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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
60/123

やっと目覚めた主人公

美乃梨が気を失ったあの日からもう1週間も経つ。

養父上も養母上も美乃梨に付きっきりで、煌は悔しそうな顔をして唇を噛み締めているし、稔と架は泣きそうな顔で美乃梨の様子を聞いて来る。


僕もいつも「聡兄様」と呼んでくれていた美乃梨が寝台から起き上がらなくなって感情を閉じ込めるようになった。婚約者である花央は僕の心配をしてくれているが美乃梨の事を聞き、夜中、泣いていたのを知っている。


「聡兄さん、姉さんは?」


「……まだ眠ってるみたい。」


律と響彼兄さんは忙しそうに書斎に籠っている。

貴翠と京翠は美乃梨の部屋と律と響彼兄さんの部屋を行き来している。


この1週間の間、恋咲家本家は暗い空気に包まれた。

千秋くんや真央くん、景くんがお見舞いに来てくれていた。篤季はいつもの元気な表情は一つもなくずっと暗い顔をし続けている。


「美乃梨は大丈夫ですか?」


「真央くんは聞いているかもしれないけど、那央が治癒魔法を掛けてくれているし、命に危険はないそうだよ。でも、まだ目を覚さないんだよ。」


「そう、ですか。」


「美乃梨が目覚めたら直ぐに連絡をするから。3人とも暫く寝ていないよね?少し休んで。」


そして僕は3人を客間に案内した。


「養父上から提案されたんだ。3人には毎日来て貰っているから、美乃梨が目覚めるまで本家に泊まってもらおうって。勿論、3人が決めて良いからね。」


「俺は泊まらせて下さい。」

「僕もお願いします。」

「僕も。美乃梨ちゃんが心配ですから。」


「分かった。3人の両親には一応許可は取っているけれど、連絡しておいてくれる?」


「「「はい。」」」


僕は少し風に当たろうとバルコニーへ向かった。


「篤季、ここに居たんだ。」


「聡様。僕は、美乃梨お嬢様の事を好きと言っておきながら、美乃梨お嬢様を護る事が出来ませんでした。申し訳ございません。」


篤季はそう言って深く頭を下げた。

美乃梨が突然起きなくなった理由はまだ分かっていない。魔力が共有されている使い魔であるシャルルには何の異変もない。唯一、煌だけが感じ取れた微弱な魔力の揺れ。その分煌は悔しい思いをしている。


(自分も美乃梨と同じくらい危険な立場だというのに自覚していないのか?)


僕も兄として美乃梨の心配をする気持ちはある。

だけど、何だか美乃梨なら大丈夫だという謎の信頼もある。


「篤季は何も悪くないよ。悔しい気持ちは皆同じだろうし、美乃梨は起きた時に自分の所為で篤季が寝ていない事を知ったらどう思うかな?」


「何故、僕が寝ていないと分かったんですか?」


「顔、目の下の隈が酷いよ。」


そして僕は篤季に催眠魔法を掛けた。


「聡、様。」


篤季はフラッと僕の方にもたれ掛かった。

そして僕は篤季を客間に運んだ。その事を貴翠か京翠に伝えようと思い、美乃梨の部屋を訪れた。


「貴翠、京翠。篤季は寝させたよ。」


「そうですか。聡様、ご迷惑をお掛けし、申し訳ございません。」


「構わないよ。篤季は薬を使ってずっと寝ていなかったからね。幾ら薬を使ったと言っても精神疲労は凄かっただろうしね。」


そして養父上と養母上、京駕さんの所へ行った。


「3人とも、休んで下さい。美乃梨の事は僕が見ておきますから。」


「いや、私はまだ、」


養父上の言葉を遮って養母上が言った。


「そうね。今の酷い顔だと美乃梨が起きた時に心配してしまうわね。薫も京駕さんも休みましょう。響彼達もお茶に誘いましょう。聡、美乃梨の事は貴方に頼むわね。」


そして3人は部屋を後にした。

僕は未だ起きない美乃梨(いもうと)の細い手を握った。


「美乃梨、皆心配してるんだ。千秋くん達だって毎日来てくれてるんだよ。頼むから!頼むから、いつもみたいに『聡兄様』って呼んでみてよ。」


「聡様……」


僕は美乃梨なら大丈夫、そう思っていたのに、いざ美乃梨の部屋に行くと平気な振りをして付けていた仮面が剥がれ落ちた。シャルルが心配そうに僕の名前を呼ぶ。暫くして、握っていた手に力が篭った。


「……美乃梨!?」


「あ……き、兄、様?」


力の抜けた弱々しい声でそう呼んでくれた。

貴翠と京翠は直ぐにベッドの方へ飛んで来た。


「美乃梨様!分かりますか?」


「おはよう、ございます!」


貴翠は焦ったように美乃梨の顔を覗き込み、京翠は瞳に涙を溜めながら挨拶をした。


「貴翠、京翠。おはよう。」


僕は煌達の部屋に飛んで行き、美乃梨が起きた事を伝えた。貴翠は律と響彼兄さんに、シャルルは養父上と養母上と京駕さんに、京翠は千秋くんと真央くんと景くん、そして篤季に伝えに言った。


煌達は安堵の所為か、その場にへたり込んだ。そして直ぐに美乃梨の部屋に向かった。煌に関しては時空魔法を使ってだ。


「姉さん!」


「煌、おはよう。疲れた顔をしてるわね。」


「!……少し、夜更かしをしてしまって。」


「そう。」


そして直ぐに美乃梨の部屋へ人が集まって来た。


「どうしてこんなに人が……?」


「美乃梨!無事か!?1週間も目を覚さなくて心配したんだぞ!」


「1週間?」


養父上の言葉に美乃梨が首を傾げると養母上が美乃梨に説明した。


「ええ。美乃梨は茉莉花さんの誕生祭から1週間、一度も目を覚まさなかったの。」


「私、そんなに寝てたんですか!?」


どうやら美乃梨本人には自覚が無かったらしい。

すると、シャルルがおずおずと出て来て言った。


「美乃梨様、魔力が増えてませんか?」


「……そう言えば、確かに。ふふっ、今なら2、300年くらい前まで行けそうだわ。」


冗談っぽく言った美乃梨に対して、響彼兄さんと養父上が真っ先に反応した。


「美乃梨、それは本当か?」


「前からどのくらい増えているんだ?」


「お父様も響彼くんもどうしたの?」


「答えてくれ。大切な事だ。」


そして美乃梨は話し始めた。


「私、5歳の頃、10年前まで遡ったのよね?今ある魔力量はその時の魔力の30倍以上の魔力量だと思うわ。無理をすれば400年程遡れそうなくらいの。」


美乃梨の言葉に煌達とシャルル、貴翠と京翠と京駕さん以外は絶句した。


「流石、姉さんです。」


「確かに、これ程の魔力量を持ってすれば不可能ではありませんね。」


「美乃梨様なら難なく実現させてしまいそうです。」


すると、律が言った。


「距離で言うとどのくらい?」


すると美乃梨よりも先に養父上が言った。


「距離は美乃梨も煌も時間は掛かれど地球上ならどこでも行き来出来るぞ?」


「え、そんなに?」


「2人は魔力と魔法の相性が良いからな。」


そして養父上と養母上は他の人へ美乃梨が目覚めた事を連絡しに、京駕さんは律と一緒に美乃梨の軽食を取りに行った。そして響彼兄さんは美乃梨のベッドの横の椅子に座り、美乃梨の手を握った。


「起きるのが遅い。……この1週間、毎日心配していたんだからな。」


「響彼くん……ありがとう。」


美乃梨は響彼兄さんの顔に触れ、大の苦手分野である治癒魔法を掛けた。


「美乃梨?治癒が使えるようになったのか!?」


「別に元々使えないわけじゃないけれど、今は魔力が自然と溢れて来ているような状態だからこの程度の消費で無くならないの。」


「そうか。」


そして響彼兄さんは調べ物があるからと部屋を後にした。煌と稔と架も美乃梨が起きている姿を見て安心したのか自分達の部屋に戻って寝た。きっと、美乃梨が起きるまでは寝付けなかったのだろう。煌達を見届けて美乃梨の部屋に戻ると……


「美乃梨ちゃん、無事に目を覚ましてくれて、本当に良かった。」


「美乃梨、寝坊しすぎだから。あまり心配を掛けないで。」


「美乃梨が起きなくなったと聞かされた時、心臓が止まるかと思った。」


「景くん、真央くん、千秋。心配掛けてごめんね。ありがとう。私は大丈夫だから。」


美乃梨がそう言うと真央くんは


「さっきまで寝てた美乃梨に言われても。」


と笑いながら言った。でも涙とは不可思議なもので真央くんの目には涙が溢れていた。同じように景くんと千秋くんの目にも涙が溜まっていた。


「美乃梨が、もう、起きないんじゃ、ないかと思ったら、本当に心配になって、」


「真央の言う通りだよ。聡さんや、薫さんから、美乃梨ちゃんの命に別状は無いって聞かされても、やっぱり心配で、怖くて。」


「……美乃梨、本当に無事で良かった。」


涙を溢しながら言った景くんと真央くん。

千秋くんは目に溜まっている涙を流さないようにしているが、震えた声と一言一言の重さで心配が伝わって来る。すると美乃梨がある事を呟いた。


「……私も、少し、本当に少しだけだよ?でも、怖かった。」


その言葉に1番に反応したのは、美乃梨に涙を見せないよう、3人の後ろで必死に涙を拭っていた篤季だった。


「美乃梨お嬢様、何が怖かったんですか?」


「私にも、よく分からない。でも、周りが見えない真っ暗な所で私は誰かに手を引かれて"あの丘の木"の下に連れて行かれた。遠くに雷鳴が響くあの場所は、お昼とは全く別物だった。それに……」


美乃梨はそこで押し黙った。


「美乃梨、ゆっくり、話せる範囲で良いから話してみて。」


僕がそう言うと美乃梨はコクンと頷いた。


「黒い、ドロドロとした魔力が溜まっていたの。」


美乃梨のいう魔力は理解が出来なかった。この場の1人を除いて。


「美乃梨様、詳しくお聞かせ願えますか?」


貴翠がそう願い出た。

そして美乃梨から詳しく話を聞いた貴翠は言った。


「やはり、私の予想通りですね。」


「貴翠、何のこと?」


そして貴翠は皆に向かって説明し始めた。


「おそらく、美乃梨様の仰るドロドロとした黒い魔力とは禁忌の魔法を使った者の魔力でしょう。私は禁忌の魔力について1年程前から調べておりまして……」


そう言いながら貴翠は胸ポケットからスマホを取り出してある本の写真を見せてくれた。


「貴翠、この本って……」


美乃梨は何かに気付いたようだった。

貴翠は軽く頷きながら言った。


「この間、美乃梨様からプレゼントされた本でございます。どちらも言語は違えど作者は同じでした。私はこの本の作者の事を調べ回りましたが、中々情報が見つかりませんでしたので、この作者の本を集めるに至りました。」


「それで、本の内容は?」


「この作者の作品は全てで5巻です。全て別の言語で書かれており、内容は5巻とも全て魔法使いに関わる事でした。」


「魔法使いに関わる事って、作者は魔法使いなの?」


「私はそう考えております。」


貴翠は簡単に本の説明をしてくれた。その本は言い伝えでしか聞いた事の無い僕達魔法使いのご先祖様の若き頃の物語が5つの言語で描かれているらしい。その中に禁忌の魔法のような物が存在すると。


「そして1番の問題である、今回の美乃梨様の状況ですが……七倉蓮介が単独犯では無い可能性が出て来ました。」


「えっ、どうして?」


「七倉蓮介には美乃梨様の魔力を揺るがす程の魔力量も、それを操れる程の技術も無い筈ですから。あまり考えたくはありませんでしたが、こちら側にスパイがいるのか、若しくは七倉蓮介には情報収集の伝手がある。彼自身の情報収集能力は驚く程低いですし。」


貴翠が悪意を込めた冷ややかな笑みでそう言った。

美乃梨や煌達、美乃梨の周りの人が関わった時の貴翠程怖い者はこの世に存在しない。貴翠は美乃梨第一の考えで動いているので美乃梨の周りの人が関わると美乃梨が悲しむからという理由で相手に怒りを覚える。


「七倉蓮介、美乃梨をターゲットにするなんて命知らずな人だね。」


僕がそう言うと、貴翠と美乃梨以外が重く頷いた。当の貴翠と美乃梨は……


「貴翠が味方で心強いわ。本当に色々ありがとう。」


「美乃梨様の為ならこのくらい当然の事ですよ。」


などとほんわかしている。

すると千秋くんが何やら封筒のような物を取り出して美乃梨に渡した。


「美乃梨、これ姫野達から預かって来た。」


「ありがとう。わあ、手紙だ。何故か物凄く心配なメッセージが書かれているのだけれど……私の休んでる理由って?」


「体調不良による入院だ。」


「ええ!?」


そして美乃梨はスマホのメッセージアプリを開いた。


「凪くんと爽夜くんと透くんと和真くんからも心配のメッセージが来てる。返信しておかないと。」


美乃梨が返信すると突然電話が掛かって来た。


「ごめんなさい、電話に出ても良い?」


「勿論だよ。」


美乃梨は申し訳なさそうに通話ボタンを押した。


―美乃梨目線―


『美乃梨!体調は本当に大丈夫なのか!?』


「うん、心配してくれてありがとう、透くん。」


『当たり前だ。美乃梨の、親友だからな。』


「……うん!」


『爽夜達も凄え心配してた。美乃梨、通話に招待しても良いか?』


「ええ、もちろん。」


そして透くんは爽夜くんと和真くん、そして招待されて通話に入った凪くんがユーリちゃんとレイラちゃんを招待し、いつものメンバーが揃う事になった。


『みのりん、ビデオ通話に出来る?』


爽夜くんのスマホから雅美ちゃんの声が聞こえて来た。雅美ちゃんと凪くんと爽夜くんは一緒に居るそうで、爽夜くんのスマホで電話をしているらしい。


「出来ると思うけど、やり方が分からないわ。」


すると、京翠がやり方を教えてくれた。


「これで大丈夫かな?皆、見えてる?」


『うん!みのりん元気そうで安心した。』


「私も久しぶりに皆の顔が見れて嬉しい。」


『……ってか、千秋達も居ねえか?』


爽夜くんがそう言った。


「居るよ。千秋と景くんと真央くん。それに篤季と貴翠と京翠と聡兄様も居るわ。」


『本当だ。聡さん、お久しぶりです!』


「久しぶりだね。元気そうで何よりだよ。」


『あの、聡さん。美乃梨は本当に大丈夫なんですか?直ぐに無理をする本人に聞いても信用出来なくて。』


爽夜くんは申し訳なさそうに眉を下げて聡兄様に聞いた。


「そうだね。まだ病み上がりだけど皆の顔を見た方が元気になれると思うから大丈夫だと思うよ。」


『そうですか。聡さんに聞いて安心しました。な、雅美、凪。』


『うん。みのりん、体調万全にするまで学校に来ちゃ駄目だからね?』


「体調はもう大丈夫だよ。明日から学校にも行けるから。」


私がそう言うとユーリちゃんが私のことを疑い深く見てから言った。


『本当に〜?無理したら私達は速攻で保健室に連行するからね?ね、レイラ。』


『ええ!ユーリは無理かもしれないから私か雅美がみのりんの事担いで連れて行くから!』


『ちょっと、私は無理って、私が小さいって言いたいわけ!?みのりんは軽いから私だって持ち上げられるよ。』


『ちょっと2人とも、そのくらいにしなさいよ。』


と雅美ちゃんが2人の言い合いを静止をした。

すると和真くんが言った。


『美乃梨、明日学校に来るなら覚悟しておけよ?多分凄えから。』


「な、何が?」


『ファンクラブ。多分、登下校と休み時間、それに机とか靴箱には心配の手紙と花束だらけ。そう言えば景もクラスの女子に押し付けられてたな。』


「そうなの?」


『そうだよ!みのりんのファンは受験生の3年生も教室まで来て九条くんに手紙渡したりしてたもん!』


『まあ、九条は断ってたけどね。それどころじゃ無いって顔してたし。九条も有栖川くんも神崎先輩もみのりんが起きるまで表情が消えてたから。だよね、坂下?』


『ああ。美乃梨が学校に来なくなってから景と篤季に何話しかけてもぼーっとした顔だったし、景なんか部活でもパスされたボールがぶつかってたし。なんからしく無かったからな。』


「そうだったんだ。」


私がそう呟くと爽夜くんが


『真央先輩もだぞ?』


と言った。


『部活の時一切ボール見てなかったし、一対一の時なんて相手にパスしてるし。頼みの綱の貴翠さんと京翠先生は休みだったし。』


「えっ!?貴翠と京翠も休んでたの!?」


私がそう言うとレイラちゃんが言った。


『みのりん知らなかったの?もしかしてずっと意識なかったとか?』


「……ずっとっでは無いよ。」


私が押し出すようにそう言うと貴翠が直様訂正した。


「美乃梨様が起きられたのは1時間ほど前です。ここ1週間は意識のない状態が続いておりましたので。」


『全っ然大丈夫じゃないじゃん!?みのりん、なに嘘ついてんの!?』


『はあ、千秋達が心配する理由が分かるよ。僕も心配になる。』


貴翠の言葉にユーリちゃんは怒り、凪くんは呆れたように言った。


『ねえ、美乃梨。本当に明日学校に来るつもり?』


「ええ。1週間も休んだんだから。」


『美乃梨の両親は許してくれるの?』


凪くんの言葉は私を現実に戻した。


「それは……」


丁度その時、お母様とお父様と京駕さんと律ちゃんが私の部屋に入って来た。


「美乃梨ー!!軽食持って来たけど食べれそ、あっ!もしかして通話中!?邪魔してごめんね。」


「ううん。丁度確認したい事があって……お父様、明日から学校に行っても良いですか?」


私の言葉にお父様は目を見張った。


「流石に明日は休みなさい。」


「お、お母様は?」


「そうね。今回は薫の言う通りにして欲しいわね。もし、どうしても行きたいのなら午前か午後のどちらかにしなさい。これが最大の譲歩です。」


「紫乃凛、流石に明日は、」


「まだ話は終わってません。美乃梨、もし、明日倒れたりしたら薫の言う通りにして貰いますからね?暫く学校どころか家からも出られなくなる事を覚悟して選びなさい。」


お母様は真面目な顔でそう言った。

私としては本当に大丈夫なので明日からは普通に学校へ通いたい。


「分かりました。明日の午後からにします。」


「当然の事ですけど部活や体育の授業には参加してはいけませんからね?」


「……はい。」


すると会話を聞いていた爽夜くん達がお母様とお父様に対して言った。


『美乃梨のお父さんとお母さん、美乃梨が無理をしそうになったら俺達が全力で止めます!』

『俺も、美乃梨が少しでも体調が悪そうだったら無理矢理にでも保健室に連行します!』

『だから、安心して下さい!』


皆の言葉を聞いてお母様は感謝を述べた。


「皆さん、ありがとうございます。美乃梨の事をよろしくお願いします。」


そしてお父様とお母様と律ちゃんは私の部屋から出て行った。


「皆、ありがとう。」


『みのりん、ゆっくり休んでね。』


『また明日!』


そして通話は終わった。


「じゃあ、俺達は客間に戻るからな。」

「美乃梨、くれぐれも無理しないでね。」

「美乃梨ちゃん、何かあったらいつでも頼ってね。」


と千秋達は客間へ向かった。


「えっ、3人とも泊まってるの!?」


「美乃梨の事が心配でね。じゃあ、僕も部屋に戻るから、ちゃんと休んでね。」


「ええ。聡兄様、ありがとう。」


そして私は京駕さんと律ちゃんが持って来てくれた軽食を食べる事にした。用意されていたのはニンジンとほうれん草のポタージュ、りんごと桃のコンポートだった。


「美乃梨様、食べられる物だけで良いですから、くれぐれもご無理はなさらずに。」


「ご心配ありがとうございます、京駕さん。では、ポタージュは食べますが、りんごと桃のコンポートは一切れずつにしておきます。余った物はシャルルに渡して下さい。きっとこの1週間食べなくても平気だからと何も口にしていないでしょうから。」


使い魔であるシャルルには自身の魔力と主人の魔力がある限り生きていける。でも、シャルルは大の甘い物好きなのだ。私が勧めるまでは何も食べないのに、お茶会でお茶菓子を勧めたらとても幸せそうな顔をしてペロリと平らげてしまう。


「承知致しました。」


1週間何も口にしていない私の為に薄く味付けられたポタージュはとても美味しくて、シェフの心遣いが身に沁みた。


「……美味しいわ。シェフにも伝えておいてくれるかしら?」


私がそう言うと京駕さんは優しく微笑んで頷いた。


「ええ。きっとお伝えします。」


そして軽食を食べ終わると京駕さんは食器を下げに部屋を後にした。


「貴翠と京翠も部屋に戻って休んで頂戴。私は大丈夫だから。」


「いえ、私達は交代で休憩を取っておりましたので大丈夫です。」


「それに、雛菊様の回復薬も頂きましたので。」


と言い、2人は頑なにこの場から離れようとしない。


「そう。なら、何か面白い話を聞かせてくれる?1週間も寝続けたものだから全く眠たくならないの。」


「そうですね。」


そして私は眠気が来るまで話を聞いた。

美乃梨ちゃんが目覚めない1週間の内容は毎日暗い、と言うだけなので省かせて貰いました。

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