームの番号順に並んだ。

初めは4番の仁先輩。私がバスケ部に入ってから公式試合は見た事が無い。でもきっと、ユニフォーム姿で楽しそうに試合をする先輩方はかっこいいんだろうなと思った。


「仁さんには俺と透と千秋で渡します。仁さん、卒業しても偶には顔、見せに来てくださいね。」

「仁先輩から貰ったアドバイスは的確で分かりやすかったです。」

「俺は、半年程度の付き合いでしたが、仁さんには色々な事を教わりました。」


「ありがとう。都合が合えば試合の応援に行ってやるから、頑張れよ。」


「「「はい!」」」


そして次は私と光奈先輩と天音先輩で颯先輩に色紙を渡す。


「颯先輩、入部して間もない頃に色々教えて頂き、本当にありがとうございました。」

「私、後期の方はあんまりバスケ部に顔出してなかったのに、颯くんが毎日の様にバスケ部の現状教えてくれたから、ずっと居た気になっちゃったよ。」

「颯先輩。結局先輩に勝てないまま終わりましたけどいつか、追い越すので待ってて下さい。」


「ああ。こっちこそありがとう。色紙凄えな。大事に飾っとくよ。」


颯先輩はニカッと笑いながら色紙を持ってVサインをした。


「颯くん、やっぱ卒業来年にしない?」


「はあ?無理だって。高校決まったし。光奈は俺と同じとこ来んだろ?待ってっから、落ちんなよ?」


「うん……私が落ちるわけないじゃん!」


完全に2人の世界だった。

私が呆然と見ていると、天音先輩がこっそり教えてくれた。


『あの2人、保育園からの幼馴染なの。それにずっと両片想いしてんの。仁先輩が焦ったいからってくっつけようとしてるのに全くくっつかないんだよ。』


そして光奈先輩と颯先輩は無視されて、他の先輩方へも色紙を渡して感謝の言葉を伝えて行った。


「まだまだ伝えたい事はあるかもしれないが、それは卒業式の日に取っておけ。今日はこれで解散だ。」


「待って下さい、三日月先生。実は俺らからも渡したい物があって……」


そう言って颯先輩が取り出したのは手紙だった。


「俺ら1人1人別に三日月先生に手紙書いて来たんで、後で読んでおいて下さい。」


そしてせーの、という仁先輩の掛け声に続き、3年生の先輩方5人が三日月先生に向かって頭を下げた。


「「「「「1年間、お世話になりました!」」」」」


三日月先生は予想していなかった事態に軽く目を見張った後、ふっと微笑んだ。


「ありがとう。大切に読ませて貰う。」

次回は卒業式です!

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