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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
67/123

貴方の事は私が必ず護り抜きます

貴翠目線です。

午前3時。

全ての準備をし終え、恋咲家本家に向かう。


兄さんと父さんは美乃梨様の専属従者として薫様に認められているので本家に部屋を設けてもらっている。

私は気持ちでは既に美乃梨様のボディーガードだが、対外的には恋咲家の家従。

体力、筋力が共に備わっていない私にはボディーガードはとても向いているとは言えない。

けれども、美乃梨様を護りたいという気持ちだけは誰にも、薫様にも茅紘様にも、千秋様にも負けないと言い切れる。そこで私はボディーガードと認めてもらう為、兄さんと父さんに見て貰った。



 結果、2人が頭脳でカバー出来ると判断し、私はとうとう念願の美乃梨様のボディーガードとなる事が出来た。美乃梨様のボディーガードとなり、初めての公の場で、私は美乃梨様を護る事が出来なかった。


いつもなら、たとえ疲れていても口には出さない美乃梨様が、「疲れた」と言った事で父さんと兄さんと私は、すぐに異変を感じ取った。

ゆっくりと力なく近くの木にもたれ掛かった美乃梨様はそのままぐったりと倒れてしまった。


美乃梨様が気を失われてから、私は美乃梨様が倒れられた原因を探りに探った。


私は美乃梨様が起きないまま2日が経とうとした時、美乃梨様のお部屋を訪れた。昨日とは違い、苦しげな表情では無かった為、少し安心して息をついた。


「美乃梨様、何があっても護ると誓った貴方を護りきれませんでした。申し訳ございません。」


「き、……すい。」


「!美乃梨様」


美乃梨様が意識を取り戻されたのかと思い頭を上げると、まだ眠っているようだった。私は少し息をつき、美乃梨様の横に跪いた。美乃梨様の部屋を後にして、響彼様のお部屋に向かっている途中、電話が掛かって来た。


「はい。何でしょうか?」


『美乃梨さんが入院されたとお聞きして、貴翠さんなら何か知っているかと思い、連絡しました。』


「ご安心下さい。命に別状はありませんし、眠られているだけですので。」


『そうですか。……貴翠さんもあまりご無理はなさらないで下さいね。美乃梨さんがお目覚めになられた時に美乃梨さんは気にしてしまうでしょうから。』


「そうですね。心に留めておきます。美乃梨様が目を覚まされたらすぐに連絡しますのであまりこちらの事ばかりに気を取られて、学業に支障のないようにして下さいね……音さん。」


少し前から、音さんと私は利害の一致によるお付き合いを始めた。私は15を迎えると少しずつ始まる縁談を避ける為、音さんは顔も知らない相手との婚姻を断る為だった。


音さんが美乃梨様に向けている感情は、限りなく恋愛感情に等しいと私は感じたが、音さん曰く、美乃梨様へ向けている感情は恋愛感情ではないそう。

この話をした時、音さんは、私にも聞いて来た。

私が美乃梨様に向けている感情について。


自分で言うのも少し気が引けるが、私は感情を隠すのが得意だ。なので、気付かれる筈が無かった。


―「貴翠さんが美乃梨さんに向けている感情の半分以上は恋愛感情ですよね?」


純粋な疑問のように首を傾げながら聞いて来た音さんに、私は少し目を見張った。


「……どうしてそうお考えになったのですか?」


()ですよ。同じボディーガードである筈の京翠さんと貴翠さんの美乃梨さんを見る瞳の色が違いますから。京翠さんは純粋に主人を慕う気持ちだと思います。ですが貴翠さんは……美乃梨さんに恋焦がれたような瞳をしている気がします。」


音さんはそう言った後、「まあ、これは何の根拠も無い、私の女の勘ってやつですけどね。」と笑った。


「私の予想は合ってますか?」


「そうですね、全く違うとは言い難いです。大体の内容は合っていますが、私の美乃梨様への感情は貴方が考えている以上のものです。……恋愛感情など、とうの昔に忘れていますから。」


「そうなんですか?なら、美乃梨様に対しての感情はどのような物なんですか?」


「強いて言えば、自分自身を選んで下さった主人に対する絶対的忠誠心ですかね。私にとって美乃梨様は薄暗かった人生の中に、光を与えてくれた私の生きる意味そのものですね。」


私の言葉に音さんは笑顔で頷いた。


「そうですね。私にとっても美乃梨さんは光の様な方です。」―



 そんなやり取りを思い出していると、響彼様のお部屋の前に着いていた。ノックをしようとすると中から声が聞こえて来た。


「貴翠、入って来て。」


声の主は律様だった。

律様は美乃梨様が気を失われてから、ずっと笑っていらっしゃらない。命に危険が無いと分かった今でも、響彼様が持ち帰られた苦手な古語の文献を、私に聞きながらも、ご自分で読み解かれていらっしゃる。

内容は禁忌の魔法について。関係があるかも分からない現状、少しでも美乃梨様の危険に関する可能性のあるものについて調べられている。


「大体の原因が分かった、かも。」


「律、主語が足りない。貴翠、美乃梨が気を失い、魔力の揺れが更に微弱になった今も尚、眠り続けている原因が殆ど分かった。魔力の揺らぎがあったと聞いたが、美乃梨の魔力の篭った木に何者かが魔法を掛けたと思われる。他人の魔力が入り込んだ事による体力の消耗だろう。」


私はその言葉を聞き、安堵の息をついた。


「因みに、今回の件、七倉蓮介の関与は薄いと私は考えている。」


「はい?」


「落ち着け、最後まで聞いてくれ。そうだな、関与が薄いというより、関与出来ていないと言った方が正しいだろう。」


「では、七倉蓮介は美乃梨様に何かをしようとしていたが失敗に終わり、他の誰かが成し遂げた、という事でしょうか?」


「ああ、多分な。本堂家の者に調査を頼んでいたんだが、七倉蓮介は美乃梨の誘拐を企てていたらしい。」


その言葉は予想していなかったわけでは無かったが、七倉蓮介に対しての怒りが最高潮に達しかけた。私は深く息をして気を紛らわした。


「それに、七倉蓮介はどこからか情報を得ていた。」


「あ、それとね貴翠。茉莉花ちゃんの家の近くに本当に微量だけれど七倉蓮介の魔力の痕跡があったらしいよ。」


そして律様は七倉蓮介が失敗した誘拐の作戦について説明して下さった。


「彼は隠蔽魔法の使い手だったわよね?だから警戒心が薄く、人情に厚い美乃梨に怪我人の振りをして治癒魔法を掛けさせて魔力を減らし、そのまま誘拐するつもりだったようよ。」


「美乃梨様の優しさを利用しようとするなんて……」


「でも、出来なかったのよ。美乃梨はパーティーを途中で抜け出して裏口から帰ったから。」


「律様、響彼様。七倉蓮介は誘拐以外は何も考えていなかったと思いますか?」


私がそう問うとお2人は首を横に振った。


「貴翠の考えを教えてくれ。」


「はい。七倉蓮介には美乃梨様の魔力を揺るがす程の魔力量が備わっていません。それに、情報収集能力も低いと私は考えております。文化祭の件も考慮して考えるに、七倉蓮介は今回の件に失敗しておりません。それどころか大成功なのだと思います。」


「どういう事?」


「誘拐は建前でしょう。表に隠れた裏では美乃梨様の魔力の封印を企んでいたのでしょう。眠れば魔力を動かす事はありませんから。」


「でも、そんな事したら美乃梨の魔力を利用できなくなるんじゃ……あ!」


「そうです。封印と言っても奥底に押し込むわけでは無く、鍵を締める程度のものです。……そう、魔力に制限を付ける枷です。確か、七倉蓮介はそれを付けられた者の子孫だと、そう聞いております。」


私がそう言うと響彼様が頷きながら呟かれた。


「そうか、七倉蓮介はその枷の仕組みや作り方を知っていた筈だ。あの枷は作った本人の着け外しは自由だったな。」


「はい。そしてもう一つ、七倉蓮介にはその枷を作る技術があっても魔力はありません。……最悪の可能性が出て来ました。」


「こちら側の内通者か……。律!」


「分かってますよ、響彼兄様。」


「じゃあ貴翠、私達は内通者について調査を始めるので席を外させて貰う。」


響彼様と律様が足早に立ち去られ、私も美乃梨様のお部屋へと向かった。ノックをするとシャルルさんが開けて下さった。


「貴翠、何かありましたか?」


「兄さんもいらっしゃったんですね。」


「当然ですよ。私は、美乃梨様のボディーガードですから。それより貴翠、何があったのですか?」


「七倉蓮介が単独犯ではない可能性が出て来ました。律様と響彼様が内通者の捜索に当たっています。」


「内通者、ですか。……貴翠は可能性を考慮していたのですね。」


兄さんは少し暗くさせた表情でそう言った。


「兄さんもですよね?考慮していたからこそ、五家上層の方々に情報を渡した。そうですよね?」


「やはり、貴翠の目は欺けませんか。五家上層の方々に渡した情報は、私と薫様、茅紘様、お祖父様で制限していましたが。流石に分かりやすく動いてくれるわけも無く、無駄足に終わってしまいましたが。」


「いえ。兄さんのお陰で、恋咲家と本堂家の上層部は内通者に関しての調査を始めているので無駄足ではありません。」


「貴翠にそう言って貰えると思いの外、心強いものですね。」


兄さんは少し驚いた様に目を見張った後、微笑みながらそう言った。



 美乃梨様が気を失われてから1週間。美乃梨様を心配する殆どの者が寝ていない。煌様達も、お見舞いに来て下さっている千秋様達も、勿論私達もだ。

美乃梨様が目覚められた際に心配させない様、休憩はとっているが、篤季に関しては休憩さえ殆ど取っていない。それを心配した聡様が態々催眠魔法を掛けて下さったそうだ。


そして聡様が美乃梨様の手を握りながら話しかけられると、美乃梨様に反応があった。


「……美乃梨!?」


「あ……き、兄、様?」


私も、隣に居た兄さんも、すぐに美乃梨様の寝台の横に飛んで行った。


「美乃梨様!分かりますか?」


「おはよう、ございます!」


私は一刻も早く、美乃梨様のご無事を確認しようと顔を覗き込みながら言った。兄さんは、美乃梨様が目覚められた事に対する喜びか、護れなかった不甲斐なさか、涙を溜めながら、声を絞り出すように言った。


私は美乃梨様が目覚められた事を律様と響彼様に伝えに行った。響彼様のお部屋の前で荒くノックをすると響彼様が怪訝な顔をしながら開けて下さった。


「美乃梨様が、目を覚まされました。」


「本当か?今すぐ向かう。律!」


文献を読み解いており、気付かれていない律様に響彼様が声を掛けられた。


「っ美乃梨が、目を覚ましたそうだ!」


「え!?そうなの!?……良かった〜!!早く美乃梨に会いたい!」


そう言って、律様は1番に走って美乃梨様のお部屋へと向かわれた。私も響彼様も、律様を追うように美乃梨様のお部屋へ向かった。


目覚められたばかりの美乃梨様のお部屋にはとても多く人が集まっていた。その状況に美乃梨様は驚いた様子でいらっしゃった。どうやら、本人の感覚ではいつもより少し長く寝た、くらいのものだったらしい。


そして、シャルルさんとの会話の中で重大なお言葉を呟かれた。


「美乃梨様、魔力が増えてませんか?」


「……そう言えば、確かに。ふふっ、今なら2、300年くらい前まで行けそうだわ。」


美乃梨様のお言葉に真っ先に反応されたのは薫様と響彼様だった。冗談のように聞こえるこの言葉は本当の事だった。


「私、5歳の頃、10年前まで遡ったのよね?今ある魔力量はその時の魔力の30倍以上の魔力量だと思うわ。無理をすれば400年程遡れそうなくらいの。」


響彼様と薫様に詳しい説明を求められた美乃梨様の言葉に、私と兄さんと父さん、それに煌様達とシャルルさん以外の全員が絶句した。


「美乃梨様なら難なく実現させてしまいそうです。」


という兄さんの言葉に私も父さんも隣で頷いた。


それから美乃梨様は皆様に心配の声を掛けられた後、少し表情を暗くさせながら仰られた。


「……私も、少し、本当に少しだけだよ?でも、怖かった。」


美乃梨様のお言葉に、私よりも早く反応し、質問を返したのは先程まで必死に涙を拭っていた篤季だった。


「美乃梨お嬢様、何が怖かったんですか?」


「私にも、よく分からない。でも、周りが見えない真っ暗な所で私は誰かに手を引かれて"あの丘の木"の下に連れて行かれた。遠くに雷鳴が響くあの場所は、お昼とは全く別物だった。それに……」


美乃梨様が押し黙られると、聡様が落ち着かせながら聞き出した。


「黒い、ドロドロとした魔力が溜まっていたの。」


美乃梨様の仰られた魔力に心当たりのあった私は美乃梨様から詳しくお話を伺った。内容は予想通り。


「おそらく、美乃梨様の仰るドロドロとした黒い魔力とは禁忌の魔法を使った者の魔力でしょう。私は禁忌の魔力について1年程前から調べておりまして……」


私は説明しながら皆様にスマートフォンの写真をお見せした。写真を見た美乃梨様は驚いた様子で呟かれた。


「貴翠、この本って……」


気付かれた様子の美乃梨様に頷きながら、他の方へも分かるよう、説明をした。


「この間、美乃梨様からプレゼントされた本でございます。どちらも言語は違えど作者は同じでした。私はこの本の作者の事を調べ回りましたが、中々情報が見つかりませんでしたので、この作者の本を集めるに至りました。」


私は簡単に本の内容を説明した。

その後、七倉蓮介が単独犯で無い可能性についても美乃梨様にお教えした。すると、美乃梨様から身に余るお言葉を頂く事が出来た。


「貴翠が味方で心強いわ。本当に色々ありがとう。」


「美乃梨様の為ならこのくらい当然の事ですよ。」


そう、美乃梨様の為にする事は全て当然の事。それでも美乃梨様は、態々感謝の言葉を伝えて下さる。


そして美乃梨様は千秋様からクラスメイトからのお手紙の入った封筒受け取り、ビデオ通話を始められた。

その通話の中で、私と兄さんも学校を休んでいる事を聞き、驚いた様に声を上げられた。


「えっ!?貴翠と京翠も休んでたの!?」


その美乃梨様を不思議に思ったらしい姫野さんが美乃梨様に仰られた。


『みのりん知らなかったの?もしかしてずっと意識なかったとか?』


「……ずっとっでは無いよ。」


姫野さんの言葉に目を逸らされた美乃梨様。私は美乃梨様がご無理をなさらない様にと直様否定した。


「美乃梨様が起きられたのは1時間ほど前です。ここ1週間は意識のない状態が続いておりましたので。」


すると、美乃梨様には心配のお声が繰り返された。それでも病み上がりの状態で明日、学校へ行くと言い出された。

私にとっては美乃梨様の近くにいる為だけの学校も、美乃梨様にとってはとても楽しい場所らしい。美乃梨様はどうしても行きたいらしく、必死に薫様と紫乃凛様を説得させられた。


ビデオ通話が終わり、律様達が持って来られた軽食を取られると、美乃梨様は私達に休憩を、と仰った。


「いえ、私達は交代で休憩を取っておりましたので大丈夫です。」


「それに、雛菊様の回復薬も頂きましたので。」


と私達が断ると、美乃梨様は少し安心したように笑顔になって仰られた。


「そう。なら、何か面白い話を聞かせてくれる?1週間も寝続けたものだから全く眠たくならないの。」


「そうですね。」


そして美乃梨様が眠られた後……


「では、私達はこれで。」


「シャルルさん、美乃梨様が無理をなさならないようにお願い致します。」


「お任せ下さい。貴翠さん、京翠さん、お2人もゆっくりお休み下さいね。」


「……はい。」


「(全く休む気は無さそうですね。)美乃梨様にご心配を掛けないよう、よろしくお願い致します。」


「分かっています。」


私は美乃梨様のお部屋を後にし、美乃梨様のボディーガードとして用意されたばかりの寝台のみしか荷物の無い部屋へと向かった。


「本棚とテーブルくらいは持って来た方が良さそうですね。」


そして1時間程調べ物をした後、寝台に腰掛けた。

手を組み顎の下に置くと、軽く息をした。


「……美乃梨様、ご無事で何よりです。」


頬に温かく伝わるものは何年振りだろうか。

聡様もそうだったが、美乃梨様が目を覚まされたと分かった時は兄さんのように涙を溜めてしまいそうになった。ただ、美乃梨様の前でだけは涙を流したくなかった為、無理矢理押し込んでいた。




 美乃梨様が目覚められてから約1ヶ月。美乃梨様から初めて手作りクッキーを頂いた日。煌様が"何か"を美乃梨様に隠している事が分かった。


美乃梨様から、いえ、正確にはルカさんからの依頼により、私は兄さんから情報を頂き煌様の居場所を突き止め、何をしているかを尋ねた。


「煌様、偶然ですね。」


「来ると思っていました、貴翠。偶然ではなく意図して来ましたよね?それと、姉さんには言わないで下さい。」


「分かっております。美乃梨様も、煌様の方から話そうとするまでは無理に聞き出そうとしたり致しませんよ。因みに、こちらで何をされて居たのですか?」


すると、煌様は私を一瞥し、顔を背けて言った。


「貴翠は分かってて聞いていますよね?」


「……そうですね。何をしているは分かりますが、"何故"かは分かりません。」


「貴翠はいつから気付いていたんですか?」


煌様の問いに私は少し驚き、目を見張った。そしていつも通り、内心を悟られ無いよう、微笑みながら聞いた。


「何の事でしょう?」


「……分かりました。話します。貴翠さんの予想通りで、俺はここ周辺の魔力の痕跡を探しています。理由はこの"木"が夢に出て来たからです。」


「夢、ですか?……まさか、美乃梨様が仰られていたものと同じ夢でしょうか!?」


「姉さんと……?それってこの木の周りに溜まっていた、黒くてドロドロした様な魔力の事ですか?」


「はい。美乃梨様もそう仰られておりました。煌様が探されている魔力の痕跡とはその魔力の事ですね?」


「そうです。貴翠は心当たりがありそうな顔をしていますね。」


私ははぐらかすように「どうでしょうか。」と微笑んだ。ですが煌様は引かれなかった。


「教えて下さい。」


「……では、この件には出来る限り関わらないようお願い申し上げます。」


「無理です。」


煌様はこちらを見ながらはっきりと言い切った。


「貴翠、お願いします。この魔力の調査を手伝って下さい。」


煌様は深く頭を下げられた。


「煌様。頭を上げて下さい。私は本堂家で、煌様は恋咲家です。ご自分のお立場を考えて下さい。私は立場上、恋咲家の郎党ですので。」


「貴翠は恋咲家の郎党では無く、姉さんの臣下です。だから俺と貴翠の立場に上下関係は存在しません。貴翠、この魔力の痕跡を調べるには貴翠の力が必要なんです。」


「分かりました。ですが、この事は聡様にはお伝えしてもよろしいでしょうか?」


「はい。聡兄さんは一応俺のボディーガードですから大丈夫です。」


煌様の一応という言葉に苦笑してしまった。

そして煌様の真剣な眼差しを受け止めて言った。


「では、先程煌様が仰った魔力について説明します。

その魔力は禁忌を犯した者の魔力だと私は推測しております。煌様は言語だと何が話せますか?」


「言語?日本語、英語、フランス語、ドイツ語、それと、最近アイルランド語の勉強をしてます。まだ日常会話程度でないと理解に時間が掛かりますが……」


「……では、私が持っている本を3冊お貸し致します。それぞれ、ドイツ語、フランス語、アイルランド語で書かれています。アイルランド語に関しては、分からない言葉や言い回しがあれば聞いて下さい。」


「分かりました。ありがとうございます。」


そして煌様と私の禁忌の魔力の調査が始まった。


「貴翠、この作者はいつの時代の人ですか?」


煌様に本をお貸しして2週間後、煌様が私に聞きに来た。そちらに気付きましたか。やはり、煌様はとても聡いお方だ。


「この作者は、言葉遣いや時代の情景から500年程前から100年程前までは生存したと考えられます。」


「400年も生きていたという事ですか?」


「いえ、私が推測するに、この作者は亡くなっていないと思います。」


私の言葉に煌様は目を見張って驚かれた。


「貴翠、この本の作者を探し出せると思いますか?」


煌様のご様子に、やはり美乃梨様のご姉弟だけあると感じた。


(よく似ていらっしゃる。)


「貴翠?」


「探し出せるかどうか、正直五分五分と言った所でしょう。ですが、出来る限り私も尽力致します。」


そして煌様はご自身のお部屋に戻られ、私も美乃梨様のお部屋に向かった。


「失礼致します。」


「貴翠さん、どうぞ。」


シャルルさんが扉を開けて下さった。

美乃梨様は机の方で作業をされているようで、私には気付いていらっしゃらない。が、少し近付くと気配を悟って下さった。


「貴翠!いらっしゃい。あ、待って、これ、見えてないわよね?」


美乃梨様は焦った様子で机の上のものを両腕で隠された。私が「見えてませんよ?」と言うと、安心したように表情を緩められた。


「貴翠、少し彼方の方を向いておいて。私が呼ぶまでね。」


「?はい。分かりました。」


私は美乃梨様に言われたように背を向け、壁側を向いた。少しの間そうしていると、美乃梨様に声を掛けられた。


「貴翠、もうこっち向いた良いわよ。」


そう言いながら美乃梨様は可愛らしい封筒を私に下さった。


「開けても良いですか?」


「ええ。」


中を開けてみると3枚の便箋と、栞が2つ入っていた。


「美乃梨様、有難うございます。手紙は自室にて、しっかりと読ませて頂きます。栞も一生涯大切に使わせて頂きます。」


「大袈裟よ。私が作ったものだからそんなに高価なものでもないし、程々で良いわ。貴翠に感謝を伝えたかっただけだから。貴翠、いつも本当にありがとう。」


美乃梨様はそう仰りながら微笑まれた。その笑顔を見て、私は再度誓った。


(この笑顔を守っていく為、貴方の事は私が必ず護り抜きます。)

※煌くんと貴翠くんが喋っているあのシーンは美乃梨ちゃん達の記憶が戻った丘の木です。

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