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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
65/123

学校内でのバレンタイン!

今日は2月14日、バレンタイン当日だ。

朝から賑やかで皆んなソワソワとしている。


「みっのり〜ん!チョコ貰った?」


「全く貰って無いわよ?」


「そうなの!?やっぱファンクラブか……」


「ファンクラブがどうかしたの?」


「う〜ん、多分だけど、みのりんにチョコを渡そうとしている人は止められてるんじゃ無いかな?でもファンクラブに入ってる人は止められないと思うけど。」


ユーリちゃんは難しそうな顔をしてそう言った。


「でも告白されたりするんじゃ無い?」


「流石にそんな事無いわよ。物好きな人がそんなに居るわけ無いもの。」


「みのりんの事を好きな人は物好きじゃなくて至って普通だよ?」


ユーリちゃんは当然というように言って来た。

そうなのかな?とぼんやりと考えていると、気付けばお昼休みになっていた。


「みのりん、私部活あるからごめんね!」


「私も。昼練あるから。」


「ユーリちゃんもレイラちゃんも頑張ってね。」


今日は雅美ちゃんが映画の撮影があるからと休んでいる。最近は雅美ちゃんとユーリちゃんとレイラちゃんと私の4人でお昼をする事も多かったので少し寂しい気もする。


「京翠、確か用事があったのよね?私は1人で大丈夫だから行って来て。」


「ですが、私は美乃梨様のボディーガードです、」


「三日月先生!」


私は丁度近くに居た三日月先生に声を掛けた。


「恋咲。どうした?本堂先生、確か集まりに呼ばれていますよね?恋咲なら私が見ておきますから安心して行って来て下さい。」


「そうですか。では、お願い致します。」


京翠は三日月先生に頭を下げて、教室を出て行った。


「恋咲、良い所がある。」


そう言って三日月先生が連れて来てくれたのは、


「英語準備室、ですか?」


「ああ。秋月から頼まれたんだ。恋咲が昼休み教室に居ると落ち着いてご飯を食べれないだろうからってさ。」


「どうしてです?」


「ファンクラブが来るからだ。」


どうやらユーリちゃんが私を心配して三日月先生に人のいない場所を探してくれていたらしい。後でお礼を言わないと。


「三日月先生はサンドウィッチですか。」


「ああ。作るのが1番簡単だからな。」


丁度昼食を食べ始めようとした時、ガラガラッとドアが開いた。私は反射的に隠れると数人の生徒の声がして来た。


「三日月先生、居た〜!」


「ねえ、センセ。恋咲さん見てない?」


「チョコ渡したいの!」


「私も!」


「担任でしょ?どこに居るか知らない?」


私が出ようとすると、三日月先生は制止を入れた。


「見てない、見てない。ランチルームとか屋上にでも居るんじゃないか?」


「もう探したよ〜!九条くん達と居るのかと思えば、九条くんも有栖川くんも神崎先輩も見つからないしさ〜!」


「見たら絶対教えてね?」


「はいはい、時間があれば、な?」


そしてランチルームに入って来た生徒達はバタバタと忙しく出て行った。


「恋咲、ナイス判断だな。」


「いえ、何となく反射的に隠れてしまって……」


「それにしても、九条達も大変そうだな。逃げ切れてると良いが……」


三日月先生は頬杖をつきながら溜息をはいた。


「三日月先生って生徒思いで優しいですね。」


「当たり前だろ?これでも教師なんだから。」


「それでも、優しいですね。」


そして昼食を食べ終わり、昼休みまで余裕があるので三日月先生のご厚意に甘えて準備室で過ごすことにした。すると、またドアが開いた。私も先程と同じように反射的に隠れて様子を伺った。


「佐々野先生。恋咲、出て来て良いぞ?」


私が出て行くとすぐ目の前に三日月先生と同じくらい若い男性の先生が立っていた。


「初めまして、恋咲さん。」


「初めまして。えっと、佐々野先生。」


「僕は2年生の4〜6組担当の英語教師です。そして2年5組の担任です。」


「真央くんの担任の先生ですか?」


「はい。恋咲さんの話は神崎くんや山下くんから聞いていますよ。2人とも今日はファンの子に呼ばれて大変そうでした。恋咲さんも同じですか?」


佐々野先生は同情するように聞いて来た。


「いえ。私は三日月先生が庇って下さいましたから大丈夫です。」


「そっか。じゃあ大丈夫ですね。三日月先生やるじゃないですか。」


そして佐々野先生は資料を持って出て行った。


「じゃあ恋咲もそろそろ昼休みが終わるし、教室に戻るぞ。」


「はい。」


そして教室に戻ると、


「え、私の机に……」


私の机に大量のラッピングされた箱が積み上げられていた。隣に居た三日月先生は


「流石だな。それ、漫画の主人公みたいだな。」


と笑いながら言った。


「笑わないで下さいよ。というか、これ。殆どが宛名と差出人が書かれていないので間違いという事もあるかもしれませんよ。」


私は箱を持ち上げながら名前を探して行ったが、名前があったのは羽音ちゃんと朝葵ちゃんからのだけだった。


「美乃梨ちゃん、ごめんね。」


「お昼休みに探したんだけど居なかったからメッセージと一緒に机の上に置いていたんだけど……」


2人は「まさかこんなに積み上がるなんて思ってなくて」と言った。それは誰も想像しないだろうから2人は全く悪くない。


「大丈夫。でも、差出人が分からないものを食べるのは、私は良いけれど止められるだろうし。」


私がそう言うと、


「えっ、美乃梨ちゃん、良いの?」


と羽音ちゃんは驚いたように言い、


「恋咲、そういう所だ。」


と三日月先生は私の肩に手を置きながら言った。

その時丁度、京翠が帰って来た。


「美乃梨、大丈夫ですか?まさか食べようとは思っていませんよね?」


「お、思ってないです。」


と私が言っても京翠は首を振った。


「嘘ですね。三日月先生、その箱の差出人のない物は取り除きましょう。」


「ああ。そうですね。そうしないと恋咲は食べてしまいそうですから。」


そして私の机に残ったのは羽音ちゃんと朝葵ちゃんからのチョコレート。


「羽音ちゃん、朝葵ちゃん。ありがとう。ホワイトデーに返すね。」


「どう致しまして、美乃梨ちゃん。」


そして私はふと、千秋の机を見ると何も無かった。


「私がこんななのに千秋が何も無い。」


「いや、多分だが九条は甘いのが苦手だとファンクラブの人達は知っているんだろうな。今は告白ラッシュだろうから。」


そして予鈴が鳴り、戻って来た千秋は……


「お疲れ様。大丈夫だった?」


「いや、大丈夫じゃない。逃げている途中で景と会って体育館の裏の階段で昼食を食べてたから、時間に気付かなくて。美乃梨は平気そうだな。」


「うん。三日月先生が英語準備室に入れてくれて、隠してくれたから。」


千秋は疲れ切った顔で「俺も三日月先生に着いて行けばよかった。」と言った。


そして5、6限目と終わり、放課後。


「美乃梨お嬢様ー!!部活、行きましょう!」


「いや、何で迎えに来るの?いつもは来ないでしょう?」


「何故って、今日はバレンタインですから。」


「全く意味が分からない。でも、ありがとう。」


そして皆で体育館に向かっている途中、


「恋咲さん、少し良いかな?」


「え、ああ。大丈夫ですよ。」


私に声を掛けて来た人は緑色のネクタイだったので2年生のようだ。私は篤季達に断りを入れてその先輩について行った。


「恋咲さんが転校して来た時から可愛い子だなって思ってました。好きです、付き合って下さい!」


人気の少ない階段の踊り場で先輩は私に向かってそう言った。真剣な眼差しを向けてから先輩に私も真剣に答えた。


「すみません、先輩のお気持ちは嬉しいですが、お応えする事は出来ません。」


「そう、ですよね。話した事も無いし。でも、きっぱり振ってくれてありがとう。」


私の答えに先輩は笑顔でそう言ってくれた。

先輩が去った後、


「京翠、ボディーガードとはいえ、人の告白シーンを見るのはどうかと……」


「いえ。ボディーガードですので、美乃梨様から目を離すわけにはいかないのです。」


そして階段を降りると皆が居た。


「先に行っていてと言ったのに、どうして皆揃ってここに居るの?」


「美乃梨って本当にモテるよな。」


「……そうだな。」


「美乃梨お嬢様ですから。」


「透も千秋も、篤季もその内の1人だけどな。ほら、早く部活行かないと三日月先生に怒られんぞ?」


爽夜くんは少し早歩きで体育館へ向かった。

私も遅れないように少し早歩きで向かう。


「そういえば、雅美ちゃんからチョコは貰えた?」


「ああ。雅美が美乃梨と聡さんに手伝って貰ったって言ってた。美乃梨も千秋に渡したのか?」


「うん。」


そして更衣室で着替えて体育館に行くと私達以外は揃っていた。


「美乃梨ちゃ〜ん!チョコ、貰ってくれる?」


「早織先輩。ありがとうございます、頂きます。お返しはホワイトデーで良いですか?」


「ううん。私が勝手にあげただけだから大丈夫。」


「いえ、貰ったからには私が返さないと……」


「じゃあ、ホワイトデーじゃなくてお願いしても良いかな?」


「はい。何でも言って下さい。」


「ツーショットを撮ってくれない?」


「良いですけど、そんなので良いのですか?」


「推しとのツーショはそんなのじゃないよ!マジでこの上なく嬉しい宝物だから。三日月センセ、写真撮って〜!!」


「はいはい、後でな。っし、全員揃ったから練習始めるぞ!」


「「「はい!」」」



練習を終えて、着替えに行こうとした時……


「九条くん、ちょっと良いかな?」


「ああ、はい。」


「私、九条くんの事が好きです!付き合ってくれませんか?」


同い年らしい女の子が千秋に突然告白した。


「すみません、好きな人が居るので。」


「好きな人って恋咲さん?」


「…………。」


「……そっか。ごめんね。」


そしてその子は私に少し目を向けて帰って行った。


「流石千秋、即答だったね。」


「何が流石なんだよ、真央。」


「ねえ、真央。それよりもさっきの子。美乃梨ちゃんの事睨んでなかった?」


光奈先輩が真央くんにそう言った。私は睨まれてはいないと思っていたが真央くんといつの間にか後ろに居た京翠も頷いた。


「うん、確かに僕にもそう見えた。美乃梨に何もしないと良いけど……」


「大丈夫!美乃梨ちゃんに何かあったら私が許さないから!」


「それは僕もだよ、光奈。」


「ちょっと、2人で盛り上がってるけど、私も許さないからね!推しに何かする人なんて!!」


「もちろん私もね!」


「真央さん、八谷さん、健城さん、羽坂さん。ありがとうございます。美乃梨様を見守って下さる人がこんなに居てくださるとこちらとしても安心です。」


京翠がそう言うと光奈先輩と天音先輩は驚いたような顔をした。


「「美乃梨"様"!?」」


「って、何で早織は驚いてないのよ?」


「ファンの情報網を舐めたら駄目よ?美乃梨ちゃんのファンならこれくらい知っていて当然。」


そう、京翠は今まで特定の人の前でしか私の事を様付けで呼んでいない。例えば、私の友達やバスケ部の皆の前だけで。光奈先輩達はまだ会って1ヶ月程なので京翠は念の為警戒していたのだ。


「京翠先生は美乃梨ちゃんのボディーガードなんですよね〜?」


「はい。」


「まあ、驚いたって言っても弟2人は様付けで呼んでるしね。」


「あまりにもサラッと呼ぶから、逆にそっちに驚いたって言うか……」


「それに、美乃梨ちゃんが凄いお嬢様なんて見たら分かるからね。」


2人は笑顔でそう言った。


「えっ!?」


私は最近は口調にも慣れて来ている筈なのに、どうして!と思い思わず声を上げた。


「だってオーラが私らとは違うよね?」


「うんうん。それにさ、動き方が上品だし、何より時々、言葉遣いが丁寧すぎる。」


「まあ、これは真央くんにも千秋くんにも篤季くんにも言える事だけどね。」


天音先輩がそう言うと真央くんが声を上げた。


「えっ、僕も!?」


「そうだよ。正直真央くんは他の男子と違いすぎて同い年なんて思えないもん。ね、光奈?」


「ね〜。まあ太一とか蓮見といる時は同級生に見えるけどね。」


光奈先輩がそう言うと天音先輩が言った。


「えっ、真央くんって蓮見はともかく山下とも仲良いの!?学校一の問題児なのに?」


「確かに太一は校則違反しまくってるもんね。まあ、良い奴だけど。真央は太一の事、見た目で判断したりしないんだね。真央っぽいけど。」


「うん。正直、金髪の人もピアスを開けてる人も知り合いに何人も居るからね。髪色は殆ど皆地毛だけど。でも、それを言うなら美乃梨も1日で太一と仲良くなってたよね?」


「「えっ!?いつ!?」」


篤季と透くんが真央くんの言葉に反応して私の方を向いてそう言った。


「文化祭の時だけど……第一印象はピアスと髪色似合ってて、(考え方が)かっこいい人だなと思ったわ。一緒に司会をしたけれど、年上だけあって頼りになるし、やっぱり先輩って良いなって、」


「美乃梨!」


その時、爽夜くんに言葉を遮られた。


「どうしたの?爽夜くん。」


「一旦口を閉じろ。な?」


理由がは分からなくて私は言われた通り口を塞いだ。

すると光奈先輩が笑った。


「美乃梨ちゃんって天然なんだね。さっきの事に気付いてないのかな?」


「??何がですか?」


「じゃあ例え話で言うね。美乃梨ちゃんは好きな人居るよね?」


「は、はい。居ます。」


両手で熱くなった両頬を押さえながら言った。


「可愛いっ!じゃなくて、その好きな人が他の女の子を褒めてたらどう思う?」


「他の女の子って私の友達って事ですか?」


「ただし、美乃梨ちゃんの場合は友達が褒められたら喜びそうだから美乃梨ちゃんの知らない子。」


「好きな人が他の女の子を……」


私は千秋が他の女の子の事を褒めているところを想像してみた。すると何故かモヤモヤと心に重い霧がかかったような気持ちになった。


「少し、モヤモヤします。」


「それをね、世間では嫉妬って言うの。美乃梨ちゃんはさっき千秋くんが告白されていた時の千秋くんの返答の意味分かった?」


「意味?」


『千秋くんは美乃梨ちゃんの事が好きって事だよ。』


「そんな事言ってましたっけ?」


「言っては無いけど分かるんだよ。美乃梨ちゃんは千秋くんの事が好きなんだよね?」


「はい……まあ、そうですね。」


私がそう言うと光奈先輩と天音先輩は言った。


「側から見たら両想いだよね。」


「でも、美乃梨ちゃんと千秋くんは付き合っていないみたいだね。」


「はい。」


すると、話を聞いていた早織先輩が「ええっ!?」と驚いたように言った。


「美乃梨ちゃんと千秋くんって"まだ"付き合ってなかったの!?」


「まだってどういう……?」


「美乃梨ちゃんのファンクラブの中ではクリスマス前くらいから美乃梨ちゃんと千秋くんは付き合うまで秒読みって言われてたから。」


そしてしばらく体育館の前で皆で話していると、後ろの扉がガチャリと閉まった。


「うわっ、お前らまだ着替えてなかったのか?」


「あ、三日月センセ!約束の美乃梨ちゃんとのツーショ撮ってよ!」


「ああ、良いぞ。それ撮ったら着替えに行けよ?」


「分かってるって。」


「それと、部活外では敬語な。」


三日月先生はそう言いながら、私と早織先輩の写真を何枚か撮って下さった。


「三日月先生、ありがとうございます。」


「センセーありがと!」


「はあ〜〜、先輩と後輩でこんなにも態度が違うなんてな。一つ下なのに恋咲の方がしっかりしてるぞ?」


「美乃梨ちゃんに負けるのは仕方ないよ。」


そして私達は更衣室に戻り、着替えた。


「じゃあ美乃梨ちゃん。また明日ね!」


「はい!光奈先輩、天音先輩、早織先輩、お疲れ様でした。」


「お疲れ〜!」


「バイバイ〜!美乃梨ちゃ〜ん!」


3人はこれから地域のクラブチームの方の練習に向かうそうで、忙しく出て行った。私も着替え終わり、更衣室から出て、京翠や千秋達の居る場所へ向かった。


「皆、待たせてごめんね。」


「お、美乃梨。」


「思ったより早かったな。」


何となく昇降口まで皆で向かうのがここ最近の日課になっている。昇降口に着くと学年の違う真央くんと違うクラスの篤季は自分達の靴箱に向かった。そしてその時丁度、練習着の和真くんが来た。


「おー!バスケ部は練習終わったんだな。」


「うん。和真くんも?」


「ああ。景もそろそろ来ると思うぞ。」


「そっか。」


すると突然、靴箱の裏側から話し声が聞こえて来た。

靴箱はクラスごとに並んでいるので5組か6組の子の話し声だろう。


「ぶっちゃけ恋咲さんって可愛いからって調子に乗ってない?」


「そ、そうだよね。」


「有栖川くんと神崎先輩だけじゃなくて九条くんとも仲良くしてるし。」


声の主は先程千秋に告白した子だと分かった。

正直私は跡取りという事もあり、陰口には慣れているので特に何とも思わなかった。が、私の後ろの京翠が物凄く怖い笑顔をしているので必死に止めた。


「京翠、待って。」


それでも私達がいる事に気が付いていない相手は、話を続ける。


「おいっ、」


「何言ってんだ、」


「千秋は行ったら悪化するから待っててくれ。」


同じく話を聞いていた爽夜くんと透くんと和真くんが出て行こうとした時、


「ねえ、邪魔なんだけど。」


と聞き覚えのある綺麗な声が聞こえて来た。


「はあ?あんたの靴箱は向こうでしょ?」


「私はあなたの声が耳障りで邪魔だって言ってんの。てか、何様?」


「あんたこそ、悪口は辞めろって正義のヒーローぶった事言いに来たわけ?」


「違うよ。悪口はご自由にどうぞ。私が言って辞めるような人ならこんな所で堂々と言わないよ。私が言いたいのは自分の発言には責任が伴うって事。みのりんの悪口言った人を私も、レイラも雅美も許さないからね?自分の言った事の責任は自分で取ってね?」


「ふ、ふん!帰るわよ!」


「は、はい。」


そして私の事を話していた2人は逃げるように走って帰って行った。


「はあ、折角みのりんと会って帰ろうと思ってたのに気分最悪……みのりん!?もしかして聞こえてた?」


「え、ええ。ユーリちゃん、凄くかっこ良かった!」


と言いながら、私はユーリちゃんに抱き着いた。


「みのりん、あんなの気にしなくていいからね。」


「大丈夫だよ。慣れてるから。」


「慣れてる?ってどういう事!?もしかして今までも言われてたの?」


「私は跡取りだから、その地位に嫉妬する人は今まで何人も居たから。」


私がそう言って笑うと、ユーリちゃんは私の頬を両手で覆って真剣な顔で言った。


「みのりん、そういうのは慣れたら駄目だよ。慣れちゃうとね、いつか、"壊れちゃう"から。」


「ユーリちゃん?」


「私ね、小学校の2年生の時、大親友が居たの。」


そしてユーリちゃんは教えてくれた。


―その子は優しい子で、自分より他人を優先しちゃう子だった。ある時、男の子がふざけてその子の事を強く押したの。でもその子は笑って「私は大丈夫。気にしないでね。」って。でも、その時のせいでその子に何かしても許してもらえるからって皆その子の髪の毛を引っ張ったり、物を隠したりし始めた。それからしばらくして、その子は学校を休みがちになって転校して行ったの。私は毎日会いに行ってた。でも笑顔で大丈夫って言われるとその時の馬鹿な私は『元気そうでよかった』って言っちゃったの。―


「後からその子のお母さん経由で聞いた話だと、毎日泣き続けて突然、笑顔以外の顔をしなくなったんだって。今も文通はしてるけど、私は大丈夫、心配しないでってずっと言ってる。」


ユーリちゃんは私の肩を掴んで言った。


「みのりん、嫌な事に慣れないでね。嫌な事を許さないでね。約束だからね?」


さっきのユーリちゃんの話を聞いて大丈夫なんて言いづらくて私は素直に頷いた。


「まあ、その子。今は普通に学校生活を楽しんでるんだけどね!」


「きっと、ユーリちゃんのお陰だよ。その子にとってユーリちゃんは恩人(ヒーロー)だよ。」


ユーリちゃんは照れながら「そうだったら良いな」と言った。すると、京翠が笑顔でユーリちゃんに向かって言いながら頭を下げた。


「秋月さん、美乃梨様に無理をなさらないよう約束して下さってありがとございます。私共がどれだけ申し上げても美乃梨様は無理では無いの一点張りでして。美乃梨様のボディーガードを代表して感謝を申し上げます。」


「京翠センセ、頭を上げてください。私は友達として当然のことをしただけですから。てか、松岡くん達も居たんだ。」


「俺らは空気か!最初(はな)っから居たわ!」


「松岡くんとか特に友達思いだからすぐに飛び出すと思ったから……」


「いや、俺より先に秋月がかっけえ事言うから飛び出しづらくなったんだよ。な、透?」


爽夜くんに振られた透くんは答えた。


「ああ。一緒に飛び出そうとした和真も止まったし、和真に止められてた千秋も、秋月の言葉を聞いて落ち着いたみたいだったし。」


「秋月ってやっぱり凄えな。」


「やっぱり?」


「い、いや、秋月が居るだけで周りが明るくなるっつーか周りも笑顔になるからいつも凄えなって思ってたんだ。いつも、見てたから……あ、いや、今のは何でも無い。」


するとユーリちゃんは少し赤くなりながら答えた。


「ありがと、坂下くん。えっと、じゃ、じゃあ私はもう帰るね。みのりん、また明日!」


「え、うん。またね、ユーリちゃん。」


和真くんも少し顔を赤くしていた。

すると、爽夜くんは私と和真くんの手を引いて人気の少ない踊り場へと連れて行った。


「爽夜くん、急にどうしたの?」


「2人に頼みたい事があって……トリプルデート、してくれないか?」


「は、はあ!?爽夜と違って俺には彼女居ねえんだけど!」


「えっと、トリプルデートって?」


「ああ。3組のカップルでデートする事だ。」


爽夜くんは和真くんの言葉をスルーして私の質問に答えた。


「か、カップル!?私も恋人居ないけど!?」


「メンバーは、俺と雅美、千秋と美乃梨、和真と秋月で良いよな?」


爽夜くんはどんどん話を進めて行った。

私と和真くんは急ながら爽夜くんに言った。


「私、千秋と付き合ってないよ?絶対断られる!」


「俺なんか美乃梨と違って両思いって訳でもないし、秋月を誘う勇気無い。」


「んな事言ってると2人とも他の奴にとられるぞ?」


爽夜くんは安心しろ、と胸を叩いて言った。


「秋月は雅美が、千秋は俺が誘っとくからさ。2人には色々手伝ってもらったり相談乗ってもらったりしたから応援したくて。」


爽夜くんの言葉に私は嬉しくなった。


「ありがとう、爽夜くん。確かに千秋はモテてるから私よりももっと可愛くて優しい子の事を好きになっちゃうかもしれないもんね。」


「お、どう致しまして。和真はどうする?行かないのか?」


「秋月が嫌がらなかったら……行く。」


「りょーかい。」


そして皆のいる所へと戻った。

今回は京翠以外はついて来ていなかったみたいで、真央くんや篤季、景くんも居た。


「美乃梨、帰ろう。」


「うん。透くん、和真くん、爽夜くん。また明日!」


「おう!じゃーな、美乃梨!」

次回はトリプルデートですっ!

※美乃梨ちゃんと千秋くんは付き合ってません。あくまでも両思いです。

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