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王子様は1人じゃないっ!  作者: 華咲果恋
本編1年生
59/123

茉莉花ちゃんの誕生祭

1月もあっという間に中旬。

今日、1月13日は二条家のお嬢様であり、私の可愛い幼馴染の茉莉花ちゃんの誕生日だ。


「美乃梨、今日は二条の愛娘の誕生祭だったな。私も仕事でそちら方面に行くので途中、顔を出すかもしれないが、二条家のセキュリティーなら大丈夫だと思うがくれぐれも変な輩について行かないようにな。」


「ついてなんか行きませんよ!私、お父様にそんなに警戒心薄いと思われているんですか?」


私が反論するとお父様は重く頷いた。


「正直、物凄く心配だ。美乃梨の警戒心の薄さは良く捉えたらどんな人でも受け入れられる優しい子だ。悪く捉えると隙だらけで危なっかしい子だ。」


するとお母様が扉を開けて入って来た。


「確かに美乃梨の警戒心の薄さは親としては見てられない程心配になる事も良くあります。」


「紫乃凛、聞こえていたのか?」


「ええ、はっきりと。でも心配は無用のようだわ。美乃梨を護ってくれる人があんなに居るならね。」


「あんなに?」とお父様と私が首を傾げていると貴翠が入って来た。


「美乃梨様、千秋様と景様と真央様が先程到着されました。聡様と煌様達も準備が整ったそうです。」


「ありがとう、貴翠。ではお父様、お母様、行って参ります。」


貴翠と京翠は私のボディーガードとして、京駕さんは運転手兼付き人として、そして篤季は今日、稔と架の付添人として参加する。


「先日ようやく美乃梨様のボディーガードとして認められ、恐悦至極に存じます。」


「ありがとう。よろしくお願いするわ、貴翠。」


そして2つの車に別れて向かう事になった。1つは京駕さん、私、貴翠、京翠、聡兄様、煌。もう1つの車は稔、架、篤季、千秋、景くん、真央くん、恋咲家付きの運転手さんだ。


車一台に付き、招待状1枚が必要になる。茉莉花ちゃんは私に3枚の招待状を渡してくれたので稔に1枚招待状を渡した。お父様に言われ、もう1枚は事前に三日月先生へと預けた。


「では、京駕さん。お願いします。」


今日向かうのは茉莉花ちゃんと慧星が住んでいる別宅ではなく、茉莉花ちゃんのご両親が住んでいる二条家本宅だ。


「煌は茉莉花ちゃんと仲が良かったわよね?」


「そうでしたか?」


「そうよ。よく2人で色々競い合っていたじゃない。覚えていないの?」


「それは……(茉莉花が自分は姉さんの一番の(きょうだい)だと言い張るから。)まあ、仲は悪くは無かったと思います。」


「きっと茉莉花ちゃんも久しぶりに煌達と会える事を楽しみにしているわよ。」


私がそう言うと煌は少し目線の右斜め上を見た。


(茉莉花が俺達と会うのを楽しみになんてしているわけがない。)


―回想《煌》―


木にもたれかかりながら今年の誕生日、姉さんにプレゼントされた本を読んでいると、タタタッと駆け回る音が聞こえて来た。


「煌!美乃梨お姉さまは?」


「茉莉花のご両親に挨拶にいったぞ。」


「そう。」


「それを聞きに来るために態々ドレスで走って来たのか?」


「そうよ!今日、美乃梨お姉さまとまだ2人きりで話していないのに!」


「そうか。姉さんは忙しいんだ。諦めろ。」


俺がそう言うと茉莉花は頬を膨らませながら言った。


「美乃梨お姉さまの弟だからって偉そうね。前の時に美乃梨お姉さまが次は2人で写真を撮ろうねって言ってくれたんだから!」


「良かったな。」


俺は面倒臭くなりそうな予感がしてそう流すと茉莉花は不機嫌そうな顔をしながら言って来た。


「何でそんなに余裕ぶってるの?私が美乃梨お姉さまの一番のきょうだいなんだからね!」


「そんな訳ないだろ?第一、俺が一番姉さんと似ていて年が近い。それに、この本誰から貰ったと思う?」


「まさかっ、美乃梨お姉さまからのプレゼント!?」


「ああ、そうだ。しかも姉さんが今の俺の年の時にずっと愛読していた物らしい。」


「ふ、ふーん。そうなんだ。でも前に、私にはお揃いのネックレスをくれたのよ!」


正直、姉さんとのお揃いは羨ましいと思った。この辺りから俺と茉莉花はどちらの方が姉さんの弟妹として相応しいか競い始めた。

冷静な今思うとくだらない事だったが5歳だった当時の俺は、いくら周りから大人びていると言われていても中身は子供だった。それに、茉莉花と競い合っていたあの時間は、案外暇では無かった。


―回想終了―


「煌、どうしたの?」


「いえ、きっと茉莉花は俺と会う事よりも姉さんと会える事を喜びますよ。」


「そうかしら?」


そして1時間ほどで見えて来たのは小高い丘の上にずっしりと聳え立つ二条家本宅。何度来ても大きいなと思いつつ溜息を漏らす。


「美乃梨様、驚いていらっしゃるようですが恋咲家の土地自体は二条家と同等の広さを誇っていますよ?」


「そうなの?」


正直私は恋咲家の全ての土地を回った事がない。幼い頃は本宅の中や別荘くらいしか行っていなかったからだ。そんな事を思っているとあっという間に表門へ着いた。そこでは招待状をチェックする受付さんが立っている。


「招待状を拝見させて頂きます。恋咲家御一行様ですね。他のお連れ様は先程この門を潜られましたので出来るだけお近くの位置にお車を止められますようお願い申し上げます。」


稔達は先に着いているようだ。貴翠が篤季に連絡を取り、どこにいるか具体的な場所を聞いて向かった。

そして私は着いた事を報告した。


「もう駐車場に到着したわ。……ええ!これからそっちに向かうけれど……え!?」


私は少し大きな声を出してしまい、煌や聡兄様、隣の車から出て来た真央くん達がこっちを見た。私は居た堪れなくなり、少し離れた位置に移動した。


『お嬢が美乃梨様に少しでも早く会いたいと会場を抜け出したので、もしどこかで見かけたらこちらに連絡を下さい。』


通話相手である涼都くんは呆れたような声でそう言った。着いたという報告をした時に涼都くんから聞いた言葉は『お嬢が居なくなった』という言葉だったので家出や誘拐かと思ってしまった。


「分かったわ。茉莉花ちゃんは、スマートフォン持ってないのよね?」


『はい。持っていないというより持ち歩いていないだけですが。それより私が心配なのはお嬢がとてつもない方向音痴な事だけですから。龍人さんと手分けして探しているんですがお嬢の考えは中々難しいので。』


「私達の方でも探してみるわね。」


『本当に有難うございます。しばらくしても見つからないようでしたらお先に会場に向かって下さい。』


ツー、ツーという音共に通話が終わった。

皆の所に戻ると聡兄様に聞かれた。


「美乃梨、さっきの通話相手は誰だったの?」


「えっ?涼都くんだけど。」


私がそう言うと聡兄様と煌と稔と架は納得したような顔を見せたが千秋と景くん、真央くん、篤季は誰だというような顔になった。


「涼都くんは今日の誕生祭の主役である茉莉花ちゃんの付き人で私の……幼馴染、かな。この前久しぶりに再会したんだけど私より背が高くなってかっこよくなってたから驚いたのよ。」


私が景くんと同じくらい、と付け足すと千秋と篤季が上を見上げたものだからつい笑みを溢した。


「あ、それよりも茉莉花ちゃんを探さないといけないわ。私を探してパーティー会場を飛び出したそうなのだけど……」


私がそう言うと煌が焦ったように言った。


「姉さん、それ、茉莉花1人でですか?」


「ええ。」


「なら、確実に迷子になっていますね。驚く程方向音痴なので。」


煌に続いて稔と架も言った。


「茉莉は意味が分からない所によく入り込むので手分けして探さないと……」


「茉莉花ちゃんの行動パターンは普通じゃないという事しか分かりません。」


そして同じ車に乗っていた二手に別れて探す事になった。正直、私よりも煌達の方が茉莉花ちゃんについて詳しい。


「俺、多分ですけど、茉莉花の居る場所が分かる気がします。行動パターンでは無いんですが、花が好きだからか迷子になると何故かいつも庭の茂みの中や植木の間から出てくるんです。」


「そう、なの?じゃあ庭園の方に向かおうか。」


そして庭園に向かった。


「茉莉花ちゃ〜ん!どこに居るの〜?」


私は植木の間や茂みの方を探しながら茉莉花ちゃんの名前を呼んだ。やっぱりこういう時、魔法使いだったら魔力で探せるのにな、と思ってしまった。

すると突然貴翠が言った。


「茉莉花さんを見つけたかもしれません。」


「えっ、どこ?」


「あの茂みの奥だと思います。芝生が踏まれたあとが続いているので。」


そして茂みの奥へ入って行くと……


「茉莉花ちゃん!」


「美乃梨お姉様?すみません、お迎えに行こうと思ったのですが近道しようとすると迷ってしまって。」


「わざわざありがとう。涼都くんと柏木さんも探してるから一緒に会場に行こう。」


「うん!」


私はその前にちょっと待ってね、と言い涼都くんに電話を掛けた。


「涼都くん、茉莉花ちゃん見つかったよ。」


『本当ですか?どこに居ました?』


「庭園の茂みの奥。」


私がそう言うと涼都くんは身体の中の空気を全て吐き出すくらいの勢いで溜息をついた。


『美乃梨様、申し訳ありませんがお嬢に変わって貰えますか?』


「ええ。もちろん良いわよ。」


私が茉莉花ちゃんにスマホを渡すと茉莉花ちゃんは嫌そうに顔を歪めて恐る恐るスピーカーを耳元に近付けた。


「もしもし?み、岬?」


『どれだけ心配したと思ってるんですか!?龍人さんにもどうせ後で叱られるでしょうからあまり今は何も言いませんが、どこかへ行く時は我々に声を掛けて下さい!!』


「……ご、ごめんなさい。」


『謝罪は後で良いので返事は!?』


「は、はい。」


自由奔放な茉莉花ちゃんが涼都くんに押されている様子はとても珍しいものだった。通話をスピーカーにしていないのにここに居る皆に聞こえる程声を荒げている涼都くんは私には冷静に接していたけれど本当は茉莉花ちゃんを凄く心配していた事が伝わって来た。


そして電話を代わると涼都くんはひたすらお礼の言葉を綴った。


「どういたしまして。柏木さんには聡兄様の方から伝えて貰っているから涼都くんは安心してパーティー会場に来てね。」


『はい。本っ当に、何から何までありがとうございました。お言葉に甘えてこれからパーティー会場に向かわせて頂きます。』


そして稔達にも連絡をしてパーティー会場へ向かっている途中、茉莉花ちゃんが目をキラキラさせながら聡兄様を見つめた。


「あ、遅くなっちゃったね。私の兄です。」


「美乃梨の兄の恋咲聡です。」


「美乃梨お姉様の実質妹の二条茉莉花です。コホン、あの、不躾なお願いですが聡お兄様と呼んでも良いですか?私の事は茉莉花とお呼び下さい。」


「別に構わないよ。美乃梨の妹なら僕の妹でもあるからね。茉莉花、これからよろしく。」


「はい!聡お兄様。」


そしてパーティー会場に着くと先に到着していた柏木さんと稔達、それに涼都くんと慧星くんが居た。


「煌!久しぶりだな。元気だったか?」


「はい。慧星さんは相変わらずお元気そうです安心しました。」


「なあ、煌。茉莉花は何であんなに機嫌が良いんだ?迷子になったばかりなんだろ?」


「ああ、それは聡兄さんと会ったからだと思います。ここに着くまでも素敵なお兄様が出来たと何度も何度も繰り返していましたし。」


「茉莉花の奴、素敵なお兄様なら俺が居るというのに失礼だな。」


慧星くんの言葉に茉莉花ちゃんが


「お兄様のどこが素敵なのか私には良く分かりませんわ。」


と頰に手を添えながら首を傾げて言った。

そして2人は言い合いを始めてしまった。


「2人とも、お客様の前でおよしなさい。」


「茉莉花もそろそろ挨拶だろう。」


2つの声が聞こえて来て私達は反射的に振り返った。

そこに立っていたのは茉莉花ちゃんのご両親だった。


「お母様、お父様!」

「申し訳ございません、父上、母上。」


「ご無沙汰しております、飛鷹(ひだか)さん、向日葵(ひまわり)さん。」


「美乃梨ちゃん、久しぶりね。会わないうちにこんなに美人に育っているなんてね。煌くんと稔くんと架くんも大きくなったわね。」


「今日は茉莉花の為に来てくれてありがとう。茉莉花はもう時期挨拶だからステージに向かいなさい。」


そして茉莉花ちゃんは飛鷹さんと向日葵さんと一緒にステージに向かった。


《皆様、本日は私の誕生祭にお集まり頂き、誠にありがとうございます。楽しい催しと美味しい料理をご用意しておりますので是非楽しんで行ってください。》


茉莉花ちゃんは挨拶を終えるとバッと大人数に囲まれた。私も茉莉花ちゃんに誕生日プレゼントを用意しているが、今は渡せそうにない。


「慧星くんは茉莉花ちゃんに何かあげたの?」


「ああ。国立美術館の貸切チケットをあげた。」


「えっ、美術館って茉莉花ちゃん喜んでたの?」


私には茉莉花ちゃんは美術館が苦手で避けているイメージがあった。


「いや、全然。兄としての優しさで苦手な物を克服させてあげようと思っただけだ。」


「……慧星くんは素直じゃないわよね。本当は茉莉花ちゃんの事大好きなのに、回りくどいから茉莉花ちゃんに煩わしく思われるのよ。多分。」


私がそう言うと慧星くんはサラッと言った。


「別にそれで良い。って言うか、いつも優しい美乃梨が珍しく辛辣じゃないか?」


「ふふっ、慧星くんが茉莉花ちゃんの居ない所では茉莉花ちゃんの事を自慢するのに本人を前にするとそれを隠すから少し面白くて。」


私の言葉を聞いて慧星くんは私の両頬をふにふにと引っ張った。


「俺をからかう小悪魔はこうしてやる〜!

……っはは!」


「ふふっ、あはは!」


慧星くんとのやり取りに懐かしさを感じて、2人して笑ってしまった。その光景を見ていた千秋達はポカンとしていた。それに気付いて慧星くんが自己紹介をした。


「そういえば自己紹介が遅れたな。二条慧星だ。茉莉花の兄で美乃梨とは幼馴染だ。よろしくな。」


慧星くんに続いて柏木さんと涼都くんも皆に自己紹介をした。


「岬涼都です。美乃梨様の幼馴染で茉莉花お嬢の付き人です。」


「柏木龍人です。こちらの岬と同じく茉莉花様の付き人であり専属ドライバーでございます。」


そして私達は料理の置いてある方へ向かった。


「美乃梨様じゃないですか!ご無沙汰しております。御父上はお元気ですか?」


恋咲家経営の子会社の社長さんが声を掛けて来た。


「ええ、お久しぶりです。お父様は午後からこちらに来られるそうです。」


「茉莉花様とはお知り合いで?」


「ええ。私の幼馴染なんです。」


「そうでしたか。」


すると社長さんが他の会社の社長さんを数人呼んで来た。流石大財閥、会社の社長や会長など幹部達が集まっている。


「恋咲家のお嬢様ですか。」


「お初にお目に掛かります。そちらの方々は?」


そして千秋達も自己紹介を終えると


「九条家当主のご長男!?」


「あの神崎ホールディングス会長のお孫さんで?」


「有栖川グループの社長令息!?」


と声を上げた。

私達魔法使いの家系は進んだ教育をする為、優秀な者が多く、代々大企業を築いて来た。気付いた頃には、私達の親戚との繋がりを求めて集まった人達に囲まれていた。


私達が行手を阻まれ困っていると慧星くんが助け舟を出してくれた。


「流石五つ星シェフだ。こんなに美味しい料理を食べた事が無い!皆さんもお話や挨拶の前に腹拵えをしてはどうですか?」


慧星くんの言葉に私達を囲んでいた多くの人は「慧星様のお言葉ならば」と料理に目を向け始めた。

そして、少し料理を食べた後、茉莉花ちゃんを探しに行った。


「美乃梨お姉様!」


「茉莉花ちゃん、挨拶は大丈夫?」


「ええ。もうひと通り終わりましたわ。」


「そっか。これ、私が煌達と一緒に選んだ誕生日プレゼント。」


「ありがとうございます!開けても良いですか?」


「ええ。気に入って貰えると良いのだけれど。」


茉莉花ちゃんは包みのリボンを解きながら嬉しそうに笑った。


「フラワーソープ!それにダマスクローズのコロンですわ!美乃梨お姉様、ありがとうございます。煌達にもお礼が言いたいのですけれど、どこに居ますか?」


「煌なら多分稔と架の代わりに挨拶をしていると思うわ。稔と架はお料理の置いてある辺りに居ると思う。柏木さんと涼都くんもその辺りに居ると思うわ。」


そして茉莉花ちゃんはありがとうございます、と言い1人で真逆の方向に向かおうとした。


「茉莉花ちゃん、私も稔達に用があるし一緒に行きましょう。」


そして料理置いてあるテーブルの方に行くと挨拶に疲れた煌も聡兄様に休憩を取らされていた。

茉莉花ちゃんはと言うと……


「茉莉花様、パーティーが終わったら覚悟しておいて下さいませ。」


と笑顔の柏木さんに言われていた。茉莉花ちゃんは涼都くんの方に手を伸ばし、助けを求めるが涼都くんは


「お嬢の自業自得です。」


とバッサリ言い切った。

そして涼都くんと柏木さんは私の方に来た。


「美乃梨様、茉莉花様をこちらまで連れて来てくださり、誠に有難うございます。」


「今日は美乃梨様にご迷惑を掛け続けていますね。本当に申し訳ございません。」


「迷惑だなんて……茉莉花ちゃんは私にとっても妹のような存在だからこのくらいお安い御用よ。」


そして私は千秋達の居る所へ向かった。


「千秋、景くん!あれ、真央くんはどこへ?」


私が2人にそう聞くと千秋は私の斜め後ろの方に目を向けた。真央くんは名刺を渡されているだけで無く、美人なお姉さん達に囲まれている。


「な、何であんな状況になったの?」


私が聞くと景くんが答えてくれた。


「最初は3人で話していただけなんだけど、少しずつ人が寄って来たから僕と千秋は逃げたんだけど、真央は丁度その時、知り合いの社長さんと会ったらしくその場に留まったんだよ。その結果が……」


と言いながら景くんは同情する様な顔をした。


「美乃梨ちゃん、真央がこっち見てる。」


景くんの言葉で振り返ると真央くんが手をヒラヒラさせてこっちに来てというサインを出している。


「千秋と景くんを呼んでるのかもしれないよ?」


「まあ、可能性としてゼロでは無いけど多分美乃梨ちゃんだと思うよ。」


そして私は京駕さんと貴翠と京翠と一緒に真央くんの方に向かった。


「すみません、真央くんに少し用があるので……」


と言いながら私は真央くんの手を引っ張って千秋達の方に行った。


「はあ、美乃梨。助かったよ。何故か僕、大学生と勘違いされて……」


真央くんがそう言うと私と千秋と景くんは「あ〜」と納得した。真央くんは大人っぽい顔立ちなので大学生に見えない事は無い。


「僕まだ14なのに。老けてるのかな?」


と真央くんは独り言を呟いている。


「そんな事ないわ。大人っぽいって事よ。貴翠何て10歳くらいの頃から中高生に間違われていたもの。」


私がそう言うと貴翠は頷いた。


「そうですね。私は子供らしくない子供でしたので、よく間違えられていましたね。」


そしてその頃、ステージの方から音が聞こえて来たので観に行くと……何とオーケストラ団が居た。茉莉花ちゃんの言っていた催しとはこの事だった。他にも芸能人らしい人が多く来ていた。


「凄いな、二条財閥。」


隣で千秋が呟いた。


「うん。凄すぎるよね。」


そしてオーケストラの演奏を聞き少し人気のない所へ向かった。


「はあ、疲れた。」


「美乃梨様、椅子をご用意致しましょうか?」


「いえ、大丈夫です。ありがとうございます、京駕さん。」


私はそう言いながら木にもたれ掛かった。

何故か分からないが疲労感が凄い。

私の変化に気付いた3人は焦った様な表情を見せた。

途端に平衡感覚が無くなりもたれ掛かって居た木からずれ落ち、倒れてしまった。


「美乃梨様!」


いつも冷静沈着な貴翠の叫び声が聞こえたような気がするが、身体が重くてそれに反応する事が出来ないまま私は気を失った。


「貴翠、茉莉花様達に帰ると伝達を頼みます。京翠は車まで美乃梨様をお運びしなさい。私は事情を説明して飛鷹様に裏口の出入りの許可を貰ってきます。」



―京翠目線―


美乃梨様が突如お倒れになった。疲労が溜まった物だろうかと確認してみると魔力の揺らぎを感じた。私は父さんに言われた通り素早く自らと美乃梨様に隠伏魔法をかけ、車へ向かった。

車の座席に力の入っていない美乃梨様が横たわる姿を見て自分の情けなさを実感した。暫くして、父さんと伝達を終えた貴翠と一緒に何故か聡様と煌様がやって来た。


「どうして煌様もいらっしゃたのです?」


「それは車の中で説明します。本堂さん、車を出して下さい。」


「はい。貴翠、薫様への御連絡も頼みます。」


「分かりました。」


そして車は恋咲家本家へ向かい始めた。車が出発すると煌様がここに来た理由を説明して下さいました。


「前に響彼兄さんから聞きました。俺と姉さんは恋咲家で稀に生まれる魔力に時空間魔法が刻まれているそうです。そのおかげか、姉さんの微弱な魔力の揺れを感じ取れたんです。姉さんは茉莉花と一緒に居るだろうと思い茉莉花の方に行くと貴翠さんの話し声が聞こえ、心配になり付いてきました。」


煌様は話をしながらも何度も美乃梨様の事を心配そうに見つめていらっしゃった。貴翠の方を見ると難しい顔で何かを考え込んでいるようだった。


「貴翠、どうしたのですか?」


「……美乃梨様の魔力に、微弱ながらも他の者の魔力が混ざっているような気がして。」


貴翠は美乃梨様が5歳の頃に主従の誓いを立てているので長年美乃梨様の魔力を感じていた。その為、美乃梨様の些細な魔力の変化にも気付けたのだろう。


「貴翠、他の者とは誰の事か分かる?」


聡様が貴翠に向かって尋ねられた。


「いえ、魔力が微弱過ぎて特定が困難です。まるで純血の魔法使いとは思えないくらいに。」


そして恋咲家に着き、美乃梨様をお部屋までお運びした。

美乃梨ちゃんは一体どのような状況に置かれて居るのでしょうか!?次回もお楽しみに♪

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